鉄血のオルフェンズ ~無欲な悪魔~   作:小狗丸

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#21

「俺とローズも出る。俺達の宇宙船の方は頼むよ」

 

 交戦宙域に着いて戦闘準備を終えたシシオはガンダム・オリアスのコックピットからイサリビのオルガに通信を入れた。

 

『ああ、分かった。お前とローズが帰る家は俺達が守ってやるよ』

 

「ありがとう、鉄華団。……シシオ・セト。ガンダム・オリアス。行きます!」

 

『ローズ。ガンダム・ボティス。主人の元へ』

 

 オルガ達に礼を言ってからシシオが出撃して、それに続いてローズも出撃をするのだった。

 

 ☆

 

 ジャンマルコの宇宙船の側を二機のモビルスーツが飛んでいた。その二機のモビルスーツはロディフレームを重装甲に改造したもので、左肩が青と黄色と違うことを除けば全く同じ外見であった。

 

「何で俺達、こんな所で戦っているんだろうな?」

 

『しょうがないでしょ? 今の私達の「所有者」はジャンマルコなんだから』

 

 左肩が青のロディフレームのコックピットの中でパイロットのサンポ・ハクリが思わず呟くと、左肩が黄色のロディフレームのパイロットでありサンポの妹であるユハナ・ハクリからの通信が入ってきた。

 

 サンポ・ハクリとユハナ・ハクリの兄妹は、ヒューマンデブリの傭兵である。

 

 自分達の登録証はすでに手に入れているが戸籍は存在しない為、ハクリ兄妹は社会的には死人も同然であり、いつまた誰かの「所有物」となってもおかしくない立場にあった。そして新たな戸籍を得るために多額の資金を必要としていた。

 

 だからハクリ兄妹は莫大な報酬につられてダディ・テッド暗殺の仕事を引き受けたのだが仕事は失敗。ダディ・テッドの護衛についた一機の青のモビルスーツにあっという間に倒されて、その後はダディ・テッドの暗殺を企む人物を探っていたジャンマルコに捕まり、落とし前として彼の「所有物」とされて今にいたる。

 

「そんな事は分かっているさ。……それにしてもまさかアイツと一緒に戦うことになるなんてな」

 

 そう言ってサンポはローズと一緒に宇宙船から出撃するシシオの乗るガンダム・オリアスを見る。以前は敵として戦い、妹共々殺されかけた相手である為、複雑な気分になるのは仕方がないだろう。しかし妹の方はそう思っていないようで、通信越しに呆れた様な声が聞こえてきた。

 

『サンポってばまだそんな事言っているの? 結局殺されなかったんだしもういいじゃん。それに今は味方でしょ?』

 

 確かにユハナの言う通りであるとサンポは思う。

 

 確かにガンダム・オリアスの実力は本物で味方だと心強い。特に今はブルワーズだけでなくタントテンポのモビルスーツとも戦わないといけないのだから一機でも頼れる戦力がいるのはありがたかった。

 

「そうだな。ユハナの言う通りだな」

 

『そうでしょ? ほら、敵が来たよ!』

 

「……ああ!」

 

 ユハナに言われてサンポはこちらに向かってくる敵のモビルスーツに向けて銃を構えた。

 

 ☆

 

 交戦宙域にはブルワーズのモビルスーツだけでなくタントテンポが援軍として送ったモビルスーツの姿も多数あった。

 

 タントテンポからの援軍は十数機のロディフレームで、その内の一機、宇宙船に攻撃を仕掛けようとした機体とジャンマルコは戦っていた。

 

「オラァ!」

 

 完成したばかりのグレイズのカスタム機、リーガルリリーを操ってジャンマルコは目の前のロディフレームを攻め立てる。リーガルリリーの攻撃は「猛攻」という言葉が相応しい激しさで、手に持ったバトルアックスはロディフレームの両腕を斬り落とした後、頭部からコックピットにかけてロディフレームの上半身を断ち切った

 

「ハハッ! 中々いい具合じゃねえか、このリーガルリリーは! 流石はグレイズをベースにしたモビルスーツだぜ」

 

 リーガルリリーを動かした感触にジャンマルコは機嫌良さげに笑い、次に周囲を見ると笑みをより濃くさせる。

 

「いいぜいいぜ。敵も味方もモビルスーツを出して派手にやり合っている。ここまで派手な喧嘩はそうないぜ。今回の喧嘩は楽しめそうだ……ん?」

 

「………!」

 

 ジャンマルコが乗るリーガルリリーの背後から一機のロディフレームが斬りかかろうとして、それに気づいたジャンマルコが馬鹿にする様に鼻を鳴らす。

 

「はん! ヘタクソが! 不意打ちをするならもっと上手くやりな! ……あぁ?」

 

「っ!?」

 

 ジャンマルコが背後から襲おうとしたロディフレームを返り討ちにしようとしたその時、横から白い影がロディフレームに襲いかかり手に持っていたブレードでロディフレームのコックピットを貫いた。

 

 ロディフレームを一撃で倒した白い影は、まるで白いスーツを着て白い帽子を被った男の様な外見をしたモビルスーツだった。

 

「何だ? あのモビルスーツは?」

 

『よぉ、無事かい? ジャンマルコ』

 

 突然現れた白いモビルスーツにジャンマルコが怪訝な表情をしているとリーガルリリーのコックピットのモニターにノーマルスーツを着た名瀬の画像が映し出された。

 

「名瀬か? お前、モビルスーツに乗れたのか?」

 

『まぁな。最近アミダやアジーやらラフタとかにしごかれてな、それなりに戦えるようになったよ』

 

 ジャンマルコの言葉に名瀬が苦笑を浮かべながら答えるとジャンマルコは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「へぇ……。それなりにねぇ……。まぁ、モビルスーツに乗ってこの戦場に来たってことは戦うってことでいいんだよな?」

 

『当然だろ? ハンマーヘッドには俺の女達とガキ共がいる。それをゴロツキ共から守るのは家長の役目だろ?』

 

「はっ! よく言ったぜ名瀬! それじゃあ頼りにさせてもらうぜ!」

 

『こちらこそな、ジャンマルコ!』

 

 ジャンマルコと名瀬は互いに凄みのある笑みを浮かべると同時に敵に武器を向けるのだった。


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