生命の唄~Beast Roar~ 作:一本歯下駄
『うん? アチキはヒヅチをどうにかして助けるさネ』
『……助ける?』
『そうさネ。きっとヒヅチがアチキを襲ったのには訳があるさネ』
『…………はぁ、僕は逃げるけど良いよね?』
『構わないさネ。あ、酒いるさネ? 礼にやるさネ』
『……はぁ、一応貰っておくよ。ありがとう』
『こっちこそありがとうさネ。おかげて助かったさネ』
『……行ったか。彼女、ホオヅキって危ない奴って聞いてたけど割とまともな人そうだったな。あの様子なら化け物染みた強さを除けばナイアルなんかよりよっぽどいい人じゃないか。…………しかしヒヅチ・ハバリねぇ……彼女の名前は
衣類店の前、グレースは内心溜息を零しつつも呟く。
「そりゃあ、四人中三人が獣人なら行く店は獣人用になるか……」
グレースがヒューマンである以外、カエデが
元々の目的がカエデの衣類購入であると言う点からしても間違った選択ではない。
「まぁ良いか」
「どうしたんですか?」
「なんでもないわよ」
グレースの溜息に気付いたカエデが問いかけるが、グレースは肩を竦めて誤魔化す。
そんな二人を気にした様子も無く、ペコラとアリソンがさっさと店内に入って行ってしまう。カエデも続いて中に入ろうとして店先で佇むグレースを振り返った。
「行かないんですか?」
「うん? あぁ、今行くわ」
この店で服は買わないけど。そんな事を内心呟きながらグレースは後に続く。
北のメインストリートはギルドの関係者が住まう高級住宅街も近隣に位置しており、商店街として活気付いている。またメインストリート界隈は服飾関係で有名であり、各種族用の衣類を取り扱う専門店も軒を連ねている。
そんな獣人用衣類専門店の内部には色とりどりの衣類が各獣人用に区画分けされ、マネキンに展示されている。
「これ……なんですか? 人形……? 首が……」
首の無いマネキンが衣類を着ていると言う奇抜な環境に驚いて尻尾を丸めているカエデの肩を叩いてグレースは適当に近くのマネキンの衣類の前にカエデを放り出した。
「これ、展示用のマネキンよ。ほら、この衣類を着たらどう見えるかを示すもんよ」
「……首が無くて不気味です」
色とりどりの布地に包まれた白塗りの人形に若干脅えた様子のカエデにグレースは肩を竦めた。
モンスターの方がよっぽど怖いではないか。動きもしない人形ごときに脅えちゃってまぁ。そんな感想を心の中で呟きつつも先に店舗に入ったアリソンとペコラを探せば、直ぐ近くの幼い狼人用の衣類コーナーでああでもないこうでもないと二人して色々と探し回っているのを見つけた。
「これとか似合いそうじゃないですか?」
「私はこっちが良いと思うですが」
アリソンが手に持っているのは薄紫色のミディスカートに淡いピンク色のスモック・ブラウス。パステルカラーで明るめの印象を持たせつつ、可愛らしさを前面に出すコーディネイトだろう。
対してペコラが手に持っているのは黒のスラックスと妙な形のセーター。
「……何ですかそれ?」
「ふふぅん。童貞を殺すセーターです」
ドヤ顔で胸を張ったペコラの後頭部にグレースの拳が突き刺さる。
「うん? 何かしましたか?」
「あのさ、アンタカエデになんてもん着せようとしてんのよ。つか何よそれ」
大きく背中を露出したベアバックのセーターであるが、脇まで露出するような過激なデザインになっている。横から覗いたら胸が見えるのではないかと言う程だ。
「つか、誰よ子供用のこんなもん作ったアホは」
「ロキですよ?」
「はぁ?」
「いや、ですからロキが作りました」
ペコラの言葉にグレースが眉を顰める。そんなグレースに対してペコラがその服のタグを見せつける。
