仮面ライダー555 ~灰の徒花~   作:大滝小山

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①里奈デルタ、活躍終了。何故だ。
②企む彼女と早帰り琢磨。
③大牙「こう、ない? 今自分かっこいいとか最強とか思う感覚?」
 (((中二病……?)))
④You're theta!
 コード〈シータ〉を入力せよ!(Pi…Pi…Pi…STANDING-BY)
 「変身!」(COMPLETE)シータ、発動!
 DXシータドライ(ry


シータとライオトルーパー、二種の量産ライダーが激突する!
仮面ライダー555 In a flash!(このあとすぐ!)


第9話 A

 そもそもライオトルーパー隊は、数の優位、変身の隙を与えない電撃戦といった様々な戦術的優位があったからこそ襲撃を決行したのだ。正面から新型機と戦って勝てる望みは薄い。

 唯一、そして最大の誤算はレギングライアーの存在だった。

 

「総員後退! 作戦は失ぱ――」

 

 声を張り上げていたライオトルーパーが光弾を食らい吹き飛ばされる。そのまま地面へと激突した亡骸から頭部が転がっていく。

 ライオトルーパーであっても、シータが構える長大な火砲――フォトンブラスターの直撃を受けてはひとたまりもなかった。ベルトのシステムが稼動したまま、中身が灰化したのだ。

 

 ライオトルーパーが残りの五人で前後を挟むなか、シータの戦力は健在だ。ただでさえ有利だと考えていた戦力差が埋まった上、航空戦力という性質上、ライオトルーパー側はさらに劣勢を強いられる。

 

 ロブスターオルフェノクの見解では、レギングライアーの量産はまだ時間がかかるとしていた。そもそも現物を見たのが、創才児童園を襲撃した際に割り込んだシータが率いるそれだった。

 ここで現王派は大きな勘違いをしたのだ。『レギングライアーは最近完成した新兵器である』と。

 事実はむしろ真逆。再建したスマートブレインが真っ先に買収したのは――自動車部門。

 

 

 二射、三射とフォトンブラスターが光弾を吐き出し、それらを辛くも避けるライオトルーパー。次いで遊撃手が推進器を吹かして突出する。

 カタールという独特の形状を持つ実体剣がライオトルーパーの装甲を削り、アクセレイガンで反撃するより早く複合武器がマズルフラッシュを(ひらめ)かせる。

 他方、青年たちの行く手を阻んだ三人のライオトルーパーは、長刀二振りを持ったシータを相手にしていた。

 こちらはシータが積極的に近距離戦に挑もうとするために距離をとれず、光弾を叩き込んでも、空中で待機しているレギングライアーが盾となり、たとえ当たっても怯む様子はない。

 

「不死身か、コイツら!」

 

 たまらず叫んだライオトルーパーの一人に、他の隊員が内心で同意する。とんだ貧乏くじを引かされたものだと。

 ――それでも接近戦(インファイト)に持ち込めば、彼らの武器の間合いの、さらに内側にまで入り込めば有利に戦うことが出来る。

 ライオトルーパー達がそんな希望を抱いたときだった。急加速した二刀流のシータの姿を一瞬で見失った。

 

「ど――」

 

 何処だ、と問うより早く気づく。

 けたたましい駆動音とジェット推進の熱気、僅かに陰る陽光と上昇する()()()レギングライアー。二台目は何処に?

 

「上だ!」

 

 太陽は雲ではなく、機械の影に隠されたのだ。落下の勢いを乗せたシータの斬撃は、両肩を切り落とす致命傷。

 シータが追加装備したバックパック――マルチプルプラットフォームは、四本のアームやタンクのほか、簡易設計されたフォトンフィールドフローターが搭載されている。飛行ではなく、突進や跳躍など機動力を増強するための装備だ。

 ゆえにシータは跳んだ。飛行するレギングライアーに向けて、強力な推進力で姿さえ霞ませてライオトルーパーの隙をついたのだ。

 慌てて他の隊員が駆け寄るが、遅い。シータは倒れたライオトルーパーの喉元に刃を突き立てると、再び跳躍。宙返りを交えてレギングライアーに着地するや、低空まで降りてきたシータが刃を振るう。ブレードと装甲が火花を散らし、もう一人の隊員が切りかかれば、別の足場(レギングライアー)に飛び乗って回避。

