昔々、とある村に兄と妹の兄妹が住んでいました。両親は死んでしまい、妹の方は謎の病気であまり元気に動くことができません。
そんな兄妹を支えてくれたのがとある姉妹でした。その姉妹はとても美しく、村の人達に慕われていました。姉の方は村の中でよく歌を歌っており、その綺麗な歌声は村の人々の心を癒します。妹の方は村の図書館の館長をしており、よく兄に仕事をくれました。
ある日のことです。村に恐ろしい怪物達が現れました。怪物達の親玉は、兄妹の妹の方を攫って行ってしまいました。兄は怪物の親玉から妹を取り戻そうとしましたが、親玉に返り討ちにされてしまいました。
それから5年。成長した兄は怪物の親玉の手がかりを見つけ、仲間の女と少年と共に、怪物の親玉がいるという城に乗り込みました。
城の中には、村で世話になった姉妹が兄達を待っていました。姉妹は怪物の親玉の手下だったのです。
本当は戦いたくない。しかし、妹を取り戻すため、兄は姉妹と戦いました。そして、姉妹の姉の方を倒したのです。
姉を失った怒りと悲しみで妹は暴走し、ありったけの魔力で世界を滅ぼそうとしました。しかし、兄の仲間の少年の尽力によって、世界は滅びずに済みました。
そして兄は、怪物の親玉を倒し、妹を取り戻したのです。こうして、怪物達の企みは失敗に終わったのでした。
怪物達の企みとは何だったのか?それは―――
◇◇◇
デボルとポポルは治療・メンテナンスに特化した旧型のアンドロイドだ。過去に自分達の同型機が暴走し、大事故を起こしたことで、ほとんどの同型機は処分された。彼女達は事故について贖罪の意識を持っている。一部のアンドロイドから邪険に扱われても、危険な雑用を任されても、それが贖罪だと、罰だと受け入れている。
だが、彼女達は知らない。同型機が起こしたという事故の内容も、湧き出てくる罪悪感が仕組まれたシステムだということも。それでも彼女達は償い続ける。生きている限り、彼女達は贖罪を続けるのだ。
「ここは私達がなんとかする」
「君は『塔』への扉を開いて」
9Sを助けるために機械生命体の相手を引き受けたデボルとポポル。それもまた贖罪だ。贖罪なのだが・・・。ポポルはバレないように横目でちらりと9Sを見る。9Sは塔の扉に向かってハッキングを続けている。気がついたら9Sがいなかったという記憶がどうにも頭から離れない。今度は大丈夫だろうな?という不安があるのだ。
機械生命体を破壊していくデボルとポポルだが、いくら破壊しても機械生命体は次から次へと現れる。段々と機械生命体を破壊するスピードが機械生命体が現れるスピードに追い付かなくなってくる。そろそろ限界が近い。
「く・・・9S、まだか!?」
デボルがハッキングをしているであろう9Sの方を振り向く。
「がんばれー☆がん・・・あっ」
9Sはハッキングそっちのけで応援していた。しかもなんか軽い。
「な・・・な・・・!?」
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。デボルが言葉が出なかった。
だが、ポポルの方は・・・。
「お前はさっきから何やってんだアアアアアァァァァァッ!!!」
我慢の限界だった。逃走。応援。贖罪なんかもうクソくらえ。ポポルは手に持っていた刀を9Sに向かって全力投球する。投げた刀は見事に9Sの頭にぶつかり、9Sは倒れる。
「ぽ・・・ポポル・・・」
デボルが引いてるような気がするが知ったことか。だが、忘れてはならない。こんなことをしている間にも機械生命体は数を増やして3人を取り囲んでいるということを。
◇◇◇
なぜか9Sは塔へのハッキングを中止し、戦うデボル・ポポルを応援し始めた。
当然だが、結局、数に押し切られ3人は圧殺された。
NieR:Automata
reckless bra[V]ery
◇◇◇
「9S・・・」
「来ると思っていたよ」
これで3度目だ。
9Sを通り過ぎて後ろの機械生命体を破壊するデボルに対して、ポポルが9Sの頭をガッシリと掴む。
「今度ハちゃんとヤレよ・・・?」
「え?あ、はい・・・って痛い痛い痛い!!」
ギリギリと頭を掴む手に力を込め、まるで見つめるだけで殺しそうなくらいに瞳孔の開いた目でこちらを見つめてくるポポルに9Sは思わず敬語になる。笑ってるけど笑ってない。ポポルはそんな表情をしていた。
「ぽ・・・ポポル?」
デボルも引いていた。それがどうした。こっちはこれで3回目なのだ。3度目の正直。仏の顔も三度。また変なことを繰り返すようならば今度はきっちり殺してしまうかもしれない。それ程までにポポルの怒りは頂点まで来ていた。正直、何も覚えていないデボルが羨ましい。
怒りに任せて機械生命体を破壊する。八つ当たり気味ではあるが、時間稼ぎという本来の目的は守れるので問題はないだろう。
ハッキング途中の9Sが突然塔から弾き飛ばされる。急いでポポルが代わりにハッキングを行う。塔に仕掛けられていた防御システムを突破するには、自我データを暴走させ、その自爆エネルギーを利用するしかなかった。9Sが塔に入らなければ意味がないのに彼を犠牲にしては意味がない。
ならば自分がやるしかない。全身に痛みと熱を感じる。だが、不思議と後悔はなかった。自分で決めてやったことだからだろうか。贖罪でも後悔でもなく、確かな自分の意思を初めて感じたような気がした。塔の扉が少しだけ開く。
「デボルッ!!!!」
「・・・ああッ」
ポポルの声に合わせてデボルが9Sを塔の中へと投げ込む。
最後の力でポポルは自爆エネルギーで麻痺状態となった防御システムを破壊する。そこがポポルの限界だった。意識が遠くなる。視界にノイズが走る。音もよく聞こえない。
気がつけば、機械生命体は全て破壊されていた。塔の防御システムが破られた以上、もう増援の必要はないと判断されたのだろうか。
「ポポル・・・」
デボルは倒れるポポルを抱きかかえる。ポポルはもう動かない。だが、その死に顔は不思議と嬉しそうに見えた。
「少しだけ・・・待っててくれ・・・私も、もうすぐそっちに行くから・・・」
元々メンテナンス用の旧型なのに、機械生命体と無理な戦闘を続けたせいでデボルの体はもうボロボロだった。9Sはもう塔の中を進んでいるのだろう。
1度は閉まった扉だったが、防御システムのなくなった後、塔の扉は開きっぱなしになっていた。塔の入り口の壁にポポルを寄りかからせる。眠ったように動かないポポルを見て、デボルは悲しそうに笑う。ポポルには何かが見えていたのだろう。それが少し羨ましい。
「あっちで会ったら教えてくれよ・・・」
少し休もう。ひどく疲れた。そう思いながら、デボルはポポルの隣に寄りかかった。
ネタエンドはこれが最後だけど、物語はまだ続くのです。