東方異戦線   作:albtraum

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好き勝手にやっています。キャラクターは原作とは違う性格だったりするかもしれないです。
この話はオリジナルキャラクターが話を進めていくわけではありません。

それでもいいという方は第一話をお楽しみください。


東方異戦線 第一話 取引

 拝啓

 博麗霊夢殿。

 

 私はインクを付けた万年筆を紙の上で走らせ、そう綴った。

 その字は達筆とは言えないが、全く読めないというわけでもないぐらいの字であり、普段私があまり上手に字を書いてないということがそれだけで分かる。

 それでも私は万年筆を動かし、ガリガリと小さな音を立てながら文字を書き、彼女に自分の気持ちが伝わるように文脈だけは丁寧にしようと心掛けながら書いていく。

 

 これをあなたが読んでいるとき、私は死んでいるだろう。

 

 ここまで書いて、この遺書の始まり方がテンプレ過ぎないか?と思うが、遺書を書いていて私はこの文脈や書いている遺書自体に違和感を覚える。

 遺書とは家族や友人に死ぬ前に残すものではないだろうか?と。そこまで言えば、皆も私の置かれている状況を察してくれるだろう。そう、

 

 私は、死んだのだ。

 

 いつも通りに平和で、博麗神社で霊夢と他愛のない話をし、一緒に飯や酒を飲み食いして自宅に向かって箒で飛んでいた。

 そうしていた時、私はいきなり後ろから誰かに強く押された。いきなりのことで困惑して箒から手を放してしまい。私はそのまま箒を離れて落下した。魔力を使って空を飛ぼうとしたとき、私は地面にすごい速度で叩きつけられ、即死したのだ。

 それについての気持ちの整理も終わってはいないが、とりあえず遺書を書くためにほかの言葉を使おうと、紙から目を放して私が顔を上げると、自称神と名乗る“彼”と目が合った。厳密には、彼が着けている仮面の目とだが。

 真っ白で色鮮やかさはない物の、“彼”のその髪の毛は純白で何にも染まっておらず、語彙力の無い私はその髪を見て綺麗と言う表現以外が浮かんでこない。

 顔につけている仮面を“彼”が顎のあたりを持ち上げて仮面を外し、ガラスのように透明な素材でできている机の上に置き、再度、私を見る。

「…クスクス」

 彼も素顔は思っていた以上に人間で、アルビノのような赤い瞳と髪の毛を持っていて、病人のようにも見えなくはない。

 そう思っていた私と目が合った“彼”は口角の端っこをほんの少しだけ上げて、ニヤリと笑う。

「…なんだよ……何がおかしいっていうんだよ」

 文字を書いていたことで自分が死んでしまったという現実を突きつけられてしまい。私は瞳に溜まっていた涙がこぼれてしまう。

 ゆっくりと頬を流れ落ちる涙が顎のあたりで水滴となって落ちた。真下で遺書を書いていた紙に涙のしずくが落ちて紙を濡らし、その水気のせいでインクで書いていた文字が滲み、歪んだ。

「…いやいや、今まであって来た君とは違う反応だったから、意外と新鮮でね」

 “彼”はそういいながらも笑うのをやめず、ニコニコと笑っている。

 “彼”の他の君と言う言い草から、私がいた世界とは異なる。いわゆるパラレルワールドという世界が存在するのだと。こういう話は好きであるため、なんとなく察せた。

 後ろを見ると、大量に並んだドアが何の支えもなしに地面に立っていて、それが地平線のかなたまで続いている。もしかして、これが全てパラレルワールドだというのだろうか。

「…」

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 これが霊夢に届くかはわからないが、私は遺書を書きあげなければならないのだ。

「必死になって遺書を書いてるけど、もし…生きて帰らせてあげなくもない……僕がそう言ったら君はどうする?」

 “彼”がそう言ったとき、何かをひっかいているような独特な音を出させながら万年筆を走らせていた私の手の動きが止まった。

 私が紙に向けていた視線を“彼”に向けると、自分が提案した暗に私が興味を持ったのがうれしかったのか、なんだかはわからないが。予想通りと言いたげな“彼”は面白いおもちゃを手に入れた子供のように“彼”は笑みを浮かべた。

「……その話……嘘じゃあないよな?」

 こいつにかかわるとろくなことがないと私の頼りない感がそう言っている。でも、生き返らせてくれるのは願ってもいないチャンスと言える。

「…ああ、僕は嘘はつかないさ…でも、それには条件がある」

 やっぱり取引が来たかそう簡単には生き返らせてはくれないらしい。でも、自称神を名乗っている“彼”はおそらく本物の神だ。物理の法則さえもぶっちぎって私のことを生き返らせることができる奴が、こんなちっぽけな存在である私に何を求めるというのだろうか。

「お前は金に困っているわけじゃあないだろう?…そもそも、通貨という概念がこの世界に存在してないように見えるし……それに、欲しいものがあるわけでもない。……だから、私にはお前が満足できるようなものは持ってはいないぜ?」

 物々交換でもするのかと思い、そう言った私に“彼”はふっと鼻で軽く笑うと、どこからかコーヒーの入ったカップを二つ取り出し、私に片方を差し出してきた。

 私は差し出された受け皿とその上に乗っているカップを両手で落ちないように受け取り、書いていた遺書の横に置く。

 入れたてのコーヒーのように白い湯気がゆっくりと立ち上っていて、コーヒーのいい匂いが私の鼻孔を刺激する。

「金か、君の言う通り…この世界にはそんなものは存在しない。…作り出せないことはないけど、あっても使う場所も使うための物も存在しないわけだ……そして、それは君を助ける理由につながるわけさ」

