双獣の軌跡   作:0波音0

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のんびり更新しております。
今回はほのぼのしつつ、なんとか少しでもヴァン師匠の株をあげてやりたいお話となっております。
きっかけ作りをしているだけで、なかなか双子が警戒を解きません…少しでいいから解いて、君ら…;;
書いていくとキャラたちが動く動く。
設定が生えていくことに焦りつつ、話をまとめようと必死です。
少しでも双子が可愛いと思ってもらえれば万々歳←

では、スタートです!







5話 まもるもの

 「イオン、様っ!」

 「いお、サマっ!」

 「はいはい、どうかしたの?」

 

 双子がダアトへ来て約半年。まだたどたどしい話し方に加え文字を書く、ということに苦手はあるものの、ここへ来た当初に比べてだいぶ意思疎通が測れるようになってきた。2人はまだまだ積極的に学び知識を吸収して言っているため、これからもっと上手に言葉を使えるようになっていくだろうと期待されている。イオンについて部屋の外へ出る機会が増え始めたために一般教団員に接する機会も増え、最初詠師たちを困らせたような警戒心の塊だった態度はあまり見せなくなってきた。……逆に少しばかり人見知りが出ているのだが。

 

 コミュニケーションが取れるようになってくると次に困ることは双子の見分けである。シャルロッタの髪は桃色ベースに金髪が混じっているので2人とも桃色だとしてもすぐに分かるだろうと思われていた。しかし、双子が落ち着きを覚えたおかげで2人をよくよく観察できるようになると双子の見た目の違いは実はそれくらいなのだということが分かったのである。

 顔かたち、表情、身長、仕草、……それらが全く同じと言ってもいいぐらい見分けがつかないのだ。帽子などで髪の毛を隠してしまえばどちらがどちらか全くわからなくなってしまうだろう。ただ、双子は必ず2人で行動しているために見分けられなくともそこまで問題は無いので、大体は名前を両方呼ぶか「双子」「2人とも」などとまとめて呼ばれていた。

 ただし、それは【他人】といえるほど関わりを持たない者であるからで、ある程度関わりを持っていて双子が信用している者にとってはわかりやすい違いがあるのだという。違いに気づいてだいたい呼び分けできているのは世話をする守護役、そして必ず呼び分けられるのはイオンただ1人である。

 イオン曰く話す時では、アリエッタはたどたどしく言葉足らずも多いが文で伝えようとしているのに対して、シャルロッタはうまく話せないために単語が目立ち、代わりに言葉足らずのアリエッタの補足になる言葉を話すことがある。敬語が後付けになるのは2人とも同じらしい。動作で比べるとアリエッタもシャルロッタも自分から動くことはほとんどないが、初めて見るものや気になるものに興味を示すのはシャルロッタで、分からなくてもとりあえずやってみようとするのはアリエッタ。歩く時にも違いがあり、双子は手を繋いでいることが多いのだが半歩後ろで隠れるように歩くのがシャルロッタ、手を引き前を歩くのがアリエッタなのだとか。

 

 これらでイオンは何でもないことのように見分けているが、他の者の目にはここまで詳しく説明されても違いが全然わからない。双子もそれを理解していた。自分たちはよく似ている。それは大好きな片割れと同じところがあるのだという誇りであったし、見分けられないのも仕方が無いのだ、と。

 

 だが、イオンは見分けてくれる。周りが気づけない違いを必ずわかってくれる。何も出来ないでいる自分たちに対して悪態をつくこともなく、出来てもできなくてもずっと一緒に取り組んでくれる人。できたという報告に対し、思いきり褒めてくれる人。一緒にいたいと思える、思うことができた森の家族以外の人。双子は心の底から慕い、今もまるで親鳥と小鳥のようについてまわっている。

 

 「アリエッタ、できたから、もってきた、です!」

 「……シャルも…!えと…もじ、いっぱい、かいた…ですっ」

 「見せてごらん。……うん、アリーもシャルも、だいぶフォニック言語が分かるようになってきたね。あと少しであの本も読めるようになるんじゃない?」

 「ほんと、ですか!?」

 「…!やったぁ…!」

 

 頑張りを褒めてもらえて、嬉しそうに満面の笑みを向ける2人。最近イオンはアリエッタを「アリー」、シャルロッタを「シャル」と呼び始めた。

 

