迷いに迷った結果、双子はやっぱり2人で一緒にいることが好きなようで、気づいたら一緒にいました。
迷う必要なかったみたいです。
さて、今回は以下の独自設定を挟ませていただいて前書きとします。
これはこの話だけでなく、この小説内での設定としますのでよろしくお願いします。
★魔物を倒した時★
魔物を倒すと音素に還るが、それは中途半端な倒し方をされた場合。
少しずつHPを削り多くの傷を与えて倒した魔物は傷口から音素化し、一瞬で命を奪うように一気に命を刈り取った場合は音素化しない、ということです。
じゃあ、高レベル時に一瞬で倒す時はどうなるのかって言うのは「小説だから」でお察しください。
単に魔物を餌とする場合、身が残らないで全部音素化してしまうと餌にできないな、と思ったために設定しました。普通の動物がいるんじゃないか、とも考えましたが、この小説ではいない設定でお願いします。
……あ、ブウサギとかハトとかは別ですよ?ある意味これらも魔物なのかも知れませんが。
では、本編です。
森が火事になった、そう聞いてはいたけれど……自分たちは軽く考えていたところがあったと思う。だって、アッシュは〝北の森が火事になったらしい〟としか言わなかったから。その後は俺は伝えたからな、といなくなってしまったし、どれくらい、とか…双子の家族がどうなったか、とか…何も言ってなかったから。だから勝手に、そんなに酷くないんだって思ってた。ママたちは心配だったけど、すぐに駆けつけなくても大丈夫だって北の森の近くの任務が入るまで待つ余裕があった。
ホントのこと、知ってたら……もっと早くここに戻ってきたのに。
「…っ…ひどい……」
「……なにも、ない…」
やっと待ち望んだ北の森の近くでの任務が入り、双子は揃って出かけていた。今回はその地域で最近見られる魔物の調査、可能ならば双子が意思疎通を取れる相手かどうかを確かめるのが任務で、最初は双子のどちらかが行けばいいと言われていたのだ。2人で行く必要などない、そんなに厳しい任務ではないのだから、と。だが、任務を言い渡したものは2人は2人ともがこの任務を待ち望んでいたのかを知らなかった。案の定どちらが行くか姉妹ケンカとなり、どうせ片割れが気になって集中出来なくなるくらいならもう一緒に行ってこいと様子を見に来た事情を知る
早く、しっかり終わらせて、
そんな火事を軽く考えていた2人は予定通り任務を終わらせ、報告は師団兵に託し先にダアトへ帰らせて森へと足を踏み入れ、そして……北の森〝だった〟所を見て呆然としていた。そこは一面焼け野原となり、かろうじて原型をとどめている草木も再生するのは難しいところまで焼け焦げていた。生きているものなど存在しないそんな死の世界、……そうとしか思えない光景だった。
「…ママは…?」
「…みんな、どこですか…っ」
ほぼ原型をとどめていない森だった場所を歩きながら、ライガの巣を目指す。時折炎から逃げ遅れたのか、もしくは餌を探す魔物に狩られたのか、地面には骨が転がっていた。それを見るたびに家族かもしれない、友達かもしれないと泣きそうになりながら双子は足を進める。まだ決定的なものは見ていないから、諦められなかった。
「ここ、……」
「シャルロッタ…ここ、ママの匂いする…よね?」
「…うん。でも、なにもないよ…?」
「……何も残って、無いね…」
ようやく自分たちが育ったあたりと思われる場所……焼け焦げた地面に匂いが充満していながら、他のどこよりも
全て、燃え尽きてしまったのか。
間に合わなかった、のだろうか。
そんな顔を真っ青にしてもう泣く寸前の双子の背後から何やら気配が近づいてきていた。
『がるるる…っ!』
「「!?」」
「誰…?ここは、アリエッタたちのお家…!」
「ここ…シャルたち、だいじ…。こわすの…だめ…!」
魔物の鳴き声……明らかによそ者に対して威嚇するような声を聞いて、それが自分たちに向いているとはっきりわかった時。双子は振り返り、すぐさま武器を構えて見せた。
相手は逆光になっているからかこちらからはよく分からないが……この場所は今はなくなってしまったとはいえ、双子がライガクイーンに助けられてから守られ、育ってきた大切な場所。壊れてしまったからこそ、これ以上壊されてしまうことは、耐えられなかった。
しかし、威嚇の声を上げていた魔物は双子をしっかりと視界に入れると動きを止め、匂いを嗅ぐように鼻を動かした後……唸り声を収めてゆっくりと近寄ってきたのだ。
『!ぐるる…』
「…えっ…!?あ…、お…おにい、ちゃん…?」
