双獣の軌跡   作:0波音0

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会話が少し多めです。
ゲーム内のセリフをそのまま使いつつ、この小説オリジナルにアレンジしました。
あ、それと、ルークは話す時に
「…~じゃぬぇー」
という話し方をしているのが特徴ですが、どのくらいがそう言っているのかわからず、今回は
「…~じゃねー」
で統一してます。わかり次第改稿します。
では!本編へ。



12話 ライガの住処A

 

ライガの巣を確認するような声が聞こえたかと思えば、足を踏み入れてきたのは3人の人影と小さな生き物。まだこちらがはっきりとしているわけではないのだろう、堂々とではないが確実に近づいてきている。次第にお互いの顔や服装などがはっきりする距離になり、双子から見てそれは、赤い髪で長髪の男、緑の髪の華奢な男、栗色の髪で長髪の女だとわかった。人間たちの足元にいるのは、先ほどライガクイーンの話(ママの話)に出てきた仔チーグルだろうか……成獣に比べれば小さいのだろう、おぼつかない足取りで付いてきている。そしてよくよく見てみれば男のうちの一人は双子にとって見覚えのあるどころの話ではないほど、見慣れたものだった。

 

「……イオン様…?」

「…!!あなた達は…!…」

「は!?ガキ…!?ガキが何でこんなところに…」

「…なぜ、あの子たちは女王(クイーン)の前にいるの、危険よ!?」

女王(クイーン)?」

「ライガは強大な雌を中心とした集団で生きる魔物なのよ……だからこそ統率も取れていて、一筋縄で行く魔物じゃないの」

 

自分たち双子を目にしてなぜここにいるのかと驚くイオンの側では、一緒に来た男女がライガについて話している。イオンは側にいる男女にライガクイーン(双子のママ)について話しているというわけではないのだろうか。……話していないのだろう。だって、話していたらライガクイーンは危険だ、なんて言葉は出てこないはずなのだから。

 

「あの、イオン様…クイーンの近くにいる子どもは…」

「あぁ、そうでした。えぇと……2人は、何故ここへ?」

「……にんむ、かえり…です。きたのもり…かじ…。シャルたち、きになって……」

「ちゃんと、終わらせてから来ました、です。報告は副師団長に任せてあります…です」

「そうですか…ご苦労様です。では、教団へ帰り次第確認しますね」

「あの、いおサマ……ここ、おそと…しゅごやく、は…?」

「ええと、ボクは理由あって外に出ているんです。アニスは別行動で…」

「……別行動?守護役はアニスだけ、ですか?」

「……すいません、寝てたので置いてきました…アニス以外は連れてきていません…」

「…アニス、しゅごやく…ダメ。いおサマ、ずっといっしょにいる、…だいじなのに…」

「で、ですが、この2人がついてますし…」

「……ふたり……よーへー?」

「あ、いえ……あれ、そういえばルークのことを聞いてませんでしたね…?」

「…そーなの…?」

「……って、おい!ここは危険っつってたよな!?お前ら呑気すぎんだろ!!」

 

女からの問いかけで、イオンが双子に問いかける。多分、女が聞きたかったことは〝双子が何者なのか〟〝導師と親しいのか〟あたりのことなのだろう。しかし持ち前の天然さで〝双子はなぜここにいるのか〟を聞き、ほのぼのとした雰囲気を作り出してしまったイオン、そしてこちらもある意味状況をわかっておらずいつも通りに返答して、世間話のような流れにしてしまった双子。しびれを切らした男が強引に流れを切り元に戻すが、双子にとってはこの状況を〝危険〟と言われても理解できるはずがなかった。

だって、この場にいるものは双子にとっての母親と目の前の侵入者だけなのだから。危険だと感じる要素が双子には全くない。むしろ、侵入者であるイオン以下2名(+チーグル)の方が危険だと思っていた。だって、ライガの強さを知る人間は簡単に巣へ近づくなんてことはしないから。それなのにここへ来た──警戒する以外にないではないか。

 

「きけん…?…なんで?」

「えっと、それは……」

「なんでって…、ライガの巣にいて危険がわかってないっていうの!?話を聞く限りあなたたちは神託の盾兵なのでしょう?なんでそんなこともわからないで任務に就いているのかしら!?」

