Turbine's Mother   作:Scorcher

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昭弘の登場回です。原作と異なりラフタは地球へ出向いてはいません。というか地球に行っていたことを忘れていた。

今後も昭弘には出番があります。ラフタのSSである以上、外すわけにはいきませんからね。ヒロインと同じくらいに肉付けをするキャラとなる予定です。もう筋肉は十分についているけd(ry


Phase-3 『戦友』

「・・・帰ってきたみたいね。」

 

火星衛星軌道の宇宙ステーション「方舟」。彼女たちが待つ港に鉄華団の旗艦・イサリビが到着する。ラフタとアジー、そして火星本部にいた鉄華団の団員は、地球遠征から帰還する本隊、そして撤収をしてきた団員たちを出迎えていた。

 

「みんな顔が暗いね。やっぱり・・・ギャラルホルンにしてやられたのが堪えているのかな。」

「当然だろう・・・地球支部の戦闘部隊は、帰ってこれたやつのほうが少ないんだからさ。」

 

艦のハッチが開き、団長のオルガを始めとした団員が続々と降りてくる。各員の面持ちは冴えず、言葉も少なく火星のシャトルへと向かっていく。

 

「あっ・・・昭弘。」

 

その中でラフタは一際暗い表情となっていた大柄の男、昭弘・アルトランドの姿を見つけ、声を掛ける。

 

「おかえり、昭弘。あんたは・・・無事だったんだね。」

「ああ、戦闘は大したことなかったからな・・・」

「そう・・・あ、でもやっぱり、疲れてはいるでしょ。何か私たちに出来ることがあったら言ってよね。」

「そうか・・・でも、今は大丈夫だ。俺たちだけでどうにかする。」

 

ラフタの出迎えにも言葉にも、昭弘はどこか上の空であり、気のない返事をするだけであった。

 

「ご、ごめんね。なんだか・・・余計な事ばかり言っちゃって。それじゃあ、また・・・」

 

彼女の気遣いに彼は小さく頷き、思い詰めた様子のままシャトルへと向かっていく。ラフタはその背中を不安な表情で見つめていたが、咄嗟に声を上げる。

 

「昭弘っ!」

 

ラフタの声に昭弘はゆっくりと彼女のほうを振り向く。そして彼に向ってラフタははっきりと言葉を口にする。

 

「私ね、あんたが無事で・・・生きていて本当に嬉しかったよ。死なないでいてくれて・・・本当に・・・よかった。」

 

自らが死に直面をしたことで、ラフタは親しき者の生死に過敏となっており、昭弘に対して抱いていた感情を吐き出さずにはいられないのであった。

 

「ああ・・・俺も、またお前に会うこと出来てよかったよ。」

「っ・・・う、うんっ!」

 

顔は暗いままであったものの、彼は口元を少しだけ緩めてラフタの言葉に応え、その場をあとにした。

 

「自分が助けた子たちが死んで、相当堪えているんだろうね。ああ見えて思い詰めることは多いみたいだし、立ち直るにも時間が掛かるかもしれないよ。」

 

明弘の背中を見送るラフタの傍にアジーが寄り、彼の今後を気に掛ける。

 

「うん、そう・・・だね。」

「・・・何か、言いたそうな顔だね。」

 

アジーの問いかけに対し、ラフタは恐る恐る口を開く。

 

「私があいつのために出来ることなんて、本当にあるのかなぁ・・・とか思ったりしてさ。実戦は全然していないし、身の回りの世話なんて柄じゃないし。ただ・・・足手まといになるだけなんじゃないかなぁ・・・とか考えちゃって。」

 

思い詰めた顔でラフタは誰にも言えない胸の内をアジーに明かす。自身が戦士として、MSのパイロットとして彼の信頼を得られるかと不安に襲われているのであった。

 

「安心しな。私はあんたが立ち直れると信じているし、サポートもする。もちろん・・・昭弘との関係も含めてな。」

 

ラフタの事を気に掛けつつも、昭弘との関係を茶化す言葉を含ませるアジー。それに対して彼女は否定をすることなく返事をする。

 

「うん、ありがとう。アジー・・・私も、がんばるから。」

「おいおい、そこは躍起になって否定してくれないと張り合いがないよ。」

「だって・・・あんなこと言えるのなんて、昭弘くらいなんだもん。ダーリンの前だったら私、いつも元気じゃないとダメだって・・・」

 

『傷』を負ってからというもの、ラフタは名瀬の前で無理をすることが多くなっていた。彼自身はそれに気付きながらも、彼女の弱さに触れようとすることはなかった。

 

「まったく・・・不器用な女になっちまったものだね。」

「なによ・・・別に、気を使ってもらいたいなんて思ってないんだからね。」

 

俯くラフタの頭を優しく撫でるアジー。ラフタはそれを言葉で拒みながらも、振り払おうとはしなかった。人気(ひとけ)が少なくなった方舟で、彼女は信頼を置けるパートナーに自らの弱さを隠そうとしないのであった。

 

 

 

 

 

 

数日後。この日も鉄華団の拠点で団員のモビルスーツ訓練を終えたラフタとアジー。2人に加えて整備を担当していたエーコの3人は話をしながら宿舎へと戻っていた。

 

