黒子《俺》side───────
あれから俺が火神に失望してから数日経った。
あの日の1、2日後の試合は、俺がイラつきすぎてミスを連発。インターハイ敗退となった。
そして俺は、あの日からずっと表に出ている。
《僕》が出て来ようとしているが、《俺》はその度に《僕》を沈めた。わざわざまた出て傷つくより、こうして置けば《僕》は傷つかなくてすむ。
そう……最初からこうしていればよかったんだ…
そうすれば元々《僕》が傷つかなくてすんだんだから……
それに《俺》は所詮本当の人格ではなく、
《俺》は《俺》であると同時に《僕》でもある。
《俺》は生者であり同時に死者でもある。
《俺》を言葉で表すならこれだろう。
人ではない者が人を語るなど無理な話である。
………とっ…話を離脱しすぎたな。
何故いきなりこんな事を言い出したかといえば、
「鉄アレイの「鉄」に平社員の「平」で
鉄平だ」
『あ、はい』
目の前のこの男から現実逃避したいからだ。
これが天然という奴か……心底めんどr…ゴホッン……個性的だな。だが同時に、とても腹黒く、策士にも見えるがな。
『あの…何かご用ですか?』
「ん?ああ!
ねぇよ」
『……そうですか』
……なんだこの男?…全く読めない……いや…掴み所がない……
「来週で退院すっからちょっくら学校に挨拶に来ただけだよ」
『!………ケガか何かですか?』
「まあな。んで ついでに体育館覗いてみたらなんか悩める若者がいたもんだからついな」
「まあ キミの悩みなんぞ知ったこっちゃないわけだが」
『…………』
……何かこの男の相手が面倒くさくなってきた……
「けど期待もしてる
キミは面白い……
もちろんもう一人のキミも」
『!』
なっ!?……いつだ?いつバレた!?………
『……いつお気づきで?』
「さぁ?ただリコ達に聞いていた雰囲気が全然違うからかな?」
不覚……だな。でもまぁ…………
『フフ…』
「?どうした?急に笑って?」
『いえ……強いて言えば…踏ん切りが付いた………と』
そう……結局の所、俺は《僕》の代わりは務まらない。やはり黒子テツヤという人間は《僕》でないと……
「?」
『今からもう一人の俺に変わります。続きの話は《僕》に話してやってください。俺にその続きを言われても理解できないと思いますから。それから………』
「なんだ?」
『俺の事は秘密にしてください。いつか、《僕》が俺の事を話すと思うので……それでは』
眼を閉じ、ゆっくりと《僕》に変わった。
あぁ……早く…早く……
徹底的に叩き潰したい。