 「ねぇ、アリエッタ、シャルロッタ…って、長いよね?」

 「…?イオン様…?」

 「なが…?…ダメ、です?」

 「ダメじゃないけど…うん、やっぱり長いし……アリーとシャルでいいよね、うん。今日から僕、アリーとシャルって呼ぶから」

 

 という会話……というか、一方的な宣言があったのだという(居合わせた守護役談)。

 ただし、部屋の外にいる時には絶対に呼ばない。双子と信用できる者がいる時だけに留めているため、協力者であるはずのヴァンですら知らない事実だったりするのだ。双子にとってはイオンだけが使う、イオンがつけてくれた大切な愛称であった。言葉がうまく使えるアリエッタはまだしも、うまく話せないシャルロッタはイオンの呼ぶ「シャル」という愛称を一人称にし、お互いを呼ぶ時にも使うことがあるほどだった。

 

 

 コンコン

 

 

 「────お話中、失礼します」

 

 「「っ!!!」」

 「……チッ、2人は奥にいな。会いたくないんだろ?」

 「……はい、です」

 「……………、です」

 「…入ってきなよ、ヴァン」

 

 楽しく話していた(イオンはペットを愛でていた)時に突如響いたノックの音。途端に扉を睨むように見つめる双子を部屋の奥へやり、イオンはヴァンを招き入れる。

 

 「失礼します。……双子はいますか?」

 「…開口一番それ?今は、僕らの時間なのに」

 「……だいぶ、溺愛されてますね」

 「それがなに?なにか悪いわけ?」

 「………いえ。……とりあえず、双子と話をさせていただきたいのですが」

 「………………」

 

 自由時間=双子との交流時間とわかっていながら訪ねてきて、限られた時間であるのに自分から双子を取り上げようというのか。あからさまに嫌な表情を作りつつ、ちらりと奥へ視線をやる。目的が自分ではなく双子とわかったのなら自分が対応する訳にはいかない。あえて所有権を訴えて追い返すことも考えてはいたが。

 部屋の入口からは隠れた場所、イオンの視線の先では、双子が身を寄せ合いながらやり取りを見ていた。イオンの視線からどうやら自分たちをご指名のようだと悟り、顔を見合わせる。

 会いたくない、あいつは兄弟の仇。

 友だちの仇。

 奪ったくせに笑いながら話しかけてくるようなやつ。

 でも、イオンが困っているなら、出ていってもいい。

 言葉に出すことなくそうお互い結論づけると、部屋の入口へと足を踏み出す。

 

 「…イオン様…」

 「…いいのかい?」

 「……ん、いい、です」

 「…そう。…ヴァン、そっち…奥を使いなよ」

 「ありがとうございます」

 

 ヴァンは気づいているのか、いないのか……双子はかなり渋々、といった様子でついていく。そこは先程まで双子が隠れていた、一応人払いをせずとも公にしづらい話をしやすい場所だった。

 

 「よし、では……2人とも、ここでの生活には慣れただろうか?なにか不自由はないか?」

 

 「……べつ、に…」

 「……シャルも」

 

 世間話という体で場を明るくしようとでもしたのだろう笑顔で話しかけるが、2人は警戒を解くこともなく、一言二言しか応えようとしない。見たことのあるイオンとの差にたじろきながらもヴァンは本題へと入ることにした。

 

 「…ごほん、で、では、本題へと入ろう。お前たちが来てだいたい半年がすぎたが…イオン様はどのような存在か、分かるか?」

 「イオン様…?イオン様は、えらい人、です」

 「導師、……シャルと、アリエッタの、大切、です」

 「……まあ、いいだろう。そう、偉い人だ。偉い人だからこそ、守る者がいる。」

 「まもる…いお、サマ…あぶない?」

 

 イオンはえらい人。だから守るものが存在する。

 それは厳しい統率をするクイーンに対する他のライガの態度と同じだと双子は考えていた。トップを守るために周囲を固め、連携を取りそして確実に喉元を食いちぎる。時にはトップも参戦するがたいていは「お手を煩わせるわけにはいきません」、というやつだ。

 そんな話を持ち出すということは、イオンが危ないということなのだろうか。自分たちが知らないだけでなにか危険に晒されているのだとしたら…そんな考えが浮かび、少し話を聞こうと目を合わせる。最初よりも話を聞く姿勢になったところでヴァンは話し出す。

 

 「危ない時があるから、守る者がいる。そうだな、最近の話でいえば……導師は預言(スコア)を遵守することを教えとする、ローレライ教団の象徴だ。しかし、それをイオン様は改革なされようとされている。信じているものを否定するものが現れたらどうだ?それこそを否定しようとするだろう。イオン様は否定派の筆頭、だからこそ狙われるのだ。」

