次元世界は広い。あえて名古屋弁で言うなら、むっちゃんこひれー。
そう、東京ドームはおろか、アメリカ大陸よりも広いのである。そこまで広いと人造人間をつくっちゃったりするマッドな博士もいるのである。
これは、マッドサイエンティストなスカさんが深夜テンションで偶然作り上げたロボットの物語。

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リハビリ作品です。多分続かない。


んちゃ! アラレ誕生の巻

 

 

「ふむ、あとはこれとこれを繋げば完成だね」

 

 とある研究所にて、ジェイル・スカリエッティは作業の手順を呟きながら、一体のロボットを前で手を動かしていた。

 

「ねえねえ博士~、まだ終わらないの?」

 

 あくび混じりに顔だけの女の子がスカリエッティに尋ねる。というのも、すでに首から上は組みあがっており、邪魔にならないように、胴体から少し離した場所に固定してある。

 しかし、いかんせん先に顔を作ってしまったせいか、動くこともできず退屈なようだ。

 

「いや、あとは細かい調整だけだ。すでに人工知能とからだの神経も繋がっているし……そうだね、ためしに右手を動かしてみたまえ」

「はーい。うん、しょっと」

「ごふっ!」

 

 動かした右手が運悪くスカリエッティに当たり、とてつもない痛みが体中に走る。あまりの痛みにうずくまるも、スカリエッティはすぐさま不気味な笑みを携え、復活した。

 

「クックック……少し動かしてくれるだけでよかったのだが、これはこれで面白いことがわかった。設計上では考えられないようなパワーをしている。これは面白くなってきた」

「ほよ?」

「おっと、そうだった。まずは君の体を完成させないとね」

 

 そしてスカリエッティがちょいちょいと手を加え、ボディが完成。そして、すでに出来上がっていた首を装着する。

 

「これで完成だ」

「博士! 大変大変!」

「なんだね?」

「おっぱいがぺったんこ!」

「ふむ、余ったパーツで適当に組んだから仕方ないね。成長したらつけてあげよう」

「本当!? うほほーい!」

 

 文字通り首を放り投げながら喜びを表す女の子。ロボットならではの光景である。

 スカリエッティ自身は、女の子型のお手伝いロボットのつもりで作ったのだが、適当なジャンクパーツで組み上げたせいか、すでに色々おかしなことになっている。

 しかし、そこはマッドクオリティ。面白ければそれでいいらしい。

 

「さて、せっかく作ったからには名前をつけなければならないのだが……」

 

 スカリエッティはすでにナンバーズと呼ばれる戦闘機人を数体作っているが、スカリエッティ自身が名前に拘らないせいか、彼女らの名前は数字をそのままにつけられている。

 しかし、目の前のロボットは戦闘機人という括りには入らないため、別の呼称が必要なのだ。

 と、どうしたものかと悩むスカリエッティの目に、先程までおつまみに食べていたあられ餅が目に入る。だんだんめんどくさくなったスカリエッティは、

 

「ふむ、もうあれでいいか。よく聞きたまえ。君の名前はアラレだ」

「アラレ?」

 

 こうしてロボットの名前はアラレに決定した。

 とりあえず服を着せ、動作に不備がないか確認を行う。

 

「さてアラレ君、なにか不具合はあるかね?」

「はい!」

「なんだね?」

「飛べません!」

「ふむ、もとはお手伝いロボを作るつもりだったからね。飛行機能は搭載していない。他には?」

「お腹からミサイルは出ないの?」

「面白い発想だが、魔法を使わず作ったから容量的に無理だね」

「目からビームは」

「出ないね」

「じゃあどうやって悪の組織と戦えばいいんだろ。やっぱり女の色気?」

「私が悪の親玉だから戦う必要はないさ。戦うとしても君のパワーがあれば十分だろう。女の色気とやらは私には理解できないので悪の組織には効かないのではないかな」

「そっか! あれ?」

「どうかしたかね?」

 

 首をかしげながら目を擦るアラレにスカリエッティが尋ねる。

 

「んーとね、博士の顔がへんてこりんに見える」

「ふむ、レンズのピントが合っていないのかもしれないね。とりあえずこの眼鏡をかけたまえ」

「わー、よく見える! ありがと博士!」

 

 後でピントの合ったレンズに付け替えようかとも思ったが、どうやら眼鏡が気に入ったようなのでそのままにしておく。

 問題が解決したところで、動作確認は次の段階へ移行する。

 

「次は体を動かしてみようか。アラレ君。まずは少し歩いてみたまえ」

「ほい」

 

 歩く。速度は一般的である。

 

「今度は走って」

「キィーン!」

 

 初速からとんでもない加速を見せながら疾走するアラレ氏。そしてそのスピードが最高潮に達する前に、

 ドカーン!

