「ねぇマスター? 私、ここ最近のマスターの会話を聞いていて、どう考えても無茶な日程を組んでると思うの」
「うん。まずどこで聞いてたのかを小一時間ほど問い詰めたいところだね?」
何やら不穏なことを言うアビゲイルに、思わず聞いてしまうオオガミ。
明らかにほとんど全部を聞いているようなので、もはやどこから突っ込めば良いのか分からなかった。
「それはちょっと言えないけど……でも、マスターのその日程は、一周目で出来る内容じゃないと思うの……」
「うん? あれ? アビーって記憶が……って、そうか。本来はアビーの所だったね。うん。あの変態尼さんがおかしかったんだよね。うん。ならおかしくはないんだけど……盗み聞きは良くないと思う」
「それ、BBさんにも言ってくれるかしら」
アビゲイルの的確な突っ込みに、黙るオオガミ。
現状、このカルデアではBBが一番盗撮盗聴をしているのだ。それはそれ、と言いたいところだが、おそらく聞いてもらえないだろう。特に、微妙に悪い子モードに入りかけている今のアビゲイルには。
「うん、まぁ、BBにも言うけども……それはそれとして、別段、一周目で全部やる必要はないって。最後の週にやれれば問題なし。それに、毎度やってBBに精神ダメージを叩きつけるのもありかなってね……
ふふふ。嫌がらせはしてやるとも」
「た、大変ね……なんだかんだ言って、一週間のうちに漫画を描いて、鬼ごっこをして、エリザベートさんのライブを開催して、最後にエウリュアレさんとデート。とっても大変そうね」
「うん……うん? デート……デート? あれ? もしやこのまま行くと、死亡コースなのでは?」
「絶対に時間足りないと思うの……もうちょっと計画しないとダメよ……?」
「うむむ……って、いや、待って? エリちゃんのライブは別じゃなかったっけ……?」
「でも、早めにしないとそろそろ怒ると思うの……インドに着く前にまずエリザベートさんによってここが粉砕されかねないわ……」
「やばい……納得できる自分がいる……流石に早めにしないとか……インドが先に来るならキャメロット粉砕。出来ないならルルハワしかないね」
「えぇ、そうしましょう」
うんうん。と頷くアビゲイル。
すると、アビゲイルは何かにふと気づいた様な顔で、
「ところで、エウリュアレさんは?」
「あぁ、エウリュアレなら、アナを連れてどこかに行ったよ。どこに行ったのかわかんないけどね。用があるなら探すけど?」
「いえ、そこまでの事じゃないわ。あぁ、それと、もっとナーサリーたちにも構ってあげてね。じゃあ私はこれで。またね、マスター」
「うん、またね」
そう言って別れる二人。
アビゲイルを見送ったオオガミは、少し考えてから、
「とりあえず、ナーサリーの所にでも行くかな」
そう呟いて歩き出すのだった。
冷静に考えるとルルハワで一気に消化すると楽なんじゃないかと思いつつ、そんなハードスケジュール、私が管理しきれるわけないと確信している私がいる……