「あっ! まーちゃん!」
「あれ、おっきー。珍しいね。ネタ探し?」
廊下でばったりと会ったオオガミと刑部姫。
「ち、違わい! 部屋が占領されてるんだってば!」
「占領……占領? あ、おっきーの部屋にあるこたつ、片付けないとだね」
「それくらい自分でやるし! いや、まぁ、そのこたつのせいでこうなってるんだけど……」
「こたつのせい……?」
首を傾げるオオガミに、刑部姫は袖を引きつつ、
「とりあえず来て。あれはもう、まーちゃんじゃないとどうしようも出来ないから」
「うぅむ……こたつ……こたつ……あ。あの雪国の高貴なお方々か」
心当たりに思い当たったので、少し駆け足で刑部姫の部屋へと向かうのだった。
* * *
「あらマスター。久しぶりね。どうかしたのかしら」
「うむ。最近は召集されることもないし、私はもっとこうしてだらだらしていたい」
「あぁ、ダメだこの二人。カリスマが消し飛んでる……」
「この二人がいると、室温が下がるから困ってるんだけど……あと、姫のゲームが勝手に使われてるの……」
こたつに入って寝転がってゲームをしているアナスタシアとスカディ。
しくしくと泣きながら言う刑部姫に、オオガミは少し考え、
「二人とも、なんでこの部屋にいるの? 専用のこたつを用意したはずなんだけど……」
「だって、ここには面白いものがいっぱいあるんだもの。ここで一年を乗り越すわ」
「賛成だ。ここが一番安全な気もするからな」
「姫の部屋なんですけど! というか、引きこもりにこんな眩しい人たち見せないで! 泣いちゃう!」
「そこまで眩しい……?」
「まーちゃんはいつも一緒にいるのが美の女神しかいないからそういうことになるの! 感覚麻痺だよ! 美人の供給過多で姫惨めすぎて死んじゃいそう!」
「いや、おっきーも一応美人なんだけど……むしろ美人じゃないって言ったら袋叩きにされそうな雰囲気もあるんだよ?」
「お、お世辞とか要らないから、とにかくここの二人をどうにかして!?」
若干顔が赤くなっている刑部姫を見て、仕方ないとばかりにため息を吐くオオガミ。
「二人とも、一回食堂行こうよ。おやつでも食べて来て。そのうちに同じような部屋にしておくから」
「むぅ……仕方ないわ。ちゃんとゲームを用意しておいてちょうだいね」
「ふむ……冷凍庫にアイスはあっただろうか……無いなら行かぬよ」
「周回に連れていくよ」
「無いなら作らせるとしようそこを退くが良い」
素直に出ていくアナスタシアと、若干青い顔でそそくさと出ていくスカディ。
「あ、ありがとうまーちゃん! これで引きこもれる! やったー!」
「うん。そのためにはもう少し手伝ってもらうことがあるけどね。ノッブとBBを呼んできて。見つからなかったらエウリュアレに頼んで呼んできてもらって。集合場所はアナスタシアとスカディの部屋の前で」
「えぇ!? 姫使い荒くない!?」
「大丈夫。出来なかったらまたあの二人がやって来るだけだから。ファイト」
「それ、もう軽い脅しなのでは……!? えぇい仕方ない。姫もちゃんと出来るところを見せるんだから……!」
そう言って、刑部姫は折り紙のコウモリをばらまいて、捜索を始めるのだった。
久しぶりにおっきーを出すならこれしかあるまいと……おっきーがいないうちにアナスタシアたちが来てるから……