尻尾はオミットしています。あんなの文章で書いていたらキリがないですからね。
ハシュマルに関しては装甲も分厚いものとなっていますが、辟邪が使う装備もバ火力になっています。男のロマンが書きたかったんだよ
次回は三日月・オーガスさんによるモビルアーマーの解体ショー。そして終盤へと突入をします。ちなみにモビルスーツによる戦闘シーンに関しては今回と次回で最後になります。熱い原作リスペクt(ry
「うっ・・・!熱い・・・これが火星の大気・・・」
ラフタの駆る辟邪は火星を覆う大気の熱に晒される。機体内の温度が上昇することに臆しながらも、彼女はそれ以上の脅威に備え、集中力を切らさないのであった。
「荷物にしかならないと思った、こいつが役に立ちそうだなんて。」
機体左腕に取り付けられたシールド。回避が困難、あるいは機体の保護のためと装備した気休めの盾は、心の拠り所となっていた。
「くっ・・・ダメ、火星の重力に機体が持っていかれ・・・!」
再度モビルアーマーが放つであろう極太の光線に備えようとするラフタ。しかし火星の引力は辟邪の動きを鈍らせ、機動力を奪われる。
「いま撃たれたら・・・避けようが・・・!っ・・・!!」
まるでその様子を見ていたかのように地表から再び光源が発生し、辟邪を飲み込むような光線が眼前へと迫りくる。
「・・・・っ!!!!!!」
咄嗟の判断で左腕を前方に出し、シールドによってビームを防ごうとする。辟邪を襲った光線は機体へ直撃することなく、シールドによってその周囲へと分散されていく。
「くぅっ・・・あ、あああっ・・・!」
実弾のような衝撃はなく、辟邪は直撃を回避した光線を押し返すようにして降下を続ける。しかし、機体内の温度はさらに上昇し、搭乗しているラフタの体力を容赦なく奪うのであった。
「こんなの・・・あの痛みに比べたらどうってこと・・・!」
かつて自身の身体を貫いた、回転する暴力的な凶器。肉を引き裂き、骨を削られた激痛を思い起こし、彼女は自らを奮い立たせて突き進もうとしていた。
「何度でも撃って来なさいよ・・・全部、避けてやるんだから・・・!」
その言葉に呼応するかのように、3射目の光線が辟邪へと襲い掛かる。しかし、既にその攻撃を見慣れたラフタは、地表に光が発せられるのと同時に機体のスラスター出力を上昇させ、軌道を変えると余裕で回避する。
「っ・・・ふぅ。そろそろ大気圏内・・・機体速度を緩めないと地表に激突するわ。」
熱圏を過ぎ、機体が火星の中間圏へと到達をする。遥か下方に戦闘と思わしき衝突を確認し、彼女は着地と戦闘への集中力を高める。
「待ってなさいよデカブツ・・・私がぶっ飛ばしてあげるわ。」
ラフタが息を整え、成層圏へと侵入する辟邪。地表に複数の機影が確認出来るほど接近し、その中でもとりわけ大型の機体が動き回るのを目にする。
「あれがモビルアーマー・・・!あんなに大きいのを相手に・・・でも、やるしか・・・」
そう覚悟を決めた直後、ラフタの目に思わぬ光景が映る。
「えっ・・・?」
地表で暴れまわるモビルスーツが上空へと向き、彼女が乗る辟邪へと見つめる。
「・・・っ!」
全てを理解した彼女は、自らの出来る最大限の行動を取る。それをするか否かという瞬間、地表から4射目の光線が放たれ、無防備となりかけていた辟邪へと襲い掛かる。
「くっ・・・うううっ・・・!」
焼け焦げていたシールドを前面に出し、スラスターを全開にして回避行動を取る。しかし光線は辟邪の軌道と同じように方向を変え、膨大な熱量によって吹き飛ばそうと迫りくる。
「あっ・・・ダメッ、防ぎ切れな・・・」
ラフラは死を覚悟した。大気圏を突破した直後の状態の機体熱量でビーム兵器の熱を受ければ、それは機体が熱暴走によって爆散することを意味していた。
「いやぁぁぁっ・・・!」
だが、死への恐怖に悲鳴を上げた矢先に、辟邪を襲っていた光線は角度を変えて逸れ、機体への直撃が回避される。
「っ・・・はぁ、はぁ・・・た、助かった。」
