生命の唄~Beast Roar~   作:一本歯下駄

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 ワタシだけの言葉。

「ワタシは絶対に死なない(諦めない)、全身全霊を賭けて生きる(足掻く)のだ」



『凶狼(ヴァナルガンド)』

 レベル4の冒険者【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガは屋根の上から今日の入団試験の様子を見るともなしに眺めていた。

 

 別に何もしていない訳ではなく、鍛錬を行っていた合間になんでもない風を装っての観察である。

 

 本来なら【ロキ・ファミリア】の保有する鍛錬所で鍛錬を行っているはずなのだが、今日は入団試験に使用している為、屋根の上という不安定な足場での鍛錬を行っていた。

 

 そんなおりに眺めた入団試験を見て、ベートは怒りを堪えるので精一杯だった。

 

 何がと言えば、今回の入団試験の志望者の質の悪さである。

 

 期待していた訳ではないにしろ、新しい仲間になるかもしれないので見ておこう程度ではあったが、酷い。

 

 剣を突き付けて勝利宣言。

 

 剣を弾き飛ばしで勝利宣言。

 

 動きはファルナの無い一般人程度。

 

 鍛えているのではあろうが、そんな鍛えた一般人程度が剣を突き付けて勝利宣言しているのを見るとイライラが募る。

 

 勝ったつもりなのか? と

 

 ベート・ローガであったのなら剣を突き付けられていようと、相手が喉を掻き斬る前に反撃を叩きこんで黙らせるだろう。

 

 それに、フィンは先程から片手で剣を持ち、なおかつ攻撃が受け止められたり攻撃を防ぐと大業に仰け反る等、ありえない挙動をしている。

 

 当然、鍛えた一般人程度の防御等、あって無い様なモノとばかりに叩き潰せるし、攻撃されてもびくともしないどころか、直撃しても問題は無いだろう。

 

 それが理解できていない。それに待機列から聞こえる「レベル6って大したこと無いんだな」と言う言葉が聞こえ、ベートはそんなふざけた事を抜かした者を屋根の上から殺気を出して睨むが、気付きもせずへらへら笑っている。

 

 募る苛立ちを紛らわす為に鍛錬の続きを行おうと剣に手をかけたのと次の試験者が出てきたのはほぼ同時で、ベートは出てきた人物を見て目を疑った。

 

「汚ねぇガキじゃねぇか」

 

 あまりにもみすぼらしい浮浪者の様な姿。

 

 屋根の上から見た限りでは、顔も拝めず伸び放題汚れ放題の髪は薄汚れていて、唯一解るのは同じウェアウルフである事ぐらい。

 それも尻尾がキャットピープルらしくないからという消去法からである為、正直言えば自信を持ってウェアウルフだと断言できない。

 

「はぁ」

 

 最後の一人になりロキが完全にやる気をなくしているのを見て名前を覚える必要も無いなと今までの試験者同様に名前を頭から消し去り、ベートは今度こそ剣を抜き放ち振るい始めた。

 

 

 

 

 

 響いた金属音にベートは動きを止め、下を見下ろす。

 そこで初めて下の浮浪者の様なガキから放たれる剣気を感じた。

 

 一撃目は金属同士を擦り合わせる不快な音。

 

 二撃目は鈍い金属同士を打ち合わせた音。

 

 どちらも今回の入団試験の中で初めて聞いた音だった。

 

 大体の場合、フィンが攻撃をしても軽い金属音しか響かず。相手が攻撃した場合はまともな打撃音もせずにフィンが自ら大業な仕草で仰け反るので剣撃音が響かないのだ。

 

 それなのに響いた音にベートはじっと試験者、浮浪者の様なガキを見る。

 

「強い」

「キミも、なかなかやるようだね」

「師匠のおかげ」

 

 短いやり取り。

 

 驚きに声を失った。

 

「フィンが褒めた……」

 

 今回の入団試験、フィンは一度も試験者を褒める言葉を口にしていない。

 何故なら褒めるまでも無い様な稚拙な者達ばかりだったからだ。

 

