仮面ライダー555 ~灰の徒花~   作:大滝小山

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三十連ガチャの結果

鈴鹿御前 1体
メルトリリス 2体

パッションリップ 0体


課金のための十三拘束(シールサーティーン)脳内議決開始(デシジョンスタート)……!


そんなわけで、イベント完走もしていない小山です。リップは弱くない、むしろかなり優秀な壁役なんじゃないか……?


今回は前回の補足的な内容からスタート。ぶっちゃけそうでもしないと字数が足りなゲフンゲフン

いよいよ、彼らが本格的に動き出す!
仮面ライダー555 in a flash!(このあとすぐ!)


第2話 A

「ちょっと、おい! 何なんだあの化け物!」

 

 取り乱す大牙の腕を引き、里奈は非常口を目指していた。

 そこまでたどり着けば、デルタギアがある。今は三原が抑えているようだが、彼はデルタフォンしか持っていない。残りのツールはツールボックスに入れて保管しているのだ。

 

「ごめんなさい、あなたを巻き込むわけには行かないの!」

「巻き……」

 

 大牙は思わず言葉を詰まらせた。

 それはすなわち、自分は無力だということだ。

 

「――着いた」

 

 安堵している場合ではない。

 停めてあったバイクからツールボックスをひっつかみ、

 

「あなたは行って! 私たちは大丈夫。手品はまた今度、披露してもらうから!」

 

 それだけ言って、大急ぎで三原に届ける。

 

 三原はなれた手つきで変身し、オルフェノクを追いつめる。

 そこにかつてのような臆病さはなく、ただ強い意志を感じる戦いだった。

 

 

 

 だが、里奈は信じられないものを目にすることになる。

 ターゲットマーカーを打ち込み、そこに跳び蹴りを叩き込むデルタに先んじるように、黄緑色の光弾がオルフェノクを貫いた。

 蒼い炎があがる様子は、トドメは別の誰かによるものだということを物語る。

 

 ――新たな火種の存在を、θの紋章が浮かび上がらせていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「――新しい、ライダー?」

 

 思わず聞き返したのは、真理の理解の範疇にない話だったからだ。

 

「うん、多分そうだろうって。 三原君が」

 

 敬太郎は、顔を正面に向けたまま答えた。鏡に映る自分と真理は、ちょうど正面を向いている。

 オルフェノクの襲撃を乗り越えた翌日、真理に散髪してもらうと共に、話題を共有する。無論、昨日の今日で真理がその事実を知るはずもなく、最初から最後まで説明した訳だが、

 

「でも何でそんな…… やっぱり、スマートブレイン?」

 

 真理は信じられないといった様子であった。

 

 一度、巨大企業「スマートブレイン」は経営陣の失踪が相次ぎ、事実上の解散状態だったことがある。その状態は四年ほど続いたが、突如として新社長が就任した。

 

蛇神大地(へびがみだいち)だっけ? 新しい社長」

「どうして今更、っておもったけど。 あれからずいぶん変わったし」

 

 真理達が驚くのも無理はない。だが、この新社長は、売りに出されていたかつての関連企業を次々と買い戻し、一年後には新たな商品を展開したのだ。

 それまでのスマートブレインの商品は、市場に出回ることはほぼ無く、謎に包まれた印象であった。しかしこのとき、一般市場に向けて発売した新型携帯電話は飛ぶように売れた。

 インターネット接続に対応し、タッチパネル液晶を採用した『コンピューターとして仕事ができる携帯電話』――いつしか、『スマートフォン』と呼ばれるようになった携帯端末だ。

 

 まともな企業なら、経営陣の抜本的な改革による経営体質の変化ととるのだが、――その中身がまともでないことを、真理達は知っている。

 今まで特に困らないという理由で携帯電話の機種変更などはしていないが、さすがに五年もたてば、世間はスマホ一強だ。他社も続けと後追いの機種も現れたが、真理達はいまだに従来型の携帯電話を使っている。

 果たして本当にまともな企業に生まれ変わったのか、確信が持てなかったからだ。

 

「周りは専用のアプリで連絡取るのが当たり前になってるけど、やっぱりみんなとは直接顔をあわせたいし」

 

 結果、真理には同じ美容師の友人が極端に少ない傾向にあるのだが、理性でどうにかできる問題ではないのであった。

 

「そう言えば、さっきの話に出てきた木村君って、どんな人?」

「うーん……」

 

