BBの宣誓とともにオオガミ達の前に落ちてくるサイズの違う頑丈そうな檻。
その中にいるのは――――
「ヘラクレスとキャット……?」
「普通に追われても速いんだけど。敏捷Aよ? バカじゃないの?」
「まぁ、鬼としては最適よね。素直に逃げ出すべきよ。ほら、逃げるわよ!!」
エウリュアレの声によって全員は走り出す――――。
* * *
「さてさて、今更ですが鬼役の説明です。今回は開始から3分後に解放されます。そして、BBスロットとミッションの失敗をトリガーに追加される感じですね。追加される人員は、後半に連れて割と容赦なくなっていくので、お楽しみに!!」
「うむ。何とか全員了承してくれてな……問題は解放されなかったら儂食われるかもしれん……」
「大丈夫です。その時は骨だけは貰ってきますから」
「うん。全く助ける気が無いのが伝わってくるね。さて、実況の二人がうるさいけど、ここは鬼役の二人の説明をするとしよう」
マイクを忘れて話し始めるノッブとBBを横目に、マーリンは話を始める。
「まず、大きな檻の方にいるのはヘラクレス。言わずと知れたギリシアの大英霊だね。よくこのふざけたイベントに、それも敵役として参加してくれるなんて、心が広いというか、これも狂化の影響なのかな?」
「いや、普通に笑いながら了承してくれたんじゃが。マジで狂化かかっとるんかアレ」
「普通にかかってますけどね。普通に精神異常耐性が高いから微妙にレジストしてるんじゃないですかね?」
普通に会話が成立するのを不思議に思っているが、ノッブもバーサーカーと言うのを忘れていそうだった。
「さて、次はタマモキャット。どういう経緯でああなったかは定かではないけど、とにかく玉藻の前を笑顔で亡き者にして来ようとするあたり、因縁が深いものだと予想できるよ。カルデアの厨房担当の一人でもある彼女には、サーヴァントたちも頭が上がらないことが多々あるそうだ。このルルハワにも、彼女が働いているホテルがあるらしいけど、そこはもう満席。とはいっても、宿を予約していない人はもういないだろうから関係のない話だね!」
「実際うまいからなぁ……つか、カルデアの厨房に外れは無いからな。うむうむ。思い出しただけで腹が減って来るな……」
「本当に美味しいですよねぇ……なんというか、ああやって料理が上手いと、それだけで引く手数多なんじゃないかなって思うんですけど、冷静に考えると、歴史に名を遺す英霊に厨房を任せるって、随分ととんでもない所ですよね。私は美味しいご飯を食べられるのでいいんですけど」
だんだんとキャットの話題から厨房の話になっていく実況二人にマーリンは苦笑いをしつつ、
「さて、エウリュアレの方に動きがあったようだね。見てみようか」
鬼が解放されてから10分ほど経った頃だった。
* * *
「あぁ、これがスキルカードかしら」
「その黄色いカード? どこにあったの?」
どこからか手に入れたのであろう黄色いカードをオオガミとメルトに見せるエウリュアレ。
二人はそれを見ながら、どこにあったのかを聞く。
「そこの植え込みに隠されてたわ。たぶん、ちょっとしたところに隠されてるんじゃないかしら。配られたカードホルダーに入れておけばすぐに取り出せるみたいだし、見つけたらすぐに入れて置いていいんじゃないかしら。落とすよりはいいわ」
「なるほど……というか、ふと思ったのだけど、私たちは効果があるけど、貴方は使えるの?」
「いや、どうなんだろう……魔術礼装を発動できるのかな……それなら戦闘服でガンドを叩き込むのが一番かな……?」
「まぁ、数に余裕が出てきたら試す感じでいいんじゃないかしら。とにかく、見つかってないなら探すのが一番かしらね」
「分かったわ。それじゃ、探し始めましょう」
そう言って、三人はそれぞれ互いが見える範囲でカードを探し始める。
* * *
「さて。ようやくスキルカードが見つかったという事で、今回はスキルカードの説明を! マーリンさん、お願いしますね!」
「おや、僕かい? てっきり君が説明するものだと……って、まさか説明書まで用意されてるとは思わなかったね……」
「まぁ、流石に儂らがこれ以上説明したら、真面目に解説の存在意義が無いしな……ほれ、任せたぞ」
えぇ……と嫌そうな顔をするが、ノッブがギターを取り出したあたりで笑顔を顔に張り付けて説明書を読み始める。