 そんなフィンが、初めて試験者を褒める言葉を口にした、それも見た目だけで言えば今までの試験者の中で一番()()試験者相手にだ。

 

 そんな中、ガキは構えを変えた。

 

 正眼の構えから上段の構えに。

 

 ベートはさらに息を呑んだ。

 

 切っ先を振るわせる事無くフィンに突き付け、構えをとる。

 

 その人物から放たれる剣気は、拙くもベートの憧れの少女と重なるモノだった。

 

「なっ!?」

 

 その上、構えを変えた相手に合わせ、フィンも構えを変えた。

 変えたと言っても、片手で軽く握っていた模擬剣を、両手で()()()()()持っただけに過ぎない。

 

 それでも、今までの試験者相手に手を抜き続けたフィン・ディムナが初めて()()で相手取るのだと理解でき、ベートは薄汚れたガキの一挙一動を見逃すまいと剣を手にしたまま見据える。

 

 集中していたらしいその人物は、まるで滑る様に、レベル4となり、目も耳も一般人に比べて優れているベートですら微かにしか聞こえない摺り足の音、そして一般人にしては速いその足さばき。

 

 一瞬の内に、フィンを剣の範囲に収め、上段のまま真上からフィンを叩き斬らんと振り下される一撃は雷光にも似た一閃で、ベートはその一閃がフィンの持つ剣に受け止められる様を一瞬たりとも見逃す事無く見ていた。

 

「チッ」

 

 一瞬、ベートの目に偶然にも見えたそれに思わず舌打ちをし、ベートは剣閃の行く末を追う。

 

 

 予想通り、ガキが持っていた使()()()()()模擬剣は音を立てて折れた。

 

 最後の一瞬、振り上げられた剣の根元に走る罅に気付いたベートはこれまでの試験者に対して以上に、あの子供に使い古した剣を手渡したであろう【ロキ・ファミリア】の団員に対して苛立ちを覚えた。

 

 きっと、いや、確実に。

 

 あの子供が手にしていた剣が新品ならフィンを唸らせる一撃だったのだろう。

 

 剣が折れた事に双方驚き、フィンは困ったように笑みを浮かべて口を開いた。

 

「うん、今のは良かったよ」

 

 折れた剣を見て、子供は頭を下げ、フィンに剣を手渡して列に戻っていく。

 

 ベートは列に戻った子供をじっと、見つめ続けた。

 

 

 ベートはフィン達が試験者を残して離れて行ったのに違和感を感じながらも、試験者達の中に居る薄汚れた子供を見ていたベートは、他の試験者がその子供を嗤っているのを見て屋根の上から飛び降りてその試験者を叩きのめそうかと本気で考えていた。

 

「あのガキ、剣折りやがったぜ」

「だっせぇ、薄汚れてる上に剣まで折っちまってよぉ、どぉやって弁償すんだ?」

「やれもしない癖に無茶して借金背負ってもう人生詰んでんじゃねぇのか」

 ゲラゲラ

 

 下品に嗤うそいつらに殺気を向けながらも、ベートはその子供を見ていた。

 

 周りの嘲笑を一切意に介す事無く瞑想し、腰にさげた薄汚れた鉈の様な刀の柄に手をかけている。

 

 じっと見ていたベートだけが気付いたのだろう。

 

 その子供の口元が微かに動いていた。

 

 音に出ていた訳ではない、だがベートの目にとまり、はっきりと感じた。

 

 『ワタシはもっと剣閃を極めたい』

 

 強さを求めるその子供の姿が。

 

 

 その子供が顔を上げた。気付かれたのかと慌てて屋根の淵に身を潜めるとフィンの声が聞こえてきた。

 

「だいぶ待たせてしまって申し訳ない。幾人か素晴らしい子が居て会議が長引いてしまってね」

 

 ベートに気付いた訳ではなく、フィンに気付いたのだろう。

 

 誰に聞かせるわけでもなく咳払いと共に立ち上がり、もう一度見下ろし、目を細める。

 

