今日のカルデア   作:大神 龍

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エウリュアレと二人で(夢のようなひとときを)

「ふふっ。さぁマスター? 今日は何処に連れていってくれるのかしら」

 

 そう言って、楽しそうに笑うエウリュアレの差し出した手を取りながら、オオガミは、

 

「ん~……とりあえずご飯食べてからかな?」

「……まぁ、お昼時だものね。私も食べてないから良いけど、私が食べてたらどうするつもりだったの?」

「あ~……その可能性は考えてなかった。エウリュアレはこういう時は食べてこないと思ってたし」

「……信じすぎてないかしら。そんなに信用されてると、裏切りたくなっちゃうわ」

「それはイヤだなぁ……」

 

 ふふっ。と笑うエウリュアレに、オオガミも笑みを返す。

 

 

 * * *

 

 

 ジェットな沖田さんに潰されたとはいえ、そこはジャパニーズソウル。復興は早い。

 既にカジノとしての機能だけでなく飲食店も復活しているので、今回はここで食事をすることにします。とオオガミは言う。

 

「ここって、大丈夫なの? その、色々と」

「まぁ、カジノはともかく、料理は大丈夫だと思う。値段のわりに美味しいのが日本なので」

「そう……で、何を食べるの?」

「うどん」

「……ここまで来て?」

「いやいや。ここのうどんは美味しいからね? 武蔵ちゃんお墨付きだよ?」

 

 そういう二人の脳裏に、『いえーい』とピースしながらルルハワで634杯のうどんを平らげた武蔵が(よぎ)る。

 あの時はココナッツうどんと言っていた気がするが、ゲテモノ的雰囲気でも平らげそうな彼女がオススメするというのは、どこまで信じていいのか分からないのが問題ではあった。

 そんなときだった。

 

「あれ? マスターじゃないですか。何してるんですか? こんなところで。ちんちろですか? やめた方がいいですよ~? ここ、イカサマが横行しているらしいので」

「いややらないよ。というか、沖田さんこそ何してるのさ」

「私ですか? 私は昼食を食べに来ました。そこの路地に入って少し行ったところの右手側に美味しいうどん屋があるんですよ! いやぁ、武蔵さんに教えて貰って正解でした! 是非マスターも行ってみてください! では私はこれで!」

 

 ではでは~! と言ってジェットで飛び去っていく沖田。

 それを見送った二人は、

 

「水着に浮かれているとは言え、沖田さんが好評なら美味しいのでは?」

「えぇ、あれは信頼できそうね。同じところ?」

「うん。教えられた場所と同じ。じゃ、行ってみようか」

「そうね」

 

 人通りが多いからはぐれないようにと互いに手を強く握りながら、二人は路地へと向かう。

 

 

 * * *

 

 

「普通に美味しかったわね。ラスベガス要素皆無だったけど」

「別にラスベガスっぽいものを食べなきゃいけない訳じゃないし、そもそもエウリュアレは揚げバター食べたでしょ」

「ふふん。女神だからどれだけ高カロリーでも肉体的に影響はゼロよ」

「な、なんてこった……それは普通に羨ましい……!」

「えぇ、存分に羨みなさい。で、次はどこ?」

 

 楽市楽座を出たエウリュアレは、オオガミ先導のもと、何処かへと向かっていた。

 

「ん~……水天宮に向かおうか、シルク・ドゥ・ルカンに寄り道しようか考えてて……」

「ふぅん? じゃあ、水天宮に行きましょう。ルカンは時間を忘れやすいもの。後に回した方がいいわ。それに、水天宮は動物とのふれ合いもあるでしょ。そっちの方がいいわ」

「そう? じゃあそうしようか」

 

 オオガミがそう言うと、エウリュアレはオオガミの横に並んで歩く。

 

「それにしても、何度通ってもスゴいところよね……」

「警察が文字通り奔走してるって、普通じゃ考えられないよね」

「えぇ、本当に。そのうち死体でも降ってきそうだわ」

「はははは……いやまさかね?」

 

 そう言いながらちらりと後ろを確認したオオガミは、次の瞬間にはエウリュアレの手を強く引いて自分の前で抱き止めると、真横を燃え盛る大車輪が転がっていく。

 それを見送って深いため息を吐くオオガミと、それに気付かず抱き止められたまま硬直しているエウリュアレ。

 そんな二人の後ろから、

 