 研究所の壁を貫いた。

 

「ふむ、どうしてこんなパワーが出るのかさっぱりだね。一度分解して調べてみたいところだが、もう一度組み上げられる保証もない。しばらくはこのまま様子を見るか」

 

 最高評議会への苛立ちからテンションに身を任せて適当に組んだ弊害がここで出てしまった。

 設計図など作っていない上に作業中は意識もはっきりしていなかったため、スカリエッティ自身もどういう工程で作ったのかさっぱりなのである。

 よくある深夜のテンションで訳のわからないものを作ってしまったという一例である。

 

「ほよよ~」

 

 ボロボロになった衣服をボーッと眺めながら、崩壊した壁から這い出てきたアラレ。ダメージは全くないようである。

 

「ドクター!」

「やあ、ウーノ」

 

 慌てた様子で部屋に飛び込んできたウーノと呼ばれた美女に、スカリエッティは平然と答える。

 

「何かものすごい音がしましたが、どうかなされたのですか!?」

「いやいや、全く問題ないよ。少し彼女の能力が想定外だっただけだ」

「彼女? もしや、新しいナンバーズが? しかし、まだ調整は済んでないはずでは?」

「彼女はナンバーズではないからね。アラレ君、来たまえ」

「なーに、博士?」

 

 スカリエッティに呼ばれ、アラレがウーノの前に出る。

 

「彼女は君のお姉さんにあたる人物だ。挨拶しなさい」

「んちゃ! アラレだよ! お姉さんのお名前は?」

「ウ、ウーノと申します。あの、ドクター。この子は一体……」

 

 この研究所の雰囲気に似つかわしくない、無邪気そのもののアラレを見て、戸惑いを隠せないウーノ。

 この子が先程の騒音を生み出したというのか。

 その正体を掴めずにいるウーノがスカリエッティに尋ねる。

 

「ふむ、その子は私が深夜テンションに任せて暴走した結果偶然に生み出された人型ロボットだ。君達戦闘機人とは違い、完全に機械だけで構成されている」

「ゼロから人造人間を!? さ、さすがドクターです」

 

 どこからどう見ても人間にしか見えないが、これがすべて機械でできているとは恐れ入る。

 自分達は人間をベースに作られているからまだわかるが。

 

「はっはっは! まあ、さすがは天才の私といったところか。さらに驚くことに、この子は多分、君達ナンバーズよりもつおいのだよ。そこの壁の穴は、アラレ君が走ってぶつかっただけで開いたものだ」

「は?」

 

 スカリエッティのその言葉に、さすがのウーノも信じられないとばかりに目を見開いた。

 自分は戦闘向きでないから除外するとしても、完全に戦闘向けなトーレよりも強いというのか、この子は。

 

「ほよ?」

 

 こうしてとぼけた顔をしているのを見ると、とてもではないが信じられない。

 まじまじとアラレの顔を見ていると、唐突に研究所内にアラートが響き渡った。

 

「ドクター、敵襲のようです。どうしますか」

「ふむ、チンクに撃退してもらおうと思っていたのだが、そうだね。アラレ君」

「なーに、博士?」

「今から君と遊んでくれる友達がやって来る。その人達と思い切り遊んできなさい。プロレスごっこでも怪獣ごっこでも、なんでも構わないよ」

「お友達? 遊んでいいの?」

「ああ、おもいっきりやって来なさい」

「うほほーい!」

 

 大喜びで駆け出したアラレは、研究所の壁をぶち破って、キーンの掛け声で侵入者の元へ一直線に向かっていった。

 

「あの、ドクター……本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫さ、今ごろ管理局の犬どもはアラレ君のおもちゃになっていることだろう」

「さて、紅茶をもらえるかね、ウーノ」

「は、はい。かしこまりました」

 

 スカリエッティの言う通り、ここまで響いてくる侵入者達の叫び声をシャットアウトし、ウーノは紅茶を入れることに意識を集中させた。

 

 

 

 

「おじさん、おねーさん、怪獣ごっこしよー! あたしが怪獣で、おじさん達がウ◯トラマンね!」

「な、何、この子は?」

「何でこんなところに」

「油断するな、ここは次元犯罪者のアジト、何が起こるか――」

「じゃあ、いくよー。ドーン」

「ぐわー!」

「た、隊長ー!?」

 

 アラレの全力の遊びにズタボロになるゼスト隊であった。

 

 



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