東方深意伝   作:ただのみらの

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2ヶ月の遅刻。申し訳ないです。
新環境で色々としくじりました。

久しぶりの執筆はとても楽しかったです。
会話多目の珍しい回です。どうぞ。


26,右往左往

「ちっくしょー!幻かよ!面倒な!」

先程見つけた柵の向こうには村があった。あったが誰もいなかったのだ。そこでおかしく思って村の中に入ろうとすると、なんとあっという間に

 

「村が消えるってどういうことだよ...」

 

で、現在に至る。

 

(まあ2大勢力が争うってのに小さな村なはずがないわな。しかし、俺達の管理装置もまだまだ甘いな。もっと作り込まないと)

 

他の神が作った幻影ごときに欺かれるなんてまだまだである。

 

「さてと、また別の道を探してみるか」

 

____________________________________________________________

 

 

あの後から、湖の近くの山道を歩いていると少しずつ整った道になってきた。

要はこの近辺は人が良く通るってことで、村がこの近くにあることを示していた。

 

しかし

 

 

「まだ国を囲う柵すら見えてないんだよな」

 

そう、村が近くにある“痕跡”はあれども、“痕跡”を残す国自体がないのだ。

力を使おうにも近くに村があるのでは危険なので自力で探すしかなさそうだ。

 

(にしても神々の争いがあったのに争いと跡が全くないな)

 

辺りは平穏な景色が広がるばかりで、何も争いなかったかのようだ。

周りに神力も無く、植物や小動物の霊力だけが満ちていた。

 

(ま、のんびりと探しにいきますか)

 

地球に着いた時に力を感じた方角に向け、言葉はのんびりと景色を楽しみながら歩みを進めていく。

 

湖に繋がる川は透き通り、心にゆとりを作るような穏やかな音を流し続け、木々たちは風に揺られながら川と共に心を落ち着けていく。

その側を上って行くのは心地がいい。

 

(とか思ってたら、まさかの手がかり発見)

 

山を登っていく途中、通り過ぎると体に妙な違和感を感じる場所があった。

その一点だけでなく、その場所から円を描くように周りにも同じような現象が起きる場所があった。

 

(結界の類いなのは間違いないが、何故ここまで結界に反応している物を放置してるんだ?)

 

明らかな異物であろう言葉を結界を作ったものは何の行動も起こさずに監視しているか、或いは気づかぬまま過ごしている状態だった。

 

(何にせよお目当ての場所だろうし、入らせてもらうよ)

 

体内に封をしてある力を少し絞りだし円の中心である場所にたつ。

 

「結界を壊すには許容量以上の力を叩き込むか、結界に異常を与えてやればいい。だったかな」

 

空間に与えてもらった結界の知識を生かし、対処する。

 

地に打ち込んだ神力が周りに円上の波紋を作る、ある程度広がると何かに触れた力が反応を起こし淡く光った。

 

(よし、これでいけるはず)

 

パリンパリンと音をたて、見えていなかった結界が形を表し崩れてきた。

すると周りには先程の木々はなく、見えてきたのは大量の武器を構えた人たちが並んでいた。

 

「やあ、君達はここの国の住人だね?少し話があってきたんだ」

 

と声を掛けるが、武器を俺に向けて構えたまま微動だにしない。警戒されてるってことは

 

(当たりだな)

 

「君達の信仰する神に用があるんだ、通してもらってもいいかい?」

 

「通すわけがなかろう、主と同じ力を持つ異人よ」

 

俺を囲う人の中から小柄な老人が寄って話しかけてきた。恐らく住人の長の位置にいる者だろう。しかし、何か臭う。

 

「やはり反応していたのはここの村だったんだね。しかも俺をちゃんと特定してるし、そこそこに大きい村だ。ここにいる神はかなりの力の持ち主だね」

 

「我らの主と異人を比べるなんて自惚れも甚だしい。」

老人は少し口調を荒げさせる。

 

「自惚れてなんかいないさ。僕は君達の神よりは強いよ」

 

「冗談であれば今止めるべきだぞ小僧」

老人は顔をしかめ俺を殺すような勢いで睨んできた。しかし、弱いな。

 

「ならそんな間抜けな格好しないで出てきてよ、諏訪の神」

 

「何のことかね、いい加減にしな「いい加減にしないと大和の国にこの場所を教えるよ?」...。」

 

