《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん   作:ケンタシノリ

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その2

「敬太くん、助けてワン! 助けてワン!」

「ふはははは、このかわいい子犬は川の急流を見ただけでこんなに恐がるとはなあ。もしかして、この子犬は全く泳げないから恐がっているんじゃないの? ふはははは」

 

 獣人に捕まってしまったワンべえは、敬太に必死で助けを呼んでいます。しかし、獣人はワンべえを流れの速い川の中へ落とそうとしています。

 

「獣人め、ぼくの大切な友達であるワンべえくんに何をするつもりなんだ!」

「こんな弱虫な子犬がおめえの友達であるとは、おめえもさぞ大変なんだろうなあ。ふはははは」

「ワンべえくんは弱虫でも何でもないぞ! いつもぼくのために手助けしてくれているんだ!」

 

 獣人は、ワンべえに冷酷な言葉を不気味な笑い声で言い放ちました。これを聞いた敬太は、ワンべえを川の中へ落とそうとしている獣人に対して怒りで震えています。

 

「それだったら、ぼくがワンべえくんの身代わりになるから、ワンべえくんを今すぐこの手から離せ!」

「ぼくはどうなってもいいから、敬太くんは身代わりになったらいけないワン!」

「ほうほう、おめえがこの子犬の身代わりになるのか。まあいいだろう」

 

 敬太は、ワンべえの身代わりになることを決意しました。ワンべえは敬太に思いとどまるように言いましたが、敬太は自分から決めたことに変わりありません。

 

「敬太くん、何でぼくの身代わりになるんだワン」

「ぼくは、ワンべえのためだったら、獣人からお仕置きされてもガマンできるぞ!」

 

 ワンべえは自分のために身代わりになった敬太を見て、涙を流しながら言いました。しかし、敬太は獣人からどんなお仕置きを受けてもガマンするつもりです。

 

「ちっ、子犬をもっと痛めつければよかったがな。まあ、おめえがその子犬の身代わりになるというからには、子犬以上に痛めつけなければいけないなあ、ふはははは」

 

 獣人は、ワンべえの身代わりとなった敬太を両膝の上にうつ伏せにさせました。そして、敬太の腕を右手でしっかりつかんで逃げられないようにしました。

 

「おめえは、われわれ獣人の仲間2人をこっぱみじんにしやがったな! 今から、わしの手でおめえのかわいいお尻にお仕置きをするからな、ふはははは」

 

 獣人は敬太へのお仕置きをするために、自分の左手に力を入れながら上へ振り上げました。

 

「や、やめてくれワン! 敬太くんは……」

「パチンッ! パチンッ! パチンッ! パチンッ!」

「んぐぐぐぐぐっ……」

 

 ワンべえは敬太へのお仕置きをやめるよう訴えましたが、獣人はそんな声に耳を貸そうとしません。獣人は、左手で敬太のお尻を強く叩き始めました。獣人によるお仕置きは、大きな音が響き渡るほどのすさまじいものです。

 

「ベチンッ! バシンッ! ベチンッ! バシンッ!」

「いますぐやめてワン! 敬太くんは何も悪くないワン!」

「ぼ、ぼくは、獣人から尻叩きのお仕置きを受けても絶対に弱音は吐かないぞ!」

 

 獣人は、敬太への尻叩きのお仕置きを緩めることはありません。大きな左手で次々と敬太のお尻を強く叩き続けています。そのの凄まじさに、ワンべえは獣人に敬太へのお仕置きをやめてほしいと涙を流しながら訴えています。

 

 そんな中にあっても、敬太は決して痛いということは一切言いません。獣人からお尻を強く叩かれても、ワンべえに心配をかけたくないのでじっとガマンをし続けています。

 

「ほれほれ、おめえが痛いとかつらいとか言わないなら、そのまま尻叩きのお仕置きを続けるからなあ、ふはははは」

「バシンッ! バシンッ! バシンッ!」

 