『神ロキ監修、童貞殺しのセーター』そんな風に記されたそれを見てグレースは無言でペコラの手からその服を奪い取って棚に戻す。
「ダメに決まってんでしょ」
「何を言うですか。アイズさんも近々このデザインの服を着る事が決まってるですよ」
「えぇ……?」
ペコラの言葉に信じられないとグレースが眉を寄せるが、ペコラは肩を竦めた。
「だってこれ、アイズさんの為にデザインしたものらしいですし」
「なんでそれが此処で売ってんのよ」
「そりゃぁデザインを売ってデザイン料でお小遣いをこっそりと増やしてるんですよ」
なんでペコラがそんな事まで知っているのか。そんな疑問が脳裏を過ぎるがグレースは溜息を零してから疑問を飲み込んだ。知らない方が良い事もある。
「カエデに着せようとするんじゃなくて、あんたが着なさいよ」
「ペコラさんも何度か着ましたが、これ寒いんですよね」
ペコラの恰好は白いセータートップスにホットパンツ、黒いハイソックスと言う上半身が着ぶくれした様な恰好をしている。寒さが苦手と言いつつ
「それよりもペコラさん的にはグレースちゃんこそあの童貞殺しを着るべきですよ」
「着ないわよ」
「でもぴったりじゃないですか。グレースちゃんアマゾネスですよね?」
グレースの眉が思いっきり顰められ、笑顔のペコラの顔を見て溜息を零した。
「あたしはヒューマンであってアマゾネスじゃないわよ」
習得スキル、普段の戦い方、言動。どれをとってもアマゾネスによく似ていると言われるグレースだが、アマゾネスではない。アマゾネスの様に下着同然の姿で街中を闊歩出来る程、羞恥心は捨て去っていないのだ。異性に肌を晒しても気にしない種族と一緒にしないで欲しい。
「って、そう言えばカエデは何処に……あぁ、もう着せ替え人形か……」
「おぉー、可愛く着飾ってますねぇ」
ふとカエデの様子が気になったグレースがカエデの姿を探せば、試着室の前で衣類を積み上げてあれやこれやとカエデを着せ替え人形にしているアリソンの姿を見つけて同情の視線をカエデに送る。
試着室で何度も着替えて若干疲れ始めているらしいカエデが、視線で助けを求めてきているがグレースはそっと視線を逸らして――ペコラと目があった。なんでかいくつかの衣類を手に持っている。
「何?」
「グレースちゃんもお着替えしませんか?」
「いや、しないけど――ちょっと放しなさいよ」
腕を掴まれて引きずられていくグレース。カエデが助けが来たのかと一瞬期待の眼差しをグレースに向けるも、グレースがペコラによって試着室に押し込まれたのを見て一瞬で目から光が消える。同時にアリソンから差し出された次の衣類を手に持ってカエデは溜息を飲み込んで試着室のカーテンを閉じた。
オラリオの
「グレースさん、似合ってますよ」
「あんたもよ、凄く似合ってるわ」
淡いグレーの長いフィッシュテールスカートに薄い赤色のブラウス、アイボリーのストールと言う一見何処か良い所のお嬢様を思わせるカエデ。
対するグレースは何故か騎士用の制服を身に着けている。腰には丁重に儀礼用のレイピアまで身に着け、一見お嬢様とその護衛の騎士を彷彿とさせる二人。
夢中で服選びを始めたアリソンと、悪乗りがキマったペコラの二人に着せられた衣類にグレースは眉を顰めて文句を言おうとしてやめた。きっと言っても無駄だから。文句の代りに溜息を零して身を起こす。
「遅いわねあの二人」
「そうですね」
ぼんやりと空を見上げながら呟かれたカエデの言葉に、グレースは眉を顰めてからカエデの肩を掴んで自分の方を向かせてから頬をつねる。
「いふぁいれふ」
「あんた、さっき似合うって言ったわよね? あたしに似合うって」
「いいふぁふぃふぁ」