「それじゃあ、テイワズの本社からも機体を?」

「うん・・・一体何と戦うつもりで調達しているのか分からないけど・・・団長さん、地球から撤収して浮いた資金のほとんどをモビルスーツの調達に充てているみたい。」

「確かによくは分からんが・・・何か焦ってはいるみたいだね。」

 

地球支部の撤収後、鉄華団の団長であるオルガ・イツカは組織の拡大という名の戦闘力強化に奔走していた。タービンズから出向をしていたエーコも新規に調達した機体の整備に回るように頼まれ、忙しさが増していた。

 

「マクギリス・・・だっけ。セブンスターズの1人で、2年前から鉄華団に協力していたあの男の話で動いているみたいだけど・・・」

「ああ・・・私も顔だけ見たことがあるが、何を考えているか理解出来ない男だ。」

「2人ともヒドい言い方ね。まぁ確かに顔が良いけど、どこか怪しい感じはあるし・・・」

 

鉄華団の団員ではないものの、彼らの上部組織に所属している彼女たちにとっても鉄華団とギャラルホルンの関係は気がかりなものとなっていた。

 

「名瀬と違って、あいつはまだ器用な立ち回りってものを知らないだろうからね。」

「何か厄介なことに巻き込まれないようにしないと・・・嫌な予感しかしないよ。」

「ああ。ま、そうならないように私たちが見守っている必要があるということだな。」

 

彼女たちが今後の展望についての会話をしながら歩いていると、向かいから十数人の団員と共に顔馴染みがこちらへと歩いてくる。

 

「あ、昭弘・・・」

「おう・・・今日の訓練はもう終わったのか。」

「うん。あ、もしかして昭弘も久しぶりに参加したかった?この後時間があれば久しぶりにシミューレーターで戦う?」

 

ラフタと昭弘は鉄華団とタービンズが協力関係となった頃からの付き合いであり、その当時モビルスーツでの戦闘が不慣れであった彼の訓練に、彼女が相手を担当することは非常に多かった。

 

「いや・・・俺もまだ自分のことに手を回せるような感じじゃないからな。すまない、また時間があった時にしてほしい。」

「あ、うん・・・そうだよね。ごめん。」

「いや・・・俺のほうこそすれ違ってばかりで・・・」

 

互いにばつの悪い表情となって目をそらす2人。その様子を傍から見ていたアジーとエーコにラフタが目を向ける。

 

「な、何よ・・・私はただ仲間を心配しているだけなんだけど。」

「ねぇ、アジー。ラフタって名瀬にゾッコンだったよね。」

「言ってやるな。あと、名瀬にも何も言わないでおくんだぞ。」

 

信頼以上の関係を持とうとしている彼の前で、アジーはラフタのことを見守るようエーコを窘める。その発言に彼女は頬を赤らめて言い放つ。

 

「ちょ、ちょっと・・・!わ、私はただこいつがみんなことで一杯いっぱいみたいで、心配をしているだけでなんだからっ!ダーリンは関係ないでしょ!?」

「ぷっ、ふふっ・・・分かっているよ、ラフタ。あんたが名瀬を思う気持ちも、そいつを思う気持ちも私は分かっているからさ。」

「も、もう・・・!」

「・・・?」

 

彼女たちのやり取りに昭弘は首を傾げ、なぜ不機嫌となったかを分からぬままラフタを見ているのであった。

 

「そんなことより昭弘、あんたと一緒にいるその子たちって、あまり見かけない気がするんだけど・・・」

 

ラフタが目を向けた見慣れない鉄華団の団員。歳は全員が10代半ばであり、身体はやせ細っていて、目つきが良いとは言えない子供たちばかりであった。

 

「新しく雇った団員だからな。この前俺たちが潰した夜明けの地平線団でヒューマンデブリとして扱われていたやつらだ。」

「この子たちが・・・それじゃあ、この前の戦闘にも・・・・」

「生き残りは全員鉄華団で面倒を見ることになった。オルガがギャラルホルンに頼んでくれたおかげだ。」

 

昭弘は自らと同じ境遇であるヒューマンデブリを積極的に鉄華団に受け入れ、彼らの居場所を作ろうとオルガに働きかける努力をしていた。

 

「そっか・・・昭弘はこうやって、家族を増やしていこうとしているんだね。」

「ん・・・どうかしたのか?」

「ううん・・・なんでもないわ。あ、私はラフタ。タービンズのモビルスーツパイロットよ。そっちが整備担当のエーコで、こっちの男みたいなのがアジーね。」

「みんな、よろしくね。」

「おい、会って早々に変な印象を与えるんじゃないよ。」

 

ラフタたちの挨拶に対して小さく頭を下げる新たな団員達。満足に他人とはおろか、異性とも話したことがないであろう彼の様子にはぎこちないものがあった。

 

「なんだか・・・初めて会った時の昭弘を思い出すね。」

「そう・・・か?」

「あの時のあんたは、まだ自由になれたってことに戸惑っていた感じもしていたよ。今よりもずっと・・・素っ気なかったかな。」

「・・・初めて会ったのは戦場だろ。俺は・・・男か女かも分からなかった。」

「あっ・・・ふっ、ふふっ・・・そうだね。私たちも初めて会った時は殺し合っていたんだよね。懐かしいね・・・あの頃が。」

 

変わったと言われたことに対する照れ隠しなのか、ラフタの発言を訂正しようとする昭弘。そんな彼に対して、彼女は笑みを浮かべて言葉を返すのであった。

 


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