 当然というべきだろう。()()敬太郎がまた新たに下宿人を迎え入れたのだ。かつての自分たちのようで、なんだか放っておけないのと同時に、悪い人間だといけないという思いもある。

 そうとは知らず、敬太郎は大牙のことをどういう風に伝えるべきか悩んでいた。悪い人間ではないと思うのだが、つかみ所のない人間には違いない。

 

「お店はあんまり手伝ってはくれないかな。なんか『やる気マックスファイヤーの時以外は働きたくないでござる』とか言ってたし」

「…………その人、ほんとに大丈夫なの?」

 

 真理はまだ見ぬ木村大牙という青年に大きな不安を抱いた。

 

「い、いや、でもやる気になったらすごいんだよ! ほんとに手品みたいで、パパっと終わらせる感じで」

 

 必死にフォローする敬太郎にため息をつく。

 もっとも、彼に気に入られるぐらいなのだから、実際に悪い人間ではないのだろう。

 とはいえ、一度会わないことにはわからないこともある。

 

「今度、会わせてくれる? やっぱり、ちょっと気になるし」

「あ、うん、えっと……」

 

 そこで敬太郎は、はっきりしない様子で頷いた。流石におかしいと思った真理が、どうしたのかと訪ねる。

 

「実は大牙君、スッゴい方向音痴らしくて」

「……? それがどうかしたの?」

「オルフェノクが襲ってきたとき、ちょっと余裕がなくて、里奈ちゃんの案内で裏口から逃げてもらったんだ」

「そう言えば敬太郎、そのとき逃げなかったんだっけ」

 

 以前なら、助けを求めて真っ先に逃げたはずだ。もちろん、戦う力がないから、という理由が一番だが。

 しかし敬太郎は、少し恥ずかしそうにして、

 

「逃げようとしたんだよ。たっくん呼んで、それで僕も逃げなきゃって。でも、出来なかった」

 

 この気持ちは、真理にも理解できた。

 あのベルトは、オルフェノクを倒すための代償として、変身者の命を要求する。巧は長く生きているが、それだけにベルトの力を行使するには勇気がいるだろう。

 

 今度ファイズになったが最後、彼の身体は灰と化すかもしれない。

 

 その想像は、敬太郎が巧を呼ぶことを踏みとどまる原因となった幻像(ヴィジョン)と同じだった。

 

「それで、大牙君だけど」

 

 物思いに耽る真理を、話題を続ける敬太郎が引き戻す。

 

「裏口から外に出たところまでは里奈ちゃんが見てたらしいんだけど、その後すぐデルタギアを持って行くために戻ったらしいんだ」

「え?」

 

 三原が変身したことは聞いていたが、わずかな違和感が真理の脳裏に引っかかる。それは、直前までファイズギアの性質を思い浮かべていたからかもしれない。

 しかし、そのわずかな違和感は、すぐ別の懸念に取って代わる。

 

 ――方向音痴の木村大牙。里奈はすぐにとって返したという。彼女が見たのは、裏口を出るところまで。

 

「それって……」

「実は大牙君、昨日から帰ってなくて、連絡もとれなくて」

 

 真理は思わず力が抜けた。体勢を整えようとする刹那、ジョギリ、という音とともに、妙な感触が返ってくる。

 

「「あっ……」」

 

 その声は、ほぼ同時に発された。

 真理は、取り返しのつかないミスに顔を青くして。

 敬太郎は、突然の喪失に呆然としながら。

 

 敬太郎の髪は、天辺近くをごっそりと刈り取られていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 前川裕也(まえかわゆうや)はサラリーマンである。

 それも、平の社員などとは格が違う、一流の企業の、限りなくトップに近い立場――副社長のポストを戴いている。

 

 今日も彼は、ネクタイをしっかりと締め、スーツ姿で出勤する。目的地は、スマートブレイン本社。

 彼は常に誇りを持って、精力的に働いていた。

 ここの社長には大きな恩義がある。彼はスマートブレインのためというよりは、蛇神社長のために働いているのだ。

 

「おはようございます」

 

 出勤するとまずは挨拶。

 彼は上に立つ者ほど礼儀を欠かしてはならないという信念の元、知り合いからほとんど接点のない新入社員にいたるまで、出会った際の挨拶を欠かさない。

 デスクに就けば、その日のスケジュールを確認したあと、関連企業から上ってきた報告書に目を通し、その内容を精査し、社長に向けた報告書類を作成する仕事などが待っている。

 

