「あら、マスター。今は休憩中でございますか?」
「あぁ……キアラさん……もうどこから出てきたのかは追及しないでおくよアーサーは?」
「彼でしたら、疲れたので温泉へ行くと言ってました。マスターも行きますか?」
「いや、今は遠慮しておくよ。まだ仕事が残ってるし」
そう言って、座っていたオオガミが立ち上がると、さりげなくキアラはその後ろに立つ。
「……なんで後ろに立ったのさ」
「いえ、特に理由はないのですが……そうですね。ここが安心すると言いますか……」
「……まぁ、すごい不安だけどいいや。それで、なにか用があるの?」
「いえ、見かけたので挨拶をしただけで、別に用はありません。とりあえず、裏山にでも行ってみようかと」
「なるほどね……あ、後で呼ぶかもしれないから、その時はよろしくね」
「えぇ、その時はお任せください」
そう言って、キアラはスタスタと歩いていってしまう。
オオガミはそれを見送ると、木材と釘、金槌を持ち、修繕箇所へ移動する。
* * *
「先輩ですか?」
「えぇ! 今回こそ私のライブをするの! だからそのためのステージを用意してもらおうと思って!」
そう言って、ドヤ顔をするエリザベート。
マシュは考えつつ、
「そうですか……まぁ先輩も聞きたがってましたし、教えるのは良いんですが……たぶん、天守閣の補修をしてるかと……」
「天守閣ぅ?」
「はい。バルムンクとエクスカリバーの余波の影響で所々壊れかけていたので、それの修繕に行きました」
「……いつの間にかマスター使いが荒くなったわよね、マシュって」
「えぇ、はい。先輩の影響でこうなっちゃいました」
「そう……マシュも大変なのね。私にはわからないけど」
「えぇ、まぁ、はい。色々あるんです」
マシュに同情するエリザベート。とはいえ、その苦労はほとんどわからない。
「よし、じゃあマスターのところに行ってくるわね!」
「はい。先輩によろしくお願いします」
そう言って、走り去っていくエリザベートを見送りつつ、マシュはふと、
「そういえば、ネロさんを見てませんけど……もしかして、もう向かってたりしますかね……?」
「むっ。ライブと余の話をしているということは、もしや既にエリザベートは来ていたか!? くぅっ、先を越されたか……!」
いつの間にか背後にいたネロ。この真冬に水着で入れるというのは、中々な精神力と忍耐力だ。
「えっと……先輩は天守閣です」
「あい分かった! ではまた後で会おうマシュ!」
「あ、はい。待ってますね」
そう言って、エリザベートと同じように走り去るネロを見送るのだった。
エリザベートライブ! ネロ様の乱入あり!
果たして耐えられるのは何人いるかな……?