転生したら兄が死亡フラグ過ぎてつらい   作:由月

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オリ主とスコッチさん邂逅編。ジンの兄貴の出番は今回はお休みです。

前回のすぐ後の時間軸。前回、他視点やめようかと思っていたのですが、見たいというお声があった為、ちょっと甘えさせていただきます。
今回は前半オリ主視点、後半スコッチさん視点です。彼らの温度差()をお楽しみください。シリアス?ああ、アイツはいい奴だったよ。

あとはキャラ崩壊注意です(もはや誰とは言わない)

12/29 一部削除。こっそりと。スコッチさんの独白最初の所のみ修正。大して変わっていません。スコッチさんの所属って公安で安室さんと同じで良いんですよね?


どうせなら良い方にとった方がいいだろう?

 俺はさっさと女装んんっ、変装を解いて帰宅する為にと廊下を歩いていた。

 

 ここら辺は組織の幹部クラスが立ち入る区域だから人が少ない。なるべく人が少ないルートを辿りながら俺はここを出入りするのが習慣だった。たまに絡まれるからね、コードネーム貰ったから尚更。相手が下っ端だったら、こう拳で語る系のお話だって俺には対処出来るけど。下手にコードネーム持ってたりすると面倒だ。俺が。

 

 とそこで俺は数メートル先のその人を見つけた。目が合う。

 

「あ」

「…………」

 

 バーボンとは種類が違う人の良さを感じさせるお兄さん、無精ひげを生やしてなければ更に若く見えるだろう飄々とした雰囲気のイケメンさんが居た。こちらをきょとりと瞬きする、その瞳の色は灰色か、ちょっと明るめの色だった。短めの黒髪と、素直に驚きを表す表情に俺は少し安心する。

 

 この人、愛想と愛嬌を両立出来るタイプの人だよな。多分。微笑みを武装して、と言うよりは生来の人の良さで人の心の壁を攻略するタイプと見た。

 

「君、もしやジェネヴァ君?」

 

 案の定へらっとした笑みで問われ、俺は頷いた。うーん、いい人そう。

 

「ははっ、まあいきなり知らない人に名前を言われると警戒するよな」

 

 俺の無言に頭を掻きながら、軽く笑うその人に俺はじぃっと見つめる。俺の視線にたじろぐように一歩下がり、ゴホンと咳を一つ吐く。

 

「俺は“スコッチ”。まあ君の同僚さ。――この前バーボンと話したろう?アイツとはそこそこの付き合いがあってね。君の事はアイツから聞いたんだ」

「……そう」

「――噂の通り、か。君、ちょっとこの後時間はあるかい?」

「?」

 

 スコッチの提案に俺は首を傾げる。時刻はまだ十六時。夕闇が忍び寄る時間に迫る時刻だが、まあこの職業の俺なので特に問題ない。スーパーの特売もない事だし。

 

「まあ、特に問題はないけど」

「そうか、ならちょっと外で食べに行かないか?ちょっといい店があるんだが、生憎付き合ってくれる奴が不在でね」

 

 一人寂しく食事は少し悲しいだろう?とにこにこしながら言われ、俺は少し遠い目をしたくなった。なんでバーボンといい、このスコッチといいコミュ力が高いのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれよあれよと話は(勝手に)進み、気が付けば俺はスコッチと夕食をとる事となっていた。どういうことなの、と俺が白目をむいても現実は変わらない。

 

 俺は今助手席に座らされていた。後部座席よりこっちの方が眺めがいいんだぞ、と親戚のおじさんのような親切さが発揮された結果だ。とてもつらいです。

 

 走行中の沈黙程つらいものはない。が、そこはコミュ力高めのこの男、スコッチに抜かりはなかった。耳に気持ちいい、ジャズがこの静かな空間を重苦しいものから穏やかなものへと変化させる。これだよ、こういう気遣いが大切なんだよと俺は今居ない兄へと向けて聞かせてやりたくなった。何、あの重苦しいの極限空間。ウォッカが汗たらしてただろと関係ない事をぼんやりと考える。

 

「なあ、ジェネヴァ君」

 

 運転をしながら問いかけてくるスコッチに俺は視線だけ向ける。顔は向けないのはアレだ、負けた気がするからだ。

 というか。

 

「お兄さん、俺の事は呼び捨てでいいよ。こっちもそうするし」

「そっか。なら、ジェネヴァ」

「ん?」

 

 親しみやすい軽い口調で重ねてくるスコッチに俺は淡々と言葉を重ねていく。……場合によってはバーボンよりこのスコッチの方が情報を聞きだすの上手そうだなぁとぼんやり思う。例えば警察の聞き込みとか善人性を表に出した方が円滑に進む場合だ。まあ場合によりけりだけど。

