双獣の軌跡   作:0波音0

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じわりじわりと読んでくださる方が増えているのがわかって、頑張らないと!と気持ちを新たにして今回のお話を書きました。



7話 双子の獣

 

 

「イオン様…昨日は、お疲れだったですか?」

「…え?」

「…なんか、変な感じが…したの。いつもと、なんか、違う…」

「……そう、だね。そう、ちょっと疲れてたんだ。アリーとシャルにバレちゃうなんてまだまだだね」

「「……」」

「僕が少し体が弱いばかりに、二人にはいつも心配かけてるね。……ほら、気にしなくていいから。今日はもう部屋に戻っていいよ」

「……はい、です」

「お大事に、です。イオン様」

 

 

「双子が違和感を感じてるなら、他のやつは騙せないよ。……ねぇ、アリー、シャル。君たちは……突然僕がいなくなったら、心配してくれるのかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ……っ、……うぅ…」

「…いお、さまぁ……っ…どし、て…?」

 

なんとも言えない【違和感】を覚えて帰ったあの日から数日がたち、体調も落ち着いたからと双子は再びイオンの私室に呼び出された。

 

双子は信じていた。

 

きっと、前は疲れていただけ。

元気になったイオン様が前と変わったはずかない。

それで、病気が治ったイオン様と【今まで通り】を過ごすのだ、と。

 

────信じていたのに。

 

 

〝お呼びです、か?いおサマ〟

〝イオン様、もう、だいじょうぶ…ですか?〟

〝アリエッタ……シャルロッタ……〟

〝?どうか、したですか…?〟

〝今、この時をもって、あなた達を導師守護役から解任します。今までよく仕えてくれました〟

〝…………ぇ……?〟

〝……今日からあなたたちに代わる守護役が来ることになっています。ですからもう〟

 

〝守護役はあなた達である必要はありません〟

 

ショックだった。

何よりもショックだったのは、『自分たちでなくてもいい』と言われたこと。

それならなぜ今まで自分たちをそばに置いていたのと言うのだろう。なぜ名前を呼んで様々なことを教えたのだろう。捨てるくらいなら、拾わないでくれればよかったのに。それなら……

 

「また、アリエッタとシャルの大事……なくなっちゃった…」

「さびしいのは、もう…やだ…」

 

失う寂しさをまた、味わうことは無かったのに。

考えれば考えるほど、周りを信じられなくなるループにはまり、ぐるぐる、ぐるぐると落ち込んでいく。

そんな何も話せないくらいに落ち込み、泣き続けていた双子に声をかけたものがいた。

 

「……やはり、泣いていたのか」

「総長……」

「そーちょ……」

 

────ヴァンだ。

 

「総長…アリエッタたち、もう、イオン様のおそば、いれない…ですか?」

「……導師守護役は、後任のものがつくだろう。聞いた話では導師守護役を総入れ替えするとの事だ」

「そん、な……」

「どうする?……教団を出ていくか?守護役であれば教団に所属している、しかし解任されたお前達を私は止めることは出来ない」

 

生みの親と死に別れ、育ての親とは離れた生活。その寂しさを埋める相手からの突然の、しかも一方的な解任命令。残る理由は、無い。その時、沈んだ双子の気持ちを浮かび上がらせたのはヴァンから落とされた言葉だった。

 

「だが……お前たちが守護役をはずされてもまだ、イオン様に仕える気があるというのなら…私の部下としてくるか?」

「「!?」」

「私はある理想がある。その理想を叶えるためには、実力のある人材が必要だ。お前達になら十分任せられる」

 

双子は迷った。

アリエッタとシャルロッタの大事な人(イオン様)は双子をいらないと言った。それでも守護役のままだったら支え続けることも出来たのに、それも解任された。お友だちと一緒にダアトに残る理由もない。だからダアトから出ていってもいいのだ。

でも、ヴァンについて行けば守護役程近くにはいられなくてもある程度近づくことは出来る。もしかしたら護衛の任務を受けることができるかもしれないし、任務でイオン様を見ることができるかもしれない。しかし誘うヴァンは自分たちを連れ出すために仲間や家族に手をかけた敵であり、同時に2人きりだった自分たちに人という群れを教えてくれた恩人でもあって……

黙って考える双子にヴァンはさらに言葉()を落としていく。

 

「それにもし私の理想に協力してくれると言うなら……お前たちの両親とフェレス島を復活させる、それでどうだ?」

「「え…?」」

「お前たち2人は預言を気にして生きていないだろう。イオン様もそんなお前たちだからこそ気に入ってそばに置いていた。……しかし、お前たちの両親と生まれ故郷がなくなった原因は全て預言にあるのだ。預言さえなければ……今もお前たちは両親とともに、故郷で幸せに生きていただろう」

「そんな……」

 

双子は初めて知ったことだった。島が沈んだことも、両親が亡くなったことも、すべて戦争のせいだと聞かされていたから。戦争のせいというのは間違いないが、その戦争は全て預言に詠まれていたがために起こされたことだというではないか。預言さえなければ……今も、自分たちは幸せに暮らせていた?

