「うわははは!! 行けいバラキー! カップル撲滅運動じゃ~!!」
「くははは! 任せよ! 頭が増えるサメで脅かしてくれよう!」
そう言って、去年にも見たような巨大且つ何故か頭の二つあるサメが、背中に水着のノッブを乗せた状態で砂浜を襲撃する。
当然カップルで来ている客もおり、彼女を守ろうと前へ出る者、彼女を置き去りにして脇目も振らず走り去る者等が多い中、
「ダブルヘッドジョーズじゃん……とりあえず写真撮っておこう」
「ねぇ、サメって美味しいのかしら。狩ってみて良い?」
「アンモニア臭がするとか言うわよね。でも食べるところもあるし、新鮮なら美味しいかもしれないわ。とりあえず狩りましょう」
という、激しく物騒な言葉を言うサーヴァント二人と人間一人と、
「なんじゃぁ? こじゃんちふっといヤツは……サメか?」
「おぉ? 中々食いでのありそうなサメじゃねぇか。サクッと狩ってマスターに届けるとすっか?」
「良いぜ任せろ! オレの人間無骨はサメにも効くって所を殿様に証明しねぇとな! 名前しか見ないで勘違いしてそうだし!」
そう言って、すぐさま臨戦態勢に入る三人のサーヴァント。
その不穏な雰囲気に、バラキーとノッブは顔を青くし、
「全力撤退じゃ~!!」
「変化! そして仕切り直し! さらば信長! 強く生きよ!」
「ぬわぁ!? 見捨てたなバラキー!!」
美しいまでに早い裏切りと逃走。
それにより残されたノッブは、獲物を失ったサーヴァント達の猛攻撃を受けることになるのだった。
* * *
「いや、そんな予感はしてたんだよね。ノッブ乗ってたし。他は知らないけど」
「……サメ肉って、美味しいのかしら。私、気になるのだけど」
「私も少しだけ気になるのだけど。どこかに売ってたりしない?」
「売っとらんわ。つか、儂も食ってみたいわ。食えるんかあれ」
「……誰かが前に言ってた気がする」
「おう。言ってた本人の登場だぜ。喜べマスター。前回の雪辱を晴らしにちょいと遠出して狩ってきたぜ。今からサメステーキ食うが、来るか?」
そう言って、どこからともなく現れるアンリ。
一体何処にいたのだろうかと考えるだけ無駄だと言うことは、周知の事実だった。
「今から? う~ん……よし行こう。もう食べる機会無さそうだしね」
「えぇ、行きましょう! 私も食べたいもの!」
「そうね。すぐ行きましょう早く行きましょう走って行くわよ!」
「うっへぇ……この二人が乗り気とか、珍しすぎて怖いんじゃけど……」
とても楽しそうにしている二人に引っ張られ、オオガミは困ったように笑いながらアンリに先導を頼み、その後ろをノッブはついていくのだった。
あのサメ、今三つまで増えたんですっけ。見たことないですけど。
でも、カップルを別れさせに行って食われかけるサメとは……運が悪かったなバラキーよ……