 立体機動を交えたヒット&アウェイ。空中で距離が開けばレギングライアーのフォトンバルカンがそれを補い、ライオトルーパーが怯むたびにシータが降りて切りかかる。――そしてそのたびに、フォトンブラッドのエネルギーと毒性がライオトルーパー達を蝕んでいく。

 

 やがて、砲戦装備とそのバックアップを担当していたシータらが駆けつけてきた。あちらはすでに終わったようだ。

 それを見た近接型は、一度彼らと合流しようとして――足元で何か柔らかいものを踏みつけた。

 

「――――」

 

 踏みつけた物の正体は、腕だ。周辺状況は空撮で把握していたが、複雑な立体機動を繰り返す内に想定よりも戦場が動いていたらしい。あるいは、死してなお任務を遂行しようとする執念が起こした奇跡か。

 たたらを踏むこと数瞬。ライオトルーパー達は致命的な隙を逃すような愚か者ではない。

 

「っ、おお!」

 

 ライオトルーパーが二人がかりでシータを突き飛ばす。全体重を乗せた突進はシータのブースターの抵抗をなんとか抑え込んで海へと向かう。

 差し違えてでも任務を遂行する。ブレードを突き立てられ、背後から撃たれ、――命が続く限り、なんとしても。

 

 ――オルフェノクの王を目覚めさせるには、複数のオルフェノクの命が必要よ。でも、すでに王は存在する……

 

 だからこれ以上、よけいな犠牲は必要ない。それがロブスターオルフェノクの考えだった。ゆえに今のスマートブレインは、シータは倒さなければならない。

 海へ、水辺へと引きずり込めば、後は彼女が回収してくれるはずだ。そうすれば今回の目的は達成できる。

 けれどもライオトルーパー達は見た。海岸を回り込んでレギングライアーが足場をなす様を。自らの行動が徒労に終わったことを。

 無念とともにシータを海岸から突き飛ばしながら、二人の意識は闇に閉ざされた。

 

 だからシータの体がレギングライアーに乗り上げる直前、空飛ぶ異形のマシンめがけて立て続けにエネルギー弾が飛んでいくのに気がつかなかった。それらが海面から、レギングライアーの機関部を狙って着弾する。

 黒煙を上げて墜落するレギングライアーに巻き込まれ、シータが落ちていく。着水。

 

「……」

 

 シータたちは慌てずに海面を見つめていた。だがしばらくそうしていると、ドライバーからデバイスを抜き取り、画面に触れて終了(シャットダウン)コードを送信する。

 コード認証を受け、スーツが分解される。ベルトも元通り格納されると、青年たちはドライバーをバッグに納める。

 

「――いくぞぉ」

 

 バイクにまたがると、のん気な口調で呼びかけた。もう一人が追従してバイクのエンジンをかける。

 

 消えたもう一人を気にかける様子もなく、先ほど始末したライオトルーパーの遺灰を鬱陶しげに振り払う。

 海面にはおびただしい灰が浮いて、やがて水中に散っていった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 琢磨は豪奢なベッドに埋もれて目を覚ました。カーテン越しの朝日を浴びて、ぼんやりとした頭が回り始める。

 昨晩得られた情報を整理して、暗号という形で隠された情報を紐解き、としている内にいつもの就寝時間が近づき、続きを明日に回して入浴や明日の準備を整え、眠りについた。

 

 情報の精査など、半分も進んでいなかった。

 

(私は、これを持ってどうしたいのだろう……)

 

 今更ながらに気づき、考えてしまった琢磨は苦悩する。

 

 琢磨が気づき、確証を得た事は、琢磨が生きる道を二分するものだ。

 今まで通りの生活が保障されるのであれば、スマートブレインを倒す必要は無い。人間として生きていくことができる可能性が有る。

 では、現王派――ロブスターオルフェノクの一派を倒せばいいのかというと、一概にそうとは言い切れない。今おとなしいのは現王派の存在あってのものかもしれないし、それでなくても前川、蛇神の首脳陣が信用できない。

 

(私は、戦いたくないだけだ)

 

 平穏に暮らしていれば、戦う必要なんて無いのに。そのはずなのに。

 その一方で、ロブスターオルフェノク――影山冴子と戦いたくないという思いがあることを、心のどこかで冷静に見つめる自分がいる。

 

「……起きましょうか」

 

