前回の最後に出てきた【あの人】が、暗躍どころか表に出てきます。
戦闘シーンがものすごく難しかったです。
鳴き声…え、そんなにレパートリーないんですけども;;
原作でもあの人が保護した(拾った?)とは言ってましたが、ライガの元で育ったアリエッタを保護って……しかも、統率された一つの群れから連れていくって、そう簡単に出来ることじゃない気がするのですよね。
確かイオン様とはじめて出会った時も言葉は通じなかったはずですし。
うんうん唸った結果が今回のお話です。
作者の想像なので、気楽に呼んでくださいね!
──ピピピ……チチッ──
「…?……ふぁぁ……」
朝。
日が昇り、鳥のさえずりが響き始め、もそりと小さな影が体を起こす。
それは桃色の髪の少女で、そのまま傍らで眠る金髪混じりの方の体を軽くゆすり、覚醒を促す。
すぐに起きることができずに、もうちょっと、というように擦り寄る背中をを桃色はパシパシと軽く叩く。
ようやく体を起こせば、一つの大きなあくびをする金色。
大体先に桃色が目を覚まして金色を起こし、それから2人はじゃれるようにして母の元へと向かうのだ。
そして目を覚ました2人は朝の森を駆け、ライガたちと共に一日を過ごす。
いつもと変わらない日常。
この日も、そう過ごすつもりだったのに。
──ザッザッザッ…──
『!!がるるるる…』
先に近くのライガたちが普段あまり聞かない足音に気がつき、低くうなり出す。
森の外には人の住む場所がある。
しかし幼獣は人間の肉を好むと言われるライガが住むこの森には、滅多なことがなければ人間は近づかない。
そもそもライガが人間の肉を好むと言われているのも人間が言い出したことであり、森には彼らが餌とする魔物が多く住むため彼らが必ずしも人肉を好むとはいえないのだ。
それは共に暮らす姉妹が証明していると言ってもいい。
……それを、
しかし確かに聞こえた足音、草むらをかき分ける音。
警戒するライガの兄弟達を見て、自然の中で育った姉妹もまた鋭くなった感覚で侵入者の気配を察する。
「ほう…ライガと暮らす幼子…本当に小さいな」
それは、姉妹にとっては物心ついてから初めて間近で対峙した人間だった。
自分たちと比べて大柄で二本足で立ち、何やら色々身につけている──服なんて、少女たちにわかるはずもない──人…否、彼女らにとっては侵入者。
先頭を歩く人物の後ろにはゾロゾロと同じような格好をした
「
「
「……獣同然、か。人の言葉は通じないだろう」
「
「村人の話を聞く限り、この幼子らがライガと暮らして数年がたっていると考えられる。早急に保護をしよう」
「はっ!」
それぞれ武器を構え始める
それを真似るように、姉妹も警戒の体制をとる。
先ほど『ヴァン』と呼ばれていた男が手を上げると、兵士たちが声を上げながら斬りかかってきた。
「はあぁぁっ!」
『ガルッ!!』
「ぐあ…っ!この…!」
「引くな!所詮は魔物だ!」
姉妹は構えてはいるものの、戦闘には参加していない。
(ついでに指示を出している
それは保護しようと善意で動く人間にも、家族を、仲間を守ろうとするライガたちにもありがたかった。
人は剣を振り上げ斬りかかり、時には譜術を放つ。
ライガはその鋭い爪と牙で戦い、一部の個体が雷撃を放つ。
しばらく戦闘が続き、ライガにも人間にも傷が増えていく中、一人の兵士が足を傷つけたライガに斬りかかろうと剣を振り上げた。
……が。
「、がぅっ!」
「うるるっ!」
『…!ガァァアァアッ』
「ぎゃぁぁっ!」
そのままではそのライガは絶命し、音素に還っていただろう。
しかしその直前に桃色が、金色混じりが声を上げると、狙われていたライガがその場から飛びのく。
そして完全に背後をとっていたはずの兵士に鋭い爪を突き立てたのだ。
「……!なんと、魔物と意思疎通ができるのか…?!…これはお前達だけで手に負えんだろう。
……私が出る、下がれ。
(これは何としても、連れ帰らねばならん)」
「……!…うー、がうっ!」
「…!」
それを見ていた男が目の色を変える。
今まで後ろで指示を出すのみだったのに、自らも剣を抜き前へと出てきたのだ。
明らかに今までの兵士たちとは違う何かを本能で感じ取ったのか、それをみたライガたちは一層気色ばむ。
姉妹は姉妹で、警戒の唸り声をあげ、姿勢を低くしていた。
金色混じりの少女が近くのライガに何やら話しかけると、そのライガは森の奥へと駆け出していった。
「…ゆくぞ!」
『ガアッ!』
『ギャンッ!』
先程までの兵士と違い、隙がなかなか見つからない
次々に倒れていくライガ。
音素に還り、消えていく双子にとっても群れにとっても大切な兄弟、友だち。
それでも、姉妹を、他の仲間をかばいながらも立ち上がる。
しかし、ついに姉妹へと男の手が伸ばされた。
「さぁ、大人しく…」
その時、
「うるるっ!…あーっ!」
バチンッ!
「っ!?」
桃色の少女へと第六音素が集束し、伸ばされた男のそばで弾けた。
譜術……しっかりした術にはなっていないが、確かに光の音素を操ったのだ。
よくよく見れば、金色の少女にも第一音素─闇─が集束しつつある。
姉妹にとっては母であるライガクイーンの元で学んだ雷撃を真似た攻撃のつもりだったのだが、男には予想以上の収穫になっていた。
「(魔物と意思疎通できるだけでなく、音素を操る譜術士としての才もある……ますます、ほしい!!)」
姉妹の放つ音素の塊をものともせずに近寄る男。
訓練しているわけでもない少女たちの攻撃は、譜術防御力の高い男には太刀打ちできるほどの威力はなく…ついに、捕えられてしまった。
つかみあげられジタバタと抵抗するふたりだが、首筋に落とされた手刀により昏倒する。
傷つきながらも、姉妹を連れていかせないと威嚇するライガたちをいなし、男と、その部下と思われる兵士達は姉妹を連れて森をあとにした。
「(ん?この幼子の首にかかる譜業は……ペンダントか?)」
ぐったりとした姉妹を抱えた男が、気づく。
野生として暮らしてきた少女たちの髪はかなり伸びていてすぐには気が付けなかったのだが、何もまとわない幼子の首になんらかの譜業が下がっていたのだ。
それは、今は亡き姉妹の両親が姉妹に贈った最初で最後のプレゼントだった。
あとでダアトの
ライガクイーンが金色に頼まれた手負いの
何頭かの同胞を失い、娘として育ててきた姉妹をも連れ去られライガクイーンは一つ、嘆きの声をあげる。
それは森を響き渡る、広がる悲しい叫びのようだった。
こうして。
ライガクイーンの元で過ごして7年。
姉妹は意図せずして外の世界へと出ることになったのである。
幸せな7年間~ヴァンによる保護、もとい誘か…んん゛っ…人間の世界への誘いまででした。
最初はライガたちとの暮らしも詳しく書こうと思っていたのです。
しかし、文字を打っていくうちに
『がるる』「わん」「うー?」『ぐるるるる』『ガウッ』
……な、鳴き声しかない←
断念しました。
次はあの人との邂逅。