「そ、そうだぞ!任務がどうとかは知らねぇーけど、そいつは危ねぇんだ!」

「ティア、ルークも落ち着いてください。彼女たちは魔物の扱いに長けた双子、普通の人よりは心得ているはずです。……ですが、そうですね。魔物の扱いに長けているとはいえ、ライガクイーンはただの魔物ではありません……この場は流石に危険です。すぐに離れてこちらに……」

「…………え……」

 

きけん、危険、キケン。

キンキンと甲高い声で怒鳴るように叫ぶ女の声にびくりと肩を震わせてぬいぐるみを抱きしめるアリエッタに、手甲鉤をいつでも構えられるよう手をかけたまま少しだけクイーンの側へ後ずさるシャルロッタ。そしてあまりのうるささに低くうなり声をあげるライガクイーン。

……まだ、飛び出してはいけない、飛び出すわけにはいかない。この場にはイオン様がいる、タマゴを守るライガクイーン(ママ)がいる、まだ生まれていない妹弟(きょうだい)だっている。ここを戦闘の場にしてしまったら巻き込んでしまうかもしれないから……前衛を担うシャルロッタは唇に歯を立てながら、痛みで苦手な我慢を重ねていた。

警戒を緩めないままに目の前の人物達から繰り返される言葉を聞いていた双子は、耳を疑った。イオン様を遮った女も許し難いが、それ以上に、信じられない思いだった。本気で言っているのだとしたら、これまでに少しばかり生まれただけの懸念が確信に変わってしまう……そんな事だったから。今にも飛び出してしまいそうなシャルロッタに代わり、アリエッタがぬいぐるみを強く抱き、ふるえた声色で問いかけた。

 

「イオン様……それは、本気で…言ってる、ですか…?」

「……?本気、とは…?」

「ライガクイーンが、ただの魔物ではない、この場が危険だって、言ったこと…です」

「…そう、ですね…。僕は見たことがないですが、ライガクイーンが獰猛なライガを統率している事は知られていますし…」

 

────それが、限界だった。

 

「ここに……シャルたちの、いえに、……ちかよるな!いおサマの、ニセモノ!!」

「!?なんで……!」

 

アリエッタが目を見開き、抱きしめていたぬいぐるみを手放してしまうほどに驚いて、泣きそうに顔を歪めた時には、シャルロッタは自分の唇を噛みきり、目を怒らせながら手甲鉤を構えて、飛び出していた。目の前の者達を完全に敵と認識した、噛みきった口元から血を流し、光を失くした敵意を見せる瞳のそれはまさに【獣】と言っても相違ないほどで。

遅れて呆然としかけていたアリエッタが我に返り、ぬいぐるみを抱き直すと周りに音素が収束し始める。ふわりと浮かぶピンクの髪、その周囲に集まってきたのは、第六音素。そして無差別に放たれるのは──リミテッド。

 

「わ…!」

「きゃあっ!…ちょっと、危ないじゃない!それに偽物だなんて……イオン様に失礼よ!」

「みゅうっ!?」

「おわっ!って、危ねーな!」

 

降り注ぐ光の塊からイオンをかばった男の前に現れた小さな影。影……アリエッタの譜術(リミテッド)を後ろを見ることなく掻い潜って飛び出し、鈎爪を突き出したシャルロッタを反射的に男がなんとか木刀で止める。我を忘れて襲いかかったためか、シャルロッタの爪の軌道は単調で読みやすく、そして男に比べてだいぶ小柄であることもあってか師団長クラスの実力であっても男は受け止めることがかなったのだ。それでも経験とレベルに差のある攻撃は重く、男は顔をしかめる。木刀と鈎爪が噛み合い、ギリリと嫌な音を立てていた。

 

「おい、イオンが偽物って、どーゆーことだよっ!」

「…どいて、どいてよぉっ!!いおサマ、ママに…ごあーさつ、してる、もん!しらない、ないもん!」

「イオン様はアリエッタたちと一緒にママに会ってる!それを、イオン様が、アリエッタたちのママを知らないはずがない…です!」

「ママ…って、は!?まさか、そこのライガクイーンってヤツのことを言ってんのか!?…っ、ぐ、くそっ!いい加減離れろっての…!」

 

