「やぁマスター。久しぶりのアヴァロンからの出張だよ」
「出たな妖怪王の話マシーン!」
「人聞きの悪いことを言わないで欲しいね!?」
顔を見た瞬間の一言に頬を引き吊らせるマーリン。
むしろ、王の話をさせているのはオオガミの方である。
「まぁ、最近王の話は全然聞いてないんだけども」
「なんせ呼ばれてすらいないからね。そろそろお役ごめんかな?」
「まさか。瞬間火力は期待してますよっ!」
「えぇ……」
目を輝かせて言うのをオオガミに、マーリンは困ったような顔をする。
「それで、何のご用でしょうかお客様」
「突然接客モードになってもついていけないんだけど……いや、そもそも特に用はないよ?」
「そうですか……では、温泉とかいかがでしょう。リラックス出来ると思いますよ?」
「そうだね……って、なんだろう。俗に言う過労死組はほぼ全員温泉に向かってないかい?」
「いやいやそんなわけないじゃないですかほら早く行きましょうそうしましょう」
「やけに温泉を推すね!?」
まるで何かを企んでいるかのごとき行動だが、本人は特になにも考えないで行動していたりする。
あえて理由をつけるとするならば、まとめておけば呼び出すときに楽になる、というくらいか。
「マーリンさん。それ以上の詮索は地獄に落とします」
「脅してきたよこのマスター! あと地獄って何さ! 本来の意味通りではないって言うのはわかったけど!」
「エリちゃんライブ18時間耐久レース行きます? あ、ネロの飛び入り参戦オプションもつきますよ」
「良し分かった温泉に行くとしよう」
そう言うと、マーリンはさっさと温泉へ向かっていった。
オオガミはそれを見送ると、
「ふぅ……暇人おじいちゃん撃退っとこれで掃除に戻れる。気付いたら王の話をしだすからなぁあの人」
「なんだよマスター。働いてんなら一声かけてくれって。笑いに来てやったのに」
「……別な意味で面倒なのが来た……」
マーリンを撃退したオオガミの後ろには、いつの間にかアンリが立っていた。
「……何しに来たの」
「おいおいこっちは客だぜー? もうちょっと口調気を付けた方がいいんじゃねぇのー? ま、敬語使われても怖いだけだからそのままで良いけどさ。んで、用事だっけ? 別にないけど来た。ついでに温泉はもう行ったから良いや」
「……天守閣とかどう? アビーも呼ぶよ?」
「さてはオレを排除したいんだろマスター」
「呼ばれて飛び出て私よマスター!」
「ほれ見たことか来たじゃんか!」
「名前呼んだだけなんですけど!?」
地獄耳か、もしくは特殊センサーでもつけているのかと言わんがばかりの登場に、オオガミもアンリも困惑しながらアビゲイルを見るのだった。
最悪高難易度もスカディ様で事足りるので高難易度ですら呼ばれなくなってきたマーリンさん。もう王の話は聞けないのだろうか。