 “彼”が回りくどく説明をはじめ、なんだかよくわからないことを話し始める。

「?…ぐだぐだ回りくどいことはいいから、早く説明してくんないか?」

「…君も神に向かってよくそんな口が利けるよね…その神経だけは見上げるよ……まあ、いいや…この場所は見た目通りで何もなくてね…人為的に音を出さなければ何の音も発生しないし、何かが生まれることもない。だから、君たちがいるような世界を眺めて暇をつぶすわけだけど、楽しそうなのを探すのも一苦労なんだよね」

 初めはぶつぶつと文句を言っていたが、また回りくどく説明をし始める。

「……まさか、一緒に暇つぶしをしろとか言うんじゃあないだろうな?」

 私が聞くと“彼”は小さく首を横に振り、手に取ったカップに口をつけて一口だけコーヒーを飲んだ。

 カチャッと陶器と陶器が合わさる甲高い音を出しながら、“彼”はカップを受け皿に乗せると私の言葉をすぐに否定した。

「そんなわけがないだろう?だって…もしそうなら、一生という時間をこの場所で過ごしてもらうことになるけど?」

 “彼”はゾッとするようなことを言い、ニコリと笑う。こんな何もなくてつまらない場所に一生なんて、暇すぎて死んでしまうだろう。

「…それは…こ、断らせてもらうぜ」

 貰ったコーヒーを飲もうとカップに目を向けると、黒色と茶色がわずかに混ざったような水面に、ひきつった私の顔が反射して見える。

 ミルクが入っておらず、透明度が少し低くなったコーヒーを飲むと、コーヒーの独特な香りが鼻から抜け、舌に砂糖の入っていないコーヒーの強い苦みを感じて私は眉をひそめてカップを受け皿に戻した。

「…それでだ、…君が生き返るための僕からの条件は、とある異変を解決してほしいんだ。僕の暇つぶしのためにね」

 “彼”はそう言いながら、またどこからか透明な入れ物を取り出し、机の上に静かに置いた。

 入れ物の中にたくさんの角砂糖が入っていて、ガラスでできた蓋を取って中から角砂糖をいくつか取り出してコーヒーの中に落とす。

「…異変?…あのな、お前は知らないだろうけど…私の世界では異変何とほとんど起きない。だから…私は異変の解決経験はほとんどないって言える…そんな私で異変を解決できるかわからないぞ?」

 私は角砂糖の入っている入れ物に手を伸ばしながら、“彼”に言うと、“彼”は静かに、そして淡々と私に告げた。

「…くたばったのならそれまでさ、そこで終わり」

 彼の冷たい言葉に、私の角砂糖を取ろうとした私の手の動きがぴたりと止まる。

「…っ」

 “彼”の視線を感じた私が角砂糖の入った入れ物に向けていた顔を“彼”の方向に向けると、光の無い瞳と目が合って私は小さく身震いして伸ばしていた手も引っ込めた。

「…?…別に驚くことじゃあないだろう?…生き返れるか生き返れないかは君次第であるわけで、生き返るためには試練がある。失敗したらそこで終わり、それはお約束だろう?……神話なんかでよくあるだろ?…神が英雄に向けて試練を出す、みたいな」

 そう呟く“彼”の表情からは何も読み取れず、私は手を引っ込めて縮こまったまま息をのんだ。平和ボケした私が思っている以上に、優しくない状況らしい。

「まあ、話を単純にするなら、…生き返るチャンスが欲しいのなら…そっちの扉に行くと良い」

 “彼”が扉がたくさん並んでいた方向を指さすと、たくさんの扉が並んでいる場所の一部の扉が左右に動いて道を作り、その先に扉が一つ現れた。

「…そして、チャンスはいらず…死にたいっていうのならそっちにいるアトモス君にあの世に連れて行ってもらうといいよ」

 “彼”はたくさんの扉が並んでいる方向とは逆方向を向き、数メートルはある巨大な門の方を見る。

「…」

 すると、ギギギ…っと鉄なのか木なのか、見た目では判断できない材質の扉がわずかに開き、その間から鋭い狼の目のようなものが見え、私の体がすくんでしまう。

「チャンスをつかむか、蹴るかは君の自由だ…でも、やるかやらないかは今決めてくれ」

 “彼”はそういって完璧に蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっている私を見て、小さくため息をつく。

「…まったく、ヘタレだねぇ……アトモス君…少しの間、君は下がっていてくれないか?」

 “彼”がそう言うと鋭い目つきで暗闇に浮かんだ眼球が扉から離れて行き、アトモス君が離れた扉もゆっくりと静かに閉じてアトモス君との視線が途切れた。

「…君に、やるかやらないかは…聞くまでもないみたいだね…多少の葛藤はあるみたいだけど、やるんだろう?」

「…ああ…当り前だ。あいつの場所に行くなんて、怖すぎて私にはできん…それにやり残したことが多すぎてまだ死ぬわけにはいかないぜ」

 アトモス君が消えて行き、閉じられた巨大な門を見つめながら私は言った。もしかしたら、また異変で死ぬかもしれない。でも、チャンスがあるならそれにすがりたい。

 私は覚悟を決めて、“彼”の条件を飲んだ。

 




始めましたの人は初めまして、また読んでくださった方ならばお久しぶりです。
すみません。一度これがやってみたかったんです。

今作の魔理沙は他のバトル漫画のようにめちゃくちゃ察しが良いわけではなかったり、めちゃんこ強いわけでもありません。
申し訳程度に原作要素を多少含んだ弱い魔理沙です。

もしかしたら投稿が遅れるかもしれないですが、気が向いたら次も見てやってください。

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