双獣の軌跡   作:0波音0

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今回は双子のダアト帰還話です。
ディストさん大活躍、の巻。
どうも話し方がジェイドと同じ感じになってしまい、難しいです……
そしてオリジナルな裏話を書いているとだんだん文章がおかしくなる上、矛盾していそうで、不安がいっぱいです。でも、ガンバりました。
それでは、本編へどうぞ。



13話 双子のこれから

 

特に急いで帰ってこいとも、他の任務があるとも言われてなかった双子は、ライガクイーンと共にチーグルの仔どもに教えられた新たな森……キノコロードに落ち着いていた。情報通りキノコがたくさん生えている以外に、豊富な魔物(しょくりょう)…しかもある程度のレベルの魔物が多くいるため、若いライガたちの鍛錬にもとても役立つ場所だった。

そして……

 

『みゃー…』

『ミー…ミャー!』

 

無事に弟たちが生まれた。

タマゴから生まれてから初めて見る景色を興味津々に、でもおぼつかない足取りで見て回るライガの仔たち。人間の双子を見ても、ライガクイーン()他のライガ(きょうだい)たちが受け入れているからか関心は持っていても警戒はしていないようだ。既にアリエッタは様子を見ながら少しずつ近づいて行き、仔ライガの側にしゃがみこんでじゃれあっている。シャルロッタはというと、ライガクイーンの体に軽くもたれかかりながらその様子を眺めていた。普段ダアトでも限られた人間としか関わりを持たない双子は、ライガを、母親を守る為に明確な敵意を持つ人に相対したことで少なからず精神に乱れを生じさせていた。特にシャルロッタは好奇心は強くても人見知りで、誰かの後ろにいることが多いのだ。家族を守るためとはいえ人前に飛び出して感情を爆発させたことに気疲れしていたが心配をかけないように隠していたつもりだった。が、それはライガクイーンにはバレバレだったようで、シャルロッタの近くに座り込んで毛繕いをし始めた。自分の状態がバレているとわかると、自分から抱きついたり擦り寄ったりして母親の温もりというもので落ち着きを取り戻し始めていた。安心する母の温もり、母の鼓動、母の匂い。それらを感じられるのは生きている証拠……守ることが出来て、本当によかった。

 

「……」

『……何か、朱の髪を持つ人間に伝えていたな』

「…ルーク、…ライガ、とーばつ…いってた。エンゲーブ…に、いえば…なくなる…おもった…」

『……そうか』

「ママ、シャル…ダメだった、ですか?」

『いや、何も悪いことは無い。我らは既に森を辞した。強いて影響があるとすれば……、……』

「?」

『……いや、あの人間が人の村にあの場でのことを伝えたなら、特に影響はないだろう。気にするな』

「……うん」

 

シャルロッタはライガ(家族)のことを考え、ルークに伝言を頼んでいた。といっても伝言がエンゲーブへ届く頃には移動し終わっているため、伝言されようがされなかろうがあまり関係はない。…ただ、気分の問題だった。

それに、朱色の髪の青年……ルークは言っていたから。

〝エンゲーブから討伐隊が出されるかもしれない〟

と。もしもの事があっては、せっかく生まれてきた弟達も危険にさらすことになってしまう。最悪を考えて動くことを身につけられたのは、イオンに仕えるようになったからこそだ。最悪……全てはライガに否がありとされ、討伐隊によって家族を失うなんてことは起きて欲しくなかったから。

ただ、この話には1つの勘違いがあった。

双子やライガたちは知らないことだが、ルークの発言はエンゲーブの住民から言われたことではない。エンゲーブから討伐部隊が出される、と言われたことでエンゲーブの村で聞いたかのように聞こえるが、実際は同行していた栗色の髪の女と導師イオンが、推測して言ったことだ。つまりエンゲーブはチーグルが食糧泥棒の犯人だということはイオンのおかげで知っているが、なぜチーグルが食糧を盗んだのか、何のために、森には何が住んでいるのか……それを知らないのだ。エンゲーブはマルクト領ではあるが、キムラスカにも多くの食料を輸出する世界の食料庫である。その食糧を荒らされたのだ、何かしらの対策、報復を考えていることだろう。もしもシャルロッタの言葉をエンゲーブに伝えたなら、ライガが移動したこともチーグル族の犯した行いも伝わることになる。伝える機会がなかったとなれば、その矛先は……

