Turbine's Mother   作:Scorcher

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名瀬とアミダ姐さんの死亡回です。2人とも死にます。半分くらい原作通りに死にます。

暗殺の手段としては、生身の状態を襲撃という手もあったんですけどけど。会社の先輩に「ガンダム作品だったらMS使って殺そうよ」と言われ、この展開にしました。

あとついでにイオク様が若干有能キャラになっています。たぶんラフタの次くらいにキャラが変わっているかもしれない。


Phase-10 『謀略』

火星圏内、ギャラルホルン管轄のコロニーに降りた彼らは、窮地に陥っていた。

 

「これは、一体何の真似だ?」

 

ギャラルホルンとの商談を行うとしていた名瀬・タービンとアミダ・アルカは、多数の兵士に取り囲まれていた。

 

「名瀬・タービン、お前には複数の不法行為、及びギャラルホルンの条約に違反する嫌疑が掛かっている。我々アリアンロッド艦隊は、お前たちを拘束する任を受けている。」

 

複数の自動小銃を突き付けられ、抵抗が出来る状況ではなかった。指揮官と思わしき褐色肌の男は、さらに言葉を続ける。

 

「モビルスーツ及びエイハブ・リアクターの輸送は、ギャラルホルンのみが行える特例行為。それをお前たちは堂々と、それも繰り返し行っていたようじゃないか。」

「何をいまさら・・・そんな罪状だけで、俺たちをしょっ引くっていうのかい。」

「拘束する罪状としては十分だ。地球圏外の治安を預かる者として、動かない理由はない。」

 

半ば呆れた口調で指揮官の男に声を上げる名瀬。しかし、不用意に抵抗をすれば命の危機となることは明白な状況なことは変わらず、彼らは兵士たちの言葉に従うのであった。

 

「名瀬、ここはとりあえず・・・」

「分かっている。こいつらがどう俺たちの動きを掴んだのかも気になるからな。」

 

囁くように言葉を交わした名瀬とアミダが大人しく彼らに捕捉されると、指揮官の男が近寄って話し掛けてくる。

 

「飲み込みが早くて助かる。お前たちの背後にいる組織を考慮すれば、大事にはならないだろう。」

「ああ、丁重にもてなしてくれよ。」

 

冗談交じりの言葉を口にしながら、名瀬はアミダと共にギャラルホルンが用意をしたシャトルへと乗るのであった。

 

 

 

 

「お疲れさまでした、イオク様。」

「私は何もしていないよ。彼らが大人しく捕まってくれて本当に助かった。」

「しかし、テイワズ幹部の身柄をこうも簡単に拘束出来るとは・・・」

 

部下の言葉を聞きながらギャラルホルンの指揮官、イオク・クジャンは面白くなさそうに言葉を返す。

 

「クジャン家の繋がり合ってこその成果だ。私個人の成果ではない。それに、罪状を掘り下げ過ぎると彼らと真っ向からの対立となる。それを避けるためにも、今回は出来るだけ穏便に話を・・・」

 

イオクが話を続けている中、彼の傍に置かれた通信機へと連絡が入る。

 

「イオク様!本コロニーに所属不明のモビルスーツが接近しています!」

「なに・・・機数は!?」

「確認出来るだけで2機。迎撃をなさいますか?」

「ああ、私が出る・・・と言いたいところだが、こちらは指令室に戻る。速やかに戦闘準備にかかれ。」

 

突然の連絡を受けたイオクは、可能な限りの指示を出してコロニー内の指令室へ向かう。

 

「状況は?対象はどこへ向かっている?」

「それが・・・どうやら拘束したテイワズ幹部を乗せたシャトルへ向かっているとのことで・・・」

「っ・・・!?迎撃部隊をシャトルの護衛に回せ!あれには私の部下も乗っているのだぞ!」

 

彼は瞬時に理解した。所属不明のモビルスーツが何を目的としてコロニー周辺へ接近したのか。そして、彼がそれを察知した時には、敵である者達の動きは機先を制しているのであった。

 

 

 

 