男物の騎士服を着せられて似合うと言われても女としてまったく喜べない。ただ目つきの鋭さだけでなく、凛とした雰囲気を持つグレースに対し、騎士服は世辞でもなんでもなくよく似合っていた。それが非常に悔しい訳だが。
「あの二人は全く……」
カエデの頬から手を離してグレースは重くなってしまった腰を上げ、立ち上がって大きく伸びをする。
「んーっ……ふぅ」
アリソンとペコラの着せ替え人形として疲れ切った二人だけ先に抜け出してきたが、どうにもあの二人のノリにはついていけそうにない。そんな風に考えるグレースは周囲を見回し、目についたオープンテラスの喫茶店を見つけてカエデの方を向いた。
「あんた少しは動けそう?」
「……もう着替えるのは嫌です」
「着替えじゃなくてあの喫茶店行くのよ」
喫茶店と言う言葉にカエデが首を傾げたのを見て、田舎者よりも知識が薄そうだなと考えつつもカエデの首根っこを掴んで持ち上げる。
「あの、自分で歩けます」
「あっそう、じゃあ早く行くわよ」
カエデの言葉にグレースはぱっとカエデを放して喫茶店の方に向かい、カエデがその後に続く。どうせ今も衣類選びに夢中になってる二人なら、無駄に長い耳とよくきく鼻ですぐ此方を見つける事だろう。
オープンテラスの素敵な喫茶店の二階、人が少ないその場所から下を歩いている冒険者などを眺めつつグレースはティースプーンでぐるぐるとコーヒーを混ぜている。
対面の席に座ったカエデは黒い液体を見て、臭いを嗅いで若干涙目になっている。それを横目に見たグレースが眉を顰めた。
「あんた何してんの?」
「凄く苦そうです……」
臭いだけで味を想像したのだろう。震えながら口をつけようとしているカエデにグレースは溜息を零した。
「苦手なら砂糖でもいれりゃいいでしょ。なんならミルクもつける?」
「でも砂糖って高いんじゃ……」
砂糖ぐらいでいちいち驚いていては身が持たないだろうに、そんな風に吐息を零してグレースはカエデのコーヒーに砂糖をたっぷり入れてミルクも多めに入れてやる。甘ったるいぐらいになってしまっただろうが子供の舌にはそれでも苦さがきついのではないかとグレースがカエデの様子を眺める。
「……甘い……」
そりゃあ砂糖三杯も入れれば甘くもなる。そう内心呟きながら舐める様にコーヒー風味の砂糖湯を飲み始めたカエデから視線を外して大通りを眺める。
今日も今日とて数多くの冒険者がダンジョンに挑んでいる訳だが、あの内の何割が不幸にも命を落とす事になるのだろうか。そんな考えをしつつも人の流れを眺めていると、ふとグレースは見覚えのある姿を見つけて呟いた。
「ロキじゃない」
「ロキ様ですか?」
グレースの視線の先、ドレスなんて着てめかし込んだロキがお供としてフィンを引き連れて何処かに向かっているのが見えた。
「本当だ……なんか神様が一杯ですね」
カエデの率直な感想を聞いて、グレースは人の流れをもう一度ざっと眺め直す。確かに神の多い事。どの神もドレスやタキシード等、ぴっしり着込んで着飾っている者ばかりである。
どっかのファミリアが各ファミリアを招いてのパーティーでもするのであろう。
「にしてもあの二人おっそいわね」
「そうですねぇ」
ほっこりとコーヒーを舐めるカエデの方を一度見てから、グレースは人混みの中のロキの頭を眺める。目立つ緋色の髪が見えなくなるまで。
神ガネーシャ主催の『フライングガネーシャ三号機完成記念パーティー』の会場にて、ロキはグラスを片手にあっちこっちをうろついていた。
「居らんなぁ」
「ロキ、見つかったかい?」
同じく、グラスを片手ににこやかな笑みを浮かべたフィンに対してロキは肩を竦めた。