息を荒くして生の実感を得るラフタ。しかし、その最中も機体の自由落下は続き、彼女が気付いた時には戦闘中の鉄華団とモビルアーマーがはっきりと見えるほど地表に近づいていた。
「損傷は軽微・・・スラスターも正常に作動する。さぁ・・・ここからが本番よ・・・!」
自らを奮い立たせるように声を上げ、辟邪の体勢を整えたラフタは、これまで一方的に攻撃をしてきていた巨体に向かって照準を合わせるのであった。
◇
火星のレアメタル採掘場。広大な砂漠地帯でその巨体は襲い来る者たちを退けていた。
「これほどの力を有しているとは・・・!准将、小型機の殲滅は?」
「粗方終わっている。やつが再生産を行わない限り、これで打ち止めだろう。」
鋼鉄の巨体と対峙する青いモビルスーツ、ヘルムヴィーゲ・リンカーに搭乗する石動・カミーチェは、上司であり自身の露払いを行っていたマクギリス・ファリドが駆るシュヴァルベ・グレイズに通信を行う。
「さすがです准将。しかし、グレイズの出力ではやはりモビルアーマーは・・・」
石動が見つめる先で様子を伺うモビルアーマー・ハシュマル。怪鳥を彷彿とさせるその巨体の周囲には、無残に破壊された多数のモビルスーツが横たわっているのであった。
「やはり、彼らには重過ぎる荷だったか・・・!」
「ガンダムフレームが使えない以上、鉄華団の戦力は我々以下です。最悪の場合、アリアンロッドへ救援を要請するべきかと。」
戦況は芳しいものではなかった。既に交戦していた鉄華団のモビルスーツ部隊は多数が撃破され、戦線からの離脱を余儀なくされていた。
「ラスタル子飼いの部隊・・・確かに、彼らであれば状況を覆せるかもしれないが。」
政敵の助力を請うことなど以て他。そう言葉を口に出せるほど、状況は良いものではなかった。
「しかし、我々に出来るだけのことはやらねば。ファリド准将に与えられたこのヘルムヴィーゲ・リンガー、木偶の坊などで終わらせるわけには・・・・!」
「石動・・・!」
意を決したかのように石動は自らの駆る機体をハシュマルへと突き進ませる。両手で抱えられた大剣を振りかざしながら、ヘルムヴィーゲは巨体へと襲い掛かる。
「はぁぁぁっ!!!!!」
鈍い金属音と共に、大剣がハシュマルの胴体へと直撃する。僅かに怯むハシュマルであったが、すかさず足元へと接近したモビルスーツを巨体は脚を蹴り上げるようにして薙ぎ払う。しかし石動は大剣を盾にその攻撃を凌ぎ、再びハシュマルから距離を置くのであった。
「ぐぅっっ!!!やはり・・・これだけの質量武器であっても装甲の破壊は困難か・・・!」
機動装甲(モビルアーマー)の名を冠する通り、ハシュマルの防御力はモビルスーツのそれを遥かに上回っており、四方八方から攻撃を物ともせずにその巨体を躍らせるようにして、その圧倒的な戦闘力を誇っているのであった。
「厄祭戦下のモビルスーツは、このような敵を相手に戦っていたというのか・・・」
手応えのある一撃は何度なく与えていた。戦闘中にも関わらず、上空へビームを放つという謎の行動の隙を突き、大剣による打撃を繰り返し与えていたが、機体の動きを止めることは出来ずにいた。
「んっ、また空を向いて・・・」
眼前に敵がいるにも関わらず、ハシュマルは頭部を上空へと向け、再びビームの発射体勢を取る。再度訪れたその隙を、石動は決して見逃すことはなかった。
「今度こそ・・・仕留める!」
スラスターを全開にして、大剣を地表に付くほど振りかぶると、彼はそのまま機体をハシュマルの左側面へと突き進ませる。
「・・・っ!!!!」
大剣による一撃は、ついに逆関節となっている脚部の装甲を破損させる。しかしハシュマルはそれを意に返すことなく、頭部から極太の光線を空へと照射する。
「何度も同じことを・・・その頭、打ち砕く!」
石動はさらに機体を跳躍させ、脚部へ一撃を加えた大剣を左斜めに振りかぶり、ビームを照射するハシュマルの頭部へと叩きつける。
「―――――!!!!????」
不意の一撃を受けたハシュマルはその巨体を大きくのけ反らせる。そして怒りを露としたかのように、懐へ潜り込んでいたヘルムヴィーゲを破損した左脚で蹴り飛ばす。