「・・・あいつらに連絡くらいは取ってやりたいな。」

「あいつらねぇ・・・ラフタ達のことか、それとも鉄華団のことかい。」

 

護送されるシャトルの中、名瀬とアミダは残した家族のことを気にかけていた。

 

「オルガたちは大丈夫さ。あいつらはテイワズで収まるような奴らじゃない。きっと、俺を越えていくさ。」

「ラフタは、どうなのさ。」

「・・・・・・」

 

アミダの問いかけに、名瀬は沈黙を貫く。それ以上、彼女も彼に対して問おうとはせず、シャトルの中にはしばらく静寂が訪れる・・・はずだった。

 

「おい、なんだあれ・・・モビルスーツか?」

「よく見えんが、俺たちの友軍機ではないような気が・・・」

 

2人を護送する任務に就いていたギャラルホルンの兵士たちがそう話をした直後、シャトルに大きな衝撃が走り彼らは皆、座席から大きく吹き飛ばされていた。

 

「・・・っ!!!!!」

「ぐぅっ・・・・!!!!」

 

機体が大きく揺れ、船内の壁に激突する名瀬とアミダ。それによる負傷など気にすることなく、彼はアミダの元へ寄り声を掛ける。

 

「どうやら・・・俺たちを嵌めた連中がおいでなさったようだ。」

「落ち着いているね・・・ここから生きて帰れると思っているかい。」

 

アミダの言葉に名瀬はただ笑みを浮かべるだけであった。周囲で狼狽するギャラルホルンの兵士たち。その喧騒も聞こえないかのように、彼らは残された時間で話を続ける。

 

「ラフタのことだけどよ。俺は、あいつのことをお前と同じくらいには・・・」

「ああ、知っているよ。でも、もう少し見てやってもよかったんじゃないかね。」

 

シャトルが被弾したためか、周囲で爆炎と煙が立ち込め始める。その最中に、彼は困り顔となって彼女を見つめる。

 

「・・・お前ほど面倒な女は、一人で十分だよ。」

その言葉に、彼女は満足気に笑みを浮かべる。

 

「ははっ・・・やっぱりあんたは、いつまでもガキのままだね。」

 

緩やかに流れるような時の中、2人は静かに抱き合って口付けを交わす。そして、彼らはそのまま爆炎と閃光の中で、永遠に愛を確かめ合うのであった。

 

 

 

 

 

 

「ウソ・・・でしょ?」

 

その凶報に、彼女たちは愕然としていた。名瀬とアミダが謀殺されたことを、ラフタ達は鉄華団の拠点である火星で知るところとなった。

 

「はっきりとしたことは分からねぇ。だが・・・兄貴と姐さんがギャラルホルンに拘束されて、そのシャトルが消息を絶ったというのは確実らしい。」

 

鉄華団の団長、オルガ・イツカは険しい表情で彼女たちに現在の状況を伝える。彼の話がテイワズ経由ということもあり、彼女たちはその受け入れがたい事実に唖然とするしかなかった。

 

「どうして名瀬が・・・タービンズはギャラルホルンと協力関係を築いていたはずじゃ・・・」

「マクギリスからの情報では、兄貴たちを拘束したのはアリアンロッドの連中とのことだ。指揮系統が異なる連中のやったことだから、事前に防ぐことは厳しいものだったと言っていた。」

「防げなかったって・・・それじゃあ、だからって指をくわえて見殺しにしたっていうのかい!?ふざけるんじゃないよっ!」

 

オルガに対して胸ぐらを掴み、食って掛かるアジー。冷静さを欠いている彼女に対して、彼はただ小さく声を上げる。

 

「すまねぇ・・・本当に何も出来なくて情けねぇ。ああ、俺だって何も言えねぇんだよ・・・!」

「聞きたいのはそんな言葉じゃないよ・・・!あんただって、名瀬が死んで、あいつが死んで・・・うっ、ううっ・・・!」

 

オルガを問い詰めながら、嗚咽を漏らし始めるアジー。その様子を見ていたラフタは、アジーと入れ替わるようにして彼へ問う。

 

