双獣の軌跡   作:0波音0

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お久しぶりです。
原作入りは、まだ無理でした…
今回は筆者が個人的に仲良くしてほしい子達でわちゃわちゃしています。

原作はどこで誰が合流すべきか……迷います。
では、どうぞ!



8話 気になること

 

 

 ダアトに七神将が台頭してしばらくして。導師守護役(フォンマスター・ガーディアン)の総入れ替えに伴う教団の人事によってバタバタしていた神託の盾騎士団(オラクル)は、七神将を中心に落ち着きを見せ始めていた。

 

 大鎌使い【黒獅子ラルゴ】が師団長を務める重厚さと屈強さを併せ持つものが集まる、第一師団。研究者が集まり変わり者が多いとされながらもこの師団でしか対応出来ないことも多いと言われる、第二師団を率いる【死神(本人は薔薇と言い張っているが)ディスト】。異例の双子の師団長で他の師団と比べ人数がかなり少ないが、魔物を使役する通称「魔物(サモナー)部隊」を率いる第三師団師団長【双獣のアリエッタ・シャルロッタ】。七神将を率いるヴァンの副官を務める譜銃の使い手【魔弾のリグレット】が率いる第四師団は、戦闘や秘書のようなものから交渉術やハニートラップなどを地で行くものも所属する。体術や詠唱放棄の譜術を操る、機動力に優れた第五師団をまとめあげる七神将内で最年少ながら師団長、兼参謀総長である【烈風のシンク】。教団や神託の盾兵が表立って動けない時、または裏の汚れた任務を一手に引き受けていると言われる特務師団師団長【鮮血のアッシュ】。

 それぞれ特色のある師団を率いる彼らは、任務を重ねるうちにダアト内にとどまらず他国にもその名を轟かすまでとなっていた。

 

 双子は年齢的にも知能的にも幼いことやまだ慣れないことが多いために2人揃って過ごすことが多かった。よく似ている双子ではあったが、この頃になると得意と不得意では差があることがよくわかる。それは戦闘でも同じだった。魔物を使役して第一・第六音素譜術を操り近接戦闘はいつも抱きしめるぬいぐるみの爪で戦う、後衛よりのアリエッタ。ライガの手を模した手甲鉤を用いた接近戦と第一・第六音素だけでなく姉にはない第七音素譜術を操る、オールラウンダーだが前衛よりのシャルロッタ。二人が一緒にいるのは戦闘で前衛後衛回復を全て補えることに加え対人の任務でのコミュニケーションなど様々な状況で対応できるためであったが、なにより双子が離れたがらなかったからでもある。

 

 それは、双子が珍しく別行動をとっていた時に起きた。

 

 「アッシュ、キムラスカのヒト…?」

 「…!?」

 

 それはとても唐突に問いかけられたものだった。アリエッタは次の任務で魔物部隊を使うシンクとの連携をとるために打ち合わせをすると、朝から席を外していた。姉がいないと途端に人とコミュニケーションが取れなくなる引っ込み思案なシャルロッタだったが、七神将の幼年組──シンクとアッシュに対してはオドオドしつつも慣れつつあった。それは姉のアリエッタも同じで……どこか、なつかしさ(イオン様)を感じるシンクとぶっきらぼうにしつつもなんだかんだ構ってくれるアッシュには懐き、片割れと離れた時はどちらかの後をチョコチョコと追いかける姿が教団では見られていた。今日とてアリエッタがシンクと共にいるため、困ったシャルロッタが必然的にアッシュについて回ったのは仕方が無いことであり、アッシュ自身もそれを分かっているため、幾分か眉間のシワをゆるめて相手をする。

 そして先のセリフへと戻る。シャルロッタがそれを言い出すまでは全く違う話題をポツポツと話していたはずだったのに、いきなりアッシュを見つめ──正確に言えばアッシュの髪と瞳を見つめ、動きを止めたシャルロッタにどうしたのかと目で問いかけたアッシュに対しての答えがそれだったのだ。いきなりの質問に微かに動揺しつつ、アッシュは言葉を返す。

 

 「……は、何を言って、」

 「……いおサマ、いってた。〝赤い髪と、緑の目はキムラスカ王族の証拠〟って。アッシュ、」

 「……気のせいだろう。俺はアッシュだ。キムラスカとは、……関係、無い」

 「でも、いおサマ……」

 「違うと言っている!!」

 「!?」

 

 いきなりの大声にビクリと身をすくませ、強く目を瞑るシャルロッタを見て、声を荒らげたことを若干気まずそうにしつつアッシュは努めて(アッシュ自身にとっては)優しい声で謝る。アッシュ自身、どんなに邪険に扱っても後をついてまわるシャルロッタを嫌うことは出来なかったから。