「ハーイ❤ お待ちしていましたよ、副社長♪」

 

 どうやら今日は、予定外の仕事が入ったらしい。

 鼻にかかったような甘ったるい声で、こちらを小さな子供のように扱う妙齢の女性。

 本名不詳。我が社(スマートブレイン)のイメージCMに出演しているが、その頃と変わらぬ姿を今でも保つ、人間であるかも不明な社長秘書。

 

「――スマートレディ」

 

 前川は、そんな彼女の自称――これが本名とは考えにくい――を口にした。

 彼女は、いつもの奇抜な格好で前川のデスクに腰掛けていた。前川が名前を口にすると、デスクから降りて、タブレット端末を手渡す。

 

「社長から緊急の相談だそうで~す♪ 例の計画について、ですって」

「何ですって!? すぐによこしなさい!!」

 

 言うが早いか、ほとんど奪い取るような形でタブレット端末を受け取る前川。

 

『――止めなよ。夢中になると周りが見えなくなるのは、君の悪い癖だぞ』

 

 突然、端末から声が聞こえてくる。それは、変声器(ボイスチェンジャー)を通して加工された、相談と言うには微塵も本音を語ろうとしない態度であった。

 

「っ! しゃ、社長!」

 

 それでも前川はうろたえた。彼は、大恩のある蛇神に棄てられることを酷くおそれていた。

 

『ああ、いい。話が進まない。僕は会社の経営に関してはすべて君たちに任せている。その意味は分かるだろう?』

「は、はい! もちろん!!」

『ならいい。時間は有限だ、有意義に使おうじゃないか』

 

 そういった後は、電話越しの蛇神との会談は何事も無かったかのように次の話題へ進む。

 

『――それで、計画の進捗はどうだ』

「はっ、すでに収集したデータを解析、その反映についての研究が必要とのことで、現在試作機のテスターを抽選しています」

 

 それは、計画の全容を知る者にしかわからない言い回しだった。

 あるいは、乾巧や園田真理といった、十年前の戦いを乗り越えた者たちなら、その一端ぐらいは捉えたのだろうか。

 

『くれぐれも、滞りの無いようにな。そのベルトの開発は、我々の悲願だ』

「心得ております」

 

 前川は額の汗を拭い、スマートレディはただ静かに微笑んだ。

 スマートブレインの裏の顔、それはすなわち、オルフェノクの王を戴く彼ら(オルフェノク)の巣窟。

 

『我々は、世間一般でいう、悪の存在だと思うかね?』

 

 唐突に蛇神は訪ねた。オルフェノクという存在の意義について、自らの部下に問う。

 

『人を襲う、人類の進化系。歴史を紐解けば、同族殺しなど常に行ってきたというのに、我々だけは《特別》だ』

 

 良くも、悪くも。

 人が死を乗り越えた結果がオルフェノクという存在なら、それは素晴らしい奇跡だろう。

 

「本来なら。

 本来なら、オルフェノクという存在は崇敬すべきだと、私は思っています。だが、人間は狭量だ。ひとたびその姿をさらせば、それは恐怖に変わる」

 

 前川は狂ったような面持ちでまくしたてた。

 否、実際彼は狂信していた。オルフェノクという存在に。そして、蛇神大地という男に。

 

「だが、このベルトが完成すれば、オルフェノクの繁栄を阻むすべての障害を取り払うことができる! 神に等しき種族が、この地上を席巻する!」

 

 モニターの奥から苦笑する気配があった。しかし、それは錯覚かもしれない。

 タブレット端末のモニターの表示は『SOUND ONLY』。実のところ、前川は一度も蛇神大地という男の顔を見たことがない。

 

『ああ、完成を心待ちにしているよ。次代の王の、手足となる存在だ。その能力は、洗練されたものでこそ、さ』

 

 不気味な笑い声が、再びこの世界に恐怖を振りまこうとしていた。




スマートレディは結局なぞめいた存在として、その末路を含めて多くを語られることはありませんでした。そういったキャラクターは少なくなく、つまり何がいいたいかというと、井上さん、伏線残しすぎ!そこから生まれた展開も少なくないんですがっ!

5/8 タグ追加(ネタ成分あり) 伏見つかさ先生、そのパワーワード、勝手に使っちゃいます……すみません
5/11 あのジャンクション、in a flash (訳:一瞬で、ぱっと)ぽいです…in the flash (フラッシュで)じゃあ意味が通じないわけだ…

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