「まあ、居らんでも不思議やないしな」
ロキが探しているのは美の女神フレイヤである。かの女神がカエデに最上位の魔導書を送ったので
元々余り人前に姿を見せる神ではないので不思議ではないが、今回のパーティーに出席している確率は低そうだと考えつつももしかしたらを考えて出席したのだがやはり当てが外れた様だ。
「どうする? もう帰るかい?」
「いや、飲めるだけ飲んでくわ」
美味い飯に美味い酒、ただ飯ただ酒が味わえるこの状況。目的は達成できなかったがそのまま帰るなんてとんでもない。近くにきたボーイから新しくグラスを受け取って飲み干したロキの様子にフィンは苦笑を浮かべる。
「ほどほどにね。リヴェリアに怒られても僕は知らないよ」
「フィンも飲めばええやん」
「僕は遠慮しておくよ……こんな所で酔ったら何をされるかわからないしね」
招かれた客として一杯は振る舞われた酒を口にするが、それ以上は口にしないと言い切ったフィンに対してロキはつまらなそうに唇を尖らせた。
フィンが酒を飲まない理由ぐらいは察せられるがそれはそれでつまらない。
「あら、ロキじゃない」
「おーヘファイストスやん。あんたもきてたんか」
そんな風に話し込んでいる二人に、鍛冶神であるヘファイストスが声をかけてきた。深紅のドレスに身を包んだヘファイストスは軽くグラスを持ち上げる。ロキも答える様にグラスを上げ、フィンは軽く目礼を返す。
ヘファイストスは二人の様子を軽く流し見てから口を開いた。
「ロキ、丁度いい所に居たわね」
「なんやウチに何か用があるんか?」
ロキの言葉にヘファイストスが神妙な表情を浮かべて会場の隅の方を指し示す。そんなヘファイストスの様子を見てロキは一つ頷いた。
会場の隅、パーティーに疲れた神々や神の連れの眷属等が座って休憩するスペースの一角、周囲から目立たない様にされた一角にてロキはさっそくと言わんばかりに口を開いた。
「んで? ウチに何の用なんや? カエデたんの事か?」
ロキの質問にヘファイストスはゆっくりと視線を伏せて考え込んでから口を開いた。
「いいえ、カエデの事ではないわ」
カエデの事ではない。その返答を聞いたロキは眉を顰める。
カエデは元ヘファイストス・ファミリアの眷属【
「んじゃ何の用なん?」
「…………」
迷う様に口を開きかけて閉じて、そして再度開こうとして閉じる。何らかの葛藤を見せるヘファイストスの様子にロキはにやりと笑みを浮かべた。
「なんや、好きな人でもできたんか?」
おどけた様子のロキを見て、ヘファイストスは気が抜けたのか呆れの表情を浮かべてから口を開いた。
「違うわよ。ホオヅキについて聞きたかったの」
「ホオヅキ? ホオヅキがどうしたん?」
ホオヅキと言えば、ギルドで大暴れして以降姿を見せずに何処かに行ってしまっている。とは言え元々【ロキ・ファミリア】の眷属ではないので、ロキも何処で何をしているのか詳しく知っている訳ではない。
酒好きのロキに対して酒を売り込む形で知り合いになった程度で、時折珍しい酒を持ってきたり世間話をすると称して酒盛りしたりしていた間柄の人物である。
最後にロキがホオヅキと会ったのは一ヶ月近く前、カエデが
「彼女、今どうしてるかしら?」
「知らんで」
仇討の為に動いていると言うのはなんとなくわかるが、ではどうしてるのかと言えばロキは知らない。あまり興味も無いし胸糞悪い話をわざわざ思い出すなんて事はしないのだが。
「なんでホオヅキの事なんて知りたがるん? なんや酒でも欲しいんか? せやったらウチが何本か分けたってもええで」
最後にホオヅキから頼まれた依頼と言うかお願いにて、ホオヅキは【イシュタル・ファミリア】とのいざこざでオラリオの外に追放されたファミリアの行方をロキに尋ねてきた。理由は『故郷を焼いた奴らが多分ソイツらだから』と割と勘で動いていたみたいだが。