「……おにー、ちゃ………いき、てた…いきてたぁ…!」
少しばかり体の毛並みはぼろぼろだが、元気そうなライガがそこにいた。普段との毛並みの違いや兄弟からの威嚇を受けた経験がなかったためにすぐに気づけなかったが、それは確かに自分たちと一緒に育ってきたライガに間違いなかった。顔を擦り付けて自分たちとの再会を喜ぶ兄を呆然と受け入れていた双子は、その存在をしっかり認識すると共に泣き顔のまま抱きついた。
──生きてた。
もうその思いでいっぱいだった。
◆
しばらく兄弟との再会を喜んだ後、双子は家族や森の状況を聞く。
結論からいえば、母は生きていた。
火事が起きた時、消火が間に合う規模ではないとわかるや否や、動けるライガたちで協力してタマゴを運んで移動したらしい。母は無事だったが何頭か姿を見れない家族がおり、生きているのかそれとも死んでしまっているのか…それもハッキリはしていないのだとか。気がかりだったのは巣を離れて生活していた双子。双子の近くにいる
そんな簡単な説明を聞いたあと、兄に連れられて双子はライガたちが今住処としている森へと向かうことになった。なぜ火事になったのか、今は平気なのか……それらを聞こうとはしたが、兄から母から詳しく聞いた方がいいと言われ、黙ってついていく。
枯れ木、焼けた地面ばかりの森から少しずつ緑が増えていく道を歩き、今、群れが住処としている森が見えてくる。それが見えてくるにつれて、ライガや他の魔物達の姿も見え始めてきた。なんでも北の森から避難してきた魔物もいるらしい…しかし元の森と今の森、違う生態系が混ざりあい、魔物の中でも上位に位置するライガはともかく食料を得られず数を減らしている魔物もいるのだとか…。それを聞いて、双子は唇を噛む。自分たちがいたところでなにか出来た訳では無いだろうし、弱肉強食な世界だ……それでも、故郷を感じられる要素が減っていることはよくわかったから。
兄が足を止める。
どうやら住処へと着いたようで、行けと、行って顔を見せてやれと促されるまま双子は中へ足を踏み入れる。
「「ママ……?」」
『!』
はたしてそこに、ライガクイーンは鎮座していた。
双子が来たことに目を開き、驚いたように見はる母を見て、双子はもう我慢出来ずに駆け寄りすがりついた。ライガクイーンは頭を擦りつけ、無事に安堵して泣き出す双子を見れば軽く鳴き声を上げたあと優しく舐めてやった。
「ママ…よかった、元気…ですか?」
『ええ、母もタマゴも無事。でも、何頭かのライガや他の魔物達が犠牲になってしまった』
「…なんで、かじ…?」
『………チーグルの仔が原因。なぜか自分たちの住む森ではなく、我らの治める森へとやってきて火を吹いた。小さかったはずのその火はあの森全てを焼き尽くす大きなものになってしまった』
「チーグルの仔って、いった…?ママ」
「チーグル、こども、ひ…ふけない…」
『それは、わからない。でも、それが原因なことは確か』
ライガクイーンの治めていた広大な森を焼いたのは、1匹の仔チーグルの吹いた炎のせいだった。最初は小さな炎だったが、魔物たちはパニックとなり消火が遅れ……森を捨てるしかなくなってしまったのだ。水を扱える魔物も居たには居たのに、いきなりの事で対応しきれなかったのだろう。そうして生き延びた魔物たちはこの森へと移住してきたのだ。
双子はここまで聞いて疑問をもった。
なぜ、仔チーグルが火を吹けたのか。
本当に仔チーグル1匹が起こしたことなのか。
なぜ、北の森で火を吹いたのか。
小さな子どもが勝手に自分たちより上級の魔物の住む森まで来たのいうのか。
それを怠ったのは…。
……いくつも気になることはあるし、起きてしまったことではあるが、疑問をそのままにしておいていいとは決して言えない。そのままにしておけば、万が一同じことが起きた時に対応ができなくなってしまうからだ。だが、それには満足のいく答えはなさそうで。
「ママ…その、チーグルは…?」
『謝りには、来た。我らは住処を奪われ、何頭もの同胞を失った。最初は掟通り、支配下に置くつもりもなかったのだが、今回はいささか規模が大きすぎた……だからこそ原因であるチーグル族への報復に動こうとしていた。しかしチーグル族が…お前達のいる人の集まりで神聖視されているらしく、それを盾に命乞いをしてきたのだ』
「そーいえば、ディスト、いってた…せーじゅー、って。 チーグル…」
