「ん~……温泉は良いよねぇ……」
「そうだな……とりあえず、あそこの覗き魔を退治した方がいいんじゃないか?」
「……レッツゴー巌窟王」
「共犯者よ。その呼ばれ方はかなり不本意だが……まぁ良い。請け負った」
巌窟王はそう言うと、どうにかして覗けないかと頑張っているアンリが吹き飛ばされる。
「な、何て事をしてくれやがるマスター……夢の扉が遠ざかるだろうが……」
「それでこの前一撃退場してた人が何を言うんですか。隣は夢の国かもしれないけど、覗いた瞬間地獄へ早変わり。血の海に沈むことになるよ」
「その程度で止まってたら男じゃないだろマスター。とりあえず全力で行って、んで盛大に見つかって血の海の中に沈むとしても一瞬の天国と引き換えなら仕方のないことだと満足して死ぬ。これしかねぇだろ!」
「想像斜め上だけど面白いから許す! あとでBBとアビーに報告しておくね!」
「正気かマスター! その二人は明らかにダメだろ!」
「ノッブじゃないだけマシだと思うんだなアンリ!」
「ロマンが分からねぇのかこのマスター!」
アンリはひたすらに言うが、オオガミは過去にやろうとして未然に防がれた上に殺されかけた思い出があるので止めているのだが、そろそろアンリも痛い目にあってもいいんじゃないかと思ってきた。
「うん。わかった。仕方ないからまずはアンリを斥候に出そう。頑張るんだぞアンリ」
「お、おぅ……唐突になんだよ気持ち悪いな……」
そう言って、オオガミの事を気にしながらも、とりあえず突撃するアンリ。
しかし、次の瞬間無数の鎖がアンリを拘束する。
「だから言ったのに……」
「いやぁ、今日もエルキドゥは元気にやってるねぇ」
「……日常なのかこれは……」
ため息を吐くオオガミと、楽しそうに眺めるマーリン。そして、まるで気にしている様子がない二人に困惑する孔明。
宙吊りにされているアンリは、もがいていたが、突如温泉に投げ込まれる。
「あっ、ちょ、波がでかおぶぁ!」
「あ~……これは怒られそうだねぇ……」
「……思いっきりタオルが流されたんだが」
波に飲まれて湯船の端まで流され、マーリンは平然と回避して、肩まで浸かっていた孔明は正面から波を受けてずぶ濡れになりつつ、タオルが流されたことを怒っていた。
そして、温泉に叩き込まれた本人であるアンリは、静かに沈んでいた。
「……とりあえず、アンリを投げ出そうか」
「同意する」
「息してそうにないんだけど、大丈夫かい?」
「……踏んだら起きるんじゃない?」
「強引だなぁ」
そう言いつつ、オオガミ達はアンリを温泉の外に運び出すのだった。
エルキドゥという最強セコムが来た時点で覗きなんてできないのです。悲しいかな……