「分かったよ、すまなかったね」

 

そういい老人は少女の姿に化けた、いや戻った。

言い合っていた老人は俺が目をつけていた二人の神の内の一人。諏訪の神。

 

「しかし、君にも非があることは分かってるよね?」

「ああ、申し訳ない。突然押し掛けてきてすまないね」

「まあいいよ。大きな事にはならなかったしね。あっちで話をしよう。君が何者か、ここを訪ねた用は何か、しっかりと聞かせてもらうよ」

「分かった、お邪魔させてもらうよ」

「君達も戻っていいよ、ありがうね」

 

諏訪の神がそういうと皆散り散りになっていく。

 

「彼らを悪い目では見ないでね。」

「そんなつもりはないさ。むしろあれほどの反応を見せたのに感心してるんだ」

「ふふっ、ありがとね」

 

結界が探知されてから破壊されるまでの時間はかなり短かったはず。そんな中的確に異物の位置を特定し包囲することができるのは中々の芸当だ。相当の訓練を積んでるだろう。

 

「ここの住人は国への愛が強いね。守ることにも生かしていくことにも懸命な努力をしてるのが伝わってくるよ」

「来てまだそれほど経ってないのに、何でそこまで言えるの?」

「住居、農地、矢倉、道。彼らの敵への対処。この辺りの丁寧さが教えてくれるんだよ。本当にすごい」

「自分が褒められてるわけじゃないのに、嬉しくなってくるよ」

 

隣を歩く神は少し照れている様子だった。

 

「これほどの広さの国なのに、しっかりと統治しているんだ。君もすごいよ」

「ありがとね。でもそれにはちゃんと種があるんだ。ここからは中で話そうか」

 

諏訪の神が立ち止まり指を指すのは、明らかに周りの家屋よりも立派な建物が堂々と建っていた。

 

「ここが私の社だよ。さあ上がって」

「ああ、お邪魔させてもらう」

 

中は卓とそれを挟むように置かれた座布団、火鉢の置いてある質素な和室だった。

 

「神って立場にすがりすぎるのも良くないからね、皆と同じ生活をするようにしてるんだ」

「なるほど、まあ色々と置いているのも邪魔になるからな。いいと思うぞ」

「ふふっ君は良くほめるね。それより、早く座って!」

 

楽しそうに微笑みながら彼女は自分の座ってないもう一つの座布団を指差す。

 

「っと。それで、まずは何から話せばいい?」

「まずは君が何故ここを見つけることができたのかってところかな」

「そうだな。山道を歩いているときに違和感を感じたので、調べてみると結界があった。ってところだ」

「で、結界を壊すと国が見えたってことね。じゃあもう1つ質問。君は何で結界を探知できたんだい?ここの結界は何年もかけて完璧に組み上げて、さらに力の跡を消した探知できるはずのない結界だよ?」

「それは...俺にも分からない。ただその場所がそうであるはずでないっていう感じがしたんだ。それが俺の持った違和感なんだ。正確には答えられないな...」

「分かったよ。さて、君はさっきの結界を壊せる程の力を持っている。でもね、君からは強い霊力を感じないんだ。結界を壊せる力どころか生きているのか分からないくらいに薄い霊力しか感じれない。それは何でかな?」

「君と会うときに持ってる力をそのままにしておくと色々と面倒なことになると思ったからね。まあ結局面倒にはなったんだけど」

「なるほどね~。後、君は私に用があるっていってたよね?」

「ああ、それについては少し長くなるがいいか?」

「もちろん。あ、何か飲み物を持ってこようか?毒は盛らないよ」

「そんな心配はしないさ、いただくよ。」

「はははっ、まあゆっくりしながら話してね!早苗ー!!お客様だよー!何か飲み物もってきてー!」

 

彼女は俺に慣れてきたのか段々神らしい態度からいつもの彼女であろう部分が少しづつ見えてきた。

見た目どおりの元気な少女だ。

 

「今飲み物をお持ちしました~。失礼します~」

 

入ってきたのは綺麗な緑色の髪をした女性だった。

 

「ありがと早苗!」

「どういたしまして。あ、初めまして私早苗と言います!諏訪子様のお手伝いをさせてもらってる者です!」

 

(へぇ、諏訪子って名前なのか。そういや知らなかったな)

