《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん 作:ケンタシノリ
敬太は、近くの田んぼの水路へ行って水路の中に飛び込みました。そして、おねしょでぬれた腹掛けやお尻などをしっかりと洗いました。
敬太は水路の水を桶にいっぱい汲むと、おさいの家まで両手で持って行きました。
「おっかあ、水を汲んできたよ」
「敬太くん、水汲みをしてくれてありがとう」
おさいは家から持ってきた木のたらいに水を入れると、すぐに洗濯板を出して洗濯を始めました。
「さてと、今日も洗濯物がいっぱいあるからすぐに始めないとな」
洗濯物はたくさんあるので、洗濯が終わるまでには時間がかかりそうです。
「おっかあ、田植えはもうしたのかな?」
「田植え? 昨年までだったら、庄助さんが田植えをしてくれたけど、今年は……」
敬太は田植えのことをおせいに聞いてみましたが、家の田んぼにはまだ何も手をつけていません。
「おっかあ、ぼくが田んぼへ行って田植えをしてもいい?」
「敬太くんが田植えをしてくれるのなら、おうちにとっても大助かりだわ」
「わ~い、おっかあの田んぼにいっぱい苗を植えるぞ!」
自分から田植えをしたい敬太の姿に、おさいも大助かりです。大好きな田植えができるとあって、敬太は足をピョンピョンさせながら大喜びしています。
その様子を見ていた三つ子は、敬太の体にしがみつきました。
「ぼくも、敬太くんといっしょに行きたい!」「行きたい、行きたい!」
「これこれ、田んぼは遊ぶところじゃないよ。それと、敬太くんが田植えしているのをじゃましたらいけないよ」
三つ子は、敬太といっしょに田んぼへ行きたがっています。しかし、おさいがダメと言った途端、三つ子が一斉に泣き出しました。
「うええ~んんっ、田んぼで遊びたい! 遊びたい!」
「田んぼで泥遊びしたいよ~!」「遊びたい! 遊びたい!」
「じゃあ、田植えをする前に三つ子といっしょに田んぼで遊ぼうかな」
泣き続ける三つ子を見て、敬太は田植えをする前に田んぼで遊ぼうと言いました。これを聞いて、三つ子は足をピョンピョンと跳ねながら喜んでいます。
「しょうがないね。敬太といっしょに田んぼで遊んでもいいよ。その代わり、敬太くんの言うことは必ず聞くんだよ」
「おっかあ、分かった」「ちゃんと約束を守るよ」
「田んぼの手前にある水路に落ちないように気をつけるのよ」
おさいは、三つ子が敬太といっしょに田んぼで遊ぶことを許しました。敬太と三つ子は、早速家の近くにある田んぼへ行きました。
三つ子は、田んぼに入って敬太と遊べるのでとてもうれしそうです。敬太と三つ子は田んぼからいきなりジャンプすると、そのまま水を張った泥の中にベッタリと尻餅をつきました。
「あっ、敬太くんのおちり(お尻)泥んこベッチョリ、ベッチョリ!」
「三つ子のかわいいお尻だって、泥んこがベットリついとるぞ! わはははは!」
敬太も三つ子も、泥んこになったお尻をお互いに見せながらキャッキャッと笑っています。そして、三つ子はすぐに田んぼに張っている泥水で水遊びを始めました。
水遊びを始めると、三つ子はすぐにキャッキャッとうれしそうに水をかけあったりしています。
「敬太くん、ここにきてよ」「こっち、こっち」
敬太は、三つ子が水遊びしているところへ行きました。すると、いきなり三つ子から泥水をバシャバシャと体にかけられました。
「うわっ、やってくれたな。それっ、お返しだ」
敬太も、三つ子に負けじと泥水を三つ子にかけ返しました。敬太たちは、泥水のかけあいっこでワイワイと楽しんでいます。
しばらくすると、三つ子がお相撲がしたいと言ってきました。
「敬太くん、お相撲しよう、お相撲しよう!」「お相撲! お相撲!」
「それじゃあ、みんなでお相撲しようか!」
敬太は、田んぼの中で三つ子とお相撲をすることになりました。
「はっけよい、のこった!」
