「どうぞ、こちらです」
「おお……」
「これは……」
シシオとローズは、自分達と同じくらいの年代の褐色の肌をした銀髪の少年に案内されてある建物の中を歩いていた。その建物は現実世界では映像記録でしか残っていないような「お城」であり、シシオとローズも珍しそうに周囲を見回しながら銀髪の少年の後をついて歩いていた。
あの「ヒゲの生えたガンダム」と出会って最初は取り乱したシシオであったが、自分が敵ではなく戦闘の意思もないことをローズと一緒に伝えると、ヒゲの生えたガンダムのパイロットに「自分の上司に会って事情を説明してほしい」と言われてこの城にやって来たのである。
そして今シシオとローズの前を歩く銀髪の少年こそがヒゲの生えたガンダムのパイロットなのだった。
「あの……ちょっといいですか?」
「ん?」
「何ですか?」
シシオとローズが歩きながら城の通路を観察していると銀髪の少年がためらいがちに話しかけてきた。
「貴方は初めて会った時、ホワイトドールのことを『ガンダム』って呼んでいましたけと、ガンダムってなんなんですか?」
「ホワイトドール? ……ああ、君が乗っていたあの機体のことか。いやな? 俺達の機体と君の機体ってどこか似てるだろ? それで俺達の機体はガンダムフレームっていうシリーズの機体だから思わずガンダムって、呼んだんだ。……それよりそんな敬語なんか使わなくて普通に話してくれないか? 俺達同い年くらいだろ? ああ、ちなみに俺の名前はシシオ・セト。よろしくな」
「ローズと申します」
「そうなんだ。……うん。こちらこそよろしく。僕はロラン・セアック」
銀髪の少年、ロランの質問に答えてからシシオとローズが名乗るとロランもまた口調を敬語から素の状態に戻して名乗った。そしてそうしている内に三人は目的の部屋の前まで辿り着いた。
「グエン様、ロランです。例の二人を連れてきました」
『開いているよ、入りたまえ』
ロランが部屋の扉をノックして言うと部屋の中から若い男の声が返事をした。
「やあ、よく来てくれたね」
ロランが扉を開いてシシオとローズと共に部屋に入ると、ロラン程ではないが褐色の肌をしたいかにも育ちが良さそうな若い男が三人を出迎えた。
「初めまして。私はグエン・サード・ラインフォード。このイングレッサ領を治めている者だ」
「俺はシシオ・セトと言います」
「ローズと申します」
笑みを浮かべて自己紹介をするグエンにシシオとローズが名乗ると、それを聞いたグエンが首を傾げる。
「うん? ミス・ローズは名前だけなのかい? ファミリーネームは?」
「……ああ。ローズは色々と複雑な生まれでして……あえてファミリーネームをつけて名乗るとしたら『ローズ・セト』ですかね?」
「ええ、そうですね」
ローズは子供の頃に実の親に売られてヒューマンデブリとなり、その後シシオに救われて彼と家族同然の身にとなった。その為、シシオとローズは兄妹みたいな感じで言ったのだが、ロランとグエンはそうは思わなかったみたいだった。
「同じファミリーネーム? 二人は夫婦……いや、婚約者なのかい?」
「ええっ!? シシオとローズって結婚しているの?」
「はいぃ!?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
グエンとロランの言葉にシシオとローズが絶句する。
「あ、いや……今のは兄妹のつもりで言ったんですけど……。あれ? ローズ? どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません、シシオ様。気にしないでください……というか、見るな!!」
グエンとロランの予想もしなかった言葉にシシオが慌てながらローズを見ると、彼女は明後日の方向を見ており顔は耳まで真っ赤で、普段ならば決して言わない口調の言葉を自分の主人に言っていた。
それからしばらくしてようやくローズが元に戻るとグエンは話を再開させた。
「さて、話を元に戻すとして……。単刀直入に聞こう。君達のその見慣れない生地を使った衣服に報告にあった未知の機械人形……君達は月から来た人類『ムーンレイス』なのかい?」
「………」
真剣な表情となって言うグエンの言葉にロランも緊張した表情となってシシオとローズを見つめる。それに対して質問をされた二人は……。
「「ムーンレイス? 何それ?/何ですか?」」
と、二人同時に首を傾げた。
「……何?」
「あれ?」
シシオとローズの反応に思わず呆けた声を出すグエンとロラン。そんな二人を見てシシオは内心で疲れた声で呟いた。
(……この流れから考えるにこの夢の戦いは人間同士の戦いか。参ったな。人間同士の戦いって、場合によっては異星人や怪獣の戦いよりややっこしいんだよな……)
………続く、かも?