 

 「……すまん。だが、余計な詮索はするな」

 「わかった、です…」

 「…お前、その時他に何か導師から聞いたり学んだりしたことはあるのか?」

 「…?うん。おーぞく、えらい。だから…れいぎ、だいじ!シャル、いおサマにならった。ちゃんとれいぎ、おぼえた、です!」

 「……そうか。それは覚えておいて損は無い。王族だけでなくともお前より上の立場に当たるものには役に立つことだ」

 「うん!」

 

 困り眉のままでも嬉しそうにイオンとの思い出を語るシャルロッタ。そして教えられたことを肯定され、笑顔になる。それを見たアッシュは無意識にシャルロッタの頭を軽く撫でていた。

 

 「ほう、仲がいいな」

 「!!」

 「ひぃっ!!」

 

 そんなやり取りをしていると突如声をかけられる。思わず身構えるアッシュと、完全に怯えた声を出してアッシュの後ろへとへばりつくシャルロッタに声をかけたのは、通りがかったヴァンだった。アッシュはまだしも、自分を見ずにシャルロッタが隠れたそのあまりの速さに一瞬、固まったヴァンはシャルロッタの方を見ようとするが、こちらは一切見ようとしない。

 

 「……シャルロッタ、そんなに私は怖いか…?」

 「突然現れて突然声をかけられたらこいつの場合どうなるかぐらいわかるだろうがっ!!」

 

 まったくもってその通りである。実はここへ連れてきた本人であるヴァンにシャルロッタは未だに一切懐かず、いつもアリエッタの後ろに隠れていた。今日はアリエッタがいないため、アッシュの後ろに隠れることにしたようだ。普段より大きな背中に隠れて前から全く見えなくなる小さな体。アッシュの師団服をつかみ、後ろから出てこよう としないシャルロッタに対し半ば本気で凹んでいるヴァンに、無意識にしていた行為を見られた恥ずかしさとついでに全く出てこようとしないシャルロッタの代わりにアッシュが怒鳴る。

 

 「…まぁ、いい「よくねぇ!」……そう怒鳴るな。いきなり声をかけた私が悪かった」

 「そーちょ、どっか、いく…?」

 「総長だ。そして話すなら顔を見せなさい」

 「ヴァンに対しては上のヤツに対する態度ってやつ、無視していいぞ(小声)」

 「おでかけ…?」

 「お前達……。はぁ、そうだ、キムラスカのファブレ邸へ行ってくる。そろそろ剣術稽古の予定なのでな。前回から日が空いたために拗ねているらしい」

 「……ふぁぶれ…?」

 「…ふん、俺達には関係ない……さっさとどこにでも行ってしまえ」

 「……留守は任せたぞ」

 

 どことなく哀愁を漂わせながら去っていくヴァンの気配がなくなると、シャルロッタはアッシュの背中から出てほっと息を吐く。

 

 「アッシュ、ふぁぶれ…なに?」

 「……あー、そうか、そういうのにも疎いのかこいつら……。……キムラスカ・ランバルディア国は君主制だ。王がいて国を治めている…それはいいな?その王が交代する場合、現国王、インゴベルト陛下の一人娘が継ぐことになる……が、王女はキムラスカ王族の貴色──お前の言っていた赤い髪と緑の瞳のことだな──を持っていない。そのために貴色をもつ者との婚姻が絶対条件となる。その貴色をもつのが、現国王の王妹であり彼女が降嫁したファブレ公爵家──つまり王族だな──で、そこの一人息子、ルーク・フォン・ファブレ、にヴァンは剣術指導をしている。今もそれで向かったんだろう……分かったか?」

 「……」

 「…………分かってねえよな」

 「……おーぞく?」

 「チッ、期待はしてなかったが……分かっているのはそこだけでいい」

 「……ふぁぶれ、おーぞく。ん、おぼえた」

 

 しっかり聞いていても初めて聞くものはすぐに理解が追いつかないシャルロッタに、背景も交えながら説明するアッシュ……が、いかんせん長い。結果、あの説明でシャルロッタが理解できたのは〝ファブレは王族である〟ということだけであったが、舌打ちをしつつそこだけでも覚えておけばいいと言い含める。そして、小さく呟いた。

 

 「もっとも今あの家にいるのは……」

 「……アッシュ?」

 「…シャルロッタ……お前は俺と出来損ないを…間違えてくれるなよ…」

 「…ぇ…?…でき……わっ!」

 「……、なんでもねぇ」

 「アッシュ、…や、あたま、ぐら、…は、はなしてぇ…っ!」

 

