「……エウリュアレ、どうしたの?」
「……別に、なんでもないわ」
オオガミのマイルームで、部屋主であるオオガミの膝の上に座って頬を膨らますエウリュアレ。
明らかに機嫌が悪いのだが、オオガミはその理由が思い付かない。
「じゃあなんでそんな怒ってるのさ」
「いいえ、怒ってなんてないわ」
「そんなわけないじゃん。怒ってる雰囲気だよ。誰かにお菓子を横取りでもされた?」
「そこまで心狭くはないわよ!?」
「じゃあ、なんでなの?」
「それは……言えないわ」
そう言って顔を見ようともしないエウリュアレに、オオガミはため息を吐く。
「別に、何があったか追及したりはしないけどさ。気晴らしになにか食べる?」
「……パンケーキが食べたいわ」
「はいはい。じゃ、食堂に行こうか」
「ん。ちゃんと連れていきなさい」
「……今日はワガママが強いね」
何て言いつつも、オオガミはエウリュアレをお姫様抱っこをして運んでいく。
* * *
「ビックリしました。姉様が運ばれてくるんですよ。驚くに決まってるじゃないですか」
「別に、そんな言うことでもないじゃない。それ以上はその頬を引っ張るわ。マスターが」
「姉様じゃなくてマスターがですか……あ、いえ、何でもないです」
そう言うアナの視線は、エウリュアレの少し上。当然のように椅子にされているオオガミに向けられる。
「わりと向けられる視線に殺意しか感じないんだけど」
「えぇ。向けてますし」
「でも、なんだかんだ見る言い訳が出来たのが嬉しいんだと思うわよ」
「なっ、そんなこと無いです!」
「って、本人は言ってますが」
「あらマスター。照れ隠しって知ってるかしら?」
そう言ってニヤニヤと笑うエウリュアレと、悪乗りするオオガミの二人に言われ、アナはだんだんと涙目になっていく。
すると、オオガミは、切り分けたパンケーキを食べているエウリュアレを見つつ、
「でも、エウリュアレの機嫌が直って良かったよ」
「ん……だから、最初から怒ってないって言ってるじゃない。私はただ、貴方が石を集めなくていいのかって思っただけだもの。別に、本人が気にしてないなら私が気にすることでもないわ」
「あぁ、なるほど……」
「結局マスターのせいですか。一回死んでみますか?」
「殺意高いなぁ……!」
とりあえず鎌を取り出すアナに、オオガミは頬を引き吊らせる。
そんな二人に、エウリュアレはため息を吐くと、
「マスター。おかわり。今度はアナの分もね」
「はいはい。じゃあ焼いてくるね」
オオガミはそう言うと、エウリュアレを浮かせて下から抜け、エウリュアレをそっと椅子に降ろすと、厨房へ向かっていくのだった。
明日は戦争開始なので最後の休息ポイント……