 ガマンを続ける敬太を見て、獣人は尻叩きのお仕置きをこれでもかと続けました。

 

「ぼくはどんなお仕置きを受けても……。うっ、急におしっこがもれそうに……」

 

 どんなお仕置きを受けてもガマンすることができる敬太ですが、ガマンできないものがないわけではありません。敬太は、急におしっこがもれそうになったので足をバタバタするようになりました。

 

「ふはははは、さすがのおめえも尻叩きのお仕置きに耐えられなくなって足をバタバタさせるようになったのかな、ふはははは」

「もうやめてワン! やめてワン! 敬太くんが本当にかわいそうだワン!」

 

 その間も続くお仕置きに、ワンべえはお仕置きをやめてほしいと獣人に泣きながら何回も訴え続けました。

 

 しかし、敬太が足をバタバタさせているのはお仕置きを受けているからではありません。

 

「おしっこがもれそう、もれそう……。もうガマンができないよう~」

 

 敬太は、おしっこが出るのを必死にガマンし続けています。そかし、そのガマンも限界に近づいています。

 

「んぐぐぐぐぐ……、んぐぐぐぐぐっ」

 

 それでも、敬太は逃げられないようにつかんでいる獣人の右手をどうにかして緩めようとします。そして、敬太が両腕に力を入れると獣人の右手が思わず離れてしまいました。

 

「絶対に逃げられないようにおめえの両腕をつかんでいたのに、おめえの力はなんという力なんだ……」

「ぼくは、獣人たちには絶対に……。も、もれそう……、本当にガマンできない……」

「おっと、ここから逃げ出そうと思ってもそうはいかないぞ! ふはははは」

 

 敬太は、獣人の右手が離れるとうつ伏せの状態からすぐに立ち上がりました。そして、おしっこをするために急いで走り出そうとしました。

 

 しかし、獣人はすかさず右手を使って敬太の右肩をつかみました。

 

「わわわっ、何をするんだ! ぼ、ぼくは……」

「ふはははは! おめえへのお仕置きはまだ終わっていないぞ!」

「獣人に引きずり戻されてたまるもんか! んぐぐぐぐぐっ!」

「敬太くん、がんばってワン! がんばってワン!」

 

 獣人は、正座したままで敬太の右肩をつかんで引きずり戻そうとします。しかし、敬太も必死になって腰に力を入れながら、獣人のところへ引きずられるのを食い止めようとします。

 

「わしが渾身の力を入れても、おめえを引きずり戻すことができないとは……。なぜだ、なぜなんだ?」

「そんなにぼくを引きずり戻したいなら、こっちから戻ってやるぞ! えーいっ! でやあーっ!」

 

 獣人は、敬太を自分のところへ引きずり戻すことができないことにかなり焦っています。敬太は勢いをつけて回転すると、左足のかかとで獣人の左肩を強く蹴り上げました。

 

「グエッ、いたたたたたっ!」

「獣人め、ぼくのかかと蹴りはどうだ! 参ったか!」

 

 獣人は、敬太の強い蹴りを受けてそのまま後方の地面に倒れ込みました。倒れ込んだ獣人は、必死に痛みをこらえています。

 

 敬太は、すぐさま倒れ込んだ獣人の胴体7に座り込みました。すると、獣人は敬太への怒りを爆発させました。

 

「よくも、わしの左肩を痛めつけてやがって、本当に許さんぞ!」

「うわわっ、獣人め、急に立ち上がりやがって! 上から落ちてしまう……」

 

 獣人は左肩の痛みをこらえながら、敬太を地面に落とそうと急に立ち上がりました。すると、敬太は逆さまになりながらも地面に落ちないように支えようとします。

 

「ふはははは! おめえは地面にたたき落とされないようにしているけど、今度はおめえのかわいいのが丸見えになっているぞ」

「でへへ、ぼくはかわいいおちんちんが見えちゃってもへっちゃらだぞ」

 

