「……なんでお主がここにおるんじゃ」
「……なによ。悪い?」
厨房に当然のようにいるエウリュアレ。その手元にはアイスがある。
顔が赤いところを見るにも治っているようには思えない。
「何しとったんじゃ?」
「見ればわかるでしょ。アイスを食べてるの」
「そうじゃな……残っとるか?」
「えぇ、たくさん。マスターの作り置きよ」
「ふむ。ならいいんじゃ。いくつかもらっていくぞ」
そう言って、冷蔵庫へと向かっていくノッブ。それとは逆に、エウリュアレの方へと向かっていくアビゲイル。
「あら、どうしたの?」
「疲れたわ……エウリュアレさんの所に行って良い……?」
「いいけど……マスターの部屋よ……?」
「……なんでエウリュアレさんがマスターの部屋に住んでるのかが分からないわ……」
今さらではあるが、突っ込みどころしかない状況。補足しておくと、オオガミの部屋にベッドは一つしかない。
「いえ、だって、私は部屋を持ってないもの」
「えっ。エウリュアレさん、お部屋なかったの……?」
「そうよ? でも、誰も言及しないのよねぇ……いえ、私も不自由してる訳じゃないから良いのだけど」
「マスターの部屋に住んでたら、確かに誰も言わないわ……」
「場所がないから仕方なくそこにいるだけなのだけどね……まぁ、そこでも良いなら部屋に来ても良いのだけど」
「ん~……ノッブさんと一緒にアイスを届けてから行くわ」
「そう? じゃあ、ノッブ。ちゃんと連れてきなさいよ」
「おぅおぅ。なぜ儂じゃ。一人でも大丈夫じゃろ」
突然話を振られたノッブは、アイスが入った袋をもって戻ってきていた。
「あら、出来ないの?」
「たわけ。出来ぬわけ無かろう。儂に任せい。しかと届けてみせるとも」
「……今日のノッブ、扱いやすいのね……」
「熱に浮かされているんじゃないかしら……」
「儂だってそう思うし。というか、分かっていてそういうことをするお主もお主よな」
「さてね。ほら、さっさと荷物を届けてきなさい。アビーも頑張ってね」
「えぇ、頑張るわ……」
「儂には無いんか?」
「BBによろしくね?」
「儂にじゃないじゃん! 期待はしとらんけども!」
そう叫び、しかし自分に響いたのかうずくまるノッブ。
しかし、すぐに立ち上がると、
「はぁ……ほれ、アビー。さっさと配って。ー、マスターの部屋に行くんじゃろ。行くぞ。それとエウリュアレ。動けないなら動けないなりにどうにかしてマスターの部屋に戻るんじゃぞ」
「……えぇ、分かってるわよ」
ノッブとアビゲイルは出ていき、エウリュアレはノッブの言葉に対してポツリと呟くのだった。
ちゃんと観察しているノッブと、プライドが限界突破しているエウリュアレ。アビーは癒し枠となるのです。