藤吉は、敬太を「よいしょ、よいしょ」と何度も押しています。しかし、あまりの敬太の強さになかなか動かすことができません。
そして、敬太は藤吉のお尻を田んぼの泥の中にベットリと尻餅をつけました。
「えへへ、尻餅をついちゃった」
「次は、ぼくが敬太くんとお相撲をするよ」「ぼくもしたい!」
続いて、藤助と藤五郎の2人が敬太とお相撲をします。でも、2人で押しても敬太を動かすことはできないまま、藤助と藤五郎は田んぼの泥の中に尻餅がついて負けてしまいました。
すると、三つ子3人が敬太とお相撲をする前に、ある方法を思いつきました。
「今度は3人いっしょに敬太くんとお相撲するけど、ちょっと目をつむってね」
「いいけど、何をするの?」
敬太は、三つ子が言う通りに目をつむりました。すると、前からも後ろからも手の感触があるような気がします。
「敬太くん、目を開けてもいいよ」
敬太が目を開けると、前に藤吉と藤助が、後ろのお尻のところに藤五郎が両手で押さえています。
「はっけよい、のこった!」
三つ子は前から後ろから、それぞれ敬太を押します。敬太は、3人が押しても動くことはありません。しかし、藤五郎が敬太のお尻をプニプニしたそのときのことです。
「あわわわっ、ベチョッ!」
藤五郎が敬太のお尻から手を離した途端、敬太はそれに気を取られて田んぼの中にお尻がついてしまいました。
「わ~い、敬太くんにお相撲で初めて勝ったぞ!」
「敬太くんに勝った、勝った!」
「やっぱり、三つ子にはかなわないよ~」
敬太に初めてお相撲で勝ったことに、三つ子は大喜びです。一方、三つ子に初めて負けてしまった敬太は、やっぱり小さい子供にはかなわないと照れながら笑っています。
「敬太くんのおちり(お尻)、泥んこベッチョベチョ、泥んこベッチョベチョ!」
「でへへ、お尻に泥がまたベッチョリとついちゃった」
三つ子は、敬太のお尻に泥んこがついているのを見て大笑いしています。敬太も、お尻が泥んこまみれであることに赤面しながらも明るい笑顔を見せました。
すると、敬太はお尻にちょっと力を入れたのか、思わず元気いっぱいの音を出してしまいました。
「プウウウ~ッ」
敬太は、思わずお尻から元気なおならが出てしまいました。
「敬太くん、おならが出ちゃったね」「元気なおなら、プップップ~」
「昨日のヤマノイモのどでかい団子を食べたからかな、わはははは」
三つ子は、敬太のおならの音を聞いてはしゃいでいます。敬太も、元気なおならが出たことに照れながら笑いました。
しかし、照れていた敬太の顔つきが少し苦しい表情に変わっていきました。
「ギュルギュルルルル、ゴロゴロゴロッ、ギュルルルルルル、ゴロゴロゴロッ」
敬太はお腹が少し痛くなったと同時に、お尻のところがムズムズするようになりました。
「う、うんちが出る……」
敬太は、今にも出そうなうんちを必死にガマンしようとお尻を両手で押さえました。
「敬太くん、どうしたの?」「もしかして、うんちが出るの?」
「な、何でもないよ。気にしないで、ははははは」
三つ子は、お尻を押さえている敬太の様子が気になっています。
そこへ、おさいが敬太たちがいる田んぼのところへやってきました。三つ子がまだ田んぼから帰ってこないので心配になったからです。
「そろそろ、敬太くんが田植えをしないといけないから、この辺でおうちに帰ろうね」
「おっかあ、ぼくたちお相撲で敬太くんに初めて勝ったんだよ」
「みんな、敬太くんとのお相撲で勝ったの? すごいねえ」
三つ子は、敬太とお相撲して初めて勝ったことを自慢するように話しました。これを聞いたおさいも、すごいねえと三つ子の頭をなでなでしました。
「あらあら、体がこんなに泥だらけになっちゃったね。敬太くん、桶を持ってきたから水を汲んでくれないかな?」
「ぼくも田んぼの水路で体を洗うけど、最初に桶で水を汲むよ」
三つ子の体は、田んぼで遊んだりしたので泥んこだらけです。敬太は、用水路の中で水を桶いっぱいに汲むとおさいに渡しました。