 

 「「…………???」」

 

 「………すまん、難しすぎたな。とにかくお前たちも世話になっている女の人たちがいただろう。あれが導師守護役(フォンマスターガーディアン)だ。あれらは導師を、ひいてはイオン様を守るイオン様のための護衛たちだ。」

 

 「ふぉん、ますたー…がーでぃあん…」

 

 導師守護役…正直あまりピンとくるものではないが、それになればイオンの役に立てるのだろうか?それに、自分たちは拾われただけ…役に立てなければ、いつか自分たちはイオンのそばから離れなければならなくなるかもしれない。もし、それになれば…ずっと、イオンのそばにいられるのだろうか?

 

 「アリエッタ、それになりたい、です!」

 「シャルも…!そしたら、いお、サマ…まもれる!」

 「…そういうと思っていたぞ。では、手続きを取らなくてはならないな…。その前に、…イオン様!」

 

 「呼ぶくらいなら、自分が来なよ。…はぁ、なんなのさ」

 

 「いお、サマ!」

 「イオン様!アリエッタたち、ふぉんますたーがーでぃあん、なる、です!」

 「……!……ヴァン!」

 「…なにか。…あなたにも都合がよろしいかと。ただペットとして手元に置いておく、というだけでは詠師たちは納得しません。しかし、導師守護役ともなれば大義名分として十分かと」

 「……ま、そうかもね。まだまだ勉強は必要なんだろうけど。……さて、ここに来たのはそれを言うためだけなわけ?」

 「は、あちらの事について……」

 

 イオンとヴァンが話している横で、双子はこれからへの決意を固めていた。

 今までも、きっとこれからも、自分たちを人としての居場所を作ってくれたイオンを守る。それができる存在になってみせると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから約1年半後。

 ND2011……導師エベノス死去。

 それに伴い、若干8歳であるイオンが導師となった。

 その導師の傍らには桃色のよく似た導師守護役が控えていたという────

 

 

 




アリエッタ、シャルロッタ、導師守護役に就任するまで。
今回でとりあえず、導師守護役編を終わろうかと思います。
次は少し飛んでイオン様の預言の年あたりを書こうかと考えています。
……なんとなく、導師守護役時代が思い浮かばないので…(ついでに、寄り道しすぎて厳しめに入るのはいつ!?になりそうなので)、こんな感じで行きます。

前書きでも書きましたが、予期せぬところから設定が生えます。
アリエッタとシャルロッタの違いも、お話を書いている最中にキャラたちが勝手に動いた結果です。
少しでも気に入って頂けるといいな、と思います。



と、設定の話が出たところで今のところの設定をば。参考にどうぞ。

★アリエッタ
主人公1。双子の姉で、見た目性格原作通り…ですが、今回妹がいるため、少しばかりお姉ちゃんらしいです。
先に歩いたり、安全を確かめるかのように先に試したり。どちらかというと口で頑張った後にどうしようもなくなって、いっぱいいっぱいになり手が出る派。なので、まだ我慢ができる子。でも、大切なものを守るためなら獣にだってなります。


★シャルロッタ
主人公2。双子の妹でオリキャラとなります。見た目はアリエッタとほぼ同じですが髪色が金髪混じり(メッシュが入るような感じです。なので、ほぼ桃色)なのが違いです。どちらかというとまだ獣よりで、言葉は単語をなんとか繋いで話します。文をうまく作れない分、単語はよく知ってる。まだ出てきませんが、魔物との意思疎通はシャルロッタの方が上手です。引っ込み思案なアリエッタより、さらに人見知りを発揮し後ろに隠れていることが多い代わりに、やると決めたら口より先に手が出ます。


★イオン(被験者)
このお話でようやく導師に就任。そして導師守護役として双子をそばに置きます。原作通り…少々(?)腹黒いですが、公の場ではレプリカイオンのように穏やかにしています。「アリー」と「シャル」の呼び名は、あとあと大事になるキーワードだったりします(今の時点で)。
とりあえず、与えれば与えた分だけ返してくる双子溺愛中。


★ヴァン
双子をダアトに連れてきて自分の駒として役立てようと思ってたけど、予想以上に獣としての仲間意識が発達していたせいで、絶賛嫌われ中。ただ、人としての居場所を得ること、導師守護役となることのきっかけになった人物でもあるので少しは挽回した…はず。



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