 

「初めまして。俺は言葉(ことは)。ただの異人さ」

「いじん?とは...」

「彼が結界の件の犯人だよ、神の力をもつ人は異質だから異人って呼んだんだ。言葉って名前なんだね、これからはそう呼ばせてもらうよ!よろしくね!」

「え、ならこの方は危ない人なんじゃ...」

「大丈夫だよ、何かするならもう動いてるはずでしょ?」

「そ、そうですかぁ?あ、別に言葉さんのことを悪くいうつもりはなくてですね!」

「それはいいんだけど、落ち着こうか」

「は、はいっ!」

 

神の側に仕えるなんて、かなり信頼されているんだな。

何があったかは分からないが良いことだ。神は孤独になれば弱く信じるものがいれば強くなれる。彼女は諏訪子の支えになるだろう。

 

「じゃあ話を始めるよ。えっと諏訪子でいいかな?」

「うん!呼び方は好きなようにしてね!」

「分かった。まずここに来た一番のの理由は、君に大和の国と諏訪の国を統合してもらいたいからだ」

「君は大和の国の間者だったのかい?」

 

やはり怪しまれてしまうか。でも、敵意がないのはさっきまでの流れで何とか伝えられているはず。

 

「いいや、違うさ。どちらにも属することはないさ。ただそうしてもらわないと面倒だからね」

「その理由は?」

 

まだ表情を固くしたまま崩さない諏訪子。このまま進むと納得してくれる気配が無いんだが...。

 

「これは君たちの方がよく知っているだろう?神の大量発生と信者の略奪。そして領地の制圧」

「ああ、増え続ける神が信仰のための信者と領地を得るために争ってることだよね?」

 

自分達も同じようにしてきたから理解が早い。後は第三者からの情報を与えれば状況をちゃんと見てくれるだろう。

 

「ああ、このまま諏訪と大和が争い、片方が潰され信仰を吸収してもまた新たな神が信仰を集め争いを始める。同じ強さをもつ国が乱立すればこの島は人が住める場所ではなくなってしまうんだ。その理由は分かるかい?」

 

「...。そういうことね。神が初めから持つ生まれながらの威厳に影響されるから。さらに信仰によって膨れ上がるそれに人は耐えられないから。かな?」

 

「そういうことだ。そこで今この島の主な勢力になっている二つの国を統合し、大多数の信仰をそこに集めておけば大きな負担が人にかからなくなるってこと」

 

「なるほどね~。でもそれは無理かも知れないよ」

「何でかな?お互いに信仰を得られるんだしあっちも乗ってくれるんじゃないのか?」

「もう既に争う段階。つまり戦争状態に入ってるってこと。3日後にはこの島全体で戦争さ。この国を隠してるのは大和に先討ちされないためなんだ」

 

(既に面倒が起こってたのか、はぁ。とりあえずこの島を落ち着けるために頑張るか)

 

「なるほど。もう始まっていたのか。仕方ない。それでも国を隠すのも偽物の村を作るのも戦争のためだったのか」

「そっちにかかったのも言葉だったのか...。大和の誰かが引っ掛かったと思ったんだけどなぁ」

「焦らせてしまったみたいだな、すまない」

「大丈夫だよ、今は何も起こってないしね。良かったよ」

 

諏訪の神との交渉は初めから無意味ではあったが仲をそれなりに良いものにできたのは幸先が良くて何よりだ。

 

これから酒の席を用意してくれるらしい。新しく文明が入れ替わっても酒は出てくるんだな。何気に万能だ。

 

「お、月が昇りきったね」

「ほんとおだぁ~きれぇ~」

「ですね~」ッテスワコサマ,ノミスギデスヨ!

 

交渉が終わってから互いのことについて少しずつ語りながら呑んでいた。

かなり時間を流していたようで、気づけば綺麗な月夜になっていた。

 

 

 

 

 

誰かが忌まわしく思おうとも、月はその思いに気づかぬまま恨めしいくらいに綺麗な世界をつくりだす。

 

 

(いつかあっちも片付けないとな)

 

 

 

神は古き時間を悩み

新たな時間に巡り会い

また異なる時間を刻む

 

 




みなさんも急な運動で体を痛めないようにしてくださいね...。

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名前は執筆名と同じです。


ここまで読まれたかた。お疲れ様です。また次回で。

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