「え~、スキルカードの説明だね。今回のこのスキルカードシステムは、文字通り、スキルを使うためのカードだよ。ステージであるワイキキストリートはスキルの発動を永続的に禁止しているけど、スキルカードがある時だけ使える。スキルカードスキルカードは、スキルの発動に際して自動的に消費されて、スキルカードが無い時はスキルが使えない。単純だね。ちなみにマスターによるスキルカードの発動だけど、本人も言っていた通り、魔術礼装が使えるよ。ちなみに、これは事前に配った企画説明書に書かれているので、きっと彼はゲームを説明書を読まないで進めるタイプだろう。チュートリアルが無いゲームとか、絶対苦労しそうだよね」
「はい。ありがとうございましたマーリンさん! という事で、さりげなくセンパイに対してディスってたような気がしますけど、おおむねそのような感じで! ちなみに、スキルカードは最初から全て配られているのではなく、これも鬼と同様にミッションの結果によって増加いたします!」
そんな説明をしている間にも、各逃走者が一人一枚は最低でも持っている状況になった。
「さて。現状、マスター、エウリュアレ、メルトの三人と、ロビンフッドのソロ、バラキーとカーマの二人組という感じで動いておるが、このゲームにおいてこの陣形。どうじゃろうか。解説のマーリン」
「うん、そうだね。まず、このゲームにおいて、スキルカードは重要だね。人数がいればカードの配分は出来るけど、各々の耐久は落ちる。回避を持っている人は単独で動いた方が良いだろうけど、例えばエウリュアレの魅了、マスターのガンドなどの鬼を拘束するスキル。茨木童子の仕切り直しの様な高速離脱スキルなどは、少数で行動しても損は少ないね。だから、回避スキルを持つロビンフッドのソロ、仕切り直しスキルで離脱出来る茨木童子と自力で走って逃げるしかないカーマのペアは理に適ってると言えるね。でも、マスターのパーティーは、マスターとエウリュアレはともかく、メルトリリスだけは回避スキルが死んでしまっているね。まぁ、拘束できる二人と行動できるというのは、逃げ切るとしたら最適ともいえる。バランスとしてはいいんじゃないかな?」
マーリンの解説を聞いて、なるほど。と頷く二人。
そんな時だった。
「おぉっと! ついに鬼役と真の鬼(笑)との会合か! 今、ついに、走り出したぁー!!!」
* * *
「ちょ、まっ、速い速い!! 吾捕まるぅ!?」
「なんで私より貴女の方が遅いんですか! さてはこのために私を参加させましたね!?」
大人の姿になってバラキーを抱えたまま疾走するカーマ。
その後ろを走って追いかけてくるキャットの目は、明らかに得物を目の前にした猫のソレだった。
「クッ、まだ序盤も序盤の気がするが、スキルカードとやらを使うしかないか……! 跳ぶぞカーマ!」
「何時でもいいです早く跳んでください!」
今まさに捕まるといった寸前で、スキルカードが黄色く光りだすと同時に仕切り直しによってまるで消滅したかのような速度で逃げ去るバラキーとカーマ。
二人を見失ったキャットは諦めたように肩を落とすと、再び逃走者の捜索を始めるのだった、
* * *
「おっと。ついに発動しましたスキルカード! このように、カードがスキルの発動に反応して光り始めている間だけスキルを発動する事が出来ます! もちろん、ストックしているカードや、他人が持ってるカードは誤作動で発動したりはしない仕様ですので、安心して使えますよ!」
「それ、最初の説明の時に言うべきだった気がするんじゃが」
「段取りが意外と適当だよね。まぁ、テンポ的にはいいんじゃないかな?」
そんな話をするノッブとマーリン。
そんな時だった。アラームが会場とワイキキストリート全域に響き渡る。
「おぉっと!! さてさてやってまいりました! 第一回ワイキキストリート専用BBスロットぉー!!!」
力強い地響きと共に現れる目に悪い光を放つBBスロット。そこには様々な効果があるであろう絵が描かれていた。
「さてさて、お楽しみのBBスロット! レッツルーレットォー!!」
ガゴン! という重たい音と共に引かれるレバー。軽快な音を響かせながら回るスロットマシーンは――――
結構場面転換とか解説による長文とかを使いまくってるんですが、大丈夫ですかね……読みにくくないですか?
とはいっても、もっと読みやすくは私にできるか怪しいですが。雰囲気が伝わればいいかなって感じです。つたわれぇ~……!
たぶん次からは解説もちょっと大人しくなるはず……!!
……あれ。これ、ルルハワ終わるまでに完結する……?