本編と合わせて全部でキリよく40話か45話になるように終わらせようと思ってます。
あと、今回の話、重大なミスをやらかしてます。
「イノシシの牙って知ってますか?」
それは、エミールのこの一言によって始まった。いつものようにエミールの店で買い物をさせてもらっていた2Bと9Sにエミールはそんなことを言ったのだ。
「イノシシの牙?イノシシから肉をはぎ取ることはありますけど」
9Sが首を傾げる。
「人から聞いたことなんですが、イノシシの牙を持つ戦士にはイノシシが敬意を払ってくれるって言い伝えがあるんです。慣れれば乗せてくれるんだとか」
「つまりそれがあれば餌をやらなくてもイノシシに乗ることができる?」
2Bの言葉にエミールは頷く。
出来る事なら動物の餌を買う金があるなら武器の強化やチップの購入に使いたい。イノシシの牙1本でそれが叶うならば、試してみる価値はあるだろう。
「2B!やってみましょう!」
「分かった。やってみよう」
2人は互いに頷く。
「探すならなるべく大きい牙を持ったイノシシを探してくださいね。昔に比べてイノシシの数も増えましたが、その分あまり大きいイノシシは見かけなくなりましたから。大きなイノシシの牙なら大抵のイノシシは相手の方が上だと理解してくれるはずですよ」
そう言ってエミールは去っていく。いつもの奇妙な歌を歌いながら。
「・・・大きい牙のイノシシですか。少なくとも僕らが普段見てるイノシシよりも大きくなくちゃダメですよね?」
9Sは考える。白いイノシシなら時々見かけるが、牙の大きいイノシシは今まで一度も見た事がない。牙が大きければそれに合わせて体も大きくなっていることだろう。はたして本当にそんな目立ちそうなイノシシが見つかるのか。
「ポッド、探せる?」
「了解、辺り一帯の生体反応をスキャン・・・森の国方面に該当アリ」
「いるってことですか!?」
「可能性は高い」
意外にも可能性はあっさりと見つかった。なんだか拍子抜けだと思いながらも、2人は森の国へと向かう。
◇◇◇
「見つかるにはみつかったけど・・・」
森の国で2Bと9Sは、思ってた以上にあっけなくイノシシを見つけた。見つけたまではよかった。
「大きすぎない?」
2人の目に入ってきたのは、普通のイノシシの数倍の大きさのイノシシが突進で大型の機械生命体を吹き飛ばす光景だった。
「確かに大きなイノシシを探してはいたけど、露骨すぎません・・・?」
9Sは軽い気持ちでイノシシを探したことをもう後悔し始めていた。正直、相手にしたくない。普通のイノシシだって攻撃されると結構痛いのだ。酷い時など数発突進を受ければもう虫の息だ。だというのに大型の機械生命体すら軽々と吹っ飛ばす巨大イノシシ相手にどう戦えというのだ。
「9S、真正面から正々堂々戦う必要は無い。私達は牙さえ入手できればいい」
「そ、そうですね!イノシシの討伐が目標っていう訳じゃないですもんね!」
2Bの言葉に、やる気を失いかけていた9Sにも希望が見えてくる。
「という訳で囮になって。9Sが襲われてる隙を見て私が牙を斬り落とすから」
「2B!?」
次の言葉で希望は無残に砕かれた。9Sが抗議する暇もなく、彼は2Bによってイノシシの前まで投げ飛ばされる。悲しいことに、いくら9Sが男性型で2Bが女性型といっても、調査目的のアンドロイドである9Sが戦闘用アンドロイドの2Bに勝てる訳がなかった。
「うわあ!?っとと・・・」
尻もちをついて地面に着地した9S。そんな9Sをイノシシはじっと見つめている。
「・・・」
「・・・」
お互いにしばらく無言で見つめ合う。動いたら死ぬ。直感で9Sはそう思った。
「誰ダ!キサマ!コノ国カラ出テ・・・」
それは突然の出来事だった。森の国の住人であろう機械生命体が叫びながらこちらに近づいて来たと思ったら、叫び終わる前にイノシシの突進によって機械生命体は破壊されていた。
機械生命体の叫び声で興奮したイノシシは興奮が醒めないようで、さらに9Sに向かって突進してくる。
「う、うわあああぁぁぁッ!?」
慌てて逃げようとするが、尻もちをついた態勢だったため、起き上がるのに時間を取られる。
「お、追いつかれる!死ぬ!死んじゃう!」
もうダメだ。そう思ったその時。
森の木の上から2Bがイノシシの真上に飛び出した。
刀を両手に握り、落下の勢いでイノシシの牙を狙う。
だが、突然イノシシは9Sから目を離し、後ろを振り向く。野生の勘というヤツだろうか。向きを変える勢いで横に振られた巨大な牙が2Bを吹っ飛ばし、2Bの体は近くの木に叩きつけられる。
「2Bッ!!」
9Sが駆け寄って2Bを引き起こすが、そうしている間に2人の近くにイノシシは近づいて来ていた。
今度こそ終わりだ。そう9Sが思ったその時だった。
「アア!ココニイタンダ!」
声が聞こえてきた方を見ると、頭を布で巻いた機械生命体がいた。森で動物達を保護している機械生命体だ。
するとイノシシは機械生命体に近づき、頭を擦り付ける。
「ヨシヨシ」
機械生命体も、イノシシの頭を撫でる。
「コノコトアソンデクレタンダネ!アリガトウ!」
機械生命体はそう言うと、イノシシに乗って森の奥へと帰っていった。
「・・・」
「・・・」
2Bも9Sも言葉が出なかった。元々こちらが起こした事ではあるが、まるで嵐のような時間を過ごし、あっという間ながらどっと疲れた気分だった。
「疑問、イノシシの牙はどうするのか?」
「・・・アレは、無理だよ」
「・・・うん」
ポッドの疑問に対して2Bと9Sはそう答えるしかできなかった。
◇◇◇
次の日。レジスタンスキャンプで2Bが起きると、道具屋に声をかけられた。
「よお、2B。新しい商品を仕入れたんだ。よかったら見ていかないか?」
道具屋にそう言われ、商品を見ていると、奇妙なものを発見した。
「・・・この『匂い袋』っていうのは?」
「コレか?これは動物の好む匂いを出す袋でな、コレさえあれば餌要らずで動物にも乗れちゃう優れモノよ」
「・・・」
そうこうしているうウチに9Sがやって来る。
「2B、今日もイノシシ探すんですか?」
「ああ、9S。イノシシは、もういいや・・・」
匂い袋は動物が逃げなくなるだけで、餌ナシで乗れるようになるのは高級な匂い袋からです。
そして、その高級な匂い袋はサブクエスト、「動物の看護」の報酬です。
ここまで言えば分かるわね?
書き終わってさあ投稿するぞって時になって気になって調べてみたらこのザマです。