「うぐぁぁぁぁっ!!!!!」
防御の体勢を取る間もなく、ヘルムヴィーゲはハシュマルの直撃を受け、大きく吹き飛ばされて倒れる。両手に持っていた大剣を落とし、無防備となった状態でハシュマルの視界へと映っていた。
「石動っ!」
「くっ・・・まだ、まだだ・・・!生ある限り、立ち向かわねば・・・!」
全身を強打し、頭部から血を流してもなお、石動は機体を立ち上がらせ、迫りくる敵と対峙しようとする。
「下がれ!もうこれ以上、私に付き合う必要はない!」
「まだです・・・私が、私の夢を・・・准将の夢を・・・!」
しかし、先程の一撃を受けたヘルムヴィーゲはすでに戦闘を継続することが出来ないほどに破壊されており、パイロットである石動と同様に満身創痍となっていた。
「准将の夢を・・・我々の夢を果たすまでは・・・!」
呻くように声を上げる石動の視線の先に、対峙していた巨体がビームの発射体制を取る姿映る。ハシュマルは虫の息となった彼とヘルムヴィーゲに止めを刺すべく、その砲口を向けているのであった。
「くぅっ・・・!」
全てを諦め、目を閉じる石動。そして、ハシュマルの頭部砲塔からビームが照射され、彼の機体が火に包まれるその直前、上空から巨体へ対し、無数の弾丸が浴びせられ、モビルアーマーの注意は再び空へと向かうのであった。
◇
「次発・・・来るっ!」
モビルアーマーの頭部から放たれる光源を確認したラフタは即座に回避行動を取る。襲い来る光線を見切り、彼女が駆る辟邪は下方に構える敵へ向かって携行火器による火力を集中させる。
「避けようともしないなんて、どんだけ頑丈なやつなのよ・・・!」
辟邪の右手に握られたライフルを撃ちづけるものの、モビルアーマーはそれを意に介さず悠然と彼女の機体が降下するのを眺める。それは単なるビームキャノンの排熱処理をする隙であったものの、ラフタにとっては強大な敵の余裕として目に映る。
「・・・って、いい加減に速度を落とさないと。あんな挑発に構って激突なんて間抜けでしか・・・」
地表が迫る中、辟邪を着地体制にしてスラスターを逆噴射するラフタ。先程までの自由落下による機動戦がなかったかのように、機体は戦場へと降り立つのであった。
◇
「これが、モビルアーマー・・・遠くからしか見てなかったけど、こんな大きいやつだったのね。」
降り立った辟邪を見つめるモビルアーマー・ハシュマルの巨体に唖然とするラフタ。しかし、その周囲に打ち捨てらたように転がる多数の獅電の残骸を目にして、彼女は敵に対して憎悪を向ける。
「鉄華団のモビルスーツ・・・!よくもあいつらを・・・やってくれたわね・・・!」
怒りに身を任せてハシュマルに襲い掛かろうとするラフタ。しかし、それを制止するように辟邪へ通信が入り、彼女はモビルアーマーに目を向けつつ耳を傾ける。
「援軍か・・・助かる。しかし、すまないが劣勢だ。こちらの僚機も戦闘不能となってしまった。」
「マクギリス・ファリド・・・あんたたちがあいつを食い止めていたのね。ねぇ、鉄華団の連中・・・三日月や昭弘はどうしたの?」
僅かな沈黙の後、マクギリスは苦々しい声で現在の状況を説明する。
「現状、モビルアーマーを相手にガンダムフレームの使用出来ない。グシオンが近接戦闘を試みたものの、パイロットに対する負荷の増大で戦闘不能となった。」
「な、なによ・・・それ。こんな肝心な時に・・・!昭弘は大丈夫なの?」
「他の団員によって回収された。しかし、この分ではバルバトスの出撃も厳しいだろう。」
頼りにしていた戦力であり、心配をしていた戦友の安否を知り、ラフタは呆れと怒り、そして戦意を増幅させる。
「本当につっかえない男ね・・・!いいわよ、こんなやつ私が倒してやるわっ!」
「おい待て・・・ここはさらに援軍が来てから戦線を整えて・・・」
「そんなもの出来ないわよっ!アジー・・・そう長くは持たないかも。」
絶望的な状況でありながら、彼女は果敢に眼前の強敵に立ち向かう。辟邪のスラスター出力を全開にして、悠然と待ち構えるモビルアーマーに突撃するのであった。
