「で、なんで私たちは集められたのかしら」
「なんでもお菓子作りするんだとさ。教室を開きたいから練習だってよ」
「ふぅん、そう。帰っていい?」
「いやいやいや……とりあえず参加しとけって」
帰ろうとする邪ンヌを引き留めるロビン。
すると、メイドオルタが歩いてくるのを見つける。
「あらメイドじゃない。なに? アンタも料理教室とやらに行くの?」
「バカを言うな。私は食べる側であり、今回は監視員として呼ばれている。お前のように突然暴れだすようなのがいないとも限らんからな」
「なんですって……? もっぺん言ってみなさい。消し炭にしてやるわ」
「どうどうどう。待て待てお二人さん。ここでおっ始めたら周りに大迷惑をかけるってのを忘れんなよ?」
「……チッ。命拾いをしたわね」
「それはこっちのセリフだ」
ロビンに止められ、にらみ合いの状態になる二人。
すると、メイドオルタは何かに気付いたように、
「しかし……貴様は料理教室に参加するというのか。それは……マスターも苦労するだろうな」
「ちょ、どういう意味よ!!」
ロビンの制止も虚しく、メイドオルタの言葉で戦争開始寸前の雰囲気に戻る二人。
今にも噛みつきそうな邪ンヌに、メイドオルタは、
「いやなに、貴様が如何に頑張ったとて旨いものを作れないだろうからな。マスターはさぞ苦しむだろうな、と心配しているだけだ」
「な、なんですってぇ? バカにしないでくださる? 私だってお菓子のひとつや二つ。簡単に作れるんだからね? 絶対アンタに旨いって言わせてあげるわ。行くわよ緑!」
「えっ、それもしかしてオレの事? マジで? またパシリ枠なの? ふ、不幸すぎねぇか……?」
メイドオルタに宣言して颯爽と去っていく邪ンヌの後ろを、半泣きでついていくロビン。
そんな二人を見送ったメイドオルタは、ずっと左手に持っていた紙を見て、
「さて、これで全員か。しかし、意外と人数がいるが、手が回るのか……? 赤い外套の男は辞退しているのがかなりの痛手だと思うのだが……全く。ヤツにも困ったものだ。戦場に背を向けて逃げ出すなど……今度見かけたら鍛えてやらねばな」
紙に書かれているのは名前。それは、料理教室の前準備として、子供を相手にする前に適当な人員を集めて予行練習をするために呼ばれた者の名前。
メイドオルタは、そのメンバーを呼びに言っていたのだった。
「さて、そろそろ時間か。逃亡を図った者には容赦なく撃ち込んでやろう」
そう言って、メイドオルタはセクエンスをくるくると指先で回しながら廊下を歩くのだった。
なお、集められたのは大体いつものメンバーである。このときの話は後日書くかもしれない……