噛み合った爪をなんとか外そうともがくシャルロッタに、男は声を荒らげる。そして、シャルロッタの言葉を援護するように後方からアリエッタが声を上げた。よくよく見れば、アリエッタの近くには再び第六音素が収束し、いつでも次の譜術を放てる状態になっている。

双子の中に少しずつ重なってきた違和感は、1度は蓋を占めて考えないことにしていた。

だって、イオンは疲れているだけだと言ったから。双子にとっての絶対であったイオンのいうことは正しいし、そこに存在する(いる)のだから、別人だなんてあるはずがないと信じきって、勘違いだったのだと考えないことにしたのに。

だがここで、確信してしまった。

目の前のイオンは、自分たち双子が慕ってきたイオンとは違う存在だと。証明された訳では無いが、双子の中では別の人、と位置づけるしかない条件が揃ってしまった。それでもイオンなのにイオンではないと感じていてもそれがなんなのかを知るすべが双子には無かった。ただ認めるしかない現実と認めたくない思いを向ける場所がわからず、特に自制がまだ効かないシャルロッタは武器を向けて反発することしか出来なかった。

興奮するシャルロッタを、泣きながら声を上げるアリエッタを唸りながらも見ていたライガクイーンはここで初めて立ち上がり1つ大きく吠えた。その咆哮によって小さなチーグルは吹き飛ばされ、慌てて女が駆け寄る。

 

「おい、ブタザル!ライガクイーン(あいつ)はなんて言ってんだ!」

「タマゴが孵化するところだから来るなと言ってるですの…」

「タマゴォ!?ライガって卵生なのかよ!?」

「ミュウもタマゴから生まれたですの。魔物はタマゴから生まれることが多いですの」

「まずいわ。タマゴを守るライガは凶暴性を増しているはずよ」

「みゅうぅ…ボクがライガさんたちのおうちを間違って火事にしちゃったから、女王様すごく怒ってるですの……それに……」

「それに?…なんて言ってるの、ミュウ?」

「……お前を信用して娘達を託したというのに、約束を反故にされた、…ってイオンさんに向けて怒ってるですの…」

「娘達…って…」

「……魔物に育てられたんです、彼女たちは。そのおかげで、魔物と会話する力を身につけ、それに目をつけた教団が保護をしました。そして、彼女たちは二年前まで僕の守護役を務めていました。ただ、約束とは…」

 

そう答えるイオンだったが、薄々気がついていた。その約束は被験者(オリジナル)が双子と、ライガクイーンと交わしたものなのだろうと。人として生きるために刷り込みされた中に当然導師としての職務についての知識はあったが、被験者が過ごした個人の記憶は引き継げない。きっとその記憶の中の出来事なのだろうと。

記憶は、その人物がその人物を構成する要素であり、その人物たる理由である。目の前で怒りと悲しみを顕にする、双子にとってのイオンの記憶を、自分はいくつも持っていないから。……被験者にとって1番近しいといえる存在を悲しませてしまっているのは、自分だ。それでも、導師としての仕事はしなくては…その判断は、ここでわかる者はいないが誰も幸せにならないものだった。

 

「……ですがライガのタマゴが孵れば生まれた仔たちは食料を求めて街へ大挙するでしょう」

「はぁ!?」

「ライガの仔どもは人を好むの。だから街の近くに住むライガは繁殖期前に狩り尽くすのよ」

 

双子は思った。特に、前線で刃を交えるシャルロッタは。

──何を言っているのだろう、イオン様は、この女は。そんなこと、あるはずがない。だって……!

 

 

「……こいつらがいるんなら、それ、違うんじゃね……?」

 

 

──え?

 

 

「おい、チビ助」

「……っ、」

「あいつ、お前の母上なのか?」

「はは、うえ…?…ひゃっ、」

 

刃を合わせながら問いかけられたことに迷いを見せた一瞬の隙で男はシャルロッタを弾く。手甲鉤を手放すことは無かったが弾かれた勢いで尻餅をつき、痺れた手を庇うがそれでもシャルロッタは下から男を睨みあげた。しかし、男は木刀を腰に戻す。その行動に戸惑うように瞳が揺れるシャルロッタを見て、男は先程よりは少しばかり落ち着いたのか答える気はあるようだとじっと答えを待つ。何やら叫ぶ女はいたが、シャルロッタはうろうろと視線を動かしながらもポツリ、ポツリと話し始めた。