「やりたい放題やってくれたわね・・・でも、近接戦闘に持ち込めば・・・!」
辟邪が右手に持つライフルを構え、薬莢が空となるまで撃ち尽くす。放たれた無数の弾丸は回避行動を取ることのないハシュマルの全身へと突き刺さり、その装甲へ埋まっていく。
「やっぱり、普通の装備だと効果はないのね。」
接近しつつ肩部にマウントをしていた片手用メイスを左手に持ち、ハシュマルの足元へと接近する。接敵を確認したモビルアーマーは片足を上げ、それを潰さんと大地を踏みつける。
「っ・・・!そんなの、当たってやれないわよ・・・!」
踏みつけてきた右足を回避し、辟邪はそのままハシュマルの足元を抜けて左側面に位置取りをすると、破損をしている左脚部を容赦なく滅多打ちにする。
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」
ラフタの叫びと共に辟邪の左手から振りかざされたメイスは、ハシュマルの足を幾度となく殴り続ける。鈍い金属音とともに破損をしていた装甲が更に砕け、白銀の機体は摩擦熱で焼け焦ると黒へと変色をしていった。
「―――――」
足元へ張り付かれることへ煩わしさを感じたのか、ハシュマルは自らの巨体を旋回させ、辟邪を振り払おうとする。
「くっ・・・!」
ラフタは即座にハシュマルから距離を置き、牽制を兼ねてライフルを乱射する。しかしハシュマルはその弾丸の発射元へと目測を定めると、跳躍をして彼女が駆る辟邪へと襲い掛かる。
「そんな・・・!」
想像を埋まった俊敏性と跳躍に思考が止まりそうになるラフタ。だがそうなることを生存本能が拒み、彼女は無意識のうちに機体をさらに後退させて距離を取っていた。
「うぐぅぅっ・・・!」
捕捉されることは回避出来たものの、意識せずの行動であったためか、辟邪の右手に握っていたライフルを落としてしまったラフタ。落としたライフルがハシュマルの足元に転がり、それが自らに仇名すと理解をしたかのように、モビルアーマーはその足でそれを踏み潰して破壊する。
「っ・・・!!」
気休め程度だったとはいえ、牽制用の武装を破壊されて間合いを取りづらくなるラフタ。そしてハシュマルは自らの距離だと言わんばかりに頭部のハッチを解放し、彼女が乗る辟邪に光源を定める。
「またビーム・・・このっ・・・!」
メイスを握る左手を前面に出し、放たれる光線に備える辟邪。その直後に発射されたビームは機体左腕へと直撃し、辟邪は大きく体勢を崩す。
「あぁっ・・・!」
仕切り直す間もなく、モビルアーマーは跳躍する格好となり、隙を見せた辟邪に襲い掛かる準備をする。だが、その巨体が大地から足を離す前にハシュマルの胴体へ衝撃が走り、その装甲が轟音と共に破壊されるのであった。
「遅いじゃないのよ・・・アジー。」
「すまないね。だが、最高のタイミングで来たと思うんだけどな。」
辟邪のコンソール向かい、ラフタは駆けつけた相棒に不満をぶつける。そして彼女は笑みを浮かべ、体勢を整えた辟邪のスラスターを全開にして、モビルアーマーへと突撃をする。
「行けぇっ、ラフタっ!」
「ええっ!」
大口径スナイパーキャノンの直撃を受け、胴体部に損傷を負いながら倒れ込むハシュマル。再度接近を試みたラフタはこちらへと向いた巨体の頭部に狙いを定め、右手に装着した鉄塊を構える。
「撃ち貫いて・・・あげるんだからぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
開放されたままのハッチから光源は発せられ、再びビームを放とうとするハシュマル。しかし、それをさせまいと辟邪はさらに加速をして、その間近へと迫る。そして
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
殴りつけるような動作と共に、右手に装着された杭打ち機、大型パイルバンカーの先端をその頭部に打ち込む。極太の杭はハシュマルの顔面へと深く突き刺さり、ビーム砲が放たれることを遮る。
