「くぅっ……不意打ちとは卑怯な……!」
「正直相手が大体予想がつくのだけど。ところで、マスターも一緒にやるの?」
次回対戦相手による刺客を送る卑怯戦法に悔しがるオオガミと、相手の正体の予想はついているが、それ以上にマスターが一緒にエルバサと修行をするという事実に困惑するアナスタシア。
なお、オオガミはさも当然だとばかりの表情で、
「いや、だって続けないと身に付かないし。体力上げないと、そろそろノッブとBBに生け贄として捧げられそうだし」
「その言い方だと、今までは捧げられる前に逃げ切ってるみたいよね……」
「いや、事実そうなんだけども……」
「そ、そう……でも、それでもマシュはマスターを捕まえているのだけど……どうしてかしら……」
「それはむしろこっちが聞きたい。最近追ってくる速度が洒落にならないんだけど。これはアタランテに走り方を学ぶしかないのでは……?」
真剣に考え始めるマスターに、アナスタシアは嫌そうな顔をすると、
「それ以上速くなっても困るのだけど……というか、アタランテさんに勝ったらそれはそれで問題が発生する気がするわ」
「うぅむ……それを言われると反論出来ないくらいには同じ予感がしてるわけで……つまり、速度に関しては自力でどうにかするしかないと」
「いえ、諦めて自首をしなさいと言っているの」
「うわぁお。まだ何もしてないのに素早く犯人扱いだぁ。絶対何かをやらかすって思われてるよ」
「だって、事実でしょう?」
「真実は時として残酷なんだよ」
悲しい事実を前に遠い目をするオオガミを見て、アナスタシアはなんとも言えない表情になるが、その時になってエルバサが来る。
「私が言うことではないと思うんだが……マネージャーが遊んでて良いのか?」
「ん~……まぁ、向こうは向こうで人がいるから良いかなって。マネージャー的にはいた方がいいかもしれないんだけど、そこはそれ。というか、完成されているからもうどうしようもないんだよね」
「あぁ……まぁ、確かにそこまでいかれると鍛えがいがないというのは分かる。ただ、それでも誰かが見ているというのはかなり重要だと思うのだが」
「むむぅ……まぁ、見に行くのは良いんだけど、見てるとこっちも体を動かしたくなっちゃうのがなぁ……なんというか、こう、じっとしていられないというか、なんというか……」
「言いたいことは分かる。が、かといってマスターがあそこに混ざれるかと言えばそうでもないのが現状だ。難儀だな……」
オオガミの言い分に共感するエルバサ。
アナスタシアはその感覚があまり分からず、首をかしげるのだった。
独断で無駄に強くなっていくオオガミ君。そろそろストッパーが負ける日も近いのでは……?