何したんすかマスター?(見て察してくださいロビンさん)
「……なにやってんだマスター」
「あ、ロビンさん。見ての通り吊られてるよ。いつも通りじゃないのは廊下に吊られてるってことじゃないかな」
オオガミの言うように、ここは廊下で、オオガミは吊られている。
また、その隣にこれ見よがしと置かれている黒い油性ペンから、どういう刑に処されているのかは分かった。
「……で、罪状はなんですかい。内容によっては助けるけど」
「エウリュアレが不機嫌だったのでこうなった」
「なるほど。それは助けられねぇわ。じゃあなマスター。ガキどもにはここに来るように伝えておくさ」
「一番ダメなやつだよね!? 酷くない!?」
そう言って、オオガミの悲鳴をスルーしてひらひらと手を振って去っていくロビン。
エウリュアレと問題児組には関わってはならない。それは暗黙の了解なのだ。
そんなこんなで見捨てられたオオガミは、
「……くぅ、逃げられたか……まぁ、呼ばれても致命的ではないけども……エレちゃんとかは過剰に反応しそうだから見つかったら不味いなぁ……はたしてエウリュアレはいつ帰ってくるか……出来るだけ早く帰ってきてくれぇ~……」
と、呟きつつ左右に揺れる。
この状態を作り上げたエウリュアレは、作り上げたと同時にスタスタとどこかへ歩いていってしまって、未だに帰って来ていない。
すると、
「……何をやってるんですかマスター。いえ、何をしたんですかマスター」
「あ、やらかしたのが前提に来るのね。うん。間違ってないんだろうけど、悲しいなぁ……」
通りかかったアナから冷ややかな視線をもらい、若干涙目になるオオガミ。
「今回ばかりはなにかやった覚えはないんだけど。むしろ、修羅場を抜けたら拷問部屋にたどり着いたくらい意味不明なんだけど。あ、いや、今の例えだと不思議と筋が通っている気がする。うぅむ、何て説明するべきか」
「なんとなく分かりました。大方姉様関連なのでしょう。なので、手出しは出来ませんね……あ、落書きはしておきます」
「むしろ落書きをやめて!?」
悲鳴をあげるオオガミに、しかしてアナは気にすることなく左右の頬に三本ずつ線を引き、
「まぁ、これくらいで良いでしょう。姉様も許してくれるはずです」
と言って、ペンを置く。
まるで猫の髭のように引かれた黒い線に、アナはクスリと笑い、
「マスターへのイタズラ第一号は私と言うことで。これで後から来た人には意図が分かりやすくなったでしょうし、姉様たちも怒らないはずです。では、これで失礼しますね」
そう言って、去っていくアナ。
オオガミはそれを呆然と見送ったあと、ハッ! と我に帰ると、
「……あれ、つまり状況を悪化させたってこと? 酷くない!? 悪魔か!?」
しかし、その犯人は既におらず、代わりにパタパタと複数の小さな足音が響いてくるのだった。
ロビンさんとアナの策略により顔が酷いことになるのが確定したオオガミくん。
なお、当然のごとくそこには監視カメラがついている模様。