東方異戦線   作:albtraum

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好き勝手にやっています。だから、原作が好きでたまらず、それに完璧に則ったものでないといけないという方にはお勧めできません。

それでもいいという方は第三話をお楽しみください。

五分後に続きを上げます。


東方異戦線 第三話 強襲者

 拝啓

 博麗霊夢殿へ。

 私は、生き返るためにパラレルワールドの異世界に来ています。死んだ私が生き返るためにはこうするしか方法がないわけですが、初っ端から心がへし折れそうです。

 “彼”が提示してきた生き返るための条件を飲んだことを私は早々に後悔し始めていた。

 

 空気が強く私の頬を叩き、したに向かって流れていく。方向的には上方向に風が向かっているわけだが、私が下に向かって降下していくため、そう感じるのは仕方のないことだ。

 視界いっぱいに広がる大地が私に向かって迫ってくるのが見える。詳しく言えば向かっているのは私であるわけだが、そんなことはどうでもいい。

「…………」

 地球の重力によって私の体は空気抵抗によってわずかに速度を減衰しながらも加速を続け、幻想郷の外にある車と呼ばれる代物が出す速度を軽く超えた超高速な速度で地上に向かっている。

「出す場所を考えろ!!バカやろーーーーーーーーーーっ!!」

 私はこの場にいるわけではない。あの世とこの世の境にいる“彼”に向けて力いっぱい叫びながら、現在向かっている地面の方向に魔力を放出して雲の上まで余裕で行けるほどの推進力を使って減速を図った。

 手足から出す魔力の放出力の強さが強すぎると、急激に減速した影響で腕を胴体につないでいる肩や、胴体に足がつながっているための関節が脱臼してしまうため、魔力の放出は繊細に、かつ慎重に調節しなければならない。

「っ…!!」

 体が落ちるスピードが落ち始めるが、魔力の放出量が多すぎたのか肩がビキリと痛む。だが、その痛みのおかげなのか、だいぶスピードが落ち始める。

 眼下の地面から生えている木の葉っぱの一枚一枚が目視できるほどまでに地上との距離が近くなり、私は着地をしやすいように体勢を変える。

 スピードは最大限まで緩めたつもりだったが、それでも意外と早い速度で草木をかき分けて私は地面に降り立った。

 地面に向けて魔力を放出していたため、私を中心にして水たまりに水滴を落とした波紋のように空気が流れ、木の葉っぱや雑草などの草を大きく揺らす。

「……っ痛……危なかったな……」

 着地の衝撃でビリビリと痺れる足をさすりながら独り言をつぶやいた私は、痺れている足に魔力を送り、骨や筋肉の痛みと打撲の痛みを和らげさせた。

 もう少し落ちる速度が早かったら、運が悪ければ脱臼もしくは骨折をしていた可能性がある。今後はもう少し慎重にならなければならないかもしれない。

「…さてと……」

 改めて周りを見回してみると私が降り立った場所はだいぶ深い森の奥らしく、人の気配がしない。こっちではわからないが幻想郷で人が寄り付かない場所と言えば魔法の森などがあげられる。野生生物の姿すら見えないとなると魔法の森のどこかなのは確かなのだろう。

 濃い瘴気などが霧を形成していて視界が少しだけ悪い。

 周りを見回すと、昼間だというのに薄暗くてどんよりとした雰囲気が漂っていて、私は少しだけ身震いした。

「……」

 私がいつも使っている箒がない今は、魔力で体を強化すれば飛んで進むよりも走った方が早いだろう。でも、正直なところを言えばこの薄暗くて気味の悪い森の中なんて歩きたくはない。

 それに私の世界とこっちの世界では地形なども変わっている可能性が極めて高い。慣れない土地で、さらに森の奥を歩くのはあまりよろしいとは言えないだろう。もしかしたら死ぬ可能性のある異変の最中は特にだ。

 私はそう判断して魔力で飛行をするための上への推進力を体に働かせると、私の体が浮き上がり始めて少しずつ高度を上げていく。

「…行くか」

 木の葉っぱの高さ以上の高度を維持しながら私はまた独り言をつぶやきながら、とりあえず前に向かって進みだす。

 名前も教えてくれなかった“彼”はこの異変は大したことはない。君でも解決できることはできると思うと言っていたが、実際のところは不安しかなく、さっきから緊張しっぱなしである。