そのお願いの対価としてホオヅキは、自らが集めた酒類の詰った専用の木箱をそっくりそのまま、ロキに差し出すと言いだしたのだ。お願い自体は全く以てホオヅキの求める情報は出せなかったが、礼は貰った。と言うかホオヅキがロキの部屋に木箱を投げ出していったので貰ってしまったのだ。
酒が欲しいのならそこから何本か分けてやってもいい。そんなロキに対してヘファイストスは溜息を零した。
「違うわ、お酒の話じゃなくて……ちょっと困った事になったのよね」
「困った事?」
本当に困ったと言う様に溜息を零したヘファイストスの様子にロキはグラスを置いてから薄目を開けてヘファイストスを見据える。
「どしたん?」
先程まで十分に苦悩を見せたヘファイストスは今度はすんなりと口を開いた。
「カエデの故郷についてよ」
「なんや結局カエデたんの事についてやん」
カエデの事についてではないか。そんな風に呆れ顔を浮かべたロキに対して、ヘファイストスは目を細めて口を開いた。
「ロキはカエデの故郷についてどこまで知っているのかしら?」
「何処までって、カエデたんを辛い目に遭わせとった奴等やろ?」
ヒヅチ・ハバリが居なければどうなっていたか。グラスを傾けたロキに対してヘファイストスは目を細めてロキを見据えたままの姿で吐息を零した。
「じゃあ、今カエデの故郷がどうなっているのか知らないのね?」
「知らんなぁ」
知りたくもない。カエデも故郷について口にしたい訳でもないだろうし、わざわざ傷口を抉る真似なんてしない。そんなロキの様子にヘファイストスは俯いてから口を開いた。
「カエデの故郷、セオロの密林の中の村」
「せやね」
「
ヘファイストスの言葉にロキは目を細める。どういう事かと促せば、ヘファイストスは事情を説明し始めた。
「私の眷属、オラリオの外にある鉄鉱山から仕入れの為の取引に行ってるのは知ってるわよね?」
オラリオのダンジョンからも豊富な鉱物資源が手に入るが、純粋な鉄鉱石等はダンジョンから採取できる分では全く足りない。と言うよりはダンジョンでの鉄鉱石採掘はモンスターの危険と持ち運べる量、そして鉄鉱石の相場から考えて儲けが少なすぎて鉄鉱石をダンジョンで採掘する者は全くいない。鉄鉱石を持って帰ってくるぐらいなら他の
故に【ヘファイストス・ファミリア】が鍛冶で使用する鉄、その鉄の原材料である鉄鉱石は主にオラリオの外の鉱山から仕入れているのだ。
その仕入れの為にオラリオの外に対して数人の眷属を派遣しているのはどのファミリアも知っている。
「その
お願いの内容は居たってシンプル。【
過去のとは言え、オラリオで有名だった鍛冶師を訪ねると言う事で眷属達の間でそれなりに揉め事もあったが、結果として取引の終了後、【ヘファイストス・ファミリア】の眷属数人がツツジ・シャクヤクの住まう村へと訪ねて行く事になった。
「セオロの密林の中、村を探し回ったわ。見付からなかったけど」
オラリオから真っ直ぐ東に進んだ先に連なったアルブ山脈、その麓に広がる大森林であり、遥か古代、太古の時代にダンジョンから溢れ出たモンスターの一部が密かに生息するセオロの密林。危険度は比較的高く普通なら近づこう等と考える事のない大森林の中。黒毛の狼人達の住まう村があるはずなのだ。しかし、見つからなかった。
「正確には
「探せる範囲?」
顎に手を当てて考えるロキに対してヘファイストスはとあるファミリアの名を呟いた。
「【デメテル・ファミリア】」
「……!」
その一言を聞いてロキはヘファイストスの顔を見据える。