 敬太は、いつも付けている赤い腹掛けが下へめくれてしまいました。獣人は、敬太のおちんちんが丸見えになっているのを見て大笑いしています。

 

 しかし、敬太はおちんちんが見えても全く気にしません。

 

「んぐぐぐぐっ、んぐぐぐっ、も、もうガマンできない……」

「ふはははは! あれだけガマン強いおめえであっても、ガマンできないものがあるとはなあ……」

 

 敬太はあまりの緊張に、おしっこのガマンがとうとう限界に達しました。そして、獣人が不気味な笑いを見せたそのときのことです。

 

「うわっ、うわっ、何をするんだ! わしの顔に小便をかけやがって!」

「元気な子供だったら、いつもおしっこをするのは当たり前のことだい!」

「うわわっ、やめろ、やめろ! ただで済むとは思うなよ!」

 

 敬太は、これまでずっとガマンしていたおしっこが噴水のように獣人の顔へ命中しました。突然の出来事に獣人はわめき叫んでいますが、敬太はおしっこ攻撃をやめる気配はありません。

 

 そして、敬太はおしっこを出し終わると、いつものようにすっきりとした表情に戻りました。一方、獣人はおしっこでぬれた顔面を両手でぬぐっています。

 

「敬太くん、今のうちだワン!」

「行くぞ! これがとどめの両足蹴りだ! え~いっ!」

「グエッ、グエッ、いたたっ、いたたたたっ!」

 

 敬太は逆さまになったままで、両足を宙に浮かしました。そして、そのまま両足のかかとで獣人の胸を強く蹴りました。

 

 獣人は、敬太に強く蹴られた弾みで後ろから地面に叩きつけられました。

 

「獣人め、ぼくの大事な友達であるワンべえに二度と手を出すんじゃないぞ!」

「くそっ、わしの顔に小便をかけやがって! おぼえてやがれよ!」

 

 敬太は、そのまま一回転して地面に着地しました。そして、ワンべえに二度と手を出すなと獣人に向かって強い口調で言いました。

 

 これを聞いた獣人は、敬太を鋭くにらみつけると恨みつらみを言い残して走り去りました。

 

「敬太くん、獣人をやっつけてくれてありがとうワン! ありがとうワン!」

 

 ワンべえは、敬太が獣人をやっつけてくれたので大喜びしています。大喜びのあまり、ワンべえはいつものように敬太の顔をペロペロとなめなめしています。

 

「ペロペロペロペロッ~」

「ワンべえくんは、ぼくをペロペロするのが大好きなんだね」

 

 

 

「あれあれ、今まで見ていたのはは全て夢の中での出来事だったのかな?」

 

 敬太は、ワンべえから顔をなめなめされている途中で目が覚めました。どうやら、今まで敬太が見ていたのは全て夢の中での出来事です。

 

「敬太くん、おはようワン!」

「ワンべえくん、おはよう! 今日は夢の中でワンべえを助けたり、獣人をやっつけたりした夢を見たよ!」

 

 そばにいたワンべえがあいさつすると、敬太も朝のあいさつをしました。そして、敬太は夢の中で見た出来事を元気な声で言いました。

 

 敬太は布団から起き上がろうと、自分で掛け布団をめくりました。すると、敬太のお布団にはいつものようにでっかくて元気いっぱいのおねしょがベッチョリと描かれていました。

 

「でへへ、ぼくのおねしょは、いつも元気いっぱいでベッチョリとやっちゃうんだよ。ワンべえくん、すごいでしょ!」

 

 敬太は、今日もお布団に元気いっぱいのおねしょをしてしまいました。7歳になった今でも、敬太のお布団へのおねしょは毎朝のあいさつ代わりとなっています。

 

 すると、ワンべえも照れた様子で何か言おうとしています。

 