 しかし、緊張してガチガチになっているとは言え、たいしたことはないという“彼”の言葉を少しばかり鵜吞みにしすぎていたらしく、敵の接近に気が付くことができなかった。 少し考えてみればすぐにわかることだろう。上空から魔力を放出しながら落ちてきた人間がいれば嫌でも目に入る。

 ヒュウッと突風にしては弱く、短い風が吹いて私の髪の毛を強くなびかせ、被っている白と黒の帽子も飛ばされそうになり、私はあわてて帽子を手で押さえた。

 あまりにも不自然な突風が気になり、私が周りを見ようとしたときに何かを打ち付けられたような衝撃を後頭部に受け、顔がガクンと前に傾く。

「……ん?」

 私はずいぶんと間抜けな声を出しながら、小突かれた後頭部に手を伸ばそうとした。殴られた部分に手が触れそうになった直前、殴られた痛みが遅れて私の後頭部から額までを激痛が掛け巡る。

「あぐ……っ……!?」

 後頭部に向かっていた手で頭を抱え込むように押さえて痛みを引かせようとするが、効果などあるわけがなく、頭が割れそうなくらいの激痛が頭の中を反響していて、すでに私は激痛の情報で脳がいっぱいいっぱいになって失神しそうになっていた。

 そのとき察しが悪く、ほのぼのと平和に暮らしていて、数少ない異変に出向いた時でも感じたことのないはっきりとしていて、とても強い殺気を感じた。

 ズキズキと痛む頭では一定量の魔力を体の浮遊に回すことにすら気が回らず、浮遊に回していた魔力が途切れたことでまるでつるされているロープがいきなり絶たれたかのように、私の体が地面に向けて落下を開始する。

 すぐ真下にあり、密度が高く生い茂っている木の葉っぱと、枝分かれをしまくった木の枝が張り巡らされている場所に私は突っ込んだ。

 バキバキと細い木の枝をへし折りながら体は進み、葉っぱで光を遮られている薄暗い森の中に私は逆戻りしてしまう。

 ガサガサと木の葉と体が擦れてやかましい音を出し、その音で何も聞こえない状況になっていた私に追い打ちをかけるようにして、ひときわ太い木の枝に何の受け身もとらずに突っ込んでしまった。腹部に全体重がかかり、鈍い痛みがじんわりと腹部を襲う。

「は…ぐっ……!!?」

 それのせいで私の体のバランスが余計に崩れ、数メートル下の地面に顔から突っ込む態勢で落ちるが、両手を顔の前に突き出していたおかげで顔面から地面に突っ込むことはなかった。だが、強化していない私の細くて華奢な腕では自分の体重を支えることができずに前のめりになり、前転をするようにしてゴロンと体が回転し、背中を地面に打ち付けてようやく私の体は動くのをやめた。

 痛みで物事を考える余裕はないが、本能的に私は倒れた状態から起き上がり、ふらふらとおぼつかない足取りで亀のような鈍さで逃げ始めた。

 背中をぶつけた程度の痛みでは、後頭部を殴られたさいの激痛は紛らわせることはできないらしく、強烈な痛みが私を常に襲っている。

「……っ」

 首筋に何か液体のようなものが垂れてくる感触がして、私は後頭部に手を伸ばしてさっき殴られた位置に軽く触れると、本当はかなり痛いはずだが感覚が麻痺してあまり強い痛みを感じない。しかし、触った髪の毛や頭皮がなぜか濡れているようで、後頭部から放した自分の手のひらを見た時、私は小さく悲鳴を上げてしまった。

「ひっ…!?」

 一度にこんなにたくさんの血を流したことがなく、手のひら全体にべったりとこびりついている血が自分の物だとは信じがたく、未だに実感がない。

 しかし、この後頭部の痛みは本物であり、血を流しすぎて貧血気味になっているため、これ以上の血を流させないように私は魔力を集中的に後頭部の傷に送り込み、できるだけ早く傷が治るようにした。

 あまり痛みで頭が働かないが攻撃されたのは間違いないわけであり、一刻も早く移動しようとしていると、私が地面に落ちた場所から十メートルも移動しないうちに、私は飛んでいた時にも向けられた強い殺気を本能が感じ取り、恐怖で体が硬直して私のいう事を聞いてくれなくなる。

 それはよく表現される蛇に睨まれた蛙と言うやつだ。

「魔理沙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 女の子のような高い声で叫びながら私の名前を叫び、誰かわからないが子供のように小さい子が左横方向から鋭い剣のようなものを掲げてヨロヨロとしている私に襲い掛かって来た。

 




五分後に続きを投稿します。

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