 

『(……まぁ、いい。唯一は離れた後。我らが干渉することはもう無いのだから)』

 

ライガクイーンは1人我関せずを貫くことに決める。唯一許した存在は既に離れたことだろう。今は、また人の群れへと戻ることになる娘たちのケアを優先することこそが母親としてすべきこと。ライガクイーンの考えがわからずハテナを飛ばすばかりの娘(シャルロッタ)と、産まれたばかりの弟を抱えたまま抱きついてきた娘(アリエッタ)を好きにさせつつ、ライガクイーンはゴロゴロと喉を鳴らして目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族が落ち着いてから双子はキノコロードを離れ、ダアトへ帰還した。が、上から下までなんだかバタバタと慌ただしい。これはとりあえず上の誰かに話を聞くべきか…勝手に動いて保護者に怒られるのだけは嫌だ。しかし何かあったのかを聞こうにも顔見知りをすぐに見つけられず、かと言ってあまり話さない人に話しかけることも出来ず、動くに動けなくなっていく2人。そこへ声をかけてくる人物がいた。

 

「おや、帰ってきましたか。クイーンはいかがでした?」

「!!」

「ディスト…」

 

いつもの如く、空中に浮かぶ椅子に乗って音も無く近づいてきたディストに驚き、後ろに隠れるシャルロッタと普通に見えるが少しばかりほっとしているアリエッタ。いつもであればどんなに静かな気配でも野生育ちの五感でなんとなく察して身構えるのに、今は周りが騒がしすぎて微かな情報も拾えなかったようだ。軽く「すみませんね、驚かせました」と謝るディストは、自らがお膳たてしたような双子の里帰りの報告を促す。

 

「ママ、元気でした。森を燃やした犯人は、チーグル。チーグルを食べない代わりに食糧を持って来るようにママは言った…けど、チーグル、エンゲーブから盗みました。ちゃんと自分で集めて、謝ったのは原因の仔チーグルだけ。チーグル族すべてを許すことは出来ないです、けど、……きちんと償った仔どもは許す。それがママの決定…です」

「……なるほど。さすがクイーン……ライガだけでなく、魔物を統べるものとしての考えがしっかりしていますねぇ」

「あの、ディスト……みんな、バタバタしてる…。なにか…あった…?」

「…あなた達には言いづらいのですが……導師イオンが誘拐されました」

「「……え?」」

「え?」

 

ディストが言いづらそうにイオンの不在を伝えると双子は揃ってきょとんとした表情を向け、それに対してディストも唖然とした反応を返す。普段から導師守護役を解任されて七神将となってもイオンを優先させる(それについてヴァンに確認したところ、そういう約束だとその時伝えられた。作戦に組み込むのに影響が出る、もっと早く言えとシンクに蹴られていた)双子に、導師イオンが行方知れずと伝えると、泣いて暴れるのではないか……探すといって出て行きはしないか…などと懸念があったのだが、なぜか落ち着いている。むしろ、落ち着いている双子を見てディスト(こちら)の方が不安になってくる。

 

「……いや、「え?」って……あなた方が大好きなイオン様が誘拐されたのですよ?何をそんなのんびりと…」

「…いおサマ、あった」

「……は?………はぁぁっ!?会ったって、ど、どこでですか!?」

「ママ、おうち……しゅごやく、アニス。えと、……ルーク、チーグル、…おんな、いっしょ」

「つまり、ライガクイーンの住処にいた、と。で、一緒にいたのはルーク?チーグル?女…?ですか…。守護役はアニス…え、今イオン様についているのが、アニス1人ですか?」