 誤魔化すように先程よりも強くガシガシとシャルロッタの頭を撫でるアッシュ。シャルロッタは意味がわからずともアッシュが言った言葉はしっかり聞こえており聞き返そうとしたが、聞き返そうにも頭が揺れるほどに撫でる手をなんとかどかすことに頭がいってしまい、疑問を覚えたことをその場ではすっかり忘れてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 そしてこちらはアリエッタとシンク。こちらはこちらでまた盛り上がっているようで。

 

 「シンク、なんで仮面してるですか?」

 「……はぁ?」

 

 任務時の師団員との打ち合わせや最終調整を終えて解散後、雑談をしていた2人。シャルロッタほど引っ込み思案ではないアリエッタは特に自分の友だちや妹の事になると饒舌になる上、嬉しそうに語るためその話題を振ってやれば結構時間つぶしになるのだ。そしてたまに獣並みの五感によって意味がわからないながら仕入れてきた情報を持っていたりする───例えば、ダアト内の導師派と大詠士派の派閥争いや金のめぐり、師団兵たちの要望など多岐にわたる───ため、少しでも詳しい情報がわかっていれば任務の時に役立つ時もある。だからシンクは軽く振ってみたのだ。〝アンタが今気になってることとかないの?〟と。

 

 「(こいつ、僕らのことを知ってるってわけじゃないんだよね?顔が見たいってこと…?)なんでって…」

 「前、見えるですか?」

 「あぁ、そっち……見えるに決まってるだろ。じゃなきゃ付けてられないよ」

 「…なんで?」

 「さぁ?譜術でもかけてるんじゃない?」

 

 どこかズレているような天然な発言をするアリエッタに疲れた顔をしながら返事をするシンク。というより、シンクが仮面をつけているのは出会った時からであり、今更としか言いようがないのだが。

 

 「で?何でいきなりそんなこと言い出したんだよ」

 「前から、シャルロッタと2人で話してた、です。シンクは、えっと、なんかあったかい…なつかしい…?って」

 「…僕が?」

 「うん。シンク、なんかイオン様みたい。アリエッタとシャルロッタのイオン様、いつもシンクみたいな感じでした」

 「……?どういうことさ?」

 「えっと……今のイオン様、違う感じします。もっと、こう……総長に対してぐさぐさ…してました」

 「……」

 

 ヴァン、アンタ、尻にひかれてたわけか。

 それがシンクのヴァンに対する今の評価となったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オマケ

 

 「アリエッタも、シンクの仮面かぶってみたい、です!」

 「死神に頼みなよ、これは僕のだ」

 「今、シンクいるのに…すぐなのに…」

 「はぁ…だから…」

 

 

 「ぁ、アリエッタぁぁ……」

 「あ、おい!動くな切れる!」

 「!!シャルロッ…タ、なんで、ボサボサ、です?」

 「アッシュ、ぐちゃぐちゃしたぁ…」

 「いや、だから直してやるから動くなと…」

 「アッシュ、シャルロッタいじめちゃダメ!」

 「だから直すって言ってるだろうが!!話を聞け、双子!!」

 

 

 

 

 

 

 「……で、嫌だったわけ?」

 「……んーん、シャル、なでなで…すき」

 「じゃあなんで怒ってるのさ」

 「シャル、ききたいことあったのに……わすれちゃった……」

 「…あぁ、そう……(コイツらの疑問は結構いい情報になるのに、何してんのさ)」

 

 

 

 

 

 






というわけで、幼年組+αでした。
なんとなくアッシュ×シャルロッタ風なとこがありますが、CPはまだ未定です。
ちらちらこれから使いそうな情報を散りばめてたら、書いてる本人がだんだんわからなくなってくるという…

次は、大人組と絡むか、原作に入るか…。
閲覧ありがとうございました!

あ、一応補足しておきます↓


・シャルロッタ
 撫でられること自体は好き。でも、アリエッタに毎朝毛繕い(?)してもらった髪をぐちゃぐちゃにされて、涙目。ついでに告げ口。

・アッシュ
 誤魔化すためとはいえやりすぎたことは自覚してる……から、直してやろうと手櫛を通している最中にシャルロッタがアリエッタを見つけ走り出す。
 →反射的に追いかけ、追いついた先で幼年組全員集合。

・アリエッタ
 毎朝毛繕い(?)で髪の手入れをしてやるのが日課。たぶん髪の毛をボサボサにされたことよりも、シャルロッタを虐めた(ように見える)から、アッシュに突っかかってる。でも、構ってくれるからアッシュは大切。

・シンク
 実質最年少……なのに、双子が実年齢に色々追いついてないため何故かお兄ちゃんポジ。喧嘩に参加するよりは離れた所で呆れながら見てるタイプ。今回に関しては貴重な情報源が潰れたこともあり助ける気は無い。


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