「それで、急にで申し訳ないけれど、面談も行う事になったんだ」

 

「面談?」「なんだそれ?」「はぁ? 聞いてねぇぞそんなの」

 

「本当に申し訳ないんだけどね、神の決定だから文句があるなら帰って貰っても構わないよ」

 

 フィンの突き放す様な言い方は、間違いなくその試験者をもう既に居ないものとして扱っている。

 

「それじゃ、面談を始めるんだけど、面談に関しては順番を変えようと思うんだ。と言うわけで83番、カエデ・ハバリくんから前に出てくれるかな? この場で面談をするから」

 

 フィン達の意図を察したベートは黙る。

 

 薄汚れた浮浪者の様な子供、カエデ・ハバリというらしいその子は背筋を伸ばしたままフィン達の前に出る。

 その際、他の試験者が鼻で嗤ったりしているが、一切気にしていない様子だ。

 

「うっし、カエデたんやな? ウチは【ロキ・ファミリア】の主神のロキや。気軽にロキたんって呼んでえぇで」

 

 前に出たカエデに対し、ロキが前に出てにこやかに話しかける。

 

「ロキ()()()、よろしくお願いします」

 

 思わず吹き出しそうになり、ベートは尻尾を震わせた。

 

 『~()()』と言うのは神々が子供を呼ぶ時等に使うモノで、意味はよく知らないが敬称の様なモノだと聞いた。

 つまりは「ロキさまさま」と呼んでいる様なモノである。

 

 ロキが軽く頭を掻きながら何かを言おうとしてやめ、続きを口にする。

 

「あ~、まあええわ。んでカエデたん。オラリオに何しに来たのか教えてもらってええか?」

 

「ファルナを得て、ランクアップするために来ました」

 

 カエデはその問いかけに即答して見せた。

 

 それ以外に言葉は無いとばかりに。

 

 

「次の質問や、何のためにランクアップ目指すん? 名声とかか?」

 

「ワタシの少ない残りの命を延ばす為です」

 

 今、カエデは何と言ったのだろうか?

 

 『()()()()()()()()()()()

 

 意味を理解して、先程感じた違和感の正体に気付いたベートは震えた。

 

 フィンが褒めたのだ。あの83人の試験者の中でたった一人。

 

 フィンがしっかりと構えたのだ。あの83人の試験者の中でたった一人。

 

 フィンが本気で攻撃を受け止めたのだ。あの83人の試験者の中でたった一人。

 

 違和感の理由。

 

 あの場で即座に入団を認められなかった事に対してだ。

 

 薄汚れて浮浪者の様に見える事など、あの剣技と剣気があれば関係ないのに、フィンは話し合いの為にロキ達と共に離れたのだ。

 

 つまり、ロキ達が話し合ったそれは、つまりそういう事なのだろう。

 

 『入団させるか否か』ではなく『どうやって拒否するか』を。

 

「慈悲の女神がやっとるファミリアがあるんやけど、そっちに行けば死ぬまで面倒見て貰えるで? なんもせずにゆっくり余生過ごせる所や。ファルナもちゃんと貰えるし、そっち行かへんのか?」

 

 ベートはロキのその言葉にふざけるなと口にしそうになり、やめた。

 

 ベートは時間の許す限り強さを目指すだろう。

 

 そして、カエデも強さを目指していた。

 

 ベートには時間がある。カエデには、きっと時間がない。

 

 ベートが何かを言う事はできなかった。

 

 他の試験者に嗤われながらも、カエデは真剣な声色で口を開いた。

 

 

『ロキたん様、一つ、質問よろしいでしょうか』

 

 ぞっとする様な、冷めきったその言葉にベートは今一度カエデを見つめる。

 

『……神は、人が死ぬのは何時だと思いますか?』

 

 自ら噛み締める様に呟く様に放たれた言葉に、ベートはただ剣の柄を強く握りしめた。

 

『……師は言いました』

 

 

 

 

 カエデの口から語られたカエデの『師』と言う人物の人生観。

 

 そして紡がれるカエデ・ハバリが持つ強い意志を宿した言葉。

 