 結局いつも通りの朝を求める琢磨は、これ以上の遅れは見過ごせないとベッドから這い出る。

 そうして寝室をあとにした琢磨だったが、リビングルームで予想外の人物と出会(でくわ)した。

 

「あなた、は……」

「………………」

 

 向こう傷をつけた老人が渋面を向ける。

 琢磨は慌てて部屋に飛び込んだ。ナイトガウン姿で応対するわけにもいかない。

 

「き、着替えますので! 少し待っててください!」

 

 それだけ言って琢磨は自分用のタンスを漁り始めた。

 すでに普段の朝とは程遠い一日のはじまりだった。

 

 

 朝食を済ませた琢磨とハジメの間に、重苦しい空気が漂う。

 琢磨はなぜこの老人が帰ってきたのか分からず、そしてハジメはどう切り出すか考えあぐねて、やはり何も言えず。

 そうしていたずらに時間が過ぎていく。意を決して琢磨は問いかけた。

 

「「あの……」」

 

 老人と声が重なる。

 

「いえ、先にどうぞ」

「いや、君も何か聞きたいのだろう?」

 

 どちらが先に答える答えないと問答が続き、結局琢磨が問う。

 

「ハジメさんは、どうしてここに?」

「………………」

 

 長い沈黙が続く。琢磨は重い空気に耐えかねコーヒーをすすろうとして、マグカップの中身が無いことに気づいた。

 

「ワシは」

 

 ハジメが口を開くのを見て、慌てて居住まいを正す。目測を誤ったマグが皿に当たってガチャンと音を立てる。

 

「……ずっと考えていた。自分が何をしたいのか、なにをすべきか」

「…………」

「その上で聞かせてくれ」

 

 ハジメは意を決して伝える。

 

「――条件付きなら君に協力できる。……それでは、いけないだろうか?」

「っ! いえ、充分、充分です! ありがとうございまっ!?」

 

 琢磨にとってはやっとの事でできた同志、思わず立ち上がろうとしてテーブルに膝をぶつけた。

 

「、~~……」

 

 悶絶する琢磨。ハジメはそれに構わず続ける。

 

「わしはこの東京に、家族に会いに来た」

 

 娘夫婦からの連絡が途絶えたこと、心配になって田舎から出てきたこと。

 ほどなくして、自身も交通事故で死んでしまったこと、オルフェノクとして復活したらしいこと。

 ――いまだ家族は見つかっていないこと。

 

「――あとは君も知っての通りだ。スマートブレインにつかまり、汚れ仕事をさせられかけておる」

 

 事情を話し終え、一息つく。

 

「……自分が何をすべきかも考えてみた。ワシ自身が何をしたいのか、どうありたいのか」

 

 時に琢磨君、と呼びかけられてもう一度居住まいをただす。

 

「君、子供はいるかね?」

「は、え? いえ、いませんが」

「……実は娘婿が君と同じくらいの年だ。孫はまだ小学生にもなっておらん」

 

 そんな孫に胸を張って生きていたい。人殺しに加担するなどごめんだ。

 ハジメはそう言って手を差し伸べた。

 

「――ワシの家族を探してはくれまいか? 娘や孫に、少しでも明るい未来を見せてやりたい」

「……ええ、もちろんです! ありがとうございます!!」

 

 琢磨はハジメの手を取り、固い握手を交わした。

 一方は己の平穏のため、もう一方は愛する者の未来のために。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 結局仕事は休むことにした琢磨だったが、さっそくハジメと情報交換を始める。

 

「――するとスマートブレインは、仲間割れをしているということか?」

「ええ、ハジメさんを襲ったのは現王派と呼ばれる勢力だと思います」

 

 その現王派のリーダーこそロブスターオルフェノク――

 

「影山冴子――私の、元同僚でした」

「……!」

「彼女の手駒こそ、以前ハジメさんを襲ったライオトルーパーです。……推測ですが」

 

 現状、不確かな情報でも動かなければならない。琢磨もハジメも状況の不利を痛感していた。

 

「それで――と、失礼します」

 

 琢磨の携帯が鳴り、席を立つ。どうせ会社からだろうとディスプレイを見ると、見慣れない番号からだった。

 

「……はい」

 

 恐る恐る、電話に出ると今度は意外な人物につながっていた。

 

「あなたにデルタを任せたい。俺はもう――」

 

 戦えない。




更新が遅れた言い訳

さすがに受験と進学準備は許して

(詳細は活動報告にて)

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