「んーん」

「……そ、そうですよね。まさかイオン様に1人しかついていないなんてこと」

「アニス、いなかった」

「そっちですか…!!」

 

まだ導師の行方不明が分かり、誘拐犯などの詳しい情報は洗い出している最中なのだ。なにしろ犯人はダアト市民に 【導師イオンが軟禁されている】と噂を流して暴動を起こし、その最中に導師を誘拐した。幸い死者は出なかったものの暴動とそれを鎮圧する部隊によって怪我人が多数出たのだ。相手が一般信者達のために全力を出して制圧することが出来ず、信者達よりも教団員側に損害が大きい上、一部建物にも影響が出てしまった。なんとか鎮圧できたものの少ないとは言えない被害が出てしまい、おまけに大人数が動員されたため、対応に追われてまだまだわからないことだらけなのだ。

現段階でわかっていることは、

・犯人はマルクトの左官と見られ、誘拐前にアポ無しで導師との謁見に来た

(当然アポをとっていないため追い返された。その際、「素直に入れておけばいいものを……痛い目を見ても知りませんよ」というようなことを言っていたとのこと)

・誘拐時間は暴動が起きたとほぼ同時だと考えられる。誘拐に早く気づいた者が追いかけたが、逃げられてしまった。

(その際に譜術と人形(パペット)に襲われたらしい)

・詠師たちや教団に残っていた導師守護役の中に導師の外出について知っているものはなく、置き手紙などもなかったため教団は誘拐と判断、現在対応中。

という3点である。

まだ落ちつかない教団に急遽もたらされた目撃情報……しかも、導師イオンを敬愛する双子が目撃者である。信頼出来る情報源が来たことから、多少予想外なものもあったが、廊下で長々突っ立っているよりも一度落ち着いて話を聞かせなさい!と、ディストは方向転換し、双子を自らの執務室へと呼び寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、なるほど……話はわかりました。今、大詠士モースの命令で、モース曰くネズミ(スパイ)の情報から導師イオンが乗っていると思われるマルクト戦艦《タルタロス》を襲撃する奪還任務にアッシュ、ラルゴ、リグレットが前線に。シンクが後方支援に就いています。あぁ、あなた達に先立って帰ってきた第三師団と魔物達をお借りしていますよ」

 

双子の拙い説明をなんとかまとめ、導師イオンの動向を推察する。情報をまとめて考えるなど、その辺は双子には向かない作業のため2人は見たこと聞いたことを話していく。そして、現段階であたっている任務などについての説明を聞いていく。導師イオン奪還のために動いていると知り、会っただけでなく話してもいる双子は若干落ち込んでいた。

 

「いおサマ…ゆーかい…。シャル、しらなかった…」

「あなた達には何も伝えてませんでしたから…気にしなくても大丈夫です。それに、取り戻すためにアッシュたちが任務にあたっているでしょう?ですから、何かわかるまでは留守番です。いいですね?」

「……うん」

「ディストは…?」

「……この件には私のかつての友、陰険ジェイドが関わっているらしいじゃないですか。それならば、神が遣わした天才である私、薔薇のディスト様の力が必要になるのが当然!…なのに、後方支援に回されたのですよ!?」

「つまり……おるすばん?」

「…そーですよっっ!……はぁ…」

 

みんながみんないないというわけではなく、ディストやシンクは後方支援として前線にいるのでは無いということ。つまり、まだディストと話していても怒られないということ。

そこで、双子は切り出すことにした。きっと、物知りなディストなら知っているだろうと考えたから。イオン様の先生であるディストなら、なにかは教えてくれるだろうと思ったから。

 

「ディスト……教えてください。あのイオン様は、…だれですか…?」

「は…?」

 

森で確定されてしまったけど、わかりたくない信じていたものが裏切られたそれが本当なのか知るために。

 