「おっかあ、ありがとう」「体がきれいになって、気持ちいいよ」
おさいは、三つ子に水をかけて体をきれいにしました。三つ子も、自分たちの体や腹掛けがきれいになったのでうれしそうです。
敬太も用水路できれいに水で洗いましたが、ここにきて再びお腹が痛くなってきました。
「ギュルギュルギュルルルルル、ゴロゴロゴロゴロッ、ギュルルルルルッ」
敬太は、再び両手でお尻を押さえながら田んぼのところへ戻っていきました。その様子を見たおさいは、三つ子といっしょに田んぼのところまでやってきました。
「敬太くん、もしかしてうんちが出そうなの?」
「おっかあ、ここでうんちをしてもいいかな?」
おさいは、敬太の苦しそうな表情とお尻を押さえている様子を心配そうに見ています。
「お腹とお尻に力を入れたら、うんちがいっぱい出るからがんばってふんばってね!」
「おっかあ、ありがとう! うんちがいっぱい出るようにがんばるよ!」
敬太はおさいから励まされると、すぐにしゃがみ込んで田んぼの上でうんちがいっぱい出るようにがんばります。
「プウウ~ッ、うんっ、ううんっ、うううんっ、ううううう~んんんっ」
敬太は苦しい表情を見せながら、お腹とお尻に力を入れながらいきみ声を上げ続けました。しばらくすると、敬太の顔はいつものように元気で明るい笑顔に戻りました。
「あっ、敬太くんったら、うんちもでっかくて元気いっぱいなんだね」
「でへへ、おっかあ、ヤマノイモのどでかい団子を食べちゃったから、でっかくて長いのがたくさん出ちゃったよ」
敬太は、いままでガマンしていたでっかいうんちが田んぼの上に見事に出ました。そのうんちは、敬太らしい元気いっぱいのうんちです。
「おっかあ、これからも元気なうんちが出るようにがんばるからね!」
「敬太くん、でっかいうんちがいっぱい出てよかったね。でっかいうんちは、元気な子供である証拠だよ」
うんちは、元気な子供のシンボルです。敬太は、元気なうんちが出るようにがんばるとおせいの前で言いました。
三つ子も、敬太の元気いっぱいのうんちを興味深く見ています。
「敬太くん、でっかいうんちが出たね」「うんち、出た出た!」
「ぼくも、敬太くんみたいなうんちが出るようにがんばる!」
「えへへ、みんなもぼくみたいに元気なうんちが出ると思うよ」
敬太は、田んぼの上にあるでっかいうんちを両手でそのまま混ぜ込みました。敬太の元気いっぱいのうんちは、田んぼの肥やしとしてもそのまま役に立ちます。
そして、おさいは桶に汲んだ水でうんちで汚れた敬太のお尻をきれいに洗いました。
「おっかあ、ぼくのお尻をきれいにしてくれてありがとう」
「ふふふ、敬太くんはうんちがお尻にいっぱいついているから、ちゃんときれいにしないとね」
お尻をきれいにしてもらった敬太は、おさいが敬太の腰に竹かごをくくりつけました、そして、敬太の竹かごの中に苗をおさいが入れました。
「おっかあ、これから田んぼに戻って田植えをしてくるよ!」
「敬太くん、田んぼの泥んこで滑らないように気をつけるのよ」
敬太は田んぼに入ると、手慣れた様子で田植えを続けています。敬太のおかげで、おさいの田んぼには稲の苗が一面に植えつけられました。
そのとき、用水路の手前におさいと三つ子が敬太を呼びにきました。
「敬太くん、晩ご飯ができたからおうちに早く帰ってきてね」
「敬太くん、いっしょに食べよう、食べよう!」「敬太くん、早く、早く!」
もうすぐ、敬太が楽しみにしている晩ご飯の時間です。すると、敬太は思わずお腹の元気な音が鳴ってしまいました。
「ぐぐうううっ~、ぐううっ~」
「あっ、敬太くんのお腹が鳴る音は今日も元気だね。これなら、今日の晩ご飯もいっぱい食べられるね」
「でへへ、おっかあ、きょうもご飯を一粒も残さずにいっぱい食べるよ」
田植えを終えた敬太は、用水路で汚れた手足をきれいに洗い落としました。そして、敬太はおさいと三つ子といっしょにそのまま家へ戻っていきました。