「ハァイ、センパイ?」
「うわっ、何してるのBB……」
廊下の壁の一部が某側溝のように不自然に切り取られており、そこから顔を覗かせて手を振ってくるBB。
オオガミは少し警戒しつつも近付き、声をかける。
すると、
「挨拶はしてくれないんです?」
「……こんばんは?」
「はいこんばんは。ふふっ。なんか楽しいですねこれ」
「こっちはなにしてんだろうって気持ちでいっぱいだけどね?」
楽しそうに笑うBBに、困惑するオオガミ。
すると、BBは下に潜ると、ちびBBを持って戻ってきて、
「これ、いかがです? 最新機なんですが。センパイ、最新とか好きですよね?」
「むしろ最近はレトロゲーが好きですね」
「……」
真顔になり、再び下に潜って、今度はファ◯コンを持ってきて
「どうです? 今ならお安くしますよ?」
「無料じゃないんだ」
「こちらも慈善でやっていけるほどお金がある訳じゃないので……」
「世知辛いね」
「レトロゲーの方が高価ですしね」
そう言って、しばし沈黙する二人。
ハッと我に返ったBBは、
「それで、要ります?」
「残念だけど、怪しいものは買わないようにしてるんだ。販売者も怪しいし」
「いえいえまさかそんな。私は月の超スーパーエリートAIのBBちゃんですよ? 信頼度マックスです。えぇもちろん。ほら、これで怪しい人ではなくなりましたよ?」
「そうだね。ちょっとノッブに教育についてお話ししてこなきゃだね」
「ちょ、待ってくださいよ!?」
おそらく工房に向かおうとしているだろうオオガミを全力で止めようとするBB。
するとオオガミは仕方なさそうに戻ってくる。それを見たBBはホッとしたように息を吐き、すぐに楽しそうな笑みに切り替えると、
「これ、置いていっちゃうんですか?」
「あっ! 聖晶石!」
聖晶石を見せびらかすBB。その得意気な顔は、きっと欲しがっているはずのオオガミを見て楽しんでいるのだろう。
だが、オオガミの言葉の意味はほぼ真逆に近い。
ちらりと一瞬だけ左を見ると、側溝に近付きつつ、
「それ、どこから取ってきたの?」
「秘密です。でも、ここには30個あるので、10連一回分!欲しいですよねぇ?」
「いやまぁそりゃ欲しいけども……」
「えぇ、えぇ。ほら、早く手を伸ばして取ってくれて良いんですよ? さぁ、どうぞ?」
そう言って、側溝から出そうなくらいに手を伸ばして見せつけてくるBB。
しかし次の瞬間、その手が掴まれ、
「ハァイ、BBさん?」
「ひぇ、マシュ……」
にっこりと笑いながら現れる
がっしりと掴まれた手を引っ張られ、側溝を破壊しつつ外まで引きずり出されたBBは、笑顔で微笑むマシュに、
「あ、あはは……ちょっとした出来心でやってたんですよ……えぇ、はい。他意は特に無いです。面白そうだなぁ~って。でもほら、センパイを釣るとか難しいですし? もうわりと何を提示してもスルーされそうなのでちょっと石をですね?」
「なるほど分かりました。じゃあそこの石を持ってちょっとついてきてください。あ、ハワイの時お世話になったあの触手、まだ使えますよね?」
「手を使わなくて良いことまでバレてるのなら離してくれないですよねぇやっぱり。分かりましたついていきますよ。うぅ……センパイ拉致計画失敗です……」
「拉致って何する気だったんだこのAI……」
マシュに引きずられていくBBを見送りつつ、オオガミはそう呟くのだった。
いつかやろうと思ってたピエロネタをやったら容赦の無いマシュの攻撃を受けてBBが死んでしまった……釣ろうと思ったら釣られるだなんて……というか、前よりも狂暴になってないですかね、マシュ姐様。
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