 

「――バーボンから聞いたんだが、君中々会えないそうじゃないか」

「……そう?俺、組織の施設に日参しているから居ないって事はないけど」

「そうかい?バーボンの奴、まるで捕まらないと嘆いていたよ。ぶっふ」

 

 突然ふき出すスコッチに俺は胡乱気な視線を送る。なんだ、一体。

 

「いやな、バーボンが君の事を“妖精”のようだと言うのを思い出しちゃって」

 

 はあ?と俺は口をぱかりと開ける。人形の次は妖精とかと鼻で嗤ってやりたい気持ちで一杯だ。スコッチはそんな俺の様子を面白そうに一瞥した後、ハンドルにもたれかかった。見れば赤信号で止まっているらしい。

 

「ははは、そんな顔をしない。――現実味がなくてふわりと消えてしまいそうな見た目で、妖精だそうだよ。ま、もっとも、話をしたらそうは思わなくなったらしいけど」

 

 青信号になり、発進させるスコッチに俺は冷めた目で見る。当たり前じゃあボケェと口が悪くなりそうなのをグッと堪えている最中なのだ。

 

 というか、バーボンさんが俺に会えないのは当然なのだ。だって俺、来た時と帰る時両方、忍者みたいに天井に張り付いたりして人目に触れないようにしているから。ついでに隠し通路みたいなのを発見するのがマイブームだったりする。夢はアイエエエ!ニンジャナンデ?! 的なリアクションを貰う事だと俺は密かに拳を握る。

 

 スコッチさんは俺に会えた幸運に感謝すべきだと思うんだ。いや嘘です、そんな調子に乗ってない。せめてもしもの為の避難経路の発掘という俺の涙ぐましい努力なんだ分かってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スコッチさんおすすめのお店はおしゃれなイタリアンでなく、隠れ家的な日本料理屋だった。大将と言った貫録のおじさんが店を仕切るお店だ。ねじれハチマキをまいたその頭と背中で語るその仕事への実直さが素直に好感が持てる。ああ、これでオシャレなお店だったらちょっと日本警察に向ける目を考え直す所だった。

 

 お店は混んでいないようだった。というか、十八時という早めの時間なのだからかもしれない。

 

 スコッチさんは少し端の隅の方に空いているカウンター席へとついて、手招きする。

 

 座れば大将が注文を聞きに来る。それにスコッチが手慣れたように注文し、俺にお伺いを立てるその内容に俺も承諾する。へえ、美味しそうとじゅるりと俺の唾液が溜まる。こういう所の海鮮丼とか美味しそうだ。

 

 

「料理が来るまでちょっと世間話とかしないか」

「――いいけど、俺言える事少ないからお兄さんの話が聞きたいな」

 

 俺の言葉にスコッチが少し言葉を詰まらせる。まあ、探りたいよなーと俺は他人事のように思う。これは推定だけど、俺がジンお気に入りの駒とかいう情報が洩れていそうだし。それの真偽を責めて確かめたいといった所か。

 

「俺の話なんてつまらないよ、いい年こいた大人の話なんてさ」

「そう?」

 

 ははと肩を竦めるスコッチに俺は首を傾げる。

 

「情報の価値は一人で決めるものではない。何気ないその情報が宝に化ける事もある」

 

 らしいよ?と俺はスコッチに視線を投げる。スコッチは参ったな、と頭を掻いた。

 

「じゃあ、その何気ない話をジェネヴァも語ってくれ」

「え?」

「何が悲しくて、いい年した大人の身の上話を一人話さないといけないのか」

「は?」

「いいか、ジェネヴァ。人生、恥の上塗りだ。後悔先に立たずなんていう言葉もあるけどさ。後悔出来る内が花なんだよ」

 

 真剣に語るスコッチに俺ははぁと呆れたため息を吐く。それアンタが言っちゃうんだと。

 

「――ソレ良く覚えておいた方がいいよ。お兄さん」

 

 後悔できる内が花なんだろう?