「いまの、いおサマ……シャルたちのいおサマじゃない。」

「……気のせいではないのですか?」

「違うもん!前から思ってた……アリエッタとシャルロッタを見分けられない、ママとあって…アリエッタとシャルロッタをダアトにいれるようにしてくれたことも知らない、そんなの、アリエッタたちのイオン様ならありえないもん!」

「………、……そうですか」

「ディスト……なにか、しらない…ですか…?」

 

元々、導師イオン(オリジナル)の主治医をしていたディストは周りをごまかすためにも継続して導師イオン(レプリカ)の主治医をしていた。そのため、双子とも七神将として同僚になる前から面識があり、生前の導師イオンの遺言をヴァンとともに聞いてもいた。遺言……〝彼女たちは偽物にまで仕える必要は無い。偽者にはくれてやらない〟という、双子に知らされている解任理由とは違うイオンの最期の思いを。

故に本当のことは黙っていた。自分には関係ないとも思っていたし、自分の目的であるネビリム先生の復活のために必要なレプリカ情報をヴァンから貰うためにも必要なことであったから。しかし、双子は自力で真実へとたどり着いてしまった。既に疑心暗鬼となってしまった2人は、なんと説得しても納得することは出来ないだろう。じっと見つめてくる双子に、ついに根負けしたディストは、長いため息とともに話し出す。ディストが知る限りの導師イオンについて隠されてきた秘密を。双子が知りたがっている真実を。

 

「レプリカ……」

「アリエッタとシャルロッタのイオン様……もう、いないんですか…?」

「……そういう事です。しかし、あなた達のイオン様は決してあなた達が嫌いだから言わなかったのではありませんよ?もし、すぐに伝えていたらあなた達はきっとイオン様を追って死のうとしたでしょうから」

「「……ぅ……」」

「(まぁ、ヴァンもこの2人を死なせるのは勿体無いとか考えていたのでしょうけどね)」

 

ディストの言う通り、きっと後を追っていただろうから何も言えないアリエッタとシャルロッタ。だって人間の世界に連れ出してくれたのはヴァンであっても、溶け込むためにそばに置いてくれて一番近くで見守ってくれた大好きな唯一の存在がイオンだったのだから。その存在が失われたと知ってしまっていたら、生きている意味を見失ってしまっただろうから。

 

「じゃあ…今のイオン様は、赤ちゃん…ですか?」

「みたいなものですね。見た目はあなた達が知っている導師でしょうが、中身は2歳です」

「……2さい、なのに……アニス、だけ…?」

「…………とてつもなく、不安ですね」

 

ふと、思ったことを尋ねたアリエッタ。イオンということは双子よりも2つ年下の14歳であるはずだが、作られたのは2年前……刷り込みや教育によって年相応に動けているが、実際はまだ幼子である。そのイオンについている守護役が、仕事をしていないのでは……色々危険である(仕事を放棄していることはこの際置いておいても、イオン自身を様々な危険から守る存在がいないということになる)。かつて、友と言い譜業人形(トクナガ)を授けたが、ここまで怠慢している人物とは考えなかった。それ故に不安を感じてしまう。そんなディストをを見ていたシャルロッタが迷うように目をうろうろさせながら言い出す。

 

「あの……シャル、おてつだい、…だめ?」

「シャルロッタ…?」

「あの、その……シャルたちの、いおサマ、しんじゃったの…シャル、さびしい。でも……あのコも、いおサマ、なんだよね…?」

「……そうですね、見た目も、刷り込みも導師イオンそのものです」

「じゃあ……いおサマは、だいじな、まま…だから。アニス、いない…シャルが、まもりたい…!」

「……アリエッタも!イオン様の側にいたいです…!まだ、七神将のお仕事がないなら、アリエッタだって…!」

 

