東方異戦線   作:albtraum

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好き勝手にやっています。

原作と違うからって怒らないでください。

それでもいいという方は第十話をお楽しみください。


東方異戦線 第十話 助け

 冷たいひんやりした金属の感覚が、皮膚に感じる間もなく全身を電気が駆け巡る。

「~~~~~~~~~~~~っ!!」

 体に流れる電気に、私はナイフで切り裂かれているような鋭い痛みを全身に感じ、声をあげて叫ぼうにも筋肉が硬直して叫び声すらも上げることができない。

 筋肉が硬直しているせいで呼吸をすることができず、失神しそうになっていた私から鈴仙は両手の針を離した。

「…っ!!……はぁ……はぁ…はぁ……!」

 電気の流れが止まり、筋肉の硬直と切り裂かれているような痛みから解放された私は、酸素が回らずクラクラする頭を使って呼吸をする。

「魔理沙、言わないなら死ぬまでこの電気を流し続けてもいいのよ?」

 ドスの利いた声で鈴仙が私をにらみつけるが、私は息が切れて何も答えることはできない。

「…そうそう、魔理沙」

 鈴仙の後ろに下がっていた永琳が鈴仙の横に歩いてきて、ぐったりとして酸素を求めて喘いでいる私に言った。

「………?」

 下を向いていた私は肩で息をしながら顔を上げ、永琳の方向を見ると彼女は腕時計に目を落としている。

「さっき飲ませた薬についてなんだけど、効果が出てくるのは遅いけど失神しなくなる作用もあるから、失神して尋問を一時的にのがれて助けが来るまでの時間稼ぎをしようとしてもできないわよ?」

 私の考えを見透かしていたような永琳の話を聞いている最中から、私の体に異常が起き始める。酸欠気味でクラクラしていた頭の中が急にすっきりしていくのだ。

「じゃあ、もう一度聞くわよ?……霊夢はどこから攻撃を仕掛けるつもりなの?」

「…な…何度も言ってるだろ……!…私は何も知らない…!」

 私が鈴仙をできるかぎり威圧するように睨み付けるが、今の鈴仙からしたらこれほどまでに威圧感のない威嚇もないだろう。彼女は表情一つ変えずに呟く。

「…そう」

 その一言が終わるとほぼ同時に私の両手に二つの針を押し付けてくる。

「~~~~~~~~っ!!」

 電気が再度私の体の中を駆け巡り、ズタズタに引き裂かれるような痛みが体中に広がっていく。

 呼吸ができず、酸欠状態になっていくがさっきのように意識が遠のくことはない。永琳に飲ませられた薬が効いてきているせいだろう。

 さっきの倍以上の時間電気を流されたころ、鈴仙が私からようやく鉄の針を離し、一時的に電気から私を開放する。

「…はぁ……はぁ……はぁ……!!」

 体が痙攣し、びくびくと手足や体中の筋肉が震えて痺れが残る。まるで一日中走ってきたのではないかと思うほどに体が脱力し、私は顔を上げることすらできない。

「…魔理沙、霊夢たちはどこから私たちを攻撃するつもりなの?」

 鈴仙が私に休む暇を与えずにそう告げ、私を冷やかな目つきで見下ろしながら私の両手に針を添えたとき、唯一この部屋に入ることのできる扉の方向から声が聞こえた。

「そうね…。手始めにこの場所からにしようかしら」

 分厚い金属でできた扉が部屋側に大きく歪み、蝶番の耐久力を衝撃の威力が上回ると扉とともに千切れ飛んでくる。

 私のすぐ横をコンクリートでできた床を削りながら扉が飛んできて、そのまま後方の壁を破壊する。

 破壊された壁から光が差し込んで、私の背中を日の光が照らす。

「…霊……夢…」

 驚いて目を見開いた鈴仙が後ろを向くと、返り血まみれでお祓い棒を持つ右手の甲で頬を拭きながら霊夢がこの部屋に入ってくる。

「…魔理沙、大丈夫かしら?」

 霊夢はそう言いながら、左手で引きずっていた何かをこっちに放り投げた。

 ドチャッと水気を含む音を立てながら床に落ちたそれは私もよく知る人物だったが、トレードマークの垂れ下がったウサギの耳が無ければわからなかったかもしれない。そのウサギ耳も片方が千切れているが、チルノたちと変わらないぐらいの身長と首に下げている人参のネックレスをつけているてゐは血まみれで、体の数か所から大量に血が出血しているのが見える。

「てゐ!!」

 ピクリとも動かず、生きているのか生きていいないのかわからないてゐを鈴仙が助けようと動こうとしたとき、その鈴仙の横を小さくて細い物体が高速で通り過ぎた。

 ガチンッ!