「おぉ、マスターじゃねぇか! どうしたよ何してんだ?」

「こっちのセリフだよ。いきなり大車輪が飛んでくるとか、ホラーだよ。何があったの?」

「あ? いやな? オレもモリもあんまカジノ向いてなくてな。賭けられる側なら楽しそうだってんで、ベオウルフに頼んでモリと戦ってんだよ」

「殺伐としてらっしゃる……全く。危ないから気を付けてよ」

「おぅ。じゃ、そっちも頑張れよな!」

「うん……うん? まぁ、がんばる~」

 

 走り去っていくアシュヴァッターマン。

 オオガミはそれを見送ったあと、エウリュアレを解放すると、

 

「それじゃ、行こうか」

「……なんか、不意打ちを食らった気分よ」

 

 エウリュアレはそう呟いて、オオガミの脛を軽く蹴る。

 

 

 * * *

 

 

 ラムダから渡されていたペアチケットで入場する二人。

 なんとなく感じていた視線が少なくなったので、ある程度は撒けたらしい。

 

「う~ん……やっぱりこの経験値をチップにされる感覚は慣れないや……メルトに免除出来ないか聞いてみようかな」

「諦めた方がいいと思うけど。むしろ嬉々として強化しそうよ?」

「ぐぬぬ……まぁ正直その通りの気がする。しょうがない。何度も出入りしなきゃいい話だし、諦めよう」

 

 蹴られた場所を気にしながら、オオガミはエウリュアレの手を引いて歩き出す。

 

「あぁ……なんであの子達はリヴァイアサンなんて呼ばれてるのかしら。不思議ね」

「関連性は無さそうなんだけどなぁ……まぁ、メルトが言ってるんだし、そっとしておこう」

「地雷を踏みに来たんじゃないしね。えぇ、楽しみだわ。どんな舞台なのかしら」

「毎度見に来てるけど、それでも飽きないからね。流石メルト――――いや、今はラムダの方がいいのかな」

「そうね。スタァな彼女はラムダよ。でもまぁ、本人は気にしてなさそうだけど。芸名みたいなものじゃないかしら」

PN(ペンネーム)みたいなものだよね。そういう職業だし、是非もないか」

「……たまに出るわよね。ノッブみたいに是非もないって。私は気にしないけど、気を付けた方がいいんじゃない?」

「そう? まぁ、気にしておくよ」

 

 オオガミはそう言って、ペンギン――――リヴァイアサンに近付くと、

 

「あだっ、痛い痛い! エウリュアレ気を付けて! つついてくるよコイツら!」

「そりゃそうでしょうよ……だって不審者を前にしたら誰だって突き刺すわ。もちろん私もね」

 

 エウリュアレはそう言うと、ペンギンから逃げてきたオオガミの脇腹をツンツンと突く。

 

「ちょ、や、ヤメロォ!」

「ふふふふふ……ちょっと楽しくなってきたわ」

「あ、悪魔だ……悪魔がいる……!」

「残念女神よ。だからもっと甘やかしなさい」

 

 エウリュアレはそう言いながら、楽しそうにオオガミの脇腹を突き続け、最終的にオオガミがエウリュアレを抱えてステージまで連れていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「はぁ……やっぱりいつ見ても良いわね……」

「本当にね。地味に沼に嵌まってる気がするよ。メルトにしてやられた感じ」

「そうね……というか、貴方の場合、ステージを見ているのが好きなんじゃなくて、ステージで踊っているメルトが好きなんじゃないの?」

「ふっ……否定しきれないね……」

「そういう正直なところも、貴方の厄介なところよ」

 

 エウリュアレはそう言って頬を膨らませると、

 

「私だってそのうち出来るようにするわ」

「え……いや、無理しないで? それで怪我したら殺されるの俺なんだけど?」

「別に、怪我をしなきゃ良いのよ。何の問題もないわ」

 

 エウリュアレはそう言ってオオガミの腕に自分の腕を絡ませると、

 

「じゃあ次ね。何処へ行くのかしら」

「ん~……この時間だとキャメロットはそろそろ営業終了するから……HIMEJIとか?」

「そうね……えぇ、そうしましょうか」

 

 そう言って、エウリュアレは上機嫌に歩き出し、我に返ったかのように硬直すると、

 

「……今さらだけど、今してるのって、カジノ巡りよね……それってどうなのかしら……」

「いや、カジノって言ったって、楽市楽座は縁日状態だし、水天宮はラムダのステージだし、ルカンは演劇舞台だし、HIMEJIはサバゲー場だよ? 全うなカジノとして動いてるのはキャメロットとピラミッドくらいじゃない……?」