『ワタシにとって、死とは諦める事、生きるとは足掻く事』

 

『人が死ぬ時、それは諦めた時』

 

 その通りだ、諦めた奴に価値なんてない。

 

 そして、強く、強く吼える様に、カエデは咆哮する。

 

『ワタシは一年と少しで死ぬ。何かがなければ、一年と少しで死ぬ』

 

 一年と少し、普通に冒険者をするのであればランクアップには二年かかる。

 最短ランクアップ記録ではベートの憧れの少女が一年という短い期間でランクアップを果たしている。不可能ではない。

 

『けれど、()()があった!!』

神の奇跡(ファルナ)があった!!』

 

 きっと、ファルナが無くてもカエデは諦めないのだろう、何かしらの手段を探すのだろう。

 

『神の奇跡を手に入れ!! ランクアップすればまだ生きていられる!!』

『神の奇跡を手に入れ!! ランクアップする!! ワタシはソレを成すんだ!!』

 

 自らの胸に手をあて、カエデ・ハバリは遠吠えの如くロキに吼える。

 

『ワタシの心臓はまだ音を奏でている!! ワタシはまだ動ける!!』

 

 びりびりと、屋根の上から見下ろしているベートの心すらも痺れさせるほどの声量で、ロキに吼える。

 

『師は言った!! 『生きろ(足掻け)』と!!』

『師は言った!! 『死ぬな(諦めるな)』と!!』

『ワタシは生きる(足掻く)のだ!!』

『ワタシは絶対に死な(諦め)ない!!」

 

 強い言葉に、ベートは震え、見据え、認めた。

 

『だから、ワタシに神の奇跡(ファルナ)を!!!!』

『今一度、生きる(足掻く)のに必要な神の奇跡を!!!!』

 

 カエデ・ハバリは強くなる。そんな確信と共に、ベート・ローガはカエデ・ハバリの名を心に刻んだ。

 

 

 

 カエデの咆哮が終わると同時に、体を震わせたカエデが弱弱しい声色で慌てたように紡ぐ。

 

「武具は自ら用意する、ファミリアへの納金もちゃんと行う。ファミリアには迷惑をかけない。だから「ダメや」だから……わ……た……」

 

 ロキに遮られ言葉が潰えたカエデを見て、ベートは鼻で笑う。

 

 拳を握りしめ耐えるカエデに、ロキは畳み掛ける様に続ける。

 

「武器とか防具の用意はいらん?」

「納金もちゃんとする?」

「迷惑をかけない?」

「何を言うとるん?」

 

「……ッ!?」

 

 強く拳を握りしめられた手から血が流れ出る、ロキから視線を逸らさない。

 

「あんた、他のファミリア行ってそれで通用するって思っとるん?」

「…………」

 

 ()()ファミリアなら、間違いなく入団拒否され、慈悲の女神の元へと連れて行かれるに違いない。

 

 ただ、ここは()()、雑多にあるそこらのファミリアとはわけが違う。

 

 ここは【()()()()()()()()】なのだ。

 

 

 

「気に入ったわッ!!」

 

 カエデに負けぬ様にと大声でロキが宣言する。

 

「あんたの武具は【ロキ・ファミリア(ウチ)】が用意したるッ!!」

 

「あんたの納金は必要ないわ神ロキ(ウチ)がなんとかしたるッ!!」

 

「あんたがかける迷惑なんてすべて受け止めたるわッ!!」

 

 言葉を失ったカエデを畳み掛けたロキは、手を差し出して言う。

 

「ウチの眷属に、いや、もうウチの眷属やッ!!」

 

 ロキがあそこまで強く吼えたカエデを拒否するなどありえない。

 分り切っていたからこそ、カエデの言葉を鼻で笑ったのだ。

 

「逃げようなんて思うんやないで? 何処にも行かせへんからな」

 

 そう言われ、カエデ・ハバリは硬直したまま、その手をじっと見つめる。

 

 ベートはカエデが恐る恐る手を伸ばす様子を見ずに、屋根から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 カエデ・ハバリは差し出された手に自らの手を伸ばそうとして途中で止まった。