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、共に潜入捜査官仲間のバーボンこと、降谷の様子が可笑しい。あの男とは、昔からの馴染みでそれなりに知った仲だからだ。

 

 さて、その可笑しなバーボンのその違和感を述べていこうと思う。一つ、やたらと組織のとある施設に赴くようになった(とはいえ、ちゃんと仕事に差し支えのないようにするのがなんともらしい)。一つ、ぼーと外を眺めている事が多い(頻度はさして多くはないが)。何よりも極めつけなのは、こうやってスコッチに会うと必ず愚痴をこぼすようになった。

 

 まあそれらはここ一週間程の変化でまだ気のせいの範囲かもしれないとスコッチはおおらかに構えていた。

 

 バーボンは一時間ほどここで休憩をとってまた任務という激務を行うらしい。ご愁傷様な事だ。スコッチとしても明日は我が身なので優しくしてやろうと思い当たる。さて、インスタントだけど、コーヒーでいいかとポットからお湯を出し、コーヒーを淹れてやる。

 

 机に突っ伏すように倒れ伏す、金髪に褐色の肌の若者まあバーボンだが、彼の傍にコーヒーを淹れたマグカップを置く。

 

「聞いてくれよ、スコッチ」

「なんだ、バーボン」

 

 こうしてセーフハウスに居る時でもお互いコードネームで呼び合う。いざという時にボロが出ないように徹底した結果だ。

 

 スコッチはバーボンの対面に座り、コーヒーを啜る。

 

「また会えなかったんだよなぁ」

「例の“妖精”君に?」

 

 妖精くんとは組織で最近話題の子供の事だ。酒に酔ったバーボンがポツリと零した言葉によって命名された。ちなみにライも知っている。彼にしては爆笑といっても差し支えのない笑いっぷりだったが。腹筋が痛いと翌日ぼやくライにスコッチは二度見した。まじか、何がそんなにツボったのか。スコッチの永遠の謎だ。それ以来バーボンのライ嫌いが加速したのも補足しよう。

 

 スコッチの妖精という言葉にバーボンが恨めし気に見上げてくる。おいよせ、そんなイケメンの無駄遣いはするな、と内なるスコッチのツッコミが効いたのか。バーボンは倒れ伏していた身体を起こしコーヒーを啜り始める。ぼそりと不味いと言ったのはスコッチでも許せない、がまあいい。

 

「んで、今度はどうしたんだ?」

「いつも通りです。――今度はと思ったんですけど」

「いやでも待ち伏せしたんだろう?それにその子供もコードネームを持つんだから馬鹿じゃない。きっとこちらの行動がバレているんだろう」

 

 だから手を退かないか、スコッチの言葉にバーボンは憮然とした面持ちになる。

 

「いえ、あの子供はジンのお気に入りらしいです。直属の部下というか使い勝手のいい駒扱いですよ」

「なる程、許せない訳だな」

「そりゃあ、そうです。……なあスコッチ、あの子の歳を知ってるか?」

 

 熱が入って行くバーボンにスコッチは、どうどうと手をかざしクールダウンを促す。今にも立ち上がりそうな、姿勢をまた椅子に沈めたバーボンにスコッチは苦笑する。

 

 バーボンはいい奴だ。汚い事と綺麗な事両方していてなおそれでも少しでも良い方へ抗う事の出来る性根の綺麗ないい男である。

 

「十三だ」

「は?」

「だから、十三歳」

 

 物思いに耽っていたからスコッチの反応は遅れた。あ?なんだって?とスコッチはポカンと阿保面を晒す。

 

 十三歳。なんと言う事だろう。日本で考えれば、法律が悲鳴を上げる事態だ。違法どころか虐待人権無視の鬼畜の所業だ。

 

 流石組織汚いと奥歯を噛みしめるスコッチの様子にバーボンは静かに視線を向ける。そうだな、バーボン。こんなクソみたいな組織、さっさと排除してやりたいなと。

 

「それにジェネヴァ君は学校、行った事がないそうですよ」

「それ、は」

 

 マグカップを手持ち無沙汰に弄ぶバーボンの言葉にスコッチは息をのむ。スコッチのその様子にバーボンはやるせないような、無理矢理汚濁をのみ込む笑みを浮べる。下がった眉と共に緩められた目尻に涙さえ浮かびそうな、決壊の寸前だ。

 

「……“組織の教育”を受けている、そう言ってました」

 

 ああ、なんという事だろうか。スコッチは目を伏せる。そんな子供が、今組織でコードネームを貰い、冷酷無慈悲の殺戮人形というふざけた呼び名を囁かれる。

 

「そうか。分かった、俺の方でも見かけたら声をかけてみるよ。そんで、その妖精君の話聞いてみるさ」

「ええ、ですが、くれぐれも気をつけて下さい」

 

 どんなに小さい綻びも許されない。それがこの黒の組織で潜入している捜査官の共通鉄則。

 

 スコッチはバーボンの真剣なその視線に頷き、笑った。

 

