レジスタンスキャンプでリーダーを務めているアネモネというアンドロイドからの依頼で砂漠にいる機械生命体を破壊しに向かった。逃げる機械生命体を追った後、機械生命体が集まって繭のようなものを形成、そこからアンドロイドにそっくりな機械生命体が生まれた。機械生命体を倒したと思ったが、もう1体増え、結局取り逃がす形となってしまった。
レジスタンスのジャッカスというアンドロイドからの依頼でアンドロイド研究の手伝いをした。
司令部からの任務で連絡の途絶えたヨルハ部隊を探すためにブラックボックス信号の発信されている遊園地に行った。
ここまで、2Bに特に変わった様子は見られない。9Sは記憶に残っているこれまでの2Bの奇行を悪い夢か何かだと思うことにした。きっと疲れていたのだろう。アンドロイドだって休息は必要だ。
そもそも、記憶には残っているが、実際に9Sが2Bの奇行を目にしたことはない。不思議な記憶ではあるが、あまりに気しないのが得策だろう。
アンドロイドが連絡を絶った原因は、1体の機械生命体によるものだった。まるでドレスを纏った歌姫のようなその機械生命体は、自分の体をアンドロイドの体で装飾し、他のアンドロイドは生きたまま兵器に改造されていた。「美しくなるんだ」という彼女の叫びは、悲しさにあふれていた。
敵からのハッキングを受けながらも、2Bと9Sはその機械生命体を撃破する。機械生命体の破壊と同時にアンドロイド達も停止した。
2人が機械生命体のいた劇場のような建物を出ると、白旗を背負った機械生命体が待っていた。なんでも、「壊れた機械生命体を倒してくれたお礼がしたいので村まで来てほしい」のだとか。
罠かもしれないが、情報収集のために向かうことにする。
途中で地上から月面基地に資材を打ち上げている場面を見た。2Bは見たことがなかったようなので9Sは説明をしたが、「なるほど」という返事とは裏腹に、彼女はどうでもよさそうに空に上がる物資を見ていた。
◇◇◇
案内された村では機械生命体達が皆、白旗を振っていた。その中でも他とは見た目が違う機械生命体が白旗を置いて2人に話しかける。
「・・・まず最初に聞いていただきたいことがあります。私達は貴方の敵ではありません」
機械音声ではあるものの、優しさを感じる声でその機械生命体は語る。
「2B!機械生命体の言う事なんて信じちゃダメです!」
9Sは警戒して目の前の機械生命体を見る。いつでも武器は操れるようにしておく。
「・・・確かに、貴方達にとって私達、機械生命体は敵です。私の名前はパスカル。この村の長をしています。この村に住む者達は・・・戦いから逃げてきた平和主義者しかいません。良ければ、皆さん自身の目で確認してみてください・・・」
そう言って、パスカルと名乗った機械生命体はまた白旗を振ろうとした。
その瞬間、パスカルの首が飛んだ。倒れて動かなくなったパスカルの胴体が爆発する。
一体何が起こったのか、9Sにも村に住む他の機械生命体にも分からなかった。9Sが横を見れば刀を握った2Bの姿が映る。突然の出来事に、彼女がパスカルを斬ったのだと理解するのに数秒を要した。
「死ンダ・・・」
村人の1人がぽつりと呟く。
「パスカルおじチャンが死ンダ・・・」
「殺さレタ・・・」
「殺されテ死ンダ・・・」
パスカルの死を村全体が理解したその瞬間、村は悲鳴に包まれた。
逃げ惑う者、怯えて振るえるだけの者、許しを請おうとする者、何もできずにいる者。パスカルを斬った2Bに怒って攻撃してくる者は1人もいなかった。当然だ。ここは戦いを放棄した機械生命体達の村であり、彼らは戦う術を持たないのだから。現れた殺戮者に対して彼らは恐怖する以外の方法を持たない。
2Bは他の機械生命体も次々に斬っていく。村の中を走り回って1人の例外もなく殺し、逃げようとする者はポッドで撃ちぬいた。
9Sはその光景を見ていることしかできなかった。そうして2Bが全ての機械生命体を殺し終わると、村は静寂に包まれた。静かなはずなのに、9Sの耳には彼らの悲鳴がまだ残っている。
「2B、何で・・・?」
思わず、そんな声が出た。機械生命体なんて今までもいくらでも殺してきた。だというのに、目の前の光景は9Sの目にはひどく理不尽に映った。
「何で?機械生命体の言葉に意味なんてない。機械に心なんてない。ずっとそう言い続けてきたのは貴方よ?9S」
そう言う2Bの声はなんだか感情がこもっていて、少し嬉しそうに感じた。
「フ、フフ・・・フフフ・・・フ、フフフフフ!フフフフフフフフ!!」
もう我慢できない。
「アハハハハハハハハハハハ!!!」
そんな風に2Bは笑う。
そんな2Bを見ながら、9Sは1つ気付く。もしかして2Bはウィルスに感染しているのではないかと。遊園地の劇場で戦った奇妙な機械生命体。彼女からハッキングを受けた時、2Bは感染してしまったのではないか。
こんな状況ではもう意味のない思考だとは分かりつつも、9Sは理由を考えずにはいられなかった。例え彼女の奇行が頭の中に残っていたとしても、彼女はこんな殺戮を楽しんで行うような人ではない。そう思いたかったからだ。
思えば、空へと送り出される物資を2Bがどうでもよさそうに見ていた時点で気付くべきだったのかもしれない。任務に忠実な彼女が、仲間である他のアンドロイドにも関わる物資に関して無関心なはずがないのだから。今となってはもう遅い。ただ、彼女の狂った笑いの原因がウィルスのせいであってほしいと、9Sはそう願うことしかできなかった。
◇◇◇
暴走したアンドロイドによって、敵意のない機械生命体の村はは全滅した。
かくして平和的な機械生命体は駆逐された。誰も寄り付かなくなった村の中から、時折アンドロイドの笑い声が聞こえるという。
NieR:Automata
[N]o man's village
◇◇◇
「おや・・・」
気がつけば、パスカルは村の中に立っていた。手には白旗を持っている。
「確か2人のアンドロイドに会っていた気がするのですが・・・」
パスカルは何も覚えていない。何も知らないうちに殺された彼は、2Bの殺戮を目にすることなく死んだのだから当然の話ではある。それが幸か不幸かは分からないが。
待っていると、機械生命体に連れられて2人のアンドロイドがやって来た。どちらも記憶にある姿だ。初対面のはずなのに記憶に残っているというのも変な話ではあるが。
(これがデジャヴというものなのでしょうか?)
そんなことを考えていると、2人のアンドロイドは自分の元へやって来た。
「まず最初に聞いていただきたいことがあります。私達は貴方の敵ではありません」
パスカルがそう言うと、2人は何も言わなかった。
「やはり、信じていただけませんか。・・・確かに、貴方達にとって私達、機械生命体は敵です。私の名前はパスカル。この村の長をしています。この村に住む者達は・・・戦いから逃げてきた平和主義者しかいません。良ければ、皆さん自身の目で確認してみてください・・・」
そう言うと、2人のアンドロイドは頷いて村の機械生命体達から話を聞きに行った。その様子を見ながらパスカルは、良かったと思った。
相互理解は会話をしなければ得られない。このアンドロイド達とは良い関係を結べそうだ。
ただ、男性型のアンドロイドの方が何やら複雑そうな顔をしていたのが少しだけ気になった。
アンドロイドが皆殺しにしなくても機械生命体が皆殺しにするからどっちみちパスカルの村は滅ぶんだなあと考えると胸が痛い。