「はぁ……暇ねー……」
「まさかイリヤが連れ回されて帰ってこないとは思わなかった……私もついていけば良かったかな……」
「いえ、マスターについていくのは大変よ……?」
中立地帯で座ってぼんやりとしていたクロエと美遊の二人。
そして、その後ろに突然現れるアビゲイル。
「あら。イリヤが苦手な人じゃない」
「え? じゃあ、この人がイリヤの言っていた人……?」
「ん~……初対面なのに、とても警戒されてるわ……」
座ったままアビゲイルを見上げるクロエと、すぐに立ち上がり、距離を取りつつステッキを構える美遊。
「何やったのかは知らないけど、イリヤとルビーがとっても怯えてるんだもの。私はともかく、美遊は全力で警戒するわ」
「ふぅん……じゃあ、あなたには優しく接することにするわ。とはいっても、そもそもイリヤさんを怯えさせるつもりはなかったのだけど。なんでああなっちゃったのかしら」
「うん? そもそも、何をしたのか知らないのだけど。私達、イリヤから何も聞けてないのよ」
「ん~……そうね……私はただ、ルビーさんが大惨事にならないように忠告したつもりだったのだけど……まぁ、怯えさせちゃうこともあるわよね」
そう言って、少し寂しそうな表情をするアビゲイル。
しかし、すぐに笑顔に戻ると、
「きっと、そのうち仲良くなれるもの! だから、今はあなた達とお友達になりたいわ!」
「ふぅん……そう。良いわ。なってあげる。って言っても、特に何かするって訳じゃないんだけどね」
「ありがとう! お名前を聞いても良いかしら!」
「クロエよ。クロエ・フォン・アインツベルン。よろしくね」
「えぇ! そちらのあなたは?」
「……美遊・エーデルフェルトです。よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくね! じゃあ、私は失礼するわね!」
そう言って、アビゲイルは門を潜って何処かへと行ってしまう。
その嵐のような少女に、二人は呆然とするのだった。
* * *
「で、どこに行ってたの?」
「クロエさんと、美遊さんのところよ。お友達になりたかったから」
そう言うアビゲイルは、とても楽しそうに笑う。
それを見て、エウリュアレは、
「そう……イリヤは良かったの?」
「ん~……イリヤさんは、ちょっと機嫌が悪いときに会話しちゃったから、時間をかけないと無理かなって。第一印象は中々消えないもの」
「ふぅん。アビーのことだから、気にしないで突撃すると思ったわ」
「そこまで気にしない訳じゃないわ! むしろ、とっても気にするわよ!」
そう言って、アビゲイルは頬を膨らませてエウリュアレに抗議をするのだった。
クロと美遊は、友人との取り決めにより、次回の異聞帯まで絆もスキルレベルも5以上に出来ない苦しみ……なんだよオール5未満縛りって……