 

「……ははうえ、なに…?」

「あー……あんま言葉知らねーのか?…お前らでいうならママってことだよ」

 

アリエッタはともかく、シャルロッタは言葉が追いつかないところがあるのだと察した男は、鬱陶しそうに言いつつもどこか懐かしそうな、親近感のあるような表情で、自分なりにわかりやすく噛み砕いて答える。パチパチと瞬きをしたシャルロッタは少し考えるように首をかしげ、母上=ママという説明に納得したのか顔を上げる。

 

「ママ……うん、シャルと、アリエッタの、ママ……」

「……そーかよ。……ここの森の近くにエンゲーブっつー村があんだよ。ここからお前らが出てかないと、ライガは人間を食べるから討伐隊が出されるって言ってたぜ」

「…!ライガ、にんげん…たべない!」

「…嘘を言わないで!ライガの子どもは人間の肉を好むのよ!?」

「アリエッタとシャルロッタ、赤ちゃんの時にママに助けられた……ママに、拾われて育ちました。でも、食べられてません、ママの娘として生きています…っ」

「シャルも、きいたこと…ないっ」

「……お前らが、信じていても、他の奴らは信じねーんだよ。あいつみたいにな。だから、人間のためじゃねぇ、お前とお前の家族のためにここから移動してくれねぇーか?」

「……いどう……」

「……俺は、信じてやってもいいぜ。嘘言ってるようには見えねーしな」

「…!……ママ……」

 

ライガは誇り高く、知能の高い魔物だと双子は認識しているし、ライガクイーンもそう教育していた。当然魔物と人間の境を理解しているし、まずそこへ踏み込まない……無駄な争いを避けるために。そのためライガは餌として人間を認識したことは無かったが、縄張りに足を踏み入れたものに対しては力で応戦したために、このような認識をされているのかもしれない。もしくは双子の母親の群れ以外で、餌を取れずに仔どもを育てられない時にやはり縄張りを荒らすものを餌として捕食したかだ。群れの数だけライガクイーンは存在し、全ての頂点にいるわけではないからだ、可能性がないとは言いきれない。

イオンが言ったように、危険だと繰り返し続ける女のように、人間にとってのライガは〝獰猛〟で〝危険〟でしかないのだ。イオンはその事情を含めて自分たち双子を認め、必要としてくれていたが、そんな人物はごく少数でしかないのだということを、双子は今、理解したような気がしていた。でも、双子にはもう、そんな存在(理解者)はほとんどいない。魔物が怖いと近づかない奴らと、魔物と一緒にいるなんて気味が悪いと汚いもの、異質なものを見る目で見てくる奴らばかりだ。

……だが、シャルロッタの目の前で話す男はどうだろう?

 

人間のくせに、人間のためにではなく、自分たちのために移動しろと言ってきた。

 

人間のくせに、魔物といる自分のために説明をしてきた。

 

人間のくせに、信じてもいいなんて言ってきた。

 

人間のくせに、……この男は、信じてもいいのだろうか。

 

シャルロッタはライガクイーンへと顔を向け、アリエッタはそのやりとりを見て収束させていた第六音素を霧散させて不安そうにクイーンを伺う。

視線を集めるライガクイーンは、先程よりも大きく、森中へ響きわたるような咆哮をあげると双子に向けて小さく鳴いた。それに頷くとシャルロッタは立ち上がり、アリエッタはライガクイーンへ寄り添う。森を駆ける足音がする。

動きを見せたライガクイーンと双子を見て女がナイフを構える。

 

「なにをするつもりなの!?イオン様、危険ですからお下がりください!ルーク、あなたさっきから勝手に行動しないで!戻ってイオン様を守りなさい!」

「……アリエッタたちは何もしない、ただ、他の兄弟たちを呼んだだけ!『動ける者でタマゴを運ぶ。その青年の思いに免じて、住処を移そう』ってママは言ってます。………イオン様…」

「……はい」

「移動すれば、そこの女も、シャルロッタの前の男も、……入口の……ううん、誰も、ママも兄弟も殺したりしない、ですよね?」

「!!……はい、もちろんです。ユリアに誓って…いえ、ボク自身の【名】に誓って、人を害することがない限り討伐することはしません!」

「…だったら、アリエッタはもういいです。……ちゃんと、確かめたら……また会いにきます……イオン様」

 