導師イオンの真実を伝えた上でまさかイオンの近くへ行きたいと言い出すとは思わなかった。だって、双子にとってはあの導師イオンは偽物でしかない。それなのに守る存在として見ているのは……被験者に教えられた導師という立場だからなのか、導師守護役という自分達が解任させられた役職を全うしないアニスに対しての反発なのか、相手が若干2歳の幼子だからなのか。当然人事権がある訳では無いディストに訴えられても対応できるはずがないため、最初は諦めるよう諭そうとしたが……ふと、考えが浮かんだ。

 

「はぁ……私に言っても仕方が無いでしょう。まとめる七神将が──あぁ、あなた方は指揮を執ることが苦手なのは知っていますから数には入れてませんよ──別命で動けず、ヴァンとモースは何故かキムラスカに居るという、トップが揃っていない今…詠師トリトハイムが指揮を執っています。ですから、彼に事情を頼んでみては?」

「…トリトハイム、詠師?」

「導師イオンだけでなく、一緒にいるメンバーのことでも気になることがあれば報告をしなさい。お友だち(フレスベルク)に頼めば鳩より早く届きますし。…報告書の練習だとでも思えばいいのですよ。この天才ディスト様が忙しい合間を縫って付き合ってあげるのですから、感謝しなさい!」

 

ディストの言葉通り双子は報告書に慣れていない。そのため慣れさせることも嘘ではないのだが、実は報告書という名のスパイをさせようという魂胆もあった。普通の人よりも多くの情報を得ることが出来る双子だが、必要な情報といらない情報の取捨選択が出来ないため、報告書を書かせるとものすごい量になってしまう(加えてシャルロッタに関しては文字もうまくかけないため、それはそれは読みにくい)。しかし今回に関しては、わざと膨大な量の報告を許可する事で早目に状況を判断し対策を練ることができる立場につきたいという思惑があったのだ。さすが華麗なるディスト様は天才だ!とばかりに考えつつもなんとか顔に出さないディスト。表情を隠した代わりに言葉がツンデレの父親のようになってしまい、誰か(シンクや部下)に見られていればからかわれること間違いなしだが。

それはともかく、自分たちにもやれることができたと嬉しそうに顔を輝かせる双子はすぐさま部屋を飛び出そうとするが、ディストが引き止める。

 

「待ちなさい!…すぐに行きたいのはわかりますが、いくつか決めることがあります。まず、ヴァンには秘密ですよ…この話をしたことは。一応あのイオン様が本物の導師イオンということになっているんですからね」

「うん。……いおサマ、はなして…いい?」

「導師イオンには話してもよいでしょう。むしろ、知っていることは話さないとあなた達は隠せないでしょうから。次に……シャルロッタ」

「…?うん」

「もう1度、教えてください。イオン様と会った時に一緒にいた者は誰ですか?」

「………いおサマ、ルーク、チーグル、…おんな。たぶん、おんな…オラクル…」

「……とりあえず、名前がわからない女は置いておきます。そのルークという人物は、赤い髪に緑の瞳の男性ではありませんでしたか?」

「…?うん、そう。すこしだけ…アッシュ、にてたけど…ちがう」

「アリエッタは少し遠くで見ただけだけど……髪の毛、朱色でした。あと、アッシュよりも怖くなかった、です」

「……そう、ですか。あなた達が言うのでしたら……いえ、彼は完全同位体……被験者(オリジナル)と違うなんてそんなわけ…」

「…ディスト?」

「あぁ、こちらの話ですから、気にせず。その男性はルーク・フォン・ファブレ……現在キムラスカ王国から保護申請が出ています」

「ルーク・フォン・ファブレ……まえ、アッシュに…きいた。おーぞく、って…!」

「王族、ですか…?どうしよう、アリエッタたち攻撃しちゃった…!」

「まぁ、状況が状況ですから……イオン様に合流すれば、必然的に彼にも会うことになるかもしれません。その時に必ず謝罪を。そして彼は王族です……わかりますね?」

「「はい、です…!」」

 