「タービンズの・・・他のみんな大丈夫なの?」

「えっ・・・あ、ああ・・・それなら大丈夫だ。マクギリスの手配もあって、ハンマーヘッドは無事歳星へと戻っている。」

「そう・・・なら、よかったわ。」

「ラフタ、あんた・・・」

 

オルガもアジーも見ることなく、ラフタは遠い目となってそうつぶやく。冷静とも虚無ともいえるような彼女の様子に、取り乱していたアジーは訝しさを感じているのであった。

 

 

 

 

凶報から数時間後。ラフタとアジーは彼女たちの自室で歳星に帰還していたエーコと通信していた。

 

「本当に大丈夫かい?」

「うん、平気よ。みんなまだ落ち込んでいるけど、あんたたちが戻ってくるまでの間は私が頑張るから。」

「無理、しないでね。」

「それは私があんたに言いたいことよ。悔しいけど・・・今はまだ、動いちゃいけない時期だと思う。」

 

エーコの言葉に首を縦に振る2人。続けて彼女は、わずかに表情を曇らせて話を続ける。

 

「ねぇ、いま周りには2人以外に誰が・・・鉄華団の団員はいる?」

「いや、私たちだけだが・・・」

「そう・・・だったら伝えても大丈夫ね。」

 

アジーに対してそう確認をすると、エーコは2人に対して真剣な表情となって話を続ける。

 

「火星にいた2人とタービンズの団員には伝えていないのだけど、ギャラルホルンからテイワズに入った情報には、あまり良くない・・・ううん、悪い話も含まれていたの。」

「悪い話・・・?それは、もちろん私たちにとって悪い、ということよね?」

 

そう問いかけるラフタに対して、エーコは無言で頷く。そして彼女はさらにラフタとアジーに対して事実を伝えていく。

 

「名瀬と姐さんを乗せたシャトルを襲撃した所属不明のモビルスーツだけど、それを追撃したギャラルホルンが確認した機体は・・・イオフレームに類似していたとのことよ。」

「えっ・・・!?」

「お、おい・・・まさかそんな話が出ているって言うのは・・・!」

 

イオフレーム。現在、鉄華団の主戦力となっているモビルスーツの一つである獅電。その機体に採用されているのがイオフレームであった。そしてテイワズ傘下組織で、その獅電を最も多く使用しているのも鉄華団であった。

 

「テイワズの幹部は皆、鉄華団に疑いの目を向けているわ。おそらく・・・この話が私たちタービンズのみんなにも伝わったら・・・」

 

先刻のオルガ以上に苦々しい顔となるエーコ。ラフタとアジーはその表情から察するに、彼女は鉄華団を信じているようであった。

 

「いま火星にいる、私たちの処遇は?」

 

ラフタの問いに対して、エーコは首を横に振る。

 

「テイワズ本部からは、まだ何も言われていないわ。現状、疑いがあるというだけで、鉄華団が反乱分子として公にされることはないはずよ。」

「そんな状況が、少しでも長く続けばいいけどな。」

「ええ・・・あなたたち2人は鉄華団と関わり過ぎた、それがテイワズの目にどう映るか・・・十分に気を付けてね。」

「ええ・・・分かったわ。」

 

そして通信が終わり、ラフタとアジーはタービンズのことを思いながらも、自分たちの立場を改めて考える。

 

「オルガたちがダーリンを襲うなんて、考えられないわよ・・・!」

「ああ、少なくとも獅電が使われているということは、テイワズ傘下の組織ならどこでも出来るという話でもある。」

 

それでも疑いの目が鉄華団へと向かう理由。そうなることを望む何者かが存在するであろうことに、彼女たちは自ずと辿り着くのであった。

 

「わたし・・・そんなことをする連中に心当たりがあるのよね。」

「あたしにもあるぞ。さっきからあの下品な男の顔が、頭から離れないんだ。」

 

顔を見合わせるラフタとアジー。そして、彼女たちは行動を開始する。名瀬・タービン亡き今、タービンズと鉄華団の未来は彼女たちの行動に掛かっているのであった。


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