「……なるほど。そう考えたら何の問題もないわね。よし。じゃあHIMEJIに……って、待って? サバゲーに二人で行くのは無謀じゃない?」

「いや、別に観戦するだけでも十分だと思うんだけど……」

「……やっぱりルカンにしましょう。HIMEJIはみんなと行きたいわ」

「了解。じゃ、ルカンに向けてレッツゴー!」

 

 オオガミはそう言うと、ルカンに向けて歩き始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ、弟くん! いらっしゃい!」

「お姉ちゃん、もう復活してるのか……」

 

 入るなり、自称姉(ジャンヌ)に見つかるオオガミ。

 だが、彼女はすぐにオオガミの隣にいるエウリュアレを見ると、

 

「あらあら……これはお姉ちゃん、邪魔しちゃいけないと見ました! 次の劇は10分後なので、出来るだけ早く席を取っておいた方がいいですよ! お姉ちゃんからのアドバイスです!」

「あぁ、うん……勘違いはされてないと思うけど、それはそれとして、あんまり茶化されるとラムダ呼ぶからね」

「物理的にお姉ちゃんを始末しに来てます……? というか、お姉ちゃんは別に気にしませんって。二股はどうかと思いますけど」

「それは否定しきれない……でもきっとギリシャ神話的にセーフだと思う……!」

「……ゼウスの浮気相手って、ヘラに理不尽な制裁を受けまくったのよね……」

「今その話をするって正気ですかエウリュアレ様!?」

 

 正妻が一番怖いというのは、たぶんどこの世界でも同じなのだろう。

 そもそも一番正気とは思えない行為をしているのはオオガミの方だった。

 

「そ、それで、次の劇には出るの?」

「私は……そうですね。弟くんが見たいのであれば。オルタとリリィも連れてきますよ?」

「いや、劇に出るのはお姉ちゃんだけで。三姉妹じゃないときの演技ってどんなかなって思ってさ」

「ん。そうですか……じゃあ仕方ないですね。お姉ちゃんのスゴいところ、弟くんにバッチリ見せちゃいますから!」

 

 そう言って走っていくジャンヌを見送った二人は、

 

「じゃ、席取り行こうか」

「もう席埋まってると思うけどね」

 

 そんな事を話しながら向かう。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅ……やっぱり一人ならマトモみたいだね」

「いや、表面だけよ、アレは。だって時々私たちを見ていたもの。凄いアピールしてたわ」

「……なるほどねぇ。お姉ちゃん、変わらずと言うところか。ルーラーで召喚できればマシになる……?」

「うちだとそうならない気がするわね……むしろ堅牢さが合わさって城塞並みのウザさになるのが見えるわ……」

「現実は非情……」

 

 町が太陽の赤さとネオンの刺々しい色を拮抗させてる時間帯。そんな時間にルカンから出てきた二人は、特別目立ってたジャンヌに複雑そうな顔をしていた。

 が、すぐに気を取り直すと、

 

「そんじゃ、そろそろ暗くなってきたし、向かいますか」

「あら、どこに行くの?」

「ふっふっふ。それは秘密だよ」

 

 そう言いながら、歩き始める二人。

 しばらく歩いていると、

 

「あら、マスターさん?」

「ん? なんじゃマスターか。何して……あぁ、いや、察した」

「なるほどなるほど。BBちゃんも分かりましたよ? お楽しみみたいですね!」

「珍しい組み合わせだね……何してるの?」

 

 ノッブ、BB、アビゲイルの三人に会った二人は、気まずそうに笑う。

 

「儂等はちょいと散策してただけじゃ。沖田にカジノは爆砕されるし、なんだかんだラスベガスであんまり遊んでなかったし、後ついでにアビゲイルが暇そうにしてたから連れ回して遊んでるんじゃよ」

「なるほど……まぁ、遊ぶのは良いけど、あんまりアビーに悪いこと吹き込まないでよ?」

「いやいや。子どもはちょいと悪い方が良いんじゃよ。そっちの方が、事の善悪の区別がつきやすいってもんじゃ。いや、サーヴァントは成長せんけど。まぁちょっとは変わるじゃろ」

