吾、あんま歓迎されてない?(そりゃあれだけ暴れてたらそういう雰囲気にもなると思う)
「吾が来てやったぞ」
この言葉は、休憩室の空気を張り詰めさせる。
妙な威圧感と共に入ってくる茨木童子。今回のイベントで大暴れした本人である。警戒しないわけがない。
しかし、
「のぅエウリュアレ。それはなんじゃ?」
「チーズケーキよ。貴女も食べる?」
「そうじゃなぁ……ネロはどうする?」
「もちろん、余も貰うぞ」
「あ、あの……茨木童子さん、来てますよ?」
「んあ? いや、あやつの担当、儂じゃないし」
「そうよそうよ。ああいうのはノッブで間に合ってるわ」
「うむ。鬼はエルキドゥと土方で間に合っておる」
マイペースなノッブとエウリュアレ、ネロの前では特に意味をなしていなかった。
さしもの鬼も、このカルデアにおいて、エルキドゥと土方の前には霞んで見えるらしい。
そして、そんな会話に頬を引きつらせる茨木童子。若干怒りよりも先に涙が出かけたのは秘密だ。
「吾を無視するとは、中々度胸があるな……」
そう言って、茨木童子が手を上げた時だった。
「茨木童子。これ以上暴れるなら、縛り上げるよ?」
「なんだぁ? このガキは。休憩室で暴れるとはマナーがなってねぇな。叩き潰すぞ」
背後から放たれた威圧感に、思わず硬直する茨木童子。
当然、背後にいるのはエルキドゥと土方である。
「うむうむ。やってしまえ、エルキドゥ」
「散々余を倒しまくったからな。そろそろ報いを受けても良いだろ」
「正直、それを言っていいのはほとんど攻撃せずに前線に出た瞬間に宝具を受けて退場したリップだけだと思うのだけど」
「私はその、そこまで怒ってませんし……」
「優しいのね。まぁ、本当に優しいのかは置いておくけど」
エウリュアレは、皿の上にあったチーズケーキを食べ終えると、新たなお菓子を探しに行ってしまう。
どうすれば良いのか分からなくなってきた茨木童子は、とりあえず道を開け、エルキドゥと土方を通す。
それを見たノッブはため息を吐くと、
「ほれ、こっちに来ると良い。そんなところにおっては、話も出来んだろう」
「……良いのか?」
「良いも何も、来いって言っとるんじゃが……」
茨木童子は少し悩んだのち、ノッブの隣の席に座る。
「まぁ、なんじゃ。さっきのは流石に儂もビビるわ」
「なんじゃアレ……人の威圧感じゃないぞ……」
「片方は神の兵器。もう片方は鬼の副長じゃしの……」
「流石の鬼も、やはり気圧されるのだな……恐ろしい……」
「本当にやばいわよね、あの二人。ほら、これでも食べて落ち着きなさい」
「むぐっ!? …………んくっ。これはなんじゃ?」
「水まんじゅう。口の中に押し込みやすそうなのを取って来たわ」
「完全に食べさせる気満々ですね、エウリュアレさん」
「まぁ、今回のはワザとなんじゃろうけど、やっぱり持ってき過ぎじゃろ」
「うるさいわねぇ……最後はマスターが全部食べるんだから良いのよ」
「どこに良い要素があるんじゃ。却下に決まっておろう。儂らで喰うぞ」
「吾も食うぞ」
「余も貰おう。皆で食べるというのも、そう悪いものではないしな」
いつもの如く山の様に取ってきたエウリュアレの水まんじゅうを食べながら、彼女らは笑う。
茨木童子を静かにさせるためだけにわざわざ威圧したエルキドゥと土方も、この様子を見てほっとした表情をしていた。
その後、しばらく彼女らは楽しく談笑しているのだった。
安定のノッブとエウリュアレとゆかいな仲間たち。エルキドゥと土方さんのコンビも安定してきた感じですね。我がカルデアの風紀委員は彼らに決まりですよ。
しかし、茨木のキャラはこれでいいのか……完全に出落ちなんですけど。不憫担当なんですかね?