「うん。じゃあ、次は型取りなんだけど……取ってくるね」
「流石に足でやるわけにはいかないものね……えぇ、分かったわ」
そう言って、クッキーの型を取りに行っているオオガミを待つメルト。
昨日言っていた通り、本当に呼びに来たので、一緒に作っていた。
「それにしても、意外と出来るものね。てっきり失敗すると思っていたのだけど」
「普通は失敗しないと思うわよ。まぁ、私は手伝った事は無いのだけど」
「……貴女、参考になるようで全くならないことを言うのはやめてほしいわね」
横から覗き込んでくるエウリュアレに、何とも言えない表情になるメルト。
「別に、私が手伝った事は無くても、作っているのを見ればある程度は分かるわよ」
「そう……今度手伝ってみれば良いんじゃないかしら。意外と大変よ?」
「ふぅん……じゃあ、次に作る時は手伝ってみようかしら。アナも一緒にね」
「ふむ。ではエウリュアレよ。今からでも参加できるクッキー作りがあるので参加するのはどうだワン?」
「……今日は止めておくわ。次のイベントが終わった辺りでいいかしらね」
「それ、やらないやつよね……」
なんとなく逃げ出すような雰囲気があるが、はたしてキャットがそれを許すだろうかと考えると、怪しい所だった。
「うむ。ならばイベントが終わり次第作ることにしよう。ふふふ。キャットから逃げ切れるとは思うなよ?」
「なんというか、本当に逃げられそうにないのだけど……」
「なら、逃げないでそのまま受ければ良いじゃない」
「バカなことを言わないでちょうだい。私は絶対に逃げ切って見せるわ。バーサーカーに捕まってなるものですか」
「変なところでスイッチが入るよね、エウリュアレって」
キャット相手に本気で逃げ切ろうとしているエウリュアレに、後ろから声をかけるオオガミ。
すぐにエウリュアレは振り向くと、
「何よ。イタズラには本気だし、怒られたくもないから必死にもなるわ。えぇ、えぇ。絶対に面倒なことをしてなるものですか」
「素直に作った方が面倒じゃないと思うんだけどなぁ……」
「こういうのはね、肉体的なものじゃないの。精神的に面倒だな、と思うことが面倒なことなの。スポーツをするのと、片付けをするのは面倒さが違うように。だから、精神的に辛いことからは絶対に逃げるって言うのが私のポリシーなの。分かったかしら」
「分かるけど、今日は一段と喋るね……何か良いことでもあった?」
「いいえ、全く。アビーにはなんか変なものが入ってそうなクッキーを渡されたし、最近食堂に入れなかったし、アナは出掛けてるし、貴方は部屋に帰ってこないしで散々だったわ」
「あぁ、うん。なんかごめんね……半分以上こっちが原因っぽいし……」
「えぇ、分かれば良いわ。ほら、さっさと終わらせなさい。そのクッキーを食べるために来たんだから」
「はいはい。じゃ、メルト。型抜きしてね。好きな形で良いから」
「えぇ、分かったわ」
そう言って、エウリュアレが横から見ているなかオオガミとメルトは型抜きを始めるのだった。
突然現れるエウリュアレ。果たして何時ぶりだろうか。
というか、エウリュアレのキャラ、迷走してない? 大丈夫?