 

「私も預言に未来を狂わされた1人だ。私は預言が憎い……お前達たちも憎いとは思わないか?」

「……総長のいう事は、なんとなくわかる、です。でも……」

「……シャルたち、ママとパパ…いないこと、ふつーだと、思ってた、から…。にくい、とか…わからない、です」

「……そうだな、その時のお前たちは幼すぎた。だが、預言を無くすことはイオン様も願っておられることなのだ」

「いおサマ、が…!?」

「そう、イオン様も預言を憎んでおられる。無くすまではいかずとも、預言はただ参考にするもの、絶対守らなくてはならないものという訳では無い……そう、おっしゃっている。私の理想を叶えることはイオン様の願いを叶えることにもなるのだ。それに守護役では導師を守ることしか出来ないが、私と来れば願いを叶える手足として動くことが出来るだろう」

 

双子は顔を見合わせると、それぞれの首元へ目を落とした。今はもう、お互いと首から下げるペンダント以外に故郷を思い起こせる物は残っていない。だって無くしたものは住んでいた島だ。両親という命だ。当時赤ん坊だった自分たちが与えられるはずだったもの、それが、手に入る?

それに預言はよく分からないけど、イオン様の力になれる……守るだけでなく、願いのために行動できる?

 

「……わかった、です」

「…アリエッタ?」

「アリエッタ、総長に協力します。そしたら…イオン様、助けられる…ですよね?」

「ああ、必ず助けになるだろう」

「……シャルは……、」

「シャル、一緒に行こう?それで、ママとパパに会うの。…イオン様、アリエッタたちが、守るの。それで、イオン様のためにがんばるの」

「……シャル、がんばったら、いおサマ…守れる?もう、バイバイに、ならない…?」

「…守護役ほど近くでは守れないが…だが、イオン様に対する危険を払う役目は、何も守護役だけではない。守護役よりも先手を打ってばいい。裏で危険を狩ればいい。それが、出来る…私が力を貸そう」

「………わかった。シャルも、やる」

 

泣いていた双子は顔を上げ、ただただ悲しみだけを浮かべていた先ほどまでとは、また違う決意を目に宿していた。まだ諦めなくてもいいのだと。

 

それを見たヴァンは笑みを浮かべる。双子を教団に縛り付けただけでなく、魔物と意思疎通できる人材……うまく扱えば魔物を自在に扱える力を手中にできた、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、いつまで待たせるつもりなのさ?」

「そう焦るな。閣下は双子を連れてくるとのことだ。これで、我々の理想を叶える同士が揃う」

「はぁ……ねぇ、ヴァンがスカウトに行った奴って、魔物部隊の奴なんだろ?確か特務師団の分隊だったはず……アンタ、何か知らないわけ?」

「チッ……知るか」

「……使えないね、自分の師団のことのくせに」

「んだと!?」

「よさないか。…じきに分かることだろう」

 

 

最後の1人がたしなめたことで、いきり立っていた1人と、余裕そうに煽る1人がそっぽを向く。

双子が導師守護役を解任されてから月日が過ぎ、今日顔合わせをすることになっていた。集められた者達は男女合わせて5人。教団の中でも奥まった場所にある会議室で待たされているのか、その待つ原因となっていることについて話しているようだ……と、ここで唯一会話に参加していなかった男が高笑いしながら話し出す。

 

「ハーッハッハッハ!!この華麗なる私はその人物をよーーーく知ってますよ!!どーーーしてもって言うのでしたら、この私が!教えて差し上げましょう!」

「アンタの意見だとなんか偏った偏見ばかりになりそうだからいい」

「どうでもいい」

「会えばわかる」

「そうだな」

「……ムキーーッ!なぜですかーーっっ!?」

 

バッサリ切り捨てられ空中でじたんだ踏む男を無視し、あるものは腕を組んで壁に寄りかかりあるものは席について目を閉じる……各々好きな体制をとっていた。

暫く待つとようやく扉が開かれた。

 

「待たせたな」

 

その言葉とともにヴァンが部屋へ入ると、部屋にいた者達はあるものは姿勢を正し、あるものはため息のように息をつき、あるものはフンッと鼻を鳴らしつつ入口へと目をやる。ヴァンに続いて部屋へ入った双子は少しばかりビクビクしながらも部屋の中へまっすぐと目を向けていた。その双子の肩へ手を置き、ヴァンは目の前の面々へと紹介する。

 

「この双子で最後だ。……リグレット。ラルゴ。ディスト。シンク。アッシュ。そしてアリエッタとシャルロッタ。この7名を計画の要とする」

 

「リグレットよ。同じ女性だからこそ何か助けられることもあると思うわ。いつでも頼りなさい」

「…ラルゴだ。この7人の中でもお前たちはまだ幼い。子どもは他にもいるが…まぁ、俺も助けになろう」

「ちょっと、なんで僕を見るわけ?…はぁ、……シンク」

「……アッシュだ。足を引っ張るんじゃねぇぞ」

「私のことは知っていますね!?」

「…いおサマ、の、せんせー…えと、シャルは、……えっと、…シャルなの」

「…この子は、シャルロッタ、です。アリエッタはアリエッタ、です」

 

こうして、双子は新たな仲間となるものたちと出会い、これからを過ごしていくことになる。数年の間、雑用から命をかけるような物まで数々の任務をこなしていくうちにオールドラントの二大国家、マルクト帝国とキムラスカ王国の両軍の兵数に及ばない神託の盾騎士団兵の中でも、特に実力を持つ七神将の一員として有名になっていった。

 

 

七神将の2人……常に二人一組で、魔物を従える双子……いつしか【双獣(そうじゅう)】という二つ名で呼ばれるまでに────

 






ここ辺りから完全にオリジナルor想像が増えてくるので、だんだん矛盾とかがないように気をつけなくてはならなくなってきます。
とか言いましたが、早速問題が。
六神将の口調がわからない…!!
な、なんとなく誰が誰なのか想像して読んでいただけたらいいかと思っております。

もうすぐ原作入りです(入れないかもしれない)

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