「敬太くんは、いつもお布団におねしょをするんだワン! 実は、ぼくもお布団におねしょをしちゃったんだワン」

「ワンべえくんのお布団にも、元気なおねしょが描かれているね」

「でも、ぼくのおねしょは、敬太くんのでっかいおねしょにはかなわないワン」

 

 ワンべえの小さいお布団を見ると、こちらにも元気いっぱいのおねしょがベッチョリと描かれていました。しかし、お布団にしちゃったおねしょの大きさという点では、やっぱり敬太にはかないません。

 

 すると、敬太のおねしょ布団から何か飛び出してきました。

 

「うわわっ、いきなり出てくるからびっくりしたぞ!」

「敬太くんのおねしょから、ちっちゃい男の子が出てきたワン!」

 

 敬太のおねしょから飛び出したのは、敬太よりも一回り小さい3歳児ぐらいの男の子です。その男の子は、青い腹掛け1枚だけの姿で現れました。

 

「き、きみは誰なの?」

「敬太くん、ぼくの名前はおねしょ[[rb:童子 > わらし]]という名前だよ。よろしくね!」

「えっ、おねしょ童子って、ぼくの名前を知っているの?」

 

 敬太とワンべえの前に現れたのは、おねしょ童子という名前のかわいい男の子です。敬太は、おねしょ童子が自己紹介でいきなり自分の名前を言ったことにびっくりしています。

 

「ぼくは、いつもおねしょする子供のお布団に現れる妖怪だよ。そして、そのお布団を誰が使っているのかも知っているよ」

「それじゃあ、ぼくのことも知っているの?」

 

 おねしょ童子は、どうやって敬太のお布団へ入ったのかを説明し始めました。

 

「ぼくはこの小さい家を偶然見つけてそのまま入ると、敬太くんがお布団で寝ているのを見つけたよ。すると、布団からおねしょのにおいがしたからお布団の中へそのまま入ったんだよ」

 

 おねしょ童子は、おねしょをする子供のお布団に現れる妖怪です。敬太のお布団に入ったのも、おねしょをしていることがすぐに分かったからです。

 

「でへへ、ぼくは昨日暑かったので冷たい水をいっぱい飲んじゃったよ。そして、今日の朝もお布団にでっかくて元気なおねしょをしちゃったぞ!」

 

 敬太は、おねしょ童子に自分のおねしょを笑顔で自慢しました。敬太が元気いっぱいのおねしょをしちゃったのは、岩からの湧き水をたくさん飲みすぎてしまったからです。

 

「敬太くんのお布団の中に入ったとき、おねしょしている途中の敬太くんの夢の中を見たんだよ。その夢の中で、敬太くんは獣人をやっつけるときに、獣人の顔におしっこを命中させたんだね」

「でへへ、ぼくは夢の中でおしっこをガマンできずに、獣人の顔面にいっぱいかけちゃったんだよ」

 

 おねしょ童子は、おねしょしている子供の夢の中を見ることができます。夢の中をのぞき見ると、そこには獣人の顔面におしっこを命中させた敬太の姿がありました。

 

「元気な子供だったら、お布団へのでっかいおねしょをするのは当たり前のことだよ」

「ぼくも、敬太くんがいつもおねしょをするのを楽しみにしているワン!」

「ぼくがでっかいおねしょをしたときには、おねしょしちゃったお布団をワンべえにも見せてあげるよ」

 

 お布団へのでっかいおねしょは、元気な子供だったら当たり前のことです。敬太はおねしょしたら、そのお布団をワンべえにも見せてあげると明るい声で言いました。

 

 すると、同じところにいたはずのおねしょ童子が姿を消したことに気づきました。

 

「あれれ、いままでおねしょ童子はここにいたのに、急にいなくなったぞ」

「どこかへ行ったかもしれないワン」

 

 敬太もワンべえも、おねしょ童子が急にいなくなってちょっと寂しい気持ちになりました。


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