アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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2週目限定のエンディングは3つしかなく、序盤に2つ、通常エンド1つという配置のため、道中は丸ごとカットです。


mission [F]ailed

 廃工場の防衛システムの解除に成功した9S。

 しかし、廃工場に突入する予定だったヨルハの攻撃部隊はほとんど全滅。ただ1人残った2Bと合流することになった。2Bと出会った時、彼女は巨大な丸ノコのような兵器と戦っていたが、これは目標の大型兵器ではないらしい。目標を探すため、飛行ユニットに乗っている9Sは廃工場の外側から、2Bは廃工場の中を探すこととなった。

 

 ポッドからの報告で2Bが目標の大型兵器との戦闘を開始したことを知り、9Sは援護に向かう。それは巨大な丸ノコを腕として振るう、さらに巨大な機械生命体だった。

 9Sはハッキングによって敵の撃ち出したミサイルの制御を奪い、撃ち返すことに成功する。しかし、ミサイルの爆発にもひるまず、敵は巨大な腕を2Bに向かって振り下ろす。

「ブーストッ!!」

 飛行ユニットのスピードを急激に上げ、9Sは敵の腕に突撃する。飛行ユニットがぶつかった衝撃で振り下ろされた腕が2Bを叩き潰すことはなかった。しかし、飛行ユニットの態勢を立て直すことができず、迫りくるもう片方の腕に対して躱すことも防御することもできなかった。

 敵が振り上げた腕に打ち上げられ、飛行ユニットから切り離された9Sの体は敵の体の上に叩きつけられる。

 

「ここは・・・」

 9Sの意識は真っ暗な空間で目覚めた。暗闇が周りを覆い、音も聞こえないが、ハッキングでデータの中に侵入している時の感覚に似ている。

「リカバリーセクタ。各ブロックのアクセス不良を解除せよ」

 意識の中に直接ポッドの言葉が届く。ああ、そうか。ここは自分のデータの中かと9Sは理解する。ならば、早く解除して意識を復活させねば。

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・。

 

「・・・迷った・・・」

 さっぱり分からない。自分は今どこを通っているのだろう。さっきから壁にぶつかってを繰り返して全然先に進んでいない。まさか自分のデータの中で迷子になるとは思わなかった。数分間ただひたすらに迷い続け、うろうろと自分のデータの中を行ったり来たり。段々と意識が薄れてくる。・・・あれ、そういえば、壁に沿って行けばそのうち目的の場所にたどり着いたのでは。こんなに無意味にうろうろする必要もなかったのではないか。

「・・・あ、もう限界・・・」

 9Sの意識が途切れる。

「ブラックボックス信号停止。9Sの死亡を確認」

 真っ暗な空間に、ポッドの無慈悲な言葉だけが残った。

 

 ◇◇◇

 

 超大型兵器を繰り出す機械生命体にヨルハ部隊は劣勢を余儀なくされる。

 ヨルハ部隊の壊滅も時間の問題だろう。人類の栄光への道は途絶えた。

 

 NieR:Automata

 mission [F]ailed

 

 ◇◇◇

 

「・・・あれ?」

 気がつけば9Sはバンカーの自室にいた。

 確か自分は作戦のために廃工場の現地調査に行ったはずだ。

「・・・ポッド、状況説明」

 ポッドが言うには、現地調査と廃工場の防衛システムの解除を終えた9Sはヨルハ部隊の2Bと合流。協力して敵大型兵器の破壊に成功するも、敵は1体ではなかった。最後の手段として2Bと9Sはブラックボックスを使って自爆したとのことだった。

 

 アンドロイドはバンカーへ自身のデータをアップロードすることによって、死んでも記憶を引き継いで復活することができる。しかし、今回の作戦では2人分のデータを送っている時間は無く、2Bのデータのみをバンカーに送ったため、9Sには2Bと会ってからの記憶がなかった。

 バンカーを歩いていると2Bに出会いお礼を言われたが、9Sにはいまいちピンとこなかった。

 

 さらにバンカーを歩いていると、オペレーターの21Oが何かを壁に張っていた。

「オペレーターさん?何してるんですか?」

「9Sですか。司令官からの命令でバンカーに張り紙を張って回っているところです」

 なんとなく、壁に張られた紙を見てみる。

 

 注意事項

・OSチップは特別な理由がない限り外さないこと。

・バンカー内での自爆は如何なる理由があってもしないこと。

・アジは絶対食べないこと。

 

「・・・なんですか、これ?」

「命令を出したのは司令官ですから。私には分かりかねます」

「メールで全ヨルハ部隊に伝えればいいだけじゃ・・・」

「常に見えるようにしておきたいそうですよ。変な行動に走らないようにするためだとか」

 21Oは淡々と答える。疑問はあるものの、考えないようにしているといった感じだ。

 しかしながら、司令官は一体何を考えているのだろう。意味もなくOSチップを外したりバンカーで自爆したりするようなアンドロイドがいると本気で思っているのだろうか。

「ところで、暇なら張り紙の貼りつけを手伝ってくれませんか?」

「え!?いやー・・・実は僕これから任務で・・・」

「オペレーターにその嘘のつき方は意味ないですよ?」

「うぐ・・・分かりました・・・」

 がっくりと肩を落としながら9Sは21Oの作業を手伝う。

 この後9Sは2Bの起動セットアップ、地上のレジスタンスとの合流、砂漠の機械生命体退治、遊園地でのアンドロイド失踪、平和を愛する機械生命体の村、既に絶滅していたエイリアン、森の国での戦い、海に現れた巨大な機械生命体など、様々な出来事を経験することになる。

 しかし、それらは全てここでは描かれることのない別の話だ。


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