「爆ぜろぉっ!」
その一言と共に、杭の中に満載された火薬が炸裂し、凄まじい閃光が放たれた直後に大規模な爆発が発生する。
「っ!!!!!!!!」
盛大な炸裂は辟邪の右手を大破させ、機体本体は爆風によって大きく吹き飛ばされる。辟邪と共に叩きつけられたラフタは、痛みを堪えながら即座に状況を確認しようとする。
「いっ・・・たたたた・・・何よあれ、あんなもの使わせるなんて、やっぱりバカじゃないの。」
「ラフタ・・・!おい、大丈夫か!」
転倒した辟邪に近寄るアジーの百錬。爆音の後に聞こえる相棒の声に対してラフタは返事をする。
「まだ、生きているわよ。まったくもう・・・せっかくの新型機がボロボロじゃない。」
自らの攻撃の爆風に巻き込まれ、すでに辟邪は戦闘不能な状態にまで破損をしていた。しかし、彼女が安堵をしようとしていた矢先、コックピット内にはアジーのさらなる声が響き。
「おいラフタ、聞こえているのか!」
「聞こえているわよ・・・もう、さっさと帰りましょうよ・・・」
「あれを見ろ!あいつ・・・まだ・・・!」
「・・・えっ?」
倒れ込んだ辟邪を起き上がらせ、ラフタはそのコックピット越しに爆煙が晴れ始めた場所を見つめる。
「そんな・・・!ウソ・・・でしょ・・・」
頭部を吹き飛ばされる程に破壊され、戦闘能力を奪われたはずの巨体。しかし、そのモビルアーマー・ハシュマルは首を落とされた状態で大地に立っているのであった。
「あいつは、本当に・・・化け物だね。」
「冗談じゃないわよ・・・こっちはもう、まともに戦えないってのに・・・!」
一瞬にして絶望に縁立たされるラフタとアジー。沈黙が続こうとする中、2人の機体へマクギリスからの通信が入る。
「やつの戦闘能力は十分に奪えた。あとは救援を待ち、我々は一旦体制を整え・・・」
その言葉を嘲笑うかのように、頭部を失ったハシュマルは以前と変わらぬように動き始める。そしてその巨体を怒り狂わせようにして、彼女たちの機体へと迫らせる。
「くそっ・・・!」
スナイパーキャノンをパージして、アジーは携行したライフルで応戦をする。しかしその程度の攻撃が効くわけもなく、ハシュマルは怪物のような動きで彼女たちに襲い掛かろうとする。
「アジー!逃げてっ!」
「逃げるたって・・・そんなこと・・・!」
迫りくるハシュマルを見つめながら、ラフタは覚悟をする。ここで死ぬのだと。あの巨体によって蹂躙され、鉄塊の中に閉じ込められる肉塊と化すのだと。彼女は覚悟をしていた。
「・・・・・・っ!」
その瞬間に思い浮かべたのは2年前の光景であった。自らの身体に凶刃が突き刺さり、「女として死んだ」あの時の記憶。ラフタ・フランクランドにとって、この瞬間は再び訪れる死を迎える入れる瞬間・・・そうなるはずであった。
「―――――!!!!!!!」
彼女たちへ襲い掛かろうとしたハシュマル。その巨体は一つの機影によって、ラフタの眼前で大きく吹き飛ばされる。
「・・・・・・あれ。一体、なに・・・?」
死を覚悟して閉じた目を開けるラフタ。その彼女が見た光景は、死よりも信じがたいものであった。
「・・・・・・」
「――――――――――」
大地に構える首の無い巨体。それに対峙していたのは白を基調とした細身のモビルスーツ。手には大振りの太刀が握られており、静かにハシュマルを睥睨していた。
「そんな、モビルアーマー相手には戦えないはずじゃ・・・」
その機体のコックピット。搭乗している少年はハシュマルを見つめながら口を開く。
「ねぇオルガ、あいつを倒せばいいんだよね。」
目的を確認する少年。そして彼は機体が握る太刀を両手で持ち構えると、敵と定めた相手にその切っ先を向ける。
「それじゃ・・・いくよ。」
白を基調としたその機体は、戦意を高揚させるかのように全身から青白い炎を吹き上げて纏う。コックピットの少年は僅かに口元を歪ませると、気炎を纏わせた自らの機体を踊るようにして、敵へと襲い掛かる。
悪魔の名を冠したその機体は、天使を狩るために彼と共に舞い降りたのであった。