 私の腕を縛っている革のベルトを固定してる金属を霊夢が飛ばした妖怪退治用の針が正確に打ち抜き、部品を大きく損傷させて私を開放される。

「…くっ……」

 鈴仙が手の形をピストルを真似たようなものにし、霊夢に向けた。

 発射音はなかった。でも、確実に何かが発射されたのだけはわかる。霊夢が横に動いて鈴仙の弾丸をかわし、高速移動した弾幕の空気を切り裂く甲高い音が部屋に響く。

「鈴仙、とりあえず…あんたは殺すわ」

 霊夢がチルノを殺したときと同じ目をして、血で真っ赤に濡れているままのお祓い棒を鈴仙に向けて構えた。

「てゐをよくも……!殺すのは、こっちのセリフだ……!!」

 鈴仙が手に持っていた電気が流れている針を投げ捨てて、ファイティングポーズを構える。その構えには無駄がなく、月の兵士だったというのを実感させられる。

 霊夢がコンクリートにひびを入れながら踏み込み、鈴仙に襲い掛かった。魔力で体を守るために全身を覆っている魔力の膜、それらが鈴仙と霊夢が拳と武器を振るうごとに役目を果たして空気中に結晶のようにまき散らされていく。

「はぁっ!!」

 鈴仙が拳を突き出し、霊夢に拳を叩き込んだ。霊夢が鈴仙の手の甲にお祓い棒で触れ、少し力を入れて拳の軌道をそれさせた。

 左側にそれさせた鈴仙の腕を左手で掴みながら、拳をそれさせたお祓い棒を鈴仙のひじに叩き込み、ひじの骨をへし折る。

「うぐ…ぁ…!?」

 後ろに引き下がろうとした鈴仙の腕から離した左手で胸倉を掴み、お祓い棒で鈴仙の頭を強打した。

 その一撃で鈴仙の頭部から血が流れ出し、薄紫色の髪の毛を赤く染め、額から血が顔に流れ落ちていく。

 頭を左手で押さえながら一歩後ろに下がって霊夢から逃れようとするが、霊夢が掴んでいるせいであまり下がれず、下がった分以上の距離を彼女に詰められてしまう。

 霊夢は鈴仙を殴ろうとお祓い棒を振り上げるが、横から飛んできた一メートルはある巨大な矢をお祓い棒を振り下ろすことで弾き飛ばす。

 霊夢が矢を弾くために振り下ろしたお祓い棒を振り上げ、その先にいる鈴仙をなぐり殺そうとしたとき、電気を流されていた影響で回らない足をできる限り回転させ、霊夢の手を掴んで彼女が殴るのを間一髪で阻止することができた。

「…やめてくれ…霊夢……もういい…!」

 私がそう言って霊夢を止めると、彼女は不思議そうな目を押して私を見ながら呟く。

「でも魔理沙、こいつはあなたを痛めつけてたのよ…?そんな奴はそれ以上の苦痛を味あわせるために殺したほうがいいわ」

 霊夢が掴む鈴仙の胸倉に更に力を入れて握ると、握った部分の服がこすれてギチッと音を立てる。

「…霊夢、そんなことはしなくてもいい…!!…増援が…来る前に一度退こう…!」

 私がそう言うと、取り囲まれている状況で私を守りながら戦うのは分が悪いと判断したのか、掴んでいた鈴仙から手を離した。

 ポタポタと血を流して意識がなく、右腕が折れている鈴仙が力なくコンクリートの床に崩れ落ちる。

 周りを見ると、私の尋問に立ち会っていた奴らも不意を突かれたとはいえ、すぐに立ち直って戦闘態勢に入っている。

 しかし、肝心の素顔が見えない。光が少し入ってきてはいるが闇のほうが濃くてどんな人物がいるのかがはっきりとは見えない。

「…そうね…」

 体がしびれ、まともに走ることもできない私を霊夢は背中で背負ってくれた。

「一度帰りましょうか」

 霊夢は私を背負って言い、周りの奴らが攻撃を仕掛けてこないように針を投擲して牽制しながら前に進むと、慣性の法則で少しおいて行かれて、なびいた髪の毛を掠るようにして、霊夢の牽制の針が投げられてはいなかった永琳が放った矢が飛んでくる。だが、私にその矢は当たらない。

 霊夢は来た道を戻るのではなく、扉を吹っ飛ばしたときにあけた穴から攻撃をかわしながら外に飛び出し、紅魔館に向かって空を飛んだ。

 




多分明日も登校すると思います。

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