「……何してるのよ」
「あ、いや……ろ、ロビンさん。パス」
「えっ。オレに投げるの? ズルくね?」
図書館で、なにやらこそこそしていた二人に声をかけるエウリュアレ。
オオガミは即座に説明をロビンに投げつけ、ロビンは投げつけられたことで頬を引きつらせる。
「いや、別にやましいことはしてねぇよ? ただ、マスターにトラップの張り方とか聞かれて、ちょっと熱が入っていたというか、そんなもんだぜ? 何の問題もないって」
「普通のマスターならそうなのかもだけど、ソイツに限っては別だわ。だって、教えられたことは基本すぐに覚えるもの。しかも、無駄に応用してくる……果てしなく面倒なことになるのだけど、分かっているのかしら?」
「……もしかして、オレ、マズったか?」
「大丈夫! ロビンはなにもしてない! という事で、マントだけ拝借してくね」
「いやそれはねぇだろマスター!! 何一人だけ逃げ出そうとしてるんだ!」
そう言って、皐月の王を奪おうとするオオガミに抵抗するロビン。
瞬間、その二人の間を駆け抜ける一本の矢。
ぎこちなく振り向き、矢が刺さっているのを認識した二人は、一瞬で顔を真っ青にする。
「抵抗してないでよこせぇ!」
「だから一人で恩恵にあやかろうとしてんじゃねぇよ!? 明らかに見捨てる気満々じゃねぇか!」
「大丈夫! ロビンさんならこの状況でも逃げられるって!」
「バカ言ってんじゃねぇですよ! 死ぬわ! アイツの目を見ろ! 明らかに『どっちも殺す』って目をしてるじゃねぇか! つか、オレに関しては若干八つ当たりな感じで、しかも本来は別の理由があるのを隠して、トラップの話にこじつけてる感あるし!」
「……ヤバい、心当たりがありすぎてどれで怒られてるのか分からない……」
「なんでそんなになるまで放っておいたんだよ……!」
明らかに自分が原因で怒っているのは分かるが、心当たりがありすぎるという問題。
当然、ロビンもそこまで酷いとは思っておらず、顔色以上に内心は真っ青だ。
そんな二人に、一声かけられる。
「それで、どっちが犠牲になるのかしら?」
「「コイツで!」」
「両方ね」
二言目で、二人揃って射たれるのが確定した。
当然逃げ出す二人。容赦の無い攻撃で、涙目になりつつも、走って逃げ回る。
「なんでオレ、いつもこうなるんですかねぇ……」
「まぁ、イケメン属性は得てして不幸属性も持っているってことだよ! ヒロイン枠だし!」
「おいそれは女顔って言いたいのかマスター! 聞き捨てならねぇんだが!」
「いや、もっと根本的なところが……いやまぁ、やる時はやってくれるから、ヒーローでもあるけど! やったねロビンさん! どっちも行けるよ!」
「オレヒロインはやりたくねぇんですけど!?」
そう言って、笑いながら逃げるオオガミの後ろを、エウリュアレの矢を迎撃しながらロビンは追いかけるのだった。
なお、女神の美声でロビンが魅了されて追い詰められるまでがオオガミクオリティ。ただ、それでも抜け出せそうな不思議……