「ふぅ……それじゃ、ひとしきり遊んだし、ラスベガスを適当に見て回ろうか」
「あら、帰るんじゃないの? エウリュアレはどうするのよ」
水天宮を出て、一度大きく伸びをしながら歩いていたオオガミは、メルトに質問で立ち止まると、
「正直、前回のルルハワの時に二人で遊びに行くって言って、なんだかんだドタバタしたせいで行けなかったんだよ。それで、代わりにラスベガスで遊ぼうって事になったんだけど……うん。今の所一番遊べるのが水天宮の気がする……カジノさえしなければ危険はないし」
「そう……あれ。でも普通にスロットで遊んでたわよね……?」
「まぁ、無理のない範囲でね。紫は一枚も使ってないし、QPはまだあるから問題なし。たぶんエウリュアレならいけるでしょ」
「その信頼は何処から来てるのかとても気になるけど、まぁいいわ。なんだかんだ、水天宮を気にいってもらえたみたいだし。私は今の所は満足よ」
そう言ってオオガミの右側を、言葉通り満足そうな顔で歩くメルト。
オオガミはそんなメルトの手を強く握ると、
「それじゃ、適当に見て回ろうか。観光自体はそんなしてないでしょ?」
「っ! ……えぇ、そうね。ここに来てからずっと舞っていたもの。観光している余裕なんてないわ。敵情視察なんてしてもいないしね」
「うん。じゃあ、姫路城から行こうか」
「えぇ、楽しみだわ」
そう言って、メルトは少し赤くなった顔を隠すようにそっぽを向きながら、オオガミの手を壊さないように気を付けながら慎重に握り返すのだった。
* * *
「よし。とりあえず殺しましょう。マスターを暗殺しましょう。えぇ、すぐしましょう」
「え、エウリュアレさん、かなり怖くなってるのだけど……大丈夫かしら……私、エウリュアレさんを手伝っていいの……?」
建物の陰に隠れているエウリュアレと、その後ろでどうしようか悩んでいるアビゲイル。
その隣でアナは鎌を研ぎながら、
「暗殺なら、夜を待ちましょう。あの人外性能でも、流石に倒せると思いますが」
「……どうかしら。何気にあのマスター、即死級の攻撃に対しては異常なまでの幸運を発揮するもの。たぶん死なないわ」
「いえ、普通に止めた方が良いと思うのだけど……たぶん、ろくなことにならないと思うの……」
「……アビーがそういうのなら、もうちょっとだけ待つわ」
「不思議だわ……ラスベガスに来てから、エウリュアレさんがいつも以上におかしくなってるわ……」
「たぶんルルハワで約束が果たされなかったからだと思うんですけど、姉様が楽しんでいるようなので私は気にしません」
「えぇ……マスター優先じゃないのね……」
エウリュアレにつられて元気になっているアナに、アビゲイルは苦笑いをしながら返事をするのだった。
ラスベガスに来て暴走してるエウリュアレ様。なんでこうなってしまったのか……まぁ、これはこれで……?