気が付いた。と言うよりは思い出した、が正解であろう。
セオロの密林、古代の時代から人の手があまり加わらず、原生の植物とダンジョンから抜け出したモンスターの住まうその密林には、珍しい植物が自生している。その植物の採取、保護を目的として【デメテル・ファミリア】が採取地としてセオロの密林の一角を占有しているのだ。
今回、【ヘファイストス・ファミリア】の眷属が探索を行った範囲は【デメテル・ファミリア】の採取地以外のセオロの密林の奥地に至るまで、調べられる範囲は全て調べた。
その上でツツジ・シャクヤクが、黒毛の狼人達が住まうはずの村を見つからなかった。
「……採取地は調べんかったん? バレへんかったら問題無いやろ」
悪神らしいロキの言葉にヘファイストスは首を横に振った。
「【恵比寿・ファミリア】の団員が傭兵まで雇って封鎖してたわ。入ってたら【デメテル・ファミリア】と【恵比寿・ファミリア】、二つのファミリアと敵対してたわね」
その言葉にロキは思いっきり眉を顰める。
デメテルはセオロの密林にある【デメテル・ファミリア】の採取地を荒した者達の捜索の為に【恵比寿・ファミリア】の団員と雇った傭兵達と協力し合っているのだろう。
タイミングが悪かったとしか言いようがない。
しかし、【デメテル・ファミリア】の採取地の中に村があるとも思えない。
「カエデがどこか別の場所と勘違いしてる可能性はあるかしら?」
「それは無いわ」
カエデの記憶能力の高さに舌を巻く程だったのだ。間違えると言う事も無いしオラリオとその周辺地図を見てこっちから来たとセオロの密林をしっかり指し示す事が出来ていたし間違いは無い。
「どういうこっちゃ」
「私にもわからないわ」
【恵比寿・ファミリア】の主神、恵比寿か、【デメテル・ファミリア】の主神、デメテルに話が聞きたい所ではあるが、二人ともオラリオに不在であり話を聞けない。
どうするか二人して悩んでから、ロキはふと顔を上げてヘファイストスに質問を投げかける。
「ちゅーかなんで急にカエデたんの故郷について調べよう思ったん?」
「……ツツジから手紙が届いたのよ」
困った様な表情のヘファイストスの様子にロキは首を傾げる。そんなロキを見てヘファイストスは軽く溜息を零してから肩を竦めた。
「ツツジが近いうちにオラリオに来るって……でも全く来る気配が無いのよ。だから気になったの」
「ほぉー……」
ツツジがカエデの父親である。その事を知るロキは少し考えてから肩を竦めた。
「まぁ、ツツジっちゅーんがどんな奴かは知らんけど。もしオラリオ訪ねてきたらウチにも教えてな」
「貴女、手伝ってくれないのかしら?」
「悪いんやけどむしろこっちが手ぇ借りたいっちゅーねん。あの色ボケがカエデたん狙っとって手一杯やし」
ロキの言葉にショックを受けた様子のヘファイストスだったが、ロキの続きの言葉を聞いて納得した様に頷いて溜息を零した。
「そう、じゃあツツジに関しては私でなんとかするわ……その代り」
「カエデたんに関しては任せてくれてええで。何が何でも守り抜いたるわ」
それは頼もしいわね、そんな風にヘファイストスは苦笑を浮かべた。
ホオヅキ、諦め悪くヒヅチの元へ。死亡フラグびんびんですね。
ショタっ子
思った事と言うか本編とは関係ないけどアルスフェアくんの愛称が『アル』で、ナイアルの愛称も『アル』(ナイ
童貞を殺すセーター、背中を見せるんじゃなくて脇までしっかり見せるあのデザインの方。アイズさんの衣装ってそんな感じだったよね。
露出の激しい衣装を皆好むよねぇ。まぁ肌色多い方がアニメ映えするんかねぇ。もっとこう、ペコラさんみたいに着込んでもこもこしてるぐらいの方が好きなんだけどなぁ。