イオンを背にかばって武器を構える女を視界から追い出し、ライガクイーンと群れの安全を願うアリエッタ。確認する中、チラ、と巣の入口へと意識をやるがすぐに目の前のイオンへと戻していた。安全についてはイオンという名に誓うとまで言われ、ひとつ頷けば自分もタマゴを運ぼうと移動を始めた。

 

「みゅ、女王様!ミュウ、知ってるですの!ここから、北の方に……キノコがたくさん生えてる森があるですの!そこなら、ライガさんたちのご飯もたくさんあるはずですの!ほんとに、ほんとにごめんなさいですの…!」

『お前は、チーグル族の中で唯一自力で食糧を運んできた。唯一謝罪をした。責はお前だけではないというのに……我らは、お前を許す』

「…!!それでも、ボクは謝るですの。ボクは、ダメなことをしてしまいましたの。だから…」

『……忘れるな。それがお前に我が伝える罰としよう』

「……はいですの!」

 

チーグルの仔どもが、女に抱えられたまま声を上げる。人間たちにはさっぱりの会話だったようだが、双子は理解した。母は、チーグルの仔どもは許すということを。

双子もチーグルも言葉を伝えなかったために、どんな会話をしたのか知っているのはライガ側だけであったが、会話を終えたチーグルが決心したような顔をしていたことから、いい結果が出たのだろうと人間達は納得したようだ。

 

「…あー……その、なんだ…タマゴも割れずに済んだし戦わなくていいってことだよな?」

「……」

「おい、」

「にぃ、……なまえ、なに?」

「は?にぃって、俺か?………、…ルーク」

「るーく…にぃは、ルーク……ん、おぼえた。……ルーク、」

「あ?」

「…ありがと、です」

 

居づらそうに戦わなくても良くなったことを、頬をかきながら言う男に対し、マイペースに名前を聞くシャルロッタ。他での会話に比べて、先程まで刃を交えていたのが嘘のように何故かほのぼのとしている。新たな名前を覚えたシャルロッタはそろ、と手をルークへと差し出し一つ詠唱をする。

第七音素が集まり、シャルロッタの髪がふわりと浮かぶ。奇しくもその姿は先程のアリエッタと酷似していた。

──ファーストエイド。

初級回復譜術ではあるが、ルークの傷は癒え、跡すら残らずすんだようだ。

ニコリと笑い、お礼を言うとルークに背を向け走り出し、姉を、母を手伝い始める。

 

そしてタマゴを抱え、ライガクイーンと巣の近くまで集まってきていた兄弟たちと共に新しい住処へと出発する双子。

それぞれが違う思いを抱きながら、この場は別れることになる。

 

アリエッタは気づいていた。

シャルロッタは侵入者に精一杯だったようだが巣の入口のところに不自然な気配が二つしていたことに。最初はライガクイーンが立ち上がった瞬間に動いた気配が、男がシャルロッタへ話しかけた頃に静かになったために見逃してやったが。

あれは、一体誰のものだったのか。

アリエッタは通り過ぎる時に一度立ち止まり、付いてこないアリエッタを気にした家族に呼ばれるまで、そちらをしっかり睨んでやった。

「……ママに呼ばれなければ、リミテッド、打ち込んだのに…です」

 

 

 

シャルロッタは思い出していた。

ルーク、ルーク……この名前を、どこかで聞いたような気がする、と。

 

……現国王の王妹であり彼女が降嫁したファブレ公爵家──つまり王族だな──で、そこの一人息子、ルーク・フォン・ファブレ、に……

 

……アッシュが言っていた気がする。

 

 

「……きのせい…?」

 

 

 





最初に。
何故、こんなことになった…w

これでライガクイーンは生存します。
それは最初から決めてはありましたが、気づいたらシャルロッタもアリエッタも攻撃してました。
お互いに名前を知らないため、わざとの「男」「女」などでの表記です。個人的にはルークに「チビ助」と読んで欲しかったんです。シャルロッタの「にぃ」は「お兄さん」という意味だと思っておいてください。

この話でわざと描写しなかった、イオンサイドの様子などは次回、載せようと思います。+αで双子が移動したあとの出来事も同時収録予定(?)。
では、また次のお話でお会いしましょう。

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