アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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昔々あるところに、1人の小説がいました。
その小説はシリアスにもギャグにもなりきれず、
微妙な立ち位置でいつもフラフラしていました。


[Q]uestionable actions

 2Bによって戦場から強制的に離脱させられた9S。

 彼の飛行ユニットはどんどん2Bから離れていき、現在、廃墟都市の上空を飛んでいた。

「早く2Bのところに戻らないと・・・!」

 9Sは何とかして飛行ユニットから出ようともがく。

 そんな時だった、どこから現れたのか、1体の飛行タイプの機械生命体が飛行ユニットに向かって弾を撃つ。するとなんということだろう。当たり所が悪かったのか、それとももがいている時に当たったのが悪かったのか、飛行ユニットに弾が当たった瞬間、9Sは飛行ユニットから放り出されていた。

 飛ぶ手段もなく生身で空中にいれば、当然のことながら、落ちる。

「あああああああああっ!?」

 さっきまで飛行ユニットから出ようともがいていたが、今度は飛行ユニットに戻ろうともがく。しかし、努力虚しく9Sは地面に落ちた。

 

「・・・うう、ここは・・・そうだ!2Bは!?」

 どれくらい気を失っていたのか、9Sは勢いよく起き上がる。コンクリートの地面の上から周りを見回すが、2Bらしき姿はどこにも見当たらない。

「早く2Bを探さなきゃ・・・早く・・・あれ?」

 ふと9Sは疑問に思う。何故僕は2Bを見つけなきゃいけないんだっけ?何故僕は2Bを探そうとしてたんだっけ?何故僕は2Bを気にしてたんだっけ?

「僕、なんか考え方が変わったような・・・」

「推測、地面に落ちた時に頭部にダメージ。思考回路に何らかの影響を与えた可能性」

「そっか。まあ、どうでもいいけど・・・」

 ポッドの意見を聞いても悲しみや戸惑いが湧いてくる訳でもない。前はこうではなかったような気もするが、それもどうでもよく感じる。

「警告、大型の振動を感知。地下の構造が不安定になっている模様。大規模地震の可能性を示唆。推奨、早急な離脱」

「そう。じゃあ、早く離れようか。地割れとか起きて巻き込まれたら嫌だし」

 ポッドの言葉に従い、9Sはその場をさっさと離れていった。

 

 ◇◇◇

 

 9Sは急に2Bへの興味を失った。

 理由は分からないが、とにかく全てに興味を失ったのだ。

 

 NieR:Automata

 [Q]uestionable actions

 

 ◇◇◇

 

「っは!ここは!?2Bは!?」

 9Sは起き上がる。周りを見回すが2Bらしき姿は見当たらない。

「ポッド!2Bのブラックボックス信号を検索!」

「2Bのブラックボックス信号を検知」

「地図にマーク!」

 9Sは走り出す。手遅れになる前に2Bを助けなければ。

「警告、大型の振動を感知。地下の構造が不安定になっている模様。大規模地震の可能性を示唆。推奨、早急な離脱」

「離脱なんかする訳ないだろうッ!」

 揺れ始める大地を9Sは走る。急がねば。急がねば。

「2B・・・2B・・・ッ」

 商業施設に続く橋を走る。地図にマークされた2Bのブラックボックス信号はもうすぐそこまでに近づいていた。

 そして、橋の先で9Sは2Bの姿を見た。

「2Bっ!大丈・・・」

 A2に腹を刀で刺し貫かれた2Bの姿を。一瞬、何が起きているのか分からなかった。

「ああ・・・9S・・・」

 9Sの方を振り向いた2Bは静かに、消えるような、だが優しい声でそう呟いて倒れた。

「そんな・・・2B・・・そんな・・・」

 思わず頭を抱える。目に映った光景が信じられなかった。

 A2は2Bを刺した刀で自らの髪を切った。

「ううっ・・・あああああああああっ!!!」

 叫ぶ。大地が揺れ、下から土煙が上がってくるのも気にせず、9Sは叫んだ。

「A2ッッウウウウッッ!!!!!」

 武器を手に取り、A2に向かって走る。

「殺すッッ!!!あああああっ!!」

 だが、下から現れた巨大な白い塔に橋を壊され、9Sは谷底へと落ちる。

 そして、A2も塔の出現に巻き込まれ意識を失った。

 

 ◇◇◇

 

〈ヨルハ機体、2Bのブラックボックス信号は途絶。死亡を確認。状況を共有する〉

【ヨルハ機体、9Sは本日、破損部分の復元修復が完了。再起動可能状態にある】

〈ヨルハ機体、A2も再起動予定。確認、A2及び9S機体の安全の確保〉

【問題ない】

〈ならば、残りの課題は二つ。我々はヨルハ支援システム。A2及び、9Sの機体が稼働するなら随行支援する義務が存在する〉

【同意】

〈そして、我々は全ての結末を見届ける必要がある〉

【同意。我々は全てのエンディングを見届ける必要がある】

 

 ◇◇◇

 

「おはようございます。A2」

 A2が目が覚めるといきなり箱型の機械の挨拶を受けた。

「何だ・・・お前?」

「私は随行支援ユニット『ポッド042』。ヨルハ機体A2の射撃支援を担当」

「そんな事・・・頼んでない」

「肯定、A2からの依頼は受けていない。この行動は前随行対象機体の2Bからの最終命令として記録されている」

 戸惑うA2をよそにポッドは勝手に話を進めていく。突き放そうとしても勝手についてくる。

「要請、ヨルハ機体A2の行動目的の開示」

 

「おはよう。よく寝たな。9S」

 9Sが目覚めると2人組の女性型アンドロイドがこちらを見つめていた。

「レジスタンス・・・キャンプ・・・」

 デボルとポポル。赤い髪の2人のアンドロイドは治療・メンテナンスに特化したモデルであり、谷底に落ちた9Sを見つけ、治療したのも彼女達だ。

 彼女達に礼を言い、レジスタンスキャンプの外に出ると巨大な白い塔が目に入ってきた。バンカーもなく、命令もない今、9Sはとりあえず塔を調べてみることにした。

 

「エンディング取得数、18」

 2人のポッドがそれぞれに呟く。

「まあ、頼まれてしまったしな・・・。気が向いた時にでもな」

「2Bがやろうとしてたことは、僕が受け継ぐよ・・・」

 もはや明確な目標など存在せず、ただの個人の思いだけで2人は行動を開始した。


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