「あはははは!! 勝った! 勝ったわオオガミ! やったわ!」
「これぞ計略……令呪二画の犠牲は伊達じゃないんですよ」
「宝具に一画も割いてないけどね。一騎討ちは最高だったわ」
宝具三連射ですら倒れないエウリュアレ達に戦慄したものの、どうにかステンノを倒すと同時にラムダ以外退場。令呪による後押しでどうにか勝てた辛勝だった。
「いやぁ、久しぶりに令呪に祈ったよ。というか、なんであんなに無茶してたんだろ……」
「まぁ良いじゃない。勝てたんだから。えぇそう。勝ったのよ。私が! エウリュアレに!」
「うるさいわ。そんな何度も言わなくたって伝わってるわよ!」
頬を膨らませ真っ赤にしながらラムダに文句を言うエウリュアレの後ろから、ステンノはニッコリと笑いつつ、
「ふふっ、ごめんなさいね。
「ステンノ様もでしょ? 隠しきれてないし」
「……そうね。令呪が無ければ勝てていたもの。あぁ、失敗。私が負けても、まだ
「まぁ、エウリュアレに有利を取れてなきゃまずやらない戦いだったし……有利は大事ですよ」
「えぇ。ところでマスター? どうして敬語なのかしら。貴方達は勝者で、私たちは敗者。つまり、力関係は貴方達の方が上ということになるのだけど……なんでかしらね?
「……いやまぁ、特にそれと言った理由は無いですけどぉ……」
そう言って、視線をエウリュアレとラムダの方に向けて助けを求めるが、悲しいかな。二人は今喧嘩をしているのだった。
「はぁ……何度言っても止めてくれないのね。もしかして、私が怖いのかしら。それとも私が姉だからかしら。それなら遠慮する必要はないわ。むしろどんどん来てほしいわ」
「おっと、危険な香りがしてきた。ヘルプミーメドゥーサ!」
「いえ、私は姉様側ですので。むしろ捕まえる側かと」
「くそぅ敵か!」
そう悪態をつくオオガミに、ステンノは微笑みながら、
「行きなさいメドゥーサ」
「御意に」
「サーヴァントに勝てるわけ!」
一瞬で肉薄してきたメドゥーサに短く悲鳴をあげるも、次の瞬間、白煙と共に消えるオオガミ。
その場に残されたのは一枚の礼装で、
「……『勝者の余裕』ですか……どことなくムカつく顔ですね」
そう言いながらメドゥーサは礼装を握りつぶし、オオガミの行方を探す。
* * *
「……スゴい格好よね」
「……めちゃくちゃ恥ずかしいのだけど」
「たすけてぇ……お許しをぉ……」
そうかすかに聞こえるオオガミの声は、ラムダの着ているリヴァイアサンパーカーからしていた。
それは、エウリュアレとラムダが喧嘩している一瞬、パーカーが浮かび上がった一瞬の隙に潜り込まれたのだった。
当然二人は即座に喧嘩を中断したわけだが、
「……どうしましょうか。それ」
「さっきから流体化しようとする度にガンドを撃って止めてくるのだけど……どうしたら良いかしら」
「それ、つまり動けないってこと?」
「いえ、そこまでひどい訳じゃなくて、スキルが使えないくらい……調節が絶妙に上手くなっているのは褒めて良いのかしら。叱るべき?」
「そこは悩むべきところではないと思うのだけど」
エウリュアレのツッコミに我に帰ったようにハッとするラムダ。
そんなとき、メドゥーサがやって来て、
「姉様。マスターを見ませんでしたか?」
「…………」
メドゥーサに聞かれ、どうする? とラムダに視線を送るエウリュアレ。
ラムダは少し考えた後に頷き、それを見たエウリュアレはラムダに頷き返して、
「あのパーカーの中にいるから引きずり出して持っていって」
「えっ……あ、本当ですね。では失礼して……」
メドゥーサはそう言って、パーカーの上からオオガミの頭の位置を割り出して一撃入れてから引きずり出し、
「ご協力感謝します。では」
そう言って去っていくのだった。
勝った! 勝ったんだ! 令呪使っちゃったけど!
最後の最後でエウリュアレとの一騎討ちになったときはまず負けられないと思ったので、ノータイムで令呪使う覚悟を決めて殴り合い。完全勝利ですよこれは! やったぜラムダァ!!
ところでこのマスター、ステンノ様に敬語を注意させられるの、ついに三度目なのですが。懲りないですね?