「心配しなさんな、これでも悪運は強い方だ。――最後までしぶとく生き残るさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 存外その妖精君は早くに見つかった。組織の施設の廊下でバッタリ。勢いに任せてあれよあれよと事を進めて妖精君改めジェネヴァくんに食事を誘えたのは僥倖という奴だろう。俺の日々の行いが良いとも言うとスコッチは上機嫌に車のハンドルを握った。

 

 車内に流れる音楽は今スコッチのお気に入りの曲だ。古いが、中々に耳に馴染む何処か上等な喫茶店にでも流れてそうなそんな洋楽の一つだ。

 

 それにしても、とスコッチは隣を盗み見る。何処を見ているか分からない、光のない瞳は前を向いていて見えるのはその横顔だ。男の顔の造形には特にこだわりのないスコッチだが、まあ確かに妖精呼ばわりしたバーボンの気持ちも分かる見た目をしていた。静かに座って目を瞑れば、神が拘って作ったと言っても信じてしまいそうな儚い美があった。この子が、ねえとスコッチは少しやりきれない気持ちを堪える。

 

 車中で少し口が滑ってしまった事に関してはバーボンには少しばかり悪い気持ちがあった。が、まあ後で奢ってやればチャラになるだろうと信じる事に決めた。

 

 馴染みの店で注文を済ませ、スコッチは隣の席にいるジェネヴァに話を振る事に決めた。

 

 

「料理が来るまでちょっと世間話とかしないか」

「――いいけど、俺言える事少ないからお兄さんの話が聞きたいな」

 

 サラリと躱わされ、こちらの話をしろと促され、スコッチは言葉が詰まる。これは覚悟していたが、相当警戒が強いと見た方がいい。まあ今日は少しこの子の警戒を解ければいいかと軽い気持ちに切り替えた。組織の他のコードネーム持ちを相手にするよりかはずっとマシというものだ。

 

「俺の話なんてつまらないよ、いい年こいた大人の話なんてさ」

「そう?」

 

 首を傾げるジェネヴァにスコッチは少し笑って肩を竦めてみせる。

 

「情報の価値は一人で決めるものではない。何気ないその情報が宝に化ける事もある」

 

 らしいよ?とジェネヴァがスコッチに視線を投げる。無垢な仕草に紛れて見えるのは紛れもなく組織の闇だ。スコッチは参ったな、と頭を掻いた。じゃあ、こうしようとスコッチは気持ちを切り替える。

 

「じゃあ、その何気ない話をジェネヴァも語ってくれ」

「え?」

「何が悲しくて、いい年した大人の身の上話を一人話さないといけないのか」

「は?」

「いいか、ジェネヴァ。人生、恥の上塗りだ。後悔先に立たずなんていう言葉もあるけどさ。後悔出来る内が花なんだよ」

 

 真剣に語るスコッチにジェネヴァがはぁと溜息を吐く。おや、スコッチは少し意外に思った。無感情、無感動を地で貫くと伝え聞いていたからだ。先程の車中でも思ったが、やはり噂は噂。この子にはちゃんと心があるとスコッチは少し安堵した。

 

「――ソレ良く覚えておいた方がいいよ。お兄さん」

 

 後悔できる内が花なんだろう?とジェネヴァの小さい口から呟かれる。

 

 やけに耳に残る呟きだった。

 

 

 

 

 




という訳でやったね!ジェネヴァ君、知り合いが増えたよ!編です。
スコッチ視点は補足です。本当は、酒盛りで盛り上がるウイスキートリオの会話を入れたかったんですが、キャラ崩壊が読者に怒られるレベルだったので断念しました(笑)え?今でも相当やばい?そんな馬鹿な(目逸らし)
あとで付け足そうか、うーん。悩み所。
※ちなみに赤井さんが爆笑した理由は、ジェネヴァ君のあの愉快()な冗談が過ぎる口を知っていて、なおかつ妖精?よせやいそんな繊細じゃねーよというのがよぎったせい(二話目のやり取りのイメージで)。あれがwww妖精wとかwという具合にめちゃくちゃ草生えていた。バーボンがぼんやりと口走ったその場の凍った空気も微妙にツボ。まあ実際は静かに喉で笑う程度というね。


という訳でこんな書き方でどうですか?読みづらくないか作者ドキドキなんだぜ。

スコッチさんのキャラに相当悩みましたがこんな感じという作者のイメージで書いてます。(原作で違う描写があれば土下座します)
ギターが弾けて、面倒見がいい所があり、バーボンの降谷さんと古くから付き合いがあり、赤井さんが認めるレベルの能力は一応持っている。
を作者なりに解釈した結果あんな感じに。
 
他に情報があれば募集したいレベル(こそっと。

次回はウォッカさんと兄貴回にするべきか、それとも赤井さん再びにするべきか悩みます……。


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