まずは先程の話を誰にも言わないことを約束する。これはダアトの中でも被験者とレプリカの入れ替えを計画したヴァンとモース、そして検死を行ったディストくらいしか知らない機密事項の1つである。誰それにベラベラと話されてしまうと余計な混乱を招きかねないための約束だった。

次に同行していた王族について。シャルロッタは以前アッシュから聞いてはいたが、彼は公爵家の人間でありながら第三王位継承権を得ており、第二王位継承権をもつ病弱な母親と現代1王位継承者であるナタリアの事を考えると実質次期国王である。その彼が(何故かは割愛するが)マルクトに誘拐されたとしてマルクト帝国、ダアトへと保護申請が出ているのだ。双子が再会した場合、そのことを踏まえた対応が求められる。まだ導師イオンがマルクト軍人の他に誰と行動を共にしているのかハッキリわからない以上、今作戦が行われているタルタロス襲撃において、必ずイオンを奪還できるとは限らない。むしろ、ヴァンの計画のためにセフィロトの封印さえ開けられれば奪還できなくとも良いのだ。その時双子はまっすぐダアトへ帰ってこれない場合、道すがら護衛をすることになる。しかし、シャルロッタの話から考えると導師イオンにキムラスカの王族が同行している可能性が少なからずある。双子にとって一番守りたいのはイオンだろうが、立場を考えるとルークはイオンと同等、もしくはそれ以上の存在なのだ。暗に、もしもの時はルークを守ることも視野に入れろとディストは言っている。

 

「…今から詠師トリトハイムへ私から説明の文書を書きますからそれを見せなさい。そして、トリトハイムへ頼んで命令書という形で導師イオンに同行できる仮の導師守護役としての許可を貰えれば、誰も文句は言えないでしょう」

「わかりました…アリエッタ、待ってます!」

「シャルも、まつ…ディスト、ありがと…です」

 

そうと決まれば、と机に向かうディストとそれを見つめる双子。

やがてトリトハイム宛の文書を書き終えてそれを双子に託すと、一目散に部屋の外へと駆け出して言った。

そしてディストはと言えば、双子が居なくなったのを見送るともう1つ……作戦を立てているシンクと一応双子を気にかけているアッシュに対して、双子を導師イオンへ同行させ情報を送らせる旨を書いた書状を作り始める。

そして、考えていた…レプリカと、被験者について。自分の唯一叶えたい願いについて。答えが出ることなんてなかったのだけれど。

 

 

 

 

 

導師イオンの置かれている状況を、双子があった当時のことではあるが知ることになった詠師トリトハイムは、卒倒しそうになりつつもディストの書状を読み、今のローレライ教団の仮のトップとして双子を派遣することを決定。なにしろ導師イオンが最も信頼していた元導師守護役なのだ、その2人が導師を思って言い出したことであり、現在の導師守護役の怠慢を考えると信頼できると考えたのである。そして双子は命令書が作成され次第送り出されることとなった。

 

 





別名:双子が導師の秘密を知る回、でした。
いつの間にかディストはお父さんと化しました。シンク以外でも部下とかに見られてはいじられているだろうな…と簡単に状況が浮かんでくる不思議。きっとディストさんクオリティ。
ちなみに導師イオンがマルクト軍人に誘拐されて誰か内通者がいる、ということまでは突き止めていますが、それがアニスということはまだ分かっていません。双子が出発した後に判明します。
そして会話文が多い…読みにくかったらすみません。
次回以降、パーティに同行しながら双子の報告書もあげていけたらいいかな、と考えています。


※以下、注意書きになります※
ほどほどに合流して、双子はアレなパーティメンバーと旅をすることになります。これにより、いくつかのイベントの回避、もしくは改変が起こります。それについてはこの注意書きを読んだものとして文句は受けつけられませんのでご了承ください。
読者様の意見をお聞かせくださるのは、毎回コメントを楽しみにしてますので歓迎です。私の答えられる範囲で御返事いたします。

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