シャルロッタが前に聞いた話を思い出す。教養ではなく、単に魔物に育てられたなら知っているかという軽いノリでディストにチーグル族のことを聞かれたことを。その時よく分かっていない様子のシャルロッタに対し、ディストは教団に所属しているなら知っていた方がいいと教えていたのだ。魔物の話とはいえ教団に聖獣認定されているといわれても、自分にとっては大きく気高い、そして美しい母(ライガクイーン)こそが聖獣であり、それは昔からの言い伝えで認められたものだと教えられれば、見たもの聞いたもの自分が体験したものでないとよく理解できないシャルロッタは、チーグルに興味が持てなかった。ディストは「あんなにチョロチョロといるのなら、数匹持って帰って研究に使えないですかね…」なんてことも言っていたな、と思い出しているとクイーンは巣穴の隅のほうへと視線を向ける。
「……?」
「あれって…」
ライガクイーンが向けた視線の先には野菜や果物が積まれていた。風通しの良さそうなところに新鮮そうなものが上の方に重ねられているが、多く積まれたその下には傷んだものもいくつかありそうだ。それにしても、量が多い……中には森の中で見たことがないようなものまで見える。不思議そうに視線を戻すと、母は大きく頷く。
『…私は今、タマゴを生んだばかりでここからあまり離れることは出来ない。だから我や同胞が動けない分の食糧を提供し続けるのなら、と猶予を与えることとしたのだ。しかし…』
「……ママ、やさい…たべる?」
『いや、我らライガは肉食。だから野菜などを食べることは無い。肉もあるにはあったが…それは、生まれる仔のためにも、同胞が生きていくためにも食べてしまったから、そこにはない』
「ママ、あれって…焼印…この辺りだと、エンゲーブ?」
『…どうやら人の手が入ったものを盗み出して我らに運んできていたようだ』
チーグルって、バカなのかな。
これが双子が同時に思った感想だった。だって、命を取らない代わりに要求した食糧を自分たちで集めずに人里から盗み出したのだから。これでは全く要求に答えていない。むしろ、手を抜いて楽をしていると言われても間違いではないだろう。
そして、ライガの立場から考えてもチーグルの行為は明らかにバカにしているとしか思えなかった。命乞いをして猶予をもらっている身でありながら、運ぶ食糧はすべて盗品。唯一、1匹のチーグル……森を燃やしてしまう原因となってしまった仔チーグルだけは、定期的に森になる木の実や身は少ないが魔物の死骸を小さな体で少しずつ運んできては毎回謝っていくが……いちばん悪いのはその仔どもだけかも知れないが、きちんと見ていなかった大人達にも責任はある。それなのに償いとはっきり分かるのはその1匹だけだ。
「……チーグル、消したらダメかな…」
「……おみやげ、ディストに…あとは、いらない…」
『…まあ、我らもここに永住するつもりもない。お前達が言った通り、あの食料には焼印が付いている。つまり、人里でも騒ぎになっているだろう……この森にいつ、人の手が入るかわからない。早いうちに移住する。もちろんチーグルの問題は放置だ』
「……じゃあ、アリエッタたちもほっときます」
「…わかった…。……!!」
「シャルロッタ…?…あ……」
『……足音が聞こえるな…これは魔物ではない。…2…3人、か…?』
それはとても小さな音。普通の人間では気づけないほど遠くで響く小さな音だが、それでも魔物共に自然で育った双子や魔物の耳には届く草を、地面を踏みしめる音。魔物であればライガクイーンの存在を知っているためにもっと気配を消してくるだろう。となれば、かなり可能性は低いが新参の魔物…か、人間ということになる。ライガの討伐に来たというのか。
ライガクイーンは唸り声をあげ始め、双子は母とタマゴの前へ立っていつでも戦闘態勢を取れるように構える。守るために動けない母を守るのは自分たちの役目だから、と。
そして、警戒し始めてから少しして、
「ここが、ライガのいるっつー巣か?」
────きた。
誰だっけ、原作入りするよ、合流できるよって言った人。
……私ですね。
できてなくないですか?あわわ、やるやる詐欺になってしまった…!!
最後にちょろっと出てきた人、分かります…よね?
……さぁ。今度こそは合流、間違いなく、絶対!
そして、さり気にミュウの救済の道を敷いておきました。こんな感じで他メンツにも少しずつ救済対象や、よく捉えられる部分は入れていきます。
ただ、ガッツリヘイト・アンチ対象は無理です。良くかけません。
……微妙に筆者、ヘイトとアンチの違いがわかってないのですが、とりあえず断罪も少しずつはいっていくかと。
では、また次のお話でお会いしましょう、です。