 

 カエデ・ハバリの手は汚れきっていて、とても神の手をとって良い訳がなかった。

 

 慌てて服の裾で手を拭うが、服自体も汚れきっていてとても汚れはとれない。

 

 どころか逆に血がべっとりとつき、手垢の汚れが血の汚れに変わっただけだった。

 

「あの…………っ!?」

「手が汚れとる? んなもんどうでもええやん、はよ手えとりや」

 

 ロキの方からカエデに近づき、カエデの手を強引に掴んだ。

 

「言ったやろ? 逃がさへんって?」

 

 おろおろするカエデをにんまり笑うロキが捕らえて、そのまま手を引く。

 

「まあ、汚過ぎやし、まずはお風呂いこか」

 

 そう言って手を引かれたカエデは、響いた怒鳴り声に足を止める。

 

 

「ふざけんなよっ!」

「そんな汚ねぇガキがロキ・ファミリアに入団だと? 俺達はどうなるんだよっ!」

「んな薄汚ねえガキが入団するファミリアに入りに来たんじゃねえんだぞっ!!」

 

 入団試験を受けに来ていた、他の者達の怒りの怒声が響く。

 

 真面目に、血と汗の滲む努力をしてきた者達と、浮浪者と見紛うばかりの子供が同じ試験を受けるだけでも我慢ならないのに、自分たちを差し置いて入団するなど、許せるはずもない。

 

 響く怒声に、カエデは剣の柄に手をかけて睨む。

 

 努力をしていたのはお前達だけじゃない。ワタシは見た目を気にする余裕もなかったのだ。

 お前達に文句を言われたくはない。

 

 そんな思いを口にしようとする前に、銀色の影が試験者とカエデの間に立ちふさがった。

 

「おい、テメェら何騒いでんだ? アァ?」

 

 銀色の影、若干の幼さを残したウェアウルフの少年が試験者を睨みつけて殺気を浴びせかける。

 

 その殺気はフィンが試験の際に発していたものとは比べ物にならない本物の殺気。

 

 フィンの放っていた子供騙しの殺気ですらない殺気モドキを鼻で笑っていた試験者達は、一様に脅え、一部の者等は一瞬で気を失って倒れ、気を失わなかった物も腰を抜かし、失禁している者も居る始末。

 

「あー、ベート。落着きや」

「ベート、もういいよ、ボクが代わるよ」

 

 ロキとフィンに制止され、ベートは鼻を鳴らすとカエデの方を見た。

 

「っ!」

「はっ、汚ねぇガキだな」

「…………」

「何とか言ったらどうだよ」

 

 唐突に現れ、カエデを庇う様な事をして、そして見下す。

 訳がわからない、それでも何かを言わなければとカエデ自ら名乗りを上げた。

 

「……ワタシはカエデ・ハバリと言います。ガキではありません」

「テメェなんてどうでも良いんだよ」

 

 言いたいだけ言いふらし、ベートは踵を返して離れていく。

 それをガレスが肩を竦め、リヴェリアが呆れ、フィンとロキが軽く笑みを浮かべる。

 

「フィン、この場は任せるわー、ウチはカエデたんとお風呂タイムにするわー」

「わかった」

「ガレスはフィンを手伝ったってーな、リヴェリアは悪いんやけどカエデたんが着れそうな服を頼むわ」

「うむ」「アイズのお古辺りがまだ残っていたはずだな、それでいいな?」「ええでー」

 

 カエデ・ハバリはロキに手を引かれて【ロキ・ファミリア】の本拠の黄昏の館へ。

 

 

 始まった、ここから、カエデ・ハバリが死なぬ(諦めぬ)と定めた道が。

 

 ならばこそ、最期の最後まで生き抜こう(足掻き抜こう)ではないか。

 

 師の言葉ではない、自分の言葉を、口にしよう。

 

 

『ワタシは絶対に死なない(諦めない)、全身全霊を賭けて生きる(足掻く)のだ』

 


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