「ノッブの悪いはちょっとレベルが違う気がするんだよね……」

「大丈夫よマスターさん。私もちゃんと良いことと悪いことの区別くらいつくわ!」

「大丈夫よアビー。マスターはあの二人と一緒にいる人全員に言うもの」

 

 そう言ってアビーをなだめるエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て、

 

「アビーが抱えてるウサギのぬいぐるみは作ったの?」

「いや、景品じゃ。儂のところの射的屋をちょいと荒らして取ってきた。イカサマしとったし、文句言えんじゃろ」

「自分の領地で行われてる不正を正面からぶち破ったのかノッブ。良いの?」

「うん? いやだってほら、やるのは別に構わんが、儂にされたら腹立つし。全うに金は払ったんじゃから文句言われる筋合いはなかろう」

「それなら良いけどさ……そこの店、破産するんだろうなぁ……」

 

 オオガミはそんな事を言いながら、それはそれとして喧嘩を売った相手が悪かったのだろうと、店主に黙祷する。

 

「んで、そっちはどっか行く予定があったんじゃろ? ここで油売ってて良いのか?」

「あぁ、うん。急ぐ必要はそんなにないし、もうちょっと暗くなった方が良いだろうし。そっちは?」

「ふむ……なんとなく何処へ向かうか分かったが……まぁ、確かに時間かけた方が良いか。儂等はそっちの目的地からの帰りでな。水天宮に入れなかった代わりじゃ。で、飯をどうするかってところで今悩んどる。なんか案あるか?」

「武蔵ちゃんオススメのうどん屋とか?」

「あぁいや、それはもう行った。旨かったわ。あのうどん狂いの舌はちゃんと肥えておったわ……ラスベガスに来てまで何食べてんだろうってちょっとなったけどね……後はギルダレイ・ホテルのキャットとか?」

「いやそれ確実に旨いのが分かってるから面白味皆無じゃろうが。他にないのか。他に」

「えぇ~……じゃあ、ルカンとか。あそこ、劇を見る人を対象に軽食を売ってるから良いと思うんだけど」

「うぅむ……またルカンかぁ……いや、あそこは毎度違う劇が売りじゃし、楽しめるか。よし。行き先決まったぞー! 早めにせんと混むじゃろうし、ささっと向かうからなー!」

 

 ノッブがそう言うと、BBとアビゲイルはすぐに集まり、

 

「んじゃ、楽しめよマスター」

「後でメルトと一緒に感想を聞きに行きますね~」

「いってらっしゃい、マスターさん!」

 

 そう言って去っていく三人を見送るオオガミとエウリュアレ。

 そして、

 

「それじゃ、こっちも向かおうか」

「えぇ、エスコートお願いね、マスター?」

 

 

 * * *

 

 

 町は既に街頭とネオンの刺々しい光だけが大地を照らしていた。

 そんな町並みを、二人は観覧車から見下ろし、

 

「今日は、どうだった?」

「そうね……まぁ、良かったんじゃない? 所々アクシデントがあったにせよ、大体計画通りでしょ?」

「まぁね。最大の懸念事項は飽きてないかってことだったけども」

「あら、人が違えば、それだけで新鮮なのよ? 更に、同じ人でも、一回目と二回目は感じ方が違うのだから、何度行っても、楽しいところは楽しいわ。だから、また次もよろしくね? オオガミさん?」

「……そこで名前を呼ぶのはズルいと思うなぁ……」

 

 オオガミはそう言って視線をエウリュアレから窓の外へと逸らす。

 エウリュアレはそれを見て笑みをこぼすと、オオガミの隣に移動して、寄りかかるのだった。


































 うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(理性蒸発(夢火を注ぎ込む音(悶死

 書いててダメでした。恥ずか死です。なんですかこのエウリュアレデレ過ぎじゃないです? これが絆11の力か? タグに"ヒロインはエウリュアレ"を書き込むべきか? いや書かなければならないのでは? とりあえずこれは今年最高の一話だな……

 …………よし。メルトで正気に戻った。エウリュアレ様が名前を呼ぶのはズルいと思います(洗脳継続

 とりあえず、夢火を注ぎ込む決意が生まれてしまったので、メルト用の一つが溶けます。後4つしかないのだが(震え


 あ、次のデート回を誰にするかのアンケートしますね。ご協力お願いします。期限は思い立ったときですので、すぐ終わる可能性もありますのでお早めに。

次のデート回をどうするか

  • エウリュアレ一